最大手パチンコホール創業家のバツイチ長女が惚れ込んだ元バスケ選手…豪邸、ロールスロイス、旅行三昧で費消したカネ
ソニー・盛田家、セイコー・服部家、ロッテ・重光家、国際興業・小佐野家など、有名企業の創業一族の、知られざる相続トラブルを、驚異的な取材力で明らかにし、大きな反響を巻き起こした『亀裂――創業家の悲劇』。
この本の著者の高橋篤史氏が、パチンコホール経営で最大手に君臨する「マルハン」創業者夫妻と、その娘の相克を描く『亀裂』番外編第2弾を前編に引き続きお届けする。
若かりし日、アメリカのバスケットボール選手と恋に落ち、交際関係にあったマルハン創業家の長女(麻里奈氏)は、別の男性と結婚、離婚を経て、ひょんなことから元交際相手の男性と再会。アメリカで結婚するが、それが「創業家の悲劇」の始まりだった――。
麻里奈氏を突き放す母
いずれにせよ、日本に帰国して父親にカネの無心をした時点で麻里奈氏が抱える負債は1023万ドルにも上っていた。ただ、人気タレントがロスの自宅を700万ドルで買い受ける話が進んでおり、それらから算出された負債一掃に必要な所要額が4億8000万円だった。この任意売却話を前提に、現地ではウォレス氏とその代理人であるアメリカ人弁護士がヴィッチーノ社を説得して時間稼ぎをしているという。
「なんで3億、4億を私らに言うてくるかって、私は思う。……親の意見も聞かずに出て行って。……この家には2度と来られないって言って出ていった勘当している娘やねん」
マルハン副会長でもある母・祥子氏(83)は麻里奈氏をそう突き放した。この間の8月24日、麻里奈氏は一族側の代理人弁護士同席のもと、JR京都駅の真上にそびえ立つ「ホテルグランヴィア京都」で祥子氏と面会している。終戦直後に密航船で朝鮮半島を発ち日本の地を踏んだ韓昌祐氏とともに、冬には荒れ狂う日本海に突き出した丹後半島で、夫婦肩寄せ身を起こした母は娘を諭すようにこう続けた。
「お父さんなんて16歳の頃から裸一貫で何にも食べるものもない、自分の実力で勉強して学校行って、私らだって下働き時代、従業員のご飯炊いて、ウェイトレスして、おしぼり洗濯して、さんざん働いて今日があるわけよ。みんな底辺というものがあるねん。それの何も分からずね、ただ親の配当金もらって贅沢三昧して……」
母は娘が許せなかった。
「あんたね、はっきり言うけど、私、もういい格好するのにもいい加減にしとき、ほんまに。豪邸建てて、ロサンゼルスで豪邸に住んで、ロールス(ロイス)持って、ほんで旅行三昧して、そらあっという間にお金なくなるわ。そら、10億でも20億でも。せやけど、みんなね、そんな生活しないでしょ」
そして非難の矛先は夫・ウォレス氏に向かう。
「夫に収入あるんやったらね、また別。そら、上見たらなんぼでもある。せやけど、こっちが旦那に貢いでね、そんなバカな話ある? ほんで、そんな人じゃない言うてね、言うてんのやけどね、そこを見抜かんないのかって言いたい」
麻里奈氏は押し黙ったまま涙を流していたという。この日、麻里奈氏は配当金の管理を両親に委ねる誓約書に署名した。