川 ゚ -゚)子守旅のようです 3:敬虔な少年
- 2015/05/20
- 05:16
(;` ω ´) ハーッ、ハーッ
(´ ω `)
(;` ω ´)「……水……水……!」
鞄を漁る。
これで水がなかったら目の前の死体から血を啜るのも已む無しという心境だったが、
幸いにして水筒を見付け、一気に中身を干した。
肺が潰れそうなほど、息を吐き出す。
(`・ω・´)「……助かった……」
渇きを潤せば、今度は強烈な空腹感を覚えた。
先とは打って変わって余裕のある様子で鞄の中を探る。
(`・ω・´)「肉が食いてえな……」
そうして、希望通りに肉を発見した。
干し肉なのがやや不満だったが、無いよりはマシだ。
噛み切るのに苦労しながら、少しずつ咀嚼していく。
──砂漠のど真ん中。
つい先ほど刺し殺したばかりの死体の横で、干し肉なんぞに噛みつきながら
さらに荷物を漁った。
その男の顔に罪悪感は欠片もない。
(`・ω・´)(こっちだって生きるのに必死だしな)
そんな理屈で済む話だった。
(`・ω・´)「──ん?」
革の袋に手をつけたとき。
彼は、顔色を変えた。
(;`・ω・´)「あ──おい! こりゃあ……」
袋を開け、覗き込む。
信じられぬような面持ちで何度も中身に触れ、持ち上げ、眺め回した。
(*`・ω・´)「……金だ!」
紙幣、硬貨、宝石。
経済的に価値のあるものがずっしりと詰まっている。
探してみれば、他の袋にも同様の品々が見られた。
初めは喜んでいた彼だったが、徐々に威勢を失っていった。
金の出どころによっては、持ち逃げすれば自分に災難が降りかねない。
身元を確かめられるものはないかと、死体の纏う衣服を剥いだ。
(`・ω・´)「お……」
上等な上着の内側にカードがある。
それは戦前、彼が暮らしていた国で住民一人ひとりに持たされていた
国民の身分を表すカードであった。
ただ──彼はその国のスラムで娼婦に産み捨てられた身だったので、
戸籍など無いし、国民カードも発行されていなかった。
(`・ω・´)「何だ、こいつ同郷か。──ショ……ロン、でいいのか?」
カードに記された名前を読み上げる。
とはいっても、彼は文字の読み書きが覚束ないので自信はなかった。
(`・ω・´)「35歳……歳も大体一緒か。奇遇だねショロン君──って聞こえちゃいねえか」
数字ははっきり分かる。生年月日から年齢の計算も出来る。計算は金勘定で学んだ。
国民ナンバーを数え、満足げに頷いた。
最初の数字が「1」。これは貴族に与えられるナンバーだ。
ならば袋に詰まった大金は本人のものだろう。
(`・ω・´)「同郷、同年代のよしみだ。恵んでおくんな」
とはいえ彼は自身の正確な生年を知らないので、同年代といっても
大体そうだろう、程度の認識である。
念のため適当な場所に死体を埋めた。
貴族となると、行方知れずになれば探しに来る者もいるかもしれない。
主人が殺されたというのに逃げるでもなく、ぼうっと突っ立ったままの2頭のラクダを引き寄せる。
近くの街まで行ったら乗り捨てよう。
1頭に荷物を乗せ、もう1頭に彼が乗る。
ラクダの乗り方など知らないが、適当に身を動かすとゆっくり歩き出した。
.
間もなく夜になったので、野営することにした。
火を焚き、改めて荷物を漁る。
(`・ω・´)(やけに大荷物だな。
これは──香油か。……甘ったるい匂いがしやがる)
あまり良くない記憶が甦り、香油の瓶を袋の底へ乱暴に押し込んだ。
どうやら日用品をまとめておく袋だったらしく、必要としていた品がいくつかあった。
(`・ω・´)(鏡……と剃刀。こりゃいい)
3ヵ月前にとある町で盗みを働き追い出され、放浪している間、ろくにヒゲを当たっていなかった。
鏡で自分の顔を見るのも3ヵ月ぶり。
(`・ω・´)「おーおー、窶れたな。まあ元から大した顔じゃなかったが」
大雑把に剃り落とし、顎を摩る。
──ふと、彼は眉を顰めた。
どこかで捨てようと思っていた国民カードを取り出す。
カードに付いている、持ち主の顔写真と鏡を何度も見比べた。
[ (´・ω・`) ]
(`・ω・´)「……」
似ている。
全体の印象は違うが、それぞれのパーツは似ている。
カード自体は少なくとも5年以上前に更新されたものだろうから、
5年の間に人相が変化したと捉えれば、同一人物と言っても差し支えない。
彼はカードをしまい、鏡を見つめ、何事かを考えながら眠りについた。
#
翌日の昼には直近の街に着いた。
彼が5年前まで暮らしていたスラムとは比べるべくもないが、
戦後に渡り歩いたどの町よりも、大きく立派な街だった。
「どちらから?」
街へ入るために審査が行われたのも初めてだ。
垢まみれの男に訝しげな目を向け、係員はぶっきらぼうに訊ねた。
今にも鼻をつまみそうな無礼ぶり。
奪った荷物から服を借りたので、衣類だけが立派で余計に怪しかったのかもしれない。
(`・ω・´)「……」
彼は何も言わずに国民カードを差し出した。
係員がカードを受け取る。怪訝な顔は、5秒と経たずに驚愕へ変わった。
「──ショボン様! これは失礼を!」
(`・ω・´)「あん? ショボン? ……ああ、ショボンって読むのか」
彼の呟きは聞こえていなかったようで、係員は何度も非礼を詫びてから
無線の通信機で何処かへ連絡をとった。
それから街の責任者だという老人(町長と呼ばれていた)が男を出迎えた。
繰り返される感謝の言葉から得た情報をまとめると、
彼が殺したショボンという貴族は、戦後、砂漠を挟んだ向こうの街に暮らしながら
こちらの街にも復興資金を提供していたらしい。
ご立派なことだ。
( ´W`)「──お会いするのは昨年ぶりですな……
やはり砂漠を1人で越えられるのは、困難だったでございましょう。
この度は、本当にお疲れ様でございました」
(`・ω・´)「ああ……まあ」
( ´W`)「ショボン様が『中央』に向かわれると聞き、みな喜びました。
あなたのような方こそが新政府に選ばれるべきなのでございます」
(`・ω・´)(中央? 新政府?)
( ´W`)「先立って頂いたお手紙に従い、私の方からお供の手配をしておきました。
きちんと指定された条件に添う者がおりましたよ」
街の中心部、いかにも高級そうな宿へ連れられ、
そこの食堂へと案内された。
漂う香りに、彼の腹が鳴った。
( ´W`)「予定より一日ほど早くお着きになりましたので、先ほど準備を開始したばかりで……」
簡単な料理からテーブルに並べられていく。
彼は既に町長の話など耳に入っておらず、一心不乱に料理を口に詰め込んだ。
鉄板で焼かれた牛肉は、干し肉とは比べ物にならないほど肉厚で香ばしい。
ぎゅっと歯に染み込む食感。噛むごとに肉汁が溢れ、然ほど力を入れずとも肉がほどけていく。
下味はしっかり付いているが、そこにスパイスのきいたソースが絡むと極上だ。
( ´W`)「──ショボン様」
幾度か呼び掛けられてから、ようやく彼は顔を上げた。
肉に夢中になっていたというよりは、
そもそも自分が呼ばれているものだと認識できなかった、というのが大きな理由だった。
貴族らしからぬ意地汚さに眉根を寄せつつも、町長は、自身の横を手で指し示した。
( ´W`)「こちらが、あなた様をお守りする用心棒でございます」
食事の手を止めぬまま、何の冗談かと考える。
('(゚∀゚∩「よろしくお願いします、ショボン様!」
「用心棒」という響きからは程遠い、
可愛らしい顔立ちの少年がそこにいた。
──斯くして。
(`・ω・´)「……よろしく……」
彼は一時、「ショボン」を名乗ることとなった。
.
3:敬虔な少年
('(゚∀゚*∩「あのっ、あのっ、僕、僕……ショボン様のご功績を伺って、感動しましたよ!
どんなに素敵な方だろうかと、会う日を楽しみにしていて……」
(`・ω・´)「薄汚れたオッサンでがっかりしたか」
('(゚∀゚*∩「そんなこと……!
お一人で砂漠を渡ってみせた通り、勇ましいことでございますよ!
あの、お背中お流しします!」
(`・ω・´)「風呂ぐらい1人にしてくれや」
('(゚∀゚∩「あ……ごめんなさい、お会い出来たのが嬉しくて、ついはしゃいでしまって」
──宿屋の廊下を進みながら、彼は少年の喧しさに辟易していた。
見たところ12、3歳。
少女と見紛う美形。口を開けばぺちゃくちゃべらべらと、本当に女のようだ。
('(゚∀゚∩「こちらがショボン様のお部屋です、ゆっくりお休みになってください!」
(`・ω・´)「おう」
与えられたのは、この宿で最も大きな部屋だった。
こんなに広く綺麗な部屋は、かつて子供の頃、食うにも寝るにも困りどうしようもなくなって、
一度だけ通りすがりの男に体を売ったときに入った連れ込み宿以来だ。
(`・ω・´)「あんときゃあケツが痛かった……」
('(゚∀゚∩「?」
見るからにふかふかのベッド。
倒れ込み寝入りたい欲に駆られたが、自身の汚れを思い返し
まずは風呂に入ることにした。
(*`・ω・´)「──っかあ! 湯なんざ浴びたのは何年ぶりだチクショー!」
これまで彼が転々としてきた町は、
どこも満足に整備されておらず(というか人手を集めて整備させているところだった)、
一週間に一度水浴び出来ればいいとこ、といった場所ばかりであった。それもあまり綺麗ではない水で。
体に当たり流れていく温かみに、心身がほぐれる。
が、それも一時で、今後を思うと表情が曇った。
(`・ω・´)(……これからどうすっかな……)
「ショボン」の身分をどうにか利用して楽して暮らし、
金が尽きたらまた放浪生活に戻ろうかと考えていたが──
何やら面倒なことになっている。
用心棒とやらが必要な状況だというのか。
そもそも「あれ」に護衛が務まるのかも怪しいが。
(`・ω・´)(さっき、じいさんが新政府とか何とか言ってたな……)
情報を得なければ。
彼は浴室を出て、大雑把に体を拭き、裸のまま隣のベッドルームへ入った。
('(゚∀゚∩「さっぱりしましたか!」
少年は顔を上げ、彼の裸体に気付くとすぐに目を逸らした。
手に持っていた分厚い本を閉じる。
(`・ω・´)「何だ、その本」
('(゚∀゚∩「神の教えですよ」
教典の類か。
聞くと、彼でも名前くらいは知っている宗教のものらしい。
神だ何だというのに頼るのが嫌いなので、無論、その宗教も嫌いだった。
少年が首元に手をやる。
宗教の紋章を象った首飾りが下げられていた。
('(゚∀゚*∩「ショボン様も熱心な信徒と聞いて、僕は嬉しかったんですよ!
