「名前使われた」「金だまし取る気ない」被告“三者三様”歯科矯正トラブルで集団提訴[2023/06/06 23:30]

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000302318.html

『実質無料』で歯科矯正が受けられるとうたいながら、実際には高額な費用を負担させられたとして、患者らが、クリニックや運営会社『グランシールド』などに対し、損害賠償を求め、集団訴訟を起こしました。

1月に提訴した人を含め、原告は312人。請求額は4億5900万円に上っています。4月には、警視庁に詐欺罪などで告訴状も提出されています。

原告女性(被害額120万円):「いつかコロナが明けて、マスクも取る生活になるときに、自信を持って笑顔で過ごしたいところもあったので、矯正をして、きれいな歯並びをしたいと思っていたところを、約束を守らずに逃げてしまうのが、すごく信じられない」

モニター契約を結び、154万円を支払えば、治療を受けられるうえに、協力費として、毎月約5万円がキャッシュバックされるとの触れ込みでした。実際、最初の数カ月は支払われていたそうです。
原告女性(被害額120万円):「普通に支払いもされているし、素人目にはわからないけど、歯医者に行ってインビザラインのマウスピースを支給されて、『こういった計画でやります』と説明もされてやっていたので、そんなに疑う感じではなかった」

しかし、その後、支払いが遅れるようになり、こんな連絡がきました。
原告女性(被害額120万円):「ウクライナ・ロシア問題による海外情勢の影響で、海外口座からの送金取引が停止していることが主な要因と説明が送られてきて、それのために遅れていることを最初に言われました」

そして、去年5月以降、お金の振り込みがなくなり、治療も受けられなくなってしまいました。

中途半端な治療が行われ、歯に隙間が残るなど、健康被害が出ています。
被害弁護団団長・加藤博太郎弁護士:「クリニックは、そのまま潰れて逃げてしまって、そのまま、すきっ歯のまま放置されてる。多額の借金と健康被害だけが残ってる」

支払いの遅れの原因が、ウクライナ情勢にあるとしたクリニック側。しかし、その説明を覆す社内会議の音声があります。
『グランシールド』の中村佳敬社長(去年4月):「全体に説明文、ロシアとかウクライナとか、突っ込みどころ満載の文章が出ていたんですけれども、今となって思えば、あのときは、あれが最善だったなっていうくらい笑える内容。炎上してくれぐらいの内容」

3月、運営会社の社長が「真実を話したい」として、取材に応じていました。
運営会社『グランシールド』・中村佳敬社長:「(Q.ロシアのウクライナ侵関係ある)全く関係ないと思います。みんなが混乱しているなかで、僕としてはどんな発言をすれば、和やかな空気になるのかなって。不用意な発言というような。ただ、それによって患者さんを軽視してるわけではない」

原告側によりますと、モニターから集めたとされる金は20億円。
運営会社『グランシールド』・中村佳敬社長:「(Q.20億円の所在はわかっている)わかっていないです。弊社は1円も儲けというか、1円もお金はきていないですし、逆に2億6000万くらいは支払っているという状態ですので。(Q.金をだまし取る気持ちがあった)全くないですね」

中村氏によりますと、『グランシールド』は、モニターの運営資金を出資。モニターの管理は関連会社の社長が行い、実際の治療計画は、歯科医師の伊藤剛秀氏が監修することになっていたといいます。

中村氏は、関連会社の社長が、金をキャバクラなどで使ったと主張しています。さらに、中村氏は、広告塔となっていた歯科医師の伊藤氏に金が流れたと主張しています。
運営会社『グランシールド』・中村佳敬社長:「4億円くらいだとうかがっています。そのうち45%が本当の材料費ということですので、約2億円ちょっとが伊藤先生のところに入っていると推測されます」

その伊藤氏も取材に応じました。モニター会員を見境なく増やす方針の運営会社と意見が対立し、おととしにはクリニックから追い出されたのに、その後も勝手に名前を使われたと主張しました。
歯科医師・伊藤剛秀氏:「利益が出たら3人で分けましょうという感じで始めた。ただ、お給料もいただいてなくて、交通費も自腹で行かなくてはいけない。(Q.デンタルオフィスXの報酬は全くない)3年間で30万円くらい。詐欺に関しては、私ども歯科医師はおそらく一切関与してない。僕の治療を希望してきてくれた患者さんに関しては、治療を続けられなくて、その辺は申し訳ないと思っている」

口の中には器具が残ったままの女性。口内炎ができることもあるそうです。
原告女性(被害額120万円):「最初からきれいに終わらせるつもりがなかったのではという疑惑もあるようなスキームだったり、計画だったりするので、きちんと説明していただかないと納得ができない」

◆3者の意見も食い違っているようですが、整理します。

今回、中心人物とされるのが、クリニックの運営会社『グランシールド』の中村佳敬社長、モニターを管理していたとされる関連会社のA社長、歯科医師の伊藤剛秀氏の3人。

訴状では、この3人が共謀して、歯科矯正モニターの仕組みを作ったとしています。2019年から開始されたこのスキームでは、まず患者がクリニックとモニター契約を結び、“治療代”として、約160万円を支払います。一括で払えない場合は、クレジットやローンでも可能だったということです。すると、クリニック側から「モニター報酬」として、キャッシュバックが入り、“実質無料”になるというものです。

原告側の弁護士は、6日の会見で「実際には、ほとんどが無料のモニター患者だった」「破綻することが明らかな詐欺的モニター商法」「健康を害して金銭的な損失を与える点で悪質性が高い」と指摘しました。

弁護団によりますと、無料モニターは、原告以外にも多くいて、約1700人、集めたお金は20億円に上るということです。

中心人物3人の言い分です。

運営会社『グランシールド』中村社長は、弁護士を通じて、「以前も集団訴訟の話があったが、訴状は未だ送達されておらず、コメントできる状況にありません」とコメントしています。ただ、以前のテレビ朝日の取材では、「2021年夏ごろから資金が足りないということになった」「(金をだまし取る気持ちは)全くない」と応えていました。

関連会社のA社長から相談を受けている弁護士によりますと、「現時点でマスコミを通じてコメントを出すことは考えていません」と、取材には応えていません。

伊藤医師は、以前のテレビ朝日の取材で、「利益が出たら3人で分けましょうという感じで始めた」と話しています。しかし、モニター会員を見境なく増やす運営会社と意見が対立し、2021年夏には、クリニックを追い出されたといいます。しかし、それ以降も集客のために名前を勝手に使われたと主張しています。