家族会議の結果
続く8月30日には父・韓昌祐氏のもと、京都市内の自宅で家族会議も持たれた。数度の話し合いの末、9月27日、父は娘への支援を最終的に了承する。途中、貸付契約書の作成も検討されたが、結局、書面は交わさず、利息額や弁済期、弁済方法も取り決めなかった。親子間の貸し借りだから、そんなものだったのだろう。貸し主は父・韓昌祐氏個人だったが、貸し金4億8000万円はいったんマルハンが立て替え払いする形となった。
ところが3週間後、麻里奈氏側の説明が出鱈目だったことが判明する。任意売却はなされず、ロスの自宅は貸し付け実行前の8月29日にヴィッチーノ社がわずか130万ドルで自己競落していたのである。日本から送金した4億8000万円はアメリカ人弁護士の指示により別の債権者への弁済などに充てられたようだが、日本人弁護士への報告と実際の送金記録との間に食い違いがあるなど相当額が使途不明になっている疑いまで浮上した。そこで父・韓昌祐氏は錯誤無効を理由として京都地裁に仮差押処分を申し立て、翌年には本提訴に及んだのである。
父親が強硬手段に転じたのは、マルハン株を目当てにウォレス氏やその債権者らが群がる構図に危機感を抱いたからだろう。
ロスの自宅の抵当状況を記した報告書によると、地元信用組合からの借金が458万ドル、例のヴィッチーノ社からが266万ドル、ヒューイット・ロール氏なる個人からが75万ドルなどとなっていた。このうちロール氏にはマルハン株2818株が担保として差し入れられているようで、ヴィッチーノ社にも株数不明ながら差し入れられている可能性があった。父娘間の話し合いが進んでいた7月中旬にはロール氏がマルハンのホームページに揺さぶりを思わせる書き込みを行っていた。同氏は「サム・ハンナ」なる異名でさらに35万ドルを貸し込んでいるともみられた。