真実、ショボン様の行いは神の御心と合致するものでございました!」
(`・ω・´)「ああ?」
心底鬱陶しそうな顔をして、彼は荷物を引っくり返した。そういえば本があった筈。
するとたしかに、少年の首飾りと同じ紋章が刻まれた本が出てきた。
手垢らしき汚れが見えて、随分と読み込まれたことが分かる。
(`・ω・´)(……面白いもんかね)
ぱらぱらとページをめくる。
ほとんど理解できない。単純に字が読めない、読めても語意が分からないという意味で。
読解は諦めて本を放る。
そこへ、ノックの音が響いた。次いで「ショボン様」と町長の声。
裸で出るのもな、と思い、鞄から引っ張り出した下着とズボンを身につけ、
今度はあまり待たせるのも、と思いそのままドアを開けた。
どうせ男同士なのだし、仮に相手が女としても、己の上半身を晒す程度は彼の価値観では何も問題なかった。
( ´W`)「おっと。──これはこれは、お邪魔をしてしまいましたか」
町長はほんの僅か瞠目して、肩を竦めて笑った。
教養がないのでマナーも学問もないが、人間の卑しい部分はよく分かる。
町長の反応に、彼の眉間に皺が刻まれた。
半裸の男、ベッドに座る美少年、ドアを開けるまでの慌ただしい間。
諸々の要素はたしかに誤解を与えたかもしれないが、
かといって「それ」しか浮かばぬのも──ご大層な頭をしているものだ。
不機嫌になったのを悟ったか、町長は「ところで」とわざとらしく話題を移した。
( ´W`)「大変な失礼であるとは承知しておりますが……お手を貸していただけますかな」
(`・ω・´)「何か手伝えってのか」
( ´W`)「ああいや、はは、そのままの意味でございます。
右手を少しばかり」
ドアの死角から、若い男が2人現れた。
その内の1人は、街の入口で会った係員である。
( ´W`)「カードをお返ししておりませんで」
(`・ω・´)「ああ」
( ´W`)「それでですな、ショボン様。このカードには──ほれ、ご本人様の指紋が記録されているでしょう」
(`・ω・´)「……ああ」
( ´W`)「……ですので、ご確認のほうを」
カードの裏に、持ち主の右手人差し指の指紋が残されている。
かつて彼が暮らしていた国では、国民一人ひとりの戸籍と指紋のデータが一緒に管理されていた。
故郷は災害で破壊され尽くしたので当然データも残っていないだろうが、
今この場で指紋をとり、カードの指紋と比べることは
コンピュータやデータがなくても出来る。
( ´W`)「疑うわけではございません。しかし我が街では、
徹底的に『審査』をするようにという方針がありますので、形式として……」
(`・ω・´)(街に入れてから審査してどうすんだ)
大方、先程までの振る舞いを見て怪しんだのだろう。
顔は限りなく似ているが、空似と言われれば納得する程度だし、
まさか声までそっくりだなんて都合のいい話はなかろう。
(すぐに看破されなかったからには、全くの別物ということもないのだろうが)
返す返すも、この街に来たのは失敗だった。
まさか「ショボン」がここまで有名だとは。
( ´W`)「よろしいですか」
(`・ω・´)「……」
拒否してどうにかなるものでなし。
素直に右手を差し出すと、係員が人差し指にインクを薄く塗りつけ、
拇印の要領で2枚の紙に押し付けた。初めの1枚は余分なインクを除くために。
ああ、ここでバレてしまうのか。
参った。「ショボン」の荷物を持っている以上、自分が奴に危害を加えたこともバレるだろう。
街の恩人を殺して奪ったなどと知れたら、どんな目に遭うか。
どくどくと激しくなる鼓動に耐え、指を離す。
その跡を見て、町長が怪訝な顔をした。
( ´W`)「これは……」
──指紋がない。
のっぺりとした跡があるばかりだ。
(`・ω・´)「薬で指を焼いたもんで」
嘘は言っていない。
3ヵ月前、配給目当てで働いていた際に
うっかり素手で薬品に触れて、皮膚の表面が潰れてしまったのだ。
「そういえばショボン様は、あちらの街で主に薬品を使った洗浄作業を……」
係員が言うと、町長は得心したように頷いた。
え、と漏れかけた声を飲み込む。
何だ、都合のいい話もあるものだなと考えを改めた。
( ´W`)「お手間をおかけして、申し訳ございませんでした。
それと──こちらにご記入を。
列車に乗る際、席の確認に必要なので」
国民カードと共に、書類らしきものとペンを渡された。
名前を求められる箇所は流石に分かるが、いくつか文字が読めない項目があった。
(`・ω・´)「……おい、──えっと」
('(゚∀゚;∩「……あ、ぼ、僕、なおるよと申します!
ごめんなさい! 浮かれていて、まだ自己紹介を……!」
(`・ω・´)「なおるよ。これ書いといてくれ」
('(゚∀゚∩「はい!」
さも体が冷えたふりをして、上着を身につける間に少年──なおるよに記入を任せた。
シャツのボタンを留めながら、先程の緊張で凝り固まった指先をほぐす。
( ´W`)「たしかに。
それではごゆっくり。夕食は6時間ほど後に、先程の食堂で……」
ドアが閉まる。
安堵の息をつき、ベッドに横たわった。
(*`-ω-´)(やわらけえ……)
このまま眠りたくなったが、そうもいかない。
列車、と町長は言った。
列車に乗らねばならないらしい。
どこへ行くのだろう?
(`・ω・´)(あ──と、『中央』がどうとかっつってなかったか?
ショボンが行くのをみんなが喜んだとか何とか……)
(`・ω・´)「なおるよ」
('(゚∀゚∩「はい、何でしょう!」
(`・ω・´)「あー……」
声をかけたはいいが、どう訊いたものか。
下手な質問をすれば怪しまれる。
少し考え、結局、目下の疑問からは遠い問いを口にした。
(`・ω・´)「列車はいつ来る」
('(゚∀゚∩「3日後ですよ! それに乗れば、余裕を持って中央に辿り着けます!」
('(゚∀゚*∩「途中途中の街で燃料補給のために一日ほど停留するらしいのですが、
いずれも治安が良くて名物などもある街です、
きっと僕なんか必要ないでしょうが……」
──忘れていたが。
用心棒としてここにいるのだ、この子供は。
('(゚∀゚*∩「だからこそ、ショボン様は僕のような役立たずを選んでくれたんですよね!」
(`・ω・´)「……んあ?」
('(゚∀゚*∩「僕、お話を聞いてとっても嬉しかったんですよ……。
『この時世では子供が旅をするのも叶わない、
ならば安全なルートを行くから、旅仲間として子供を1人連れていこう』──」
('(゚∀゚*∩「なんて素敵なお考えの持ち主だろうって、僕、
無理を言って町長様からお手紙を譲っていただきましたよ」
懐から封筒を取り出し、なおるよはうっとりした表情で手紙を抱き締めた。
──「ショボン」が先の町長に出したという手紙だろう。
(`・ω・´)「……ちょっと、声に出して読んでみてくんねえか」
('(゚∀゚∩「? どうしてです?」
(`・ω・´)「説明しないと駄目か?」
('(゚∀゚∩「いいえ! 僕は今日からショボン様の手足となります、どうぞ何なりと!」
──少年は、澄んだ声で手紙を読み上げた。
格式張った表現が多く、理解の及ばぬ点もあったが
要旨は概ね把握した。
3ヵ月前に中央から世界中の権力者・資産家に招集がかかったこと、
「ショボン」もそれに応じると決めたこと。
ついては、列車が来るこの街で準備をしたいので旅仲間の手配を頼めないか、という話だった。
条件は二つほど。
まず一つ。どうせ安全な道を行くので、気楽に旅の供を楽しんでくれるような者がいい。
特に子供の方がいいだろうという理由については、なおるよが先にそらんじた通り。
そして価値観を共有できるよう、自分と同じ神を信仰している者を、というのがもう一つ。
(`・ω・´)(で、こいつか)
('(゚∀゚*∩「とはいえ大切なショボン様です、
町長様は用心棒としての資質も重要視して、我らが『組織』から雇うことにしたようですね。
ああ、本当に、僕が選ばれて良かった!」
(`・ω・´)「おう……」
組織とは何だろうか。
そういうのを派遣しているところがあるのか。
('(゚∀゚*∩「ショボン様のお手紙は思いやりに溢れていて、僕、感激しましたよ……」
(`・ω・´)「俺は吐き気がするがな」
呟きは、なおるよの耳には入らなかったようだ。
というより、入れないように声を低めた。
ともかく事情は分かった。
中央へ行ってしまえば、ますます面倒なことになりそうだ。
(`・ω・´)(列車が来るのは3日後……それまでにトンズラこいちまえばいいんだ)
そうと決まれば、あとは豪遊するだけ。
金の詰まった袋から適当に抜き取り、品のいい革財布へ突っ込んだ。
部屋を出る。
('(゚∀゚∩「どちらへ?」
(`・ω・´)「ついてくんな」
('(゚∀゚∩「そればかりは聞けませんよ! ショボン様は旅仲間と言いますが、
やはり僕は、あくまでも護衛ですから!」
(`・ω・´)「……じゃあ、俺をお護り出来る範囲で離れてくれ」
('(゚∀゚*∩「分かりましたよ!」
#
『──中央からのお願いです。
新たな政府を作るため──』
(`・ω・´)(分かったっつの)
ラジオは、中央からの招集を延々と繰り返している。
チューナーを捻ると、情勢を告げる陰気な声が流れ始めた。
(`・ω・´)(ラジオが聴けるとはな。まあ真面目な話ばっかだが)
──表通りの酒場。
真昼から酒を飲む人間ばかりが集まっている割に、誰も彼も行儀がいい。
おとなしく酒を飲んで何が楽しいのか分からない。
小綺麗な店の佇まいも、どうにも息が詰まる。
あまりに退屈で、カウンターにあったラジオの操作をして手慰みにしていたが
流れてくるのもつまらない話ばかりなので、飽きた。
('(゚∀゚*∩
離れた席でなおるよがジュースを飲んでいる。
どうやら客の1人である中年の女が奢ってくれたらしい。
女は微笑ましげになおるよを眺めている。
(`・ω・´)(可愛い顔してりゃ、それだけで得するもんだな)
高価な酒を大量に買い込み、宿へ運ぶように店員へ指示を出した。
街の住人は「ショボン」の名と功績は知っていても顔までは知らない者が多いらしく、
領収書に記すために名前を訊いて初めて店員が驚いていた。
「ショボン様からお金をいただくなんて出来ません!
あなた様のおかげでこうして商売できているんです、お酒は差し上げますとも」
(*`・ω・´)「お……そりゃマジかい。景気いいな」
さらにサービスだと言って、一般の客には出さないという特級酒がグラスに注がれる。
口に含むと果実に似た甘みが口内に広がり、すっきりとした香りが鼻に抜けた。
アルコールはさして強くない。
美味いは美味いが、彼からするとジュースにしか思えなかった。
(`・ω・´)「……お?」
グラスを空け、店内を見渡す。
なおるよがいない。
護衛するのではなかったか。
とはいえ、いない方が気は楽だ。
次はどこへ行こうかと考えながら店を出る。
('(゚∀゚;∩「あ、あのう……でも、僕、大事なお仕事が……」
──店のすぐ前になおるよはいた。
女に腕を掴まれている。
見れば、先程なおるよにジュースを奢っていた女だ。
腕を掴むのとは逆の手でなおるよの首筋を撫でていた。手付きが情欲を表徴するようだった。
どうやら裏通りの連れ込み宿へでも誘われているらしい。
なおるよはあからさまに困っていた。
なのに強く断ろうとしていない。
('(゚∀゚;∩「あっ」
不意に、なおるよがこちらに気付いた。
助けを求めるような目。
面倒臭い。無視していこうか。
('(゚∀゚;∩「ショボン様」
が、なおるよが呼んだ名を聞き、女が手を離した。
そそくさと立ち去る背を一瞥して、なおるよに視線を戻す。
(`・ω・´)「一発くらい相手してやりゃ小遣い稼ぎにはなったろ」
ほんの少しの間があく。
意味を解したのか、なおるよは眉間に小さく皺を作った。
('(゚∀゚∩「……僕はそんなこと……」
(`・ω・´)「嫌ならはっきり断れよ」
('(゚∀゚∩「でも、あの人は僕にジュースを奢ってくださいました」
(`・ω・´)「は?」
('(゚∀゚∩「年上の方から恵みを受けたなら、その人の言うことを聞かねばならないというのが
神の教えでございましょう」
──だから宗教というものは嫌いなのだ。
先の女も、なおるよが持つのと似た首飾りをつけていた。
「神の教え」を承知の上で、一連の行為に及んだわけだ。なおるよが拒絶できないようにと。
それはそれは。なんと御立派な。
(`・ω・´)「じゃあ小遣いやるから、俺を1人にしてくれ」
('(゚∀゚∩「ならば受け取りません!」
#
(*`・ω・´)「──うめえな! あんた、いいもん作ってるよ」
盛り場にあった屋台で、よく分からぬ料理を買った。
厚く切って焼いた肉に甘辛いタレを塗り、小麦粉で出来た生地で葉物と一緒に包んだもの。
今まで碌なものを食ってこなかったので、豚肉か鶏肉かすらよく分からないし、野菜の名前も知らない。
ただ美味いことだけが分かる。正直、宿で出された料理はステーキ以外に「美味」と言い切れるものがなかった。
盛り場は安っぽい屋台があちこちにある。
こういったものの方が、きっと彼の口に合う。
(*`・ω・´)「もう一つくれ」
宿でたらふく食ったことなど忘れて、彼は追加の注文をした。
出来上がるのを待つ僅かの間、人混みに目をやると
きっちり距離をあけて立ち止まっているなおるよが視界に入った。
なおるよの丸い瞳は、護るべき男ではなく屋台の方へ釘付けだった。
そういえばなおるよは昼飯を食べていなかった気がする。
さらにもう一つ、注文を追加した。
「はい、どうぞ」
(`・ω・´)「あんがとよ」
手渡された料理の内ひとつを、なおるよの方へ向ける。
3秒ほどで理解したようで、なおるよは顔を輝かせて小走りで近付いてきた。
('(゚∀゚*∩「よろしいのですか!」
(`・ω・´)「おう」
('(゚∀゚*∩「ありがとうございます! ああ、やはりお優しい!」
(`・ω・´)「離れて歩けよ」
('(゚∀゚*∩「はい!」
なおるよが小難しい言い回しで神への感謝を述べてから口をつけた。
食前の祈りだろう。ひどくつまらないものを聞いてしまった。不快感。
にこにこ顔で料理をぱくつきながら一定の距離をあけついてくるなおるよに、
彼はこれといった感慨も浮かばないまま雑踏を進んだ。
金が有り余っているから気まぐれに買い与えてやっただけのことであって、反応に興味はない。
自身の分として買った肉を食い終え、賭場でもないかと辺りをきょろきょろ見回していると
大きなだみ声が耳に入った。
「──クール! 荷物を持て!」
特に思うところもなく、何の気なしに声の主を見る。
(#ФωФ)「聞いているであるかクール!」
川 ゚ -゚)「この人混みで両手が塞がれば、何かあっても対応が遅れるかもしれないぞ」
(#ФωФ)「そこを何とかするのが貴様の役目であろう!」
身なりのいい中年の男だ。
なかなか綺麗な女を連れている。
互いに媚びる様子がないので、親子かもしれない。
女の容姿が好みで、思考が下半身主体へ切り替わった。元々単純な頭をしている。
女を最後に抱いたのは3ヵ月前。二束三文で体を売っていたのを買って以来それっきりだった。
最近はあまりに欲求不満で、適当な女を捕まえ犯してやりたいと何度も思っていた。
生憎それが可能な状況になかなかありつけなかったものの。
この街ならいくらでも女がいる、夜でも無防備に出歩く女がいるだろうなと考え、
今は面倒なリスクを抱えずとも高級娼婦さえ買える身なのだと思い直した。
男に媚びるために化粧の匂いをぷんぷんさせた女を、朝まで好きに出来るのだ。
あるいは僅か2メートル先を歩くあの美女だって、
「ショボン」を名乗り宝石をちらつかせるだけで宿までついてくるかもしれない。
獣欲に舌舐めずりすると、暑苦しい視線を感じたか、件の女が荷物を抱えて振り返った。
川 ゚ -゚)
女は彼を見、そして瞳を横に滑らすと、薄く口を開いた。
川 ゚ -゚)「なおるよ」
('(゚∀゚*∩「クーさん!」
なおるよが女に駆け寄る。
呆気にとられつつ、彼は何となく2人の傍へと近付いた。
川 ゚ -゚)「どうしたんだ、こんなところで」
('(゚∀゚*∩「僕にも依頼が来たんだよ!
こちら──シベリア国の名家ハチマユ家の現当主、ショボン様!」
('(゚∀゚*∩「あっ、ショボン様、こちらは僕と同じ『組織』の一員、クールさんですよ!
ヴィプ国のロマネスク様の護衛をしています」
組織とやらについて、なおるよから軽い説明を受ける。
どこぞに護衛を育てている機関があって、なおるよとクールはそこから派遣されているという。
宿での推測と大体合致していたので、ほんのりと気分が良くなった。
少数精鋭という方針らしく、1人の客に対して護衛は多くても2人までしか派遣しないそうだ。
('(゚∀゚*∩「クーさんは成績がすごく良かったんですよ!
彼女に比べたら僕は全然ダメで、誰かに指名されることもないだろうと諦めていたんですけれど、
僕のような者をショボン様は必要としてくれて──」
以降のなおるよの言葉は聞き流した。
食傷気味だ。
しかしこのクールという女、それなりの実力者か。
しかもこの街の者でないのなら、「ショボン」の名をかざしても無駄だったろう。
恥をかかずに済んだ。
( ФωФ)
クールの雇い主だというロマネスクがこちらを凝視しているのに気付いた。
どことなく蔑むような目だ。
ひどく腹が立つ。クールがいなければ、一発殴っていたかもしれない。
川 ゚ -゚)「──なんて優れた人だ」
クールの声で我に返る。
どうやら「ご活躍」ぶりをなおるよから一通り聞かされたらしく、
ロマネスクとは反対に、尊敬を込めた瞳を向けられた。
(`・ω・´)「……そりゃどうも」
川 ゚ -゚)「お前も見習え」
( ФωФ)「偽善で金をばらまいて何になる」
川 ゚ -゚)「人のためになる」
ロマネスクが冷笑した。
不貞腐れるクールの態度は、とても雇われている人間とは思えない。
しかしロマネスクの目付きや振る舞いは鼻につくものの、思想的には同意できる。
「ショボン」の行いが偽善であるか否かはともかく、他者に金を分け与えようとする気持ちが理解できないし、
クールの今の発言も馬鹿馬鹿しく聞こえた。
要人の護衛というものは、冷徹に淡々と仕事をこなすような人間ばかりだと考えていたが、
なおるよといいクールといい、随分と甘ったるい理想が胸の内にあるらしい。
('(゚∀゚∩「クーさん達も、この街から列車に?」
川 ゚ -゚)「その予定だ。たしか5駅先の町がなかなか発展しているらしいので、
そこで降りて、また適当に移動する」
自分もそうしようか、とぼんやり思う。
3日後まで何とかやり過ごし、列車に乗って、めぼしい町に着いたら身をくらませる。
なおるよが困るかもしれないが、知ったことではない。
(#ФωФ)「クール、いつまで無駄話をしているのである!
我輩はさっさと休みたいのだ!」
川 ゚ -゚)「……分かった分かった」
ロマネスクが肩をいからせ、踵を返した。
クールが一礼し、ロマネスクの後を追う。
進行方向からすると、恐らく自分達と同じ宿に泊まるのだろう。
(`・ω・´)(クールちゃん、なあ……一発やりてえもんだな)
クールの尻を見つめながら下卑た呟きを心中に漏らし、
彼もまた別の方向へ歩き出した。
#
( ФωФ)「あれの何が『名家』であるか」
なおるよ達と離れ、互いに姿も見えなくなった頃、ロマネスクが嘲るように言った。
川 ゚ -゚)「お前のような成金とは違う。やはり貴族は心にもゆとりがあるな」
( ФωФ)「馬鹿が。あれは貴族の顔ではない。
落ちぶれてもいない。
元から底辺の──ドブで産まれて生きてきたような最下層の人間の顔だ」
川 ゚ -゚)「……何言ってんだお前は」
( ФωФ)「成金ですらないということである。
──どのみち我輩には関係のない話だ」
ロマネスクが強く興味を示すのは、酒と女と金、あとは自分自身に直接関係のある事柄だけだ。
それ以降は特に言及することもなく、またクールへの理不尽な叱咤が始まる。
聞き流しながら、クールは背後を振り返った。
ロマネスクが言うような程までは思っていないが──
ショボンの目は、たしかに今まで何度も見てきた、ごろつきのそれに似ていた。
#
(*`・ω・´)「ひゃひゃひゃひゃ!」
女がいれば酒が美味い。それは彼が知る一番の「真実」だ。
大きなベッドの真ん中に陣取り、両脇に商売女を侍らせる。
乳房をまさぐれば女達は笑顔で身をくねらせ、
逃げるような素振りを見せておきながら、その実、いっそう体を押しつけてきた。
これくらいの安っぽさでいい。
頭も気もつかわなくて、楽だ。
──夕方に宿へ戻り、やはり微妙に口に合わぬ料理を腹に収め、部屋で一眠りして。
数時間後に目覚めた彼は宿の使用人に命じて、酌婦を呼ばせた。
金をかけただけあって、どの女も見た目は上々。
(*`・ω・´)「おい──おい、そっちの酒ェ開けろ!」
既に呂律も怪しくなり始めた彼が、サイドテーブルに並べた酒瓶の中、一番高いものを指差した。
待ってました、と調子よく言って、女が瓶の蓋を開ける。
グラスに注がれたそれを一気に呷ると、口から溢れた酒が顎から胸へぼたぼたと落ちた。
舐めろと命令すれば、彼女らは嫌がりもせずに彼の胸元を舌で撫でた。
徐々に女の頭は下がり、やがて下腹部へと口を触れさせる。
(*`・ω・´)「おお、お、お、あ、それでいい、いいんだ、俺ァ、ショボン様だぞ……
俺がいなけりゃァ、お前ら、ここで、きれーな服着て、暮らすことも、できなかっ、たんだ」
||‘‐‘||レ「わかってますよう」
酒で頭がとろけている。
女の舌が彼の正気を舐め溶かす。
本人ははっきりと喋っているつもりだが、舌が縺れていて発音も不明瞭。
──斯様にだらしない有様であっても、女達は彼が「ショボン」であることを疑わない。
大半の住民は「ショボン」の寄付金の額は知っていても、詳細な人となりを知らない。
だから、現在の彼の振る舞いを前にしたところで、
「まあ聖人君子なんてこの世にはいないのだし」と納得する。
しかし。
('(゚∀゚∩「……」
なおるよだけは、困惑したような顔つきだった。
('(゚∀゚∩「ショボン様……」
(*`・ω・´)「ああ? ──ンだよ、その目はよお……。
……出てけ! 外で神様にお祈りでもしてろ!」
('(゚∀゚∩「僕は、護衛ですよ」
(#`・ω・´)「知るか! ガキに見られんのは趣味じゃねえんだよ!」
尚もなおるよが反論しようとしたので、グラスを投げつけた。
なおるよには当たらなかったが、すぐ隣の椅子にぶつかり、
飛び散る破片がなおるよの足元に散った。
('(゚∀゚;∩「っ」
(#`・ω・´)「出てけ!」
今度は何も言わなかった。
破片を避けて、ドアへと歩いていく。
なおるよがドアを開けたとき、「あ」と2人分の声がした。
1人はなおるよ。もう1人は、
川 ゚ -゚)「……あなたの部屋か」
廊下に立つクール。
ノックでもしようとしていたのか、片手を半端な位置に上げていた。
('(゚∀゚∩「クーさん、どうしてここに」
川 ゚ -゚)「いや、私達もこの宿に泊まっているんだ。一つ挟んだ隣の部屋なんだが
ロマネスクの奴が『うるさくて眠れん』と……」
('(゚∀゚∩「あ……っと、その……ごめんなさい」
(*`・ω・´)「おうクールちゃん……へへっ、なあ、クールちゃんも来いよ。
どうせあのオッサンともやってんだろ、俺とも一回くらい──」
クールは蔑むような目をしただけで、一歩も入室することなく踵を返した。
なおるよがこちらに一礼し、「何かあれば呼んでください」と言って部屋を後にする。
(*`・ω・´)「けっ」
||‘‐‘||レ「続きは?」
手と口を休めていた女が艶かしく笑う。
答えるまでもない。
彼が頷くと、女の唇は一層撓んだ。
#
川 ゚ -゚)「お前の雇い主もなかなか強烈だな」
('(゚∀゚∩「……でもショボン様は素晴らしい方だと聞いてるよ」
並んで廊下を歩きながら、クールは、横目に見ていたなおるよから視線を外した。
廊下は柔らかな照明が定間隔で設置されており、仄明るい。
川 ゚ -゚)「──たとえば……」
呟く。
瞬間、躊躇した。
何を口走ろうとしているのだ。
ロマネスクの言葉など真に受けてどうする。
奴の発言は九分九厘がその場かぎりの思いつきだというのに。
しかし──たった今、目にした光景は。
ショボンの振る舞いは。どうにも。
なおるよの言うような、高貴な人間には見えなかった。
('(゚∀゚∩「……『たとえば』、何だよ?」
なおるよが問い掛けてきた。
言葉を濁しても、「言ってください」と食い下がる。
クールは一つ息を吐き出して、飲み込んだ質問を結局口にした。
川 ゚ -゚)「たとえば、あの人が『ショボン』でなかったらどうする?
別人がなりすましてるとしたら……」
('(゚∀゚∩「……? シベリア国の国民カードの写真と顔が一致してるよ。
別人なら、町長様が一目で分かる筈だし」
川 ゚ -゚)「他人の空似ってやつがある。
ショボンは砂漠を1人で渡ったんだろう、何か起きていたとしても周りは分からない」
('(゚∀゚∩「……」
川 ゚ -゚)「もちろん私の勝手な推測だ。そう簡単に同じ顔の人間がいるもんでもないしな」
('(゚∀゚∩「……お祈り……」
川 ゚ -゚)「うん?」
('(゚∀゚∩「食前のお祈りをしないんだよ、ショボン様。
教徒は──それも敬虔な教徒ならば、必ず食前にはお祈りを捧げるものなのに」
川 ゚ -゚)「……ふむ」
('(゚∀゚∩「お食事の最中も、マナーなんか欠片も気にしてないし」
('(゚∀゚∩「言葉遣いが乱暴だし」
('(゚∀゚∩「酒癖悪いし」
('(゚∀゚∩「下品だし」
川;゚ -゚)「……おい、なおるよ?」
話している内、宿の受付へ着いた。
使用人を呼び出し、自分とロマネスクの部屋を変更するように頼む。
あの様子ではショボンが静かにしてくれそうにもないし、それならばこちらが移動すれば済む話。
(#ФωФ)『なぜ我輩の方が譲歩せねばならぬ!!』
川 ゚ -゚)(……とか言うだろうなあ)
げんなりしながら新たな鍵を受け取る。
ロマネスクの元へ戻ろうと踵を返したとき、聞き覚えのある声がした。
( ´W`)「──おい」
老人が使用人を呼び止めている。
街へ入り身分を証明した際、ロマネスクに媚びていた町長だった。
口を開きかけた町長はこちらを一瞥すると頭を下げ、使用人を連れて受付の奥の部屋へ消えた。
川 ゚ -゚)「……こら」
なおるよが慎重な足取りで受付台の向こうに立つ。
そして奥へ繋がるドアに耳をつけた。
川;゚ -゚)「お前な……」
とはいえ町長の様子が気になったので、クールもなおるよを真似た。
クールの耳もなおるよの耳も、人間の囁き声にはひどく敏感だ。
扉越しの声も難なく拾い上げる。
「──ショボン様のことだが、どう思う」
「どう、と言われましても」
「まるで別人だ。あれでは野蛮人そのものじゃないか。
わしが以前会ったときは……──」
町長が語る「ショボン」の人格は、やはり、今まさに部屋で女を侍らしている男の姿とは
どうにも繋がるものではない。
そして町長も、クールが抱いたのと同じ疑問に行き着いたらしい。
「顔はたしかにショボン様だが、似ているだけの他人と言われてしまえば、わしには否定できん。
──問題は、あの男がショボン様の荷物を持っているということだ。
そのせいで全くの別人だという断定も出来ない」
「じゃあ、どうやって確認するんです」
「列車の予約を『失敗』する。そうすれば、しばらくはこの街にあの男を留まらせられる。
その間に、向こうの街や砂漠を調査させるのだ」
「次の列車が来るまでの間じゃあ、とても無理ですよ」
「さらに長く留まらせる理由だって何とかなるさ。
──指紋が無いと言うが、皮膚が完全に再生すれば指紋も出る。
そうすれば国民カードとの照合が出来るぞ。
昼に見た様子からすると、近々治りそうだったしな」
川 ゚ -゚)「──だ、そうだ」
間もなく売上金の話に移ったので、扉から耳を離す。
('(゚∀゚∩「……」
なおるよはじっと足元を見つめている。
部屋の鍵を握り込み、クールは踵を返した。
いいかげん戻らないと、ロマネスクが一層騒ぐ。
ややあって、なおるよがクールの隣に並んだ。
無言で歩く。
もしも本当にショボンがショボンでないとしたら、
なおるよはどうするのだろう。
どうするも何も、雇い主不在ということで組織に帰るだけか。
川 ゚ -゚)(私も帰りたい……)
(#ФωФ)「クール!!」
川 ゚ -゚)(ああマジ帰りたい)
部屋の近くまで来たところで、ちょうど廊下に出てきたロマネスクに怒鳴られた。
(#ФωФ)「貴様は! ちんたらちんたら何をしておった!」
川 ゚ -゚)「すまなかった。──部屋を変えてもらったから移動しよう」
(#ФωФ)「はあ? なぜ我輩の方が譲歩せねばならぬ!!
迷惑をかけている方が遠慮するのが道理──」
「わあああああああ!!」
──さらに大きな声が轟いた。
男と女の悲鳴。
ロマネスクが肩を跳ねさせ、猫のように飛び退いた。
発生源はショボンの部屋だった。
すぐさまドアが内側から開け放たれて、一瞬ほどの間も置かずに誰かが転げ出てくる。
(;`・ω・´)「ひ、ひいっ、ひいっ!!」
ショボンだ。ほとんど全裸。
すると、それを追って半裸の女が飛び出した。
||‘‐‘#||レ「死ね! 死ね!!」
アイスピック(酒を入れるときに使ったのだろう)を握っている。
どう考えてもショボンへ殺意を向けた言動。何事か。
他の商売女達は室内できゃあきゃあ悲鳴をあげているのみなので、単独犯らしい。
(;`・ω・´)「あ──あんた! 助けてくれえっ!」
(;ФωФ)「ひいんっ!? く、来るな! 離せ!! いやあああっ!!」
ショボンが一番近くにいたロマネスクに縋りついた。
ロマネスクの口から漏れた悲鳴が少女のように甲高くて、クールはこっそり吹き出した。
結果、腰を抜かした男2人が互いを盾にするように揉み合う、情けない光景が生まれる。
女は他の犠牲が出ようともとにかくショボンさえ刺せればいいようで、自棄っぱちな動きでアイスピックを振り上げた。
そうなると、クールが動かないわけにもいかない。
川 ゚ -゚)「その辺にしとけ」
女の手を足で弾くと、アイスピックは簡単に飛んでいった。
回転した末に、離れた床へと突き刺さる。
にわかに怒りがクールへ向けられたが、
鍛えているわけでもない女がクールに掴み掛かったところで何の意味もなかった。
捩じ伏せるのは一瞬。
申し訳なく思いつつ顔面を床に叩きつけるように倒したので、痛みと衝撃で女が静まった。
部屋の中で騒いでいた女達も静かになっていた。一連の流れに呆然とした、というか。
さて、どうしたものか。
基本的にロマネスクへ危害を加えた人間は殺せと言われているが、
厳密にいえば彼女が狙っていたのはショボンだ。ロマネスクではない。
('(゚∀゚;∩「……ショボン様っ」
なおるよがショボンに駆け寄る。
ショボンはというと、真っ青な顔で固まっていた。
川 ゚ -゚)「何があったんだ」
クールの問いにショボンは答えない。
仕方なく掴み上げている女の腕に体重をかけると、女が叫ぶように返事をくれた。
||‘‐‘#||レ「私の恋人が、ショボンに雇われて向こうの街に行ったんだ!
私は捨てられて、体を売るしかなくなって──
それからすぐに、その恋人が仕事中に事故で死んだって知らせが……」
川 ゚ -゚)「何だそりゃ。お前を捨てたのは恋人の独断だし、事故死ならショボンさんに責任はないだろう」
クールの言葉は耳に入らないらしく、ショボンのせいだと何度も何度も繰り返している。
徐々にショボンの硬直が解け、クールのおかげで自身が安全であることに気付いたのか
彼は途端に威勢よく喚き出した。ちなみにロマネスクはまだ怯えている。
(#`・ω・´)「ふざっっっけんな! 俺はショボンじゃねえよ、何で無関係の俺が殺されなきゃなんねえんだ!!」
||‘‐‘#||レ「なに言ってんだよあんたは!!」
(#`・ω・´)「だから──」
(;ФωФ)「ひいいひいい」
川 ゚ -゚)(あーあー)
( ´W`)「何です、どうしました」
町長と使用人がばたばたと近付いてくる。
誰も事態は説明しなかったが、この光景で粗方察したようで、
町長はひどく不審な目をショボンへと向けた。
ショボンは気付いているのかいないのか、「自分はショボンではない」という旨を
大声で女に説いている。いいのだろうか。
彼が言葉を重ねる度に、町長が顔を歪めていくが。本当にいいのだろうか。
ついに、町長が痺れを切らした。
( ´W`)「ちょっと待ってくれ、ずっと気になってたんだが、あんた──」
町長が口を開き、反射的にショボンが黙る。
直後。
('(゚∀゚∩「え? はい!」
なおるよが頭突きする勢いでショボンに耳を寄せ、続いて頷き、部屋へ駆け込んだ。
さも何かしらの指示があったかのような振る舞いだったが──
クールの位置から見えたショボンの口元は、一切動いていなかった。
ショボンも困惑気味になおるよを眺めている。
何やらごそごそやっていたかと思うと、大粒の宝石を2つ3つ持って戻ってきた。
そうして彼はそれを、
('(゚∀゚∩「どうぞ!」
||‘‐‘;||レ「……え……」
女へ差し出したのであった。
('(゚∀゚∩「ショボン様が、これを役立ててほしいと!
先程は混乱して責任を逃れようとしてしまったが、やはりそれでは神に許されないだろう──と仰いました。
どう使うかはあなた次第ですが、納得の行くようにお使いください」
クールが離れる。女は暴れることなく、なおるよから宝石を受け取った。
それから今度は町長と使用人へ歩み寄り、
女へ渡したものほどではないが、なかなか立派な宝石を一つずつ。
('(゚∀゚∩「こちらは、ご迷惑をおかけしたお詫びだそうです」
( ´W`)「……はあ」
ひんひん鳴いていたロマネスクが、ぱっと表情を整えた。
金だの宝石だのが大好きな性分ゆえに、咄嗟に分析する癖がついているのだろう。
( ФωФ)「それ一つでしばらくは遊んで暮らせるほどであるな」
ふてぶてしく言う割に未だ腰を抜かしているようだが。
呆気にとられていた女と町長達が、その言葉に息を呑む。
きらきらと輝く石を見下ろし、両手で抱え込むと懐へしまった。
('(゚∀゚∩「遊んで暮らすだなんて! ショボン様はそんなことのために渡したんじゃありません」
なおるよが窘めるように言うと、町長はやや狼狽しつつも「勿論です」と答えた。
「街のために使わせてもらいます」と。
この様子では随分と怪しいところだ。
('(゚∀゚∩「それでは……すみません、ショボン様をお休みさせてあげてください」
なおるよが頭を下げる。
使用人は室内に残る商売女を追い出し、寝台を手早く整えた。
それらを見つめるクールの瞳は生温い。
('(゚∀゚∩「ショボン様」
(;`・ω・´)「あ──ああ」
ショボンに肩を貸して寝台へ横たえさせ、水を与えると、
なおるよはきびきびと廊下に戻ってきた。
ぴしっと綺麗に一礼。
('(゚∀゚∩「おやすみなさい。ショボン様はいつでも皆様の幸福をお祈りしています」
そして、扉は閉められた。
女は宝石を見直し、ふらふらと去っていった。
口元が笑んでいる。──結局は金で誤魔化される程度の恨みだったか。
町長達も、扉へ向けて「おやすみなさいませ」と声をかけてからその場を離れた。
ショボンの正体を暴こうという気勢は失せている。
川 ゚ -゚)「……寝るか」
残されたクールはロマネスクを担ぎ上げ、新しい部屋へ移動した。
されるがままのロマネスクがぼそりと呟く。
( ФωФ)「結局何なのだあの男は」
川 ゚ -゚)「さあな」
クールにもロマネスクにも関係のないことだ。どうせまたすぐ興味は消える。
分かることは、ただ一つ。
川 ゚ -゚)「どうせ朝にはいなくなってるだろうし、考えるだけ無駄さ」
#
('(゚∀゚∩「荷物をまとめてください」
と言いながらも、なおるよ自ら手当たり次第に鞄へ物を詰め込んでいるので、
彼は何をするでもなくなおるよを眺めていた。
(`・ω・´)「……何でだ」
('(゚∀゚∩「出ていくんです。今は勢いで流されてくれましたけど、朝になればまた疑われる筈ですよ。
『本当にあの男はショボン様なのか』──って。だから逃げましょう」
発言の意味をはかりかねた。
ぼんやりする彼へ、なおるよが顔を向ける。
('(゚∀゚∩「長居すればするだけ、ボロが出ます。
まあ今に至るまでで致命的なくらい出してますけど」
そこでようやく、「気付かれている」と悟った。
そもそも先程、勢いあまって自分自身の口で言ってしまったのだけれど。
(;`・ω・´)(──どうする)
なおるよの口を塞ぐか。
小柄な少年1人、簡単だ。
押さえつけて首の骨を折ればいい。
先は油断しきっているところを襲われたので動転したが、
自分から仕掛ける分には自信がある。
いや。待てよ。
落ち着いて見るに、なおるよの今の行動は、こちらに害のあるものではない。
「逃げよう」と言っているのだから。
(`・ω・´)「……どういうつもりなんだ、お前」
('(゚∀゚∩「僕はあなたの用心棒なので、あなたを護るために行動しますよ」
(`・ω・´)「……。雇ったのは俺じゃねえぞ」
それへは何の答えもなかった。
荷物をまとめ終えたなおるよが、サイドテーブルの引き出しから備品の便箋と封筒、ペンを取り出す。
('(゚∀゚∩「置き手紙をしていきましょう。
『人助けをしているつもりでも、気付かずに恨みを買うことがあるのだと知った。
いつまた同じようなことが起きるか分からない、再び迷惑をかける前に街を出る』
──こう書いておけば、まあ、それっぽいですか」
(`・ω・´)「言っとくけど俺は字ィ書けねえからな」
('(゚∀゚∩「あなたに書かせるつもりはありませんよ、本人の筆跡に似せなきゃいけませんから」
昼間に見せてもらった「ショボン」の手紙と見比べながら、
なおるよは手早く手紙をしたためた。
小振りの宝石も付けておく。
その目付きは──今まで植えつけられたイメージの、無垢な少年のそれではなかった。
('(゚∀゚∩「夜明けになったら窓から外へ出ますよ。
ラクダに乗って、ショボン様の影響が及んでない小さな町へ向かいましょう。
そこから馬車なり何なり使って、駅がある町に移ります」
(`・ω・´)「この街を出るにも審査が必要なんじゃねえのか?」
('(゚∀゚∩「穴はありますよ。あなたがここに来るまでの数日間、ずっと街を観察してきたので分かります」
ふと。
なおるよが、顔を上げた。
('(゚∀゚∩「『本物』はどこにいるんですよ?
──まさか生かしとくようなヘマはしてませんよね?」
#
('(゚∀゚∩「こんな浅く埋めたんじゃ、見付かっちまいますよ……」
なおるよの計画通り、夜明けに街を出た。
貸しラクダ屋に忍び込みラクダを勝手に借りて(ちゃんと代金は置いていった)、
半日かけて砂漠を移動した。──「ショボン」の死体を探すため。
全く当てにならない記憶を頼りにラクダを歩かせていたが、
何もない場所から手先がはみ出ていたため、発見は存外に容易だった。
それを見たなおるよの発言が上記のそれである。
ひどく呆れた様子で。
('(゚∀゚∩「ここらの砂は特に風に飛ばされやすいんですよ。
もっと深く埋めないと」
(;`・ω・´)「……お、おう」
なおるよはせっせと穴を掘った。
その細腕でどうやって、というスピードで掘っていく。
それを眺めながら、昨夜のクールを思い出した。
クールもすらりとした手足で女を封じ込めていた。彼女と同じ組織から派遣されているのだ、なおるよは。
口を塞ごうなどという考えは愚策だったかもしれない。
昨日は自分自身を役立たずなどと評していたが、嘘だろうなと思った。
布で包んだ「ショボン」を穴に転がしたなおるよは、首飾りを外して、それも穴へ落とした。
('(゚∀゚∩「僕、これといって信仰は持ってないんですよ」
(`・ω・´)「……嘘ついてたのか」
('(゚∀゚∩「うちの組織にいる信徒は大人ばかりだったので。
僕ね、一生懸命勉強したんですよ? 無駄でしたけど」
砂を被せる。あとは風が適当に均してくれる。
一仕事終えたなおるよが、美味そうに水を飲んだ。
それを見つめていると──
どうしようもなく、笑えてきた。
(*`・ω・´)「……ふ……」
(*`・ω・´)「ふ、ふふ、くっくっく……」
(*`^ω^´)「ははははは!」
('(゚∀゚∩「うっわ、何。どうしましたよ」
(*`・ω・´)「いや──いや、俺もお前もニセモノだったんだなと思うとよ、くっ、ひひひっ」
('(゚∀゚∩「僕はあなたとは事情が全く違いますけど……まあ嘘つきなのは一緒ですよ」
(*`・ω・´)「くくく……お前、ずいぶん猫かぶってたんだな……ぷふ、ふはっ。
しかもお前、ふっ……たとえ本物のショボンと合流してたとしても──
それはそれでまた、はは、どっちも猫っ被りときたもんだ」
('(゚∀゚∩「善人をみんな偽善者扱いするのは捻くれすぎだと思いますよ、僕」
(*`^ω^´)「うひゃひゃひゃひゃ!! ああ何だお前、やっぱガキか! そこら辺の考えは甘ェんだな!」
なおるよが怪訝な顔をする。
ますます笑えてきて苦しい。
ひいひいと息を引き攣らせながら、彼は「ショボン」の鞄から小瓶を出してみせた。
蓋を開け、中身をなおるよの頭にかける。
当然ひどく驚いたなおるよが、逃げるように後退った。
('(゚∀゚;∩「ぶわっ! な、何ですかよ! ……油?」
甘ったるい匂い。
なおるよは懐からハンカチを出して頭を拭った。
とろりとハンカチに絡む香油を見下ろし、いっそう顔を歪める。
(`・ω・´)「お姉ちゃん方が夜の商売でよく使う香油だ。
たまに男も使う」
('(゚∀゚∩「男が?」
(`・ω・´)「ケツ穴に塗るんだよ」
なおるよの顰めっ面が最高潮に達した。
いいかげん笑い疲れてくる。
彼はなおるよの背中を叩いて、小瓶を遠くへ放り投げた。
(`・ω・´)「年上から恵みを受けたら、そいつの言うことを聞かなきゃならない──だっけか?
大層な教えだよな」
('(゚∀゚∩「……まったくですよ」
なおるよの細い脚が、「ショボン」の埋まっている場所を何度も強く踏みつけた。
しばらくして満足したか、ラクダの鞍に腰を下ろす。
('(゚∀゚∩「じゃ、行きますよ」
(`・ω・´)「おう。町に着いたら、金は山分けにしてやるよ。
……や、待った、やっぱり6:4……いや……7:3で頼む」
('(゚∀゚∩「とりあえず中央へ着くまではあなたのものでいいですよ。
ただし昨日みたいな無駄遣いは許しません」
(`・ω・´)「あ?」
('(゚∀゚∩「はい?」
(`・ω・´)「中央? 行くのか?」
('(゚∀゚∩「行きますよ。そのための旅でしょう?」
(;`・ω・´)「はあ? いや、だから、俺はショボンじゃねえんだよ。
行ってどうすんだよ」
('(゚∀゚∩「上手いこと新政府に入れば、すぐには無理でしょうが、
いずれは今持ってる金額がはした金に思えるようになりますよ」
(;`・ω・´)「俺はこの金でしばらく遊べりゃそれでいいんだって」
('(゚∀゚∩「僕はそれじゃ駄目なんですよ!」
(;`・ω・´)「は?」
('(゚∀゚∩「世のなか金ですよ、金。
僕は神は信じませんがお金は信じてますよ」
('(゚∀゚∩「あなたが新政府に入って、僕を護衛として雇い続けてくれれば
僕にも組織にもたっぷりお金が入ります!
だから──」
なおるよの乗ったラクダが歩き出す。
彼も慌ててもう一頭のラクダに跨がり後を追った。
先を進むなおるよが振り返って、微笑む。
('(゚∀゚∩「これからもよろしくお願いしますよ、『ショボン様』」
(;`・ω・´)「……、……よろしく」
逃げたい、とは思ったが。
なおるよの乗っている鞍に宝石やら金やらが積んであるので、そうもいかなかった。
斯くして。
彼は今後も、「ショボン」を名乗ることとなった。
.
('(゚∀゚∩「まずは読み書きを教えないといけませんよ。
マナーや一般常識も。
あ、国民カードの指紋のとこ、削るか塗り潰すかしないとなあ」
('(゚∀゚∩「中央に着くまで、やることがいっぱいありますからね!
覚悟してくださいよ!」
(;`・ω・´)「……なおるよちゃん、あのよう、」
('(゚∀゚∩「ん? 何か文句が? 縛ってあっちの街に突き出しましょうか?」
(;`・ω・´)「……いえ」
3:偽者の貴族 終
173 :同志名無しさん:2015/05/17(日) 18:05:32 ID:pLGLZa9g0今日はここまで
(`・ω・´)と(´・ω・`)は父親が同じ。(本編には全く関わってこない設定)
(´ ω `)
(;` ω ´)「……水……水……!」
鞄を漁る。
これで水がなかったら目の前の死体から血を啜るのも已む無しという心境だったが、
幸いにして水筒を見付け、一気に中身を干した。
肺が潰れそうなほど、息を吐き出す。
(`・ω・´)「……助かった……」
渇きを潤せば、今度は強烈な空腹感を覚えた。
先とは打って変わって余裕のある様子で鞄の中を探る。
(`・ω・´)「肉が食いてえな……」
そうして、希望通りに肉を発見した。
干し肉なのがやや不満だったが、無いよりはマシだ。
噛み切るのに苦労しながら、少しずつ咀嚼していく。
──砂漠のど真ん中。
つい先ほど刺し殺したばかりの死体の横で、干し肉なんぞに噛みつきながら
さらに荷物を漁った。
その男の顔に罪悪感は欠片もない。
(`・ω・´)(こっちだって生きるのに必死だしな)
そんな理屈で済む話だった。
(`・ω・´)「──ん?」
革の袋に手をつけたとき。
彼は、顔色を変えた。
(;`・ω・´)「あ──おい! こりゃあ……」
袋を開け、覗き込む。
信じられぬような面持ちで何度も中身に触れ、持ち上げ、眺め回した。
(*`・ω・´)「……金だ!」
紙幣、硬貨、宝石。
経済的に価値のあるものがずっしりと詰まっている。
探してみれば、他の袋にも同様の品々が見られた。
初めは喜んでいた彼だったが、徐々に威勢を失っていった。
金の出どころによっては、持ち逃げすれば自分に災難が降りかねない。
身元を確かめられるものはないかと、死体の纏う衣服を剥いだ。
(`・ω・´)「お……」
上等な上着の内側にカードがある。
それは戦前、彼が暮らしていた国で住民一人ひとりに持たされていた
国民の身分を表すカードであった。
ただ──彼はその国のスラムで娼婦に産み捨てられた身だったので、
戸籍など無いし、国民カードも発行されていなかった。
(`・ω・´)「何だ、こいつ同郷か。──ショ……ロン、でいいのか?」
カードに記された名前を読み上げる。
とはいっても、彼は文字の読み書きが覚束ないので自信はなかった。
(`・ω・´)「35歳……歳も大体一緒か。奇遇だねショロン君──って聞こえちゃいねえか」
数字ははっきり分かる。生年月日から年齢の計算も出来る。計算は金勘定で学んだ。
国民ナンバーを数え、満足げに頷いた。
最初の数字が「1」。これは貴族に与えられるナンバーだ。
ならば袋に詰まった大金は本人のものだろう。
(`・ω・´)「同郷、同年代のよしみだ。恵んでおくんな」
とはいえ彼は自身の正確な生年を知らないので、同年代といっても
大体そうだろう、程度の認識である。
念のため適当な場所に死体を埋めた。
貴族となると、行方知れずになれば探しに来る者もいるかもしれない。
主人が殺されたというのに逃げるでもなく、ぼうっと突っ立ったままの2頭のラクダを引き寄せる。
近くの街まで行ったら乗り捨てよう。
1頭に荷物を乗せ、もう1頭に彼が乗る。
ラクダの乗り方など知らないが、適当に身を動かすとゆっくり歩き出した。
.
間もなく夜になったので、野営することにした。
火を焚き、改めて荷物を漁る。
(`・ω・´)(やけに大荷物だな。
これは──香油か。……甘ったるい匂いがしやがる)
あまり良くない記憶が甦り、香油の瓶を袋の底へ乱暴に押し込んだ。
どうやら日用品をまとめておく袋だったらしく、必要としていた品がいくつかあった。
(`・ω・´)(鏡……と剃刀。こりゃいい)
3ヵ月前にとある町で盗みを働き追い出され、放浪している間、ろくにヒゲを当たっていなかった。
鏡で自分の顔を見るのも3ヵ月ぶり。
(`・ω・´)「おーおー、窶れたな。まあ元から大した顔じゃなかったが」
大雑把に剃り落とし、顎を摩る。
──ふと、彼は眉を顰めた。
どこかで捨てようと思っていた国民カードを取り出す。
カードに付いている、持ち主の顔写真と鏡を何度も見比べた。
[ (´・ω・`) ]
(`・ω・´)「……」
似ている。
全体の印象は違うが、それぞれのパーツは似ている。
カード自体は少なくとも5年以上前に更新されたものだろうから、
5年の間に人相が変化したと捉えれば、同一人物と言っても差し支えない。
彼はカードをしまい、鏡を見つめ、何事かを考えながら眠りについた。
#
翌日の昼には直近の街に着いた。
彼が5年前まで暮らしていたスラムとは比べるべくもないが、
戦後に渡り歩いたどの町よりも、大きく立派な街だった。
「どちらから?」
街へ入るために審査が行われたのも初めてだ。
垢まみれの男に訝しげな目を向け、係員はぶっきらぼうに訊ねた。
今にも鼻をつまみそうな無礼ぶり。
奪った荷物から服を借りたので、衣類だけが立派で余計に怪しかったのかもしれない。
(`・ω・´)「……」
彼は何も言わずに国民カードを差し出した。
係員がカードを受け取る。怪訝な顔は、5秒と経たずに驚愕へ変わった。
「──ショボン様! これは失礼を!」
(`・ω・´)「あん? ショボン? ……ああ、ショボンって読むのか」
彼の呟きは聞こえていなかったようで、係員は何度も非礼を詫びてから
無線の通信機で何処かへ連絡をとった。
それから街の責任者だという老人(町長と呼ばれていた)が男を出迎えた。
繰り返される感謝の言葉から得た情報をまとめると、
彼が殺したショボンという貴族は、戦後、砂漠を挟んだ向こうの街に暮らしながら
こちらの街にも復興資金を提供していたらしい。
ご立派なことだ。
( ´W`)「──お会いするのは昨年ぶりですな……
やはり砂漠を1人で越えられるのは、困難だったでございましょう。
この度は、本当にお疲れ様でございました」
(`・ω・´)「ああ……まあ」
( ´W`)「ショボン様が『中央』に向かわれると聞き、みな喜びました。
あなたのような方こそが新政府に選ばれるべきなのでございます」
(`・ω・´)(中央? 新政府?)
( ´W`)「先立って頂いたお手紙に従い、私の方からお供の手配をしておきました。
きちんと指定された条件に添う者がおりましたよ」
街の中心部、いかにも高級そうな宿へ連れられ、
そこの食堂へと案内された。
漂う香りに、彼の腹が鳴った。
( ´W`)「予定より一日ほど早くお着きになりましたので、先ほど準備を開始したばかりで……」
簡単な料理からテーブルに並べられていく。
彼は既に町長の話など耳に入っておらず、一心不乱に料理を口に詰め込んだ。
鉄板で焼かれた牛肉は、干し肉とは比べ物にならないほど肉厚で香ばしい。
ぎゅっと歯に染み込む食感。噛むごとに肉汁が溢れ、然ほど力を入れずとも肉がほどけていく。
下味はしっかり付いているが、そこにスパイスのきいたソースが絡むと極上だ。
( ´W`)「──ショボン様」
幾度か呼び掛けられてから、ようやく彼は顔を上げた。
肉に夢中になっていたというよりは、
そもそも自分が呼ばれているものだと認識できなかった、というのが大きな理由だった。
貴族らしからぬ意地汚さに眉根を寄せつつも、町長は、自身の横を手で指し示した。
( ´W`)「こちらが、あなた様をお守りする用心棒でございます」
食事の手を止めぬまま、何の冗談かと考える。
('(゚∀゚∩「よろしくお願いします、ショボン様!」
「用心棒」という響きからは程遠い、
可愛らしい顔立ちの少年がそこにいた。
──斯くして。
(`・ω・´)「……よろしく……」
彼は一時、「ショボン」を名乗ることとなった。
.
3:敬虔な少年
('(゚∀゚*∩「あのっ、あのっ、僕、僕……ショボン様のご功績を伺って、感動しましたよ!
どんなに素敵な方だろうかと、会う日を楽しみにしていて……」
(`・ω・´)「薄汚れたオッサンでがっかりしたか」
('(゚∀゚*∩「そんなこと……!
お一人で砂漠を渡ってみせた通り、勇ましいことでございますよ!
あの、お背中お流しします!」
(`・ω・´)「風呂ぐらい1人にしてくれや」
('(゚∀゚∩「あ……ごめんなさい、お会い出来たのが嬉しくて、ついはしゃいでしまって」
──宿屋の廊下を進みながら、彼は少年の喧しさに辟易していた。
見たところ12、3歳。
少女と見紛う美形。口を開けばぺちゃくちゃべらべらと、本当に女のようだ。
('(゚∀゚∩「こちらがショボン様のお部屋です、ゆっくりお休みになってください!」
(`・ω・´)「おう」
与えられたのは、この宿で最も大きな部屋だった。
こんなに広く綺麗な部屋は、かつて子供の頃、食うにも寝るにも困りどうしようもなくなって、
一度だけ通りすがりの男に体を売ったときに入った連れ込み宿以来だ。
(`・ω・´)「あんときゃあケツが痛かった……」
('(゚∀゚∩「?」
見るからにふかふかのベッド。
倒れ込み寝入りたい欲に駆られたが、自身の汚れを思い返し
まずは風呂に入ることにした。
(*`・ω・´)「──っかあ! 湯なんざ浴びたのは何年ぶりだチクショー!」
これまで彼が転々としてきた町は、
どこも満足に整備されておらず(というか人手を集めて整備させているところだった)、
一週間に一度水浴び出来ればいいとこ、といった場所ばかりであった。それもあまり綺麗ではない水で。
体に当たり流れていく温かみに、心身がほぐれる。
が、それも一時で、今後を思うと表情が曇った。
(`・ω・´)(……これからどうすっかな……)
「ショボン」の身分をどうにか利用して楽して暮らし、
金が尽きたらまた放浪生活に戻ろうかと考えていたが──
何やら面倒なことになっている。
用心棒とやらが必要な状況だというのか。
そもそも「あれ」に護衛が務まるのかも怪しいが。
(`・ω・´)(さっき、じいさんが新政府とか何とか言ってたな……)
情報を得なければ。
彼は浴室を出て、大雑把に体を拭き、裸のまま隣のベッドルームへ入った。
('(゚∀゚∩「さっぱりしましたか!」
少年は顔を上げ、彼の裸体に気付くとすぐに目を逸らした。
手に持っていた分厚い本を閉じる。
(`・ω・´)「何だ、その本」
('(゚∀゚∩「神の教えですよ」
教典の類か。
聞くと、彼でも名前くらいは知っている宗教のものらしい。
神だ何だというのに頼るのが嫌いなので、無論、その宗教も嫌いだった。
少年が首元に手をやる。
宗教の紋章を象った首飾りが下げられていた。
('(゚∀゚*∩「ショボン様も熱心な信徒と聞いて、僕は嬉しかったんですよ!
真実、ショボン様の行いは神の御心と合致するものでございました!」
(`・ω・´)「ああ?」
心底鬱陶しそうな顔をして、彼は荷物を引っくり返した。そういえば本があった筈。
するとたしかに、少年の首飾りと同じ紋章が刻まれた本が出てきた。
手垢らしき汚れが見えて、随分と読み込まれたことが分かる。
(`・ω・´)(……面白いもんかね)
ぱらぱらとページをめくる。
ほとんど理解できない。単純に字が読めない、読めても語意が分からないという意味で。
読解は諦めて本を放る。
そこへ、ノックの音が響いた。次いで「ショボン様」と町長の声。
裸で出るのもな、と思い、鞄から引っ張り出した下着とズボンを身につけ、
今度はあまり待たせるのも、と思いそのままドアを開けた。
どうせ男同士なのだし、仮に相手が女としても、己の上半身を晒す程度は彼の価値観では何も問題なかった。
( ´W`)「おっと。──これはこれは、お邪魔をしてしまいましたか」
町長はほんの僅か瞠目して、肩を竦めて笑った。
教養がないのでマナーも学問もないが、人間の卑しい部分はよく分かる。
町長の反応に、彼の眉間に皺が刻まれた。
半裸の男、ベッドに座る美少年、ドアを開けるまでの慌ただしい間。
諸々の要素はたしかに誤解を与えたかもしれないが、
かといって「それ」しか浮かばぬのも──ご大層な頭をしているものだ。
不機嫌になったのを悟ったか、町長は「ところで」とわざとらしく話題を移した。
( ´W`)「大変な失礼であるとは承知しておりますが……お手を貸していただけますかな」
(`・ω・´)「何か手伝えってのか」
( ´W`)「ああいや、はは、そのままの意味でございます。
右手を少しばかり」
ドアの死角から、若い男が2人現れた。
その内の1人は、街の入口で会った係員である。
( ´W`)「カードをお返ししておりませんで」
(`・ω・´)「ああ」
( ´W`)「それでですな、ショボン様。このカードには──ほれ、ご本人様の指紋が記録されているでしょう」
(`・ω・´)「……ああ」
( ´W`)「……ですので、ご確認のほうを」
カードの裏に、持ち主の右手人差し指の指紋が残されている。
かつて彼が暮らしていた国では、国民一人ひとりの戸籍と指紋のデータが一緒に管理されていた。
故郷は災害で破壊され尽くしたので当然データも残っていないだろうが、
今この場で指紋をとり、カードの指紋と比べることは
コンピュータやデータがなくても出来る。
( ´W`)「疑うわけではございません。しかし我が街では、
徹底的に『審査』をするようにという方針がありますので、形式として……」
(`・ω・´)(街に入れてから審査してどうすんだ)
大方、先程までの振る舞いを見て怪しんだのだろう。
顔は限りなく似ているが、空似と言われれば納得する程度だし、
まさか声までそっくりだなんて都合のいい話はなかろう。
(すぐに看破されなかったからには、全くの別物ということもないのだろうが)
返す返すも、この街に来たのは失敗だった。
まさか「ショボン」がここまで有名だとは。
( ´W`)「よろしいですか」
(`・ω・´)「……」
拒否してどうにかなるものでなし。
素直に右手を差し出すと、係員が人差し指にインクを薄く塗りつけ、
拇印の要領で2枚の紙に押し付けた。初めの1枚は余分なインクを除くために。
ああ、ここでバレてしまうのか。
参った。「ショボン」の荷物を持っている以上、自分が奴に危害を加えたこともバレるだろう。
街の恩人を殺して奪ったなどと知れたら、どんな目に遭うか。
どくどくと激しくなる鼓動に耐え、指を離す。
その跡を見て、町長が怪訝な顔をした。
( ´W`)「これは……」
──指紋がない。
のっぺりとした跡があるばかりだ。
(`・ω・´)「薬で指を焼いたもんで」
嘘は言っていない。
3ヵ月前、配給目当てで働いていた際に
うっかり素手で薬品に触れて、皮膚の表面が潰れてしまったのだ。
「そういえばショボン様は、あちらの街で主に薬品を使った洗浄作業を……」
係員が言うと、町長は得心したように頷いた。
え、と漏れかけた声を飲み込む。
何だ、都合のいい話もあるものだなと考えを改めた。
( ´W`)「お手間をおかけして、申し訳ございませんでした。
それと──こちらにご記入を。
列車に乗る際、席の確認に必要なので」
国民カードと共に、書類らしきものとペンを渡された。
名前を求められる箇所は流石に分かるが、いくつか文字が読めない項目があった。
(`・ω・´)「……おい、──えっと」
('(゚∀゚;∩「……あ、ぼ、僕、なおるよと申します!
ごめんなさい! 浮かれていて、まだ自己紹介を……!」
(`・ω・´)「なおるよ。これ書いといてくれ」
('(゚∀゚∩「はい!」
さも体が冷えたふりをして、上着を身につける間に少年──なおるよに記入を任せた。
シャツのボタンを留めながら、先程の緊張で凝り固まった指先をほぐす。
( ´W`)「たしかに。
それではごゆっくり。夕食は6時間ほど後に、先程の食堂で……」
ドアが閉まる。
安堵の息をつき、ベッドに横たわった。
(*`-ω-´)(やわらけえ……)
このまま眠りたくなったが、そうもいかない。
列車、と町長は言った。
列車に乗らねばならないらしい。
どこへ行くのだろう?
(`・ω・´)(あ──と、『中央』がどうとかっつってなかったか?
ショボンが行くのをみんなが喜んだとか何とか……)
(`・ω・´)「なおるよ」
('(゚∀゚∩「はい、何でしょう!」
(`・ω・´)「あー……」
声をかけたはいいが、どう訊いたものか。
下手な質問をすれば怪しまれる。
少し考え、結局、目下の疑問からは遠い問いを口にした。
(`・ω・´)「列車はいつ来る」
('(゚∀゚∩「3日後ですよ! それに乗れば、余裕を持って中央に辿り着けます!」
('(゚∀゚*∩「途中途中の街で燃料補給のために一日ほど停留するらしいのですが、
いずれも治安が良くて名物などもある街です、
きっと僕なんか必要ないでしょうが……」
──忘れていたが。
用心棒としてここにいるのだ、この子供は。
('(゚∀゚*∩「だからこそ、ショボン様は僕のような役立たずを選んでくれたんですよね!」
(`・ω・´)「……んあ?」
('(゚∀゚*∩「僕、お話を聞いてとっても嬉しかったんですよ……。
『この時世では子供が旅をするのも叶わない、
ならば安全なルートを行くから、旅仲間として子供を1人連れていこう』──」
('(゚∀゚*∩「なんて素敵なお考えの持ち主だろうって、僕、
無理を言って町長様からお手紙を譲っていただきましたよ」
懐から封筒を取り出し、なおるよはうっとりした表情で手紙を抱き締めた。
──「ショボン」が先の町長に出したという手紙だろう。
(`・ω・´)「……ちょっと、声に出して読んでみてくんねえか」
('(゚∀゚∩「? どうしてです?」
(`・ω・´)「説明しないと駄目か?」
('(゚∀゚∩「いいえ! 僕は今日からショボン様の手足となります、どうぞ何なりと!」
──少年は、澄んだ声で手紙を読み上げた。
格式張った表現が多く、理解の及ばぬ点もあったが
要旨は概ね把握した。
3ヵ月前に中央から世界中の権力者・資産家に招集がかかったこと、
「ショボン」もそれに応じると決めたこと。
ついては、列車が来るこの街で準備をしたいので旅仲間の手配を頼めないか、という話だった。
条件は二つほど。
まず一つ。どうせ安全な道を行くので、気楽に旅の供を楽しんでくれるような者がいい。
特に子供の方がいいだろうという理由については、なおるよが先にそらんじた通り。
そして価値観を共有できるよう、自分と同じ神を信仰している者を、というのがもう一つ。
(`・ω・´)(で、こいつか)
('(゚∀゚*∩「とはいえ大切なショボン様です、
町長様は用心棒としての資質も重要視して、我らが『組織』から雇うことにしたようですね。
ああ、本当に、僕が選ばれて良かった!」
(`・ω・´)「おう……」
組織とは何だろうか。
そういうのを派遣しているところがあるのか。
('(゚∀゚*∩「ショボン様のお手紙は思いやりに溢れていて、僕、感激しましたよ……」
(`・ω・´)「俺は吐き気がするがな」
呟きは、なおるよの耳には入らなかったようだ。
というより、入れないように声を低めた。
ともかく事情は分かった。
中央へ行ってしまえば、ますます面倒なことになりそうだ。
(`・ω・´)(列車が来るのは3日後……それまでにトンズラこいちまえばいいんだ)
そうと決まれば、あとは豪遊するだけ。
金の詰まった袋から適当に抜き取り、品のいい革財布へ突っ込んだ。
部屋を出る。
('(゚∀゚∩「どちらへ?」
(`・ω・´)「ついてくんな」
('(゚∀゚∩「そればかりは聞けませんよ! ショボン様は旅仲間と言いますが、
やはり僕は、あくまでも護衛ですから!」
(`・ω・´)「……じゃあ、俺をお護り出来る範囲で離れてくれ」
('(゚∀゚*∩「分かりましたよ!」
#
『──中央からのお願いです。
新たな政府を作るため──』
(`・ω・´)(分かったっつの)
ラジオは、中央からの招集を延々と繰り返している。
チューナーを捻ると、情勢を告げる陰気な声が流れ始めた。
(`・ω・´)(ラジオが聴けるとはな。まあ真面目な話ばっかだが)
──表通りの酒場。
真昼から酒を飲む人間ばかりが集まっている割に、誰も彼も行儀がいい。
おとなしく酒を飲んで何が楽しいのか分からない。
小綺麗な店の佇まいも、どうにも息が詰まる。
あまりに退屈で、カウンターにあったラジオの操作をして手慰みにしていたが
流れてくるのもつまらない話ばかりなので、飽きた。
('(゚∀゚*∩
離れた席でなおるよがジュースを飲んでいる。
どうやら客の1人である中年の女が奢ってくれたらしい。
女は微笑ましげになおるよを眺めている。
(`・ω・´)(可愛い顔してりゃ、それだけで得するもんだな)
高価な酒を大量に買い込み、宿へ運ぶように店員へ指示を出した。
街の住人は「ショボン」の名と功績は知っていても顔までは知らない者が多いらしく、
領収書に記すために名前を訊いて初めて店員が驚いていた。
「ショボン様からお金をいただくなんて出来ません!
あなた様のおかげでこうして商売できているんです、お酒は差し上げますとも」
(*`・ω・´)「お……そりゃマジかい。景気いいな」
さらにサービスだと言って、一般の客には出さないという特級酒がグラスに注がれる。
口に含むと果実に似た甘みが口内に広がり、すっきりとした香りが鼻に抜けた。
アルコールはさして強くない。
美味いは美味いが、彼からするとジュースにしか思えなかった。
(`・ω・´)「……お?」
グラスを空け、店内を見渡す。
なおるよがいない。
護衛するのではなかったか。
とはいえ、いない方が気は楽だ。
次はどこへ行こうかと考えながら店を出る。
('(゚∀゚;∩「あ、あのう……でも、僕、大事なお仕事が……」
──店のすぐ前になおるよはいた。
女に腕を掴まれている。
見れば、先程なおるよにジュースを奢っていた女だ。
腕を掴むのとは逆の手でなおるよの首筋を撫でていた。手付きが情欲を表徴するようだった。
どうやら裏通りの連れ込み宿へでも誘われているらしい。
なおるよはあからさまに困っていた。
なのに強く断ろうとしていない。
('(゚∀゚;∩「あっ」
不意に、なおるよがこちらに気付いた。
助けを求めるような目。
面倒臭い。無視していこうか。
('(゚∀゚;∩「ショボン様」
が、なおるよが呼んだ名を聞き、女が手を離した。
そそくさと立ち去る背を一瞥して、なおるよに視線を戻す。
(`・ω・´)「一発くらい相手してやりゃ小遣い稼ぎにはなったろ」
ほんの少しの間があく。
意味を解したのか、なおるよは眉間に小さく皺を作った。
('(゚∀゚∩「……僕はそんなこと……」
(`・ω・´)「嫌ならはっきり断れよ」
('(゚∀゚∩「でも、あの人は僕にジュースを奢ってくださいました」
(`・ω・´)「は?」
('(゚∀゚∩「年上の方から恵みを受けたなら、その人の言うことを聞かねばならないというのが
神の教えでございましょう」
──だから宗教というものは嫌いなのだ。
先の女も、なおるよが持つのと似た首飾りをつけていた。
「神の教え」を承知の上で、一連の行為に及んだわけだ。なおるよが拒絶できないようにと。
それはそれは。なんと御立派な。
(`・ω・´)「じゃあ小遣いやるから、俺を1人にしてくれ」
('(゚∀゚∩「ならば受け取りません!」
#
(*`・ω・´)「──うめえな! あんた、いいもん作ってるよ」
盛り場にあった屋台で、よく分からぬ料理を買った。
厚く切って焼いた肉に甘辛いタレを塗り、小麦粉で出来た生地で葉物と一緒に包んだもの。
今まで碌なものを食ってこなかったので、豚肉か鶏肉かすらよく分からないし、野菜の名前も知らない。
ただ美味いことだけが分かる。正直、宿で出された料理はステーキ以外に「美味」と言い切れるものがなかった。
盛り場は安っぽい屋台があちこちにある。
こういったものの方が、きっと彼の口に合う。
(*`・ω・´)「もう一つくれ」
宿でたらふく食ったことなど忘れて、彼は追加の注文をした。
出来上がるのを待つ僅かの間、人混みに目をやると
きっちり距離をあけて立ち止まっているなおるよが視界に入った。
なおるよの丸い瞳は、護るべき男ではなく屋台の方へ釘付けだった。
そういえばなおるよは昼飯を食べていなかった気がする。
さらにもう一つ、注文を追加した。
「はい、どうぞ」
(`・ω・´)「あんがとよ」
手渡された料理の内ひとつを、なおるよの方へ向ける。
3秒ほどで理解したようで、なおるよは顔を輝かせて小走りで近付いてきた。
('(゚∀゚*∩「よろしいのですか!」
(`・ω・´)「おう」
('(゚∀゚*∩「ありがとうございます! ああ、やはりお優しい!」
(`・ω・´)「離れて歩けよ」
('(゚∀゚*∩「はい!」
なおるよが小難しい言い回しで神への感謝を述べてから口をつけた。
食前の祈りだろう。ひどくつまらないものを聞いてしまった。不快感。
にこにこ顔で料理をぱくつきながら一定の距離をあけついてくるなおるよに、
彼はこれといった感慨も浮かばないまま雑踏を進んだ。
金が有り余っているから気まぐれに買い与えてやっただけのことであって、反応に興味はない。
自身の分として買った肉を食い終え、賭場でもないかと辺りをきょろきょろ見回していると
大きなだみ声が耳に入った。
「──クール! 荷物を持て!」
特に思うところもなく、何の気なしに声の主を見る。
(#ФωФ)「聞いているであるかクール!」
川 ゚ -゚)「この人混みで両手が塞がれば、何かあっても対応が遅れるかもしれないぞ」
(#ФωФ)「そこを何とかするのが貴様の役目であろう!」
身なりのいい中年の男だ。
なかなか綺麗な女を連れている。
互いに媚びる様子がないので、親子かもしれない。
女の容姿が好みで、思考が下半身主体へ切り替わった。元々単純な頭をしている。
女を最後に抱いたのは3ヵ月前。二束三文で体を売っていたのを買って以来それっきりだった。
最近はあまりに欲求不満で、適当な女を捕まえ犯してやりたいと何度も思っていた。
生憎それが可能な状況になかなかありつけなかったものの。
この街ならいくらでも女がいる、夜でも無防備に出歩く女がいるだろうなと考え、
今は面倒なリスクを抱えずとも高級娼婦さえ買える身なのだと思い直した。
男に媚びるために化粧の匂いをぷんぷんさせた女を、朝まで好きに出来るのだ。
あるいは僅か2メートル先を歩くあの美女だって、
「ショボン」を名乗り宝石をちらつかせるだけで宿までついてくるかもしれない。
獣欲に舌舐めずりすると、暑苦しい視線を感じたか、件の女が荷物を抱えて振り返った。
川 ゚ -゚)
女は彼を見、そして瞳を横に滑らすと、薄く口を開いた。
川 ゚ -゚)「なおるよ」
('(゚∀゚*∩「クーさん!」
なおるよが女に駆け寄る。
呆気にとられつつ、彼は何となく2人の傍へと近付いた。
川 ゚ -゚)「どうしたんだ、こんなところで」
('(゚∀゚*∩「僕にも依頼が来たんだよ!
こちら──シベリア国の名家ハチマユ家の現当主、ショボン様!」
('(゚∀゚*∩「あっ、ショボン様、こちらは僕と同じ『組織』の一員、クールさんですよ!
ヴィプ国のロマネスク様の護衛をしています」
組織とやらについて、なおるよから軽い説明を受ける。
どこぞに護衛を育てている機関があって、なおるよとクールはそこから派遣されているという。
宿での推測と大体合致していたので、ほんのりと気分が良くなった。
少数精鋭という方針らしく、1人の客に対して護衛は多くても2人までしか派遣しないそうだ。
('(゚∀゚*∩「クーさんは成績がすごく良かったんですよ!
彼女に比べたら僕は全然ダメで、誰かに指名されることもないだろうと諦めていたんですけれど、
僕のような者をショボン様は必要としてくれて──」
以降のなおるよの言葉は聞き流した。
食傷気味だ。
しかしこのクールという女、それなりの実力者か。
しかもこの街の者でないのなら、「ショボン」の名をかざしても無駄だったろう。
恥をかかずに済んだ。
( ФωФ)
クールの雇い主だというロマネスクがこちらを凝視しているのに気付いた。
どことなく蔑むような目だ。
ひどく腹が立つ。クールがいなければ、一発殴っていたかもしれない。
川 ゚ -゚)「──なんて優れた人だ」
クールの声で我に返る。
どうやら「ご活躍」ぶりをなおるよから一通り聞かされたらしく、
ロマネスクとは反対に、尊敬を込めた瞳を向けられた。
(`・ω・´)「……そりゃどうも」
川 ゚ -゚)「お前も見習え」
( ФωФ)「偽善で金をばらまいて何になる」
川 ゚ -゚)「人のためになる」
ロマネスクが冷笑した。
不貞腐れるクールの態度は、とても雇われている人間とは思えない。
しかしロマネスクの目付きや振る舞いは鼻につくものの、思想的には同意できる。
「ショボン」の行いが偽善であるか否かはともかく、他者に金を分け与えようとする気持ちが理解できないし、
クールの今の発言も馬鹿馬鹿しく聞こえた。
要人の護衛というものは、冷徹に淡々と仕事をこなすような人間ばかりだと考えていたが、
なおるよといいクールといい、随分と甘ったるい理想が胸の内にあるらしい。
('(゚∀゚∩「クーさん達も、この街から列車に?」
川 ゚ -゚)「その予定だ。たしか5駅先の町がなかなか発展しているらしいので、
そこで降りて、また適当に移動する」
自分もそうしようか、とぼんやり思う。
3日後まで何とかやり過ごし、列車に乗って、めぼしい町に着いたら身をくらませる。
なおるよが困るかもしれないが、知ったことではない。
(#ФωФ)「クール、いつまで無駄話をしているのである!
我輩はさっさと休みたいのだ!」
川 ゚ -゚)「……分かった分かった」
ロマネスクが肩をいからせ、踵を返した。
クールが一礼し、ロマネスクの後を追う。
進行方向からすると、恐らく自分達と同じ宿に泊まるのだろう。
(`・ω・´)(クールちゃん、なあ……一発やりてえもんだな)
クールの尻を見つめながら下卑た呟きを心中に漏らし、
彼もまた別の方向へ歩き出した。
#
( ФωФ)「あれの何が『名家』であるか」
なおるよ達と離れ、互いに姿も見えなくなった頃、ロマネスクが嘲るように言った。
川 ゚ -゚)「お前のような成金とは違う。やはり貴族は心にもゆとりがあるな」
( ФωФ)「馬鹿が。あれは貴族の顔ではない。
落ちぶれてもいない。
元から底辺の──ドブで産まれて生きてきたような最下層の人間の顔だ」
川 ゚ -゚)「……何言ってんだお前は」
( ФωФ)「成金ですらないということである。
──どのみち我輩には関係のない話だ」
ロマネスクが強く興味を示すのは、酒と女と金、あとは自分自身に直接関係のある事柄だけだ。
それ以降は特に言及することもなく、またクールへの理不尽な叱咤が始まる。
聞き流しながら、クールは背後を振り返った。
ロマネスクが言うような程までは思っていないが──
ショボンの目は、たしかに今まで何度も見てきた、ごろつきのそれに似ていた。
#
(*`・ω・´)「ひゃひゃひゃひゃ!」
女がいれば酒が美味い。それは彼が知る一番の「真実」だ。
大きなベッドの真ん中に陣取り、両脇に商売女を侍らせる。
乳房をまさぐれば女達は笑顔で身をくねらせ、
逃げるような素振りを見せておきながら、その実、いっそう体を押しつけてきた。
これくらいの安っぽさでいい。
頭も気もつかわなくて、楽だ。
──夕方に宿へ戻り、やはり微妙に口に合わぬ料理を腹に収め、部屋で一眠りして。
数時間後に目覚めた彼は宿の使用人に命じて、酌婦を呼ばせた。
金をかけただけあって、どの女も見た目は上々。
(*`・ω・´)「おい──おい、そっちの酒ェ開けろ!」
既に呂律も怪しくなり始めた彼が、サイドテーブルに並べた酒瓶の中、一番高いものを指差した。
待ってました、と調子よく言って、女が瓶の蓋を開ける。
グラスに注がれたそれを一気に呷ると、口から溢れた酒が顎から胸へぼたぼたと落ちた。
舐めろと命令すれば、彼女らは嫌がりもせずに彼の胸元を舌で撫でた。
徐々に女の頭は下がり、やがて下腹部へと口を触れさせる。
(*`・ω・´)「おお、お、お、あ、それでいい、いいんだ、俺ァ、ショボン様だぞ……
俺がいなけりゃァ、お前ら、ここで、きれーな服着て、暮らすことも、できなかっ、たんだ」
||‘‐‘||レ「わかってますよう」
酒で頭がとろけている。
女の舌が彼の正気を舐め溶かす。
本人ははっきりと喋っているつもりだが、舌が縺れていて発音も不明瞭。
──斯様にだらしない有様であっても、女達は彼が「ショボン」であることを疑わない。
大半の住民は「ショボン」の寄付金の額は知っていても、詳細な人となりを知らない。
だから、現在の彼の振る舞いを前にしたところで、
「まあ聖人君子なんてこの世にはいないのだし」と納得する。
しかし。
('(゚∀゚∩「……」
なおるよだけは、困惑したような顔つきだった。
('(゚∀゚∩「ショボン様……」
(*`・ω・´)「ああ? ──ンだよ、その目はよお……。
……出てけ! 外で神様にお祈りでもしてろ!」
('(゚∀゚∩「僕は、護衛ですよ」
(#`・ω・´)「知るか! ガキに見られんのは趣味じゃねえんだよ!」
尚もなおるよが反論しようとしたので、グラスを投げつけた。
なおるよには当たらなかったが、すぐ隣の椅子にぶつかり、
飛び散る破片がなおるよの足元に散った。
('(゚∀゚;∩「っ」
(#`・ω・´)「出てけ!」
今度は何も言わなかった。
破片を避けて、ドアへと歩いていく。
なおるよがドアを開けたとき、「あ」と2人分の声がした。
1人はなおるよ。もう1人は、
川 ゚ -゚)「……あなたの部屋か」
廊下に立つクール。
ノックでもしようとしていたのか、片手を半端な位置に上げていた。
('(゚∀゚∩「クーさん、どうしてここに」
川 ゚ -゚)「いや、私達もこの宿に泊まっているんだ。一つ挟んだ隣の部屋なんだが
ロマネスクの奴が『うるさくて眠れん』と……」
('(゚∀゚∩「あ……っと、その……ごめんなさい」
(*`・ω・´)「おうクールちゃん……へへっ、なあ、クールちゃんも来いよ。
どうせあのオッサンともやってんだろ、俺とも一回くらい──」
クールは蔑むような目をしただけで、一歩も入室することなく踵を返した。
なおるよがこちらに一礼し、「何かあれば呼んでください」と言って部屋を後にする。
(*`・ω・´)「けっ」
||‘‐‘||レ「続きは?」
手と口を休めていた女が艶かしく笑う。
答えるまでもない。
彼が頷くと、女の唇は一層撓んだ。
#
川 ゚ -゚)「お前の雇い主もなかなか強烈だな」
('(゚∀゚∩「……でもショボン様は素晴らしい方だと聞いてるよ」
並んで廊下を歩きながら、クールは、横目に見ていたなおるよから視線を外した。
廊下は柔らかな照明が定間隔で設置されており、仄明るい。
川 ゚ -゚)「──たとえば……」
呟く。
瞬間、躊躇した。
何を口走ろうとしているのだ。
ロマネスクの言葉など真に受けてどうする。
奴の発言は九分九厘がその場かぎりの思いつきだというのに。
しかし──たった今、目にした光景は。
ショボンの振る舞いは。どうにも。
なおるよの言うような、高貴な人間には見えなかった。
('(゚∀゚∩「……『たとえば』、何だよ?」
なおるよが問い掛けてきた。
言葉を濁しても、「言ってください」と食い下がる。
クールは一つ息を吐き出して、飲み込んだ質問を結局口にした。
川 ゚ -゚)「たとえば、あの人が『ショボン』でなかったらどうする?
別人がなりすましてるとしたら……」
('(゚∀゚∩「……? シベリア国の国民カードの写真と顔が一致してるよ。
別人なら、町長様が一目で分かる筈だし」
川 ゚ -゚)「他人の空似ってやつがある。
ショボンは砂漠を1人で渡ったんだろう、何か起きていたとしても周りは分からない」
('(゚∀゚∩「……」
川 ゚ -゚)「もちろん私の勝手な推測だ。そう簡単に同じ顔の人間がいるもんでもないしな」
('(゚∀゚∩「……お祈り……」
川 ゚ -゚)「うん?」
('(゚∀゚∩「食前のお祈りをしないんだよ、ショボン様。
教徒は──それも敬虔な教徒ならば、必ず食前にはお祈りを捧げるものなのに」
川 ゚ -゚)「……ふむ」
('(゚∀゚∩「お食事の最中も、マナーなんか欠片も気にしてないし」
('(゚∀゚∩「言葉遣いが乱暴だし」
('(゚∀゚∩「酒癖悪いし」
('(゚∀゚∩「下品だし」
川;゚ -゚)「……おい、なおるよ?」
話している内、宿の受付へ着いた。
使用人を呼び出し、自分とロマネスクの部屋を変更するように頼む。
あの様子ではショボンが静かにしてくれそうにもないし、それならばこちらが移動すれば済む話。
(#ФωФ)『なぜ我輩の方が譲歩せねばならぬ!!』
川 ゚ -゚)(……とか言うだろうなあ)
げんなりしながら新たな鍵を受け取る。
ロマネスクの元へ戻ろうと踵を返したとき、聞き覚えのある声がした。
( ´W`)「──おい」
老人が使用人を呼び止めている。
街へ入り身分を証明した際、ロマネスクに媚びていた町長だった。
口を開きかけた町長はこちらを一瞥すると頭を下げ、使用人を連れて受付の奥の部屋へ消えた。
川 ゚ -゚)「……こら」
なおるよが慎重な足取りで受付台の向こうに立つ。
そして奥へ繋がるドアに耳をつけた。
川;゚ -゚)「お前な……」
とはいえ町長の様子が気になったので、クールもなおるよを真似た。
クールの耳もなおるよの耳も、人間の囁き声にはひどく敏感だ。
扉越しの声も難なく拾い上げる。
「──ショボン様のことだが、どう思う」
「どう、と言われましても」
「まるで別人だ。あれでは野蛮人そのものじゃないか。
わしが以前会ったときは……──」
町長が語る「ショボン」の人格は、やはり、今まさに部屋で女を侍らしている男の姿とは
どうにも繋がるものではない。
そして町長も、クールが抱いたのと同じ疑問に行き着いたらしい。
「顔はたしかにショボン様だが、似ているだけの他人と言われてしまえば、わしには否定できん。
──問題は、あの男がショボン様の荷物を持っているということだ。
そのせいで全くの別人だという断定も出来ない」
「じゃあ、どうやって確認するんです」
「列車の予約を『失敗』する。そうすれば、しばらくはこの街にあの男を留まらせられる。
その間に、向こうの街や砂漠を調査させるのだ」
「次の列車が来るまでの間じゃあ、とても無理ですよ」
「さらに長く留まらせる理由だって何とかなるさ。
──指紋が無いと言うが、皮膚が完全に再生すれば指紋も出る。
そうすれば国民カードとの照合が出来るぞ。
昼に見た様子からすると、近々治りそうだったしな」
川 ゚ -゚)「──だ、そうだ」
間もなく売上金の話に移ったので、扉から耳を離す。
('(゚∀゚∩「……」
なおるよはじっと足元を見つめている。
部屋の鍵を握り込み、クールは踵を返した。
いいかげん戻らないと、ロマネスクが一層騒ぐ。
ややあって、なおるよがクールの隣に並んだ。
無言で歩く。
もしも本当にショボンがショボンでないとしたら、
なおるよはどうするのだろう。
どうするも何も、雇い主不在ということで組織に帰るだけか。
川 ゚ -゚)(私も帰りたい……)
(#ФωФ)「クール!!」
川 ゚ -゚)(ああマジ帰りたい)
部屋の近くまで来たところで、ちょうど廊下に出てきたロマネスクに怒鳴られた。
(#ФωФ)「貴様は! ちんたらちんたら何をしておった!」
川 ゚ -゚)「すまなかった。──部屋を変えてもらったから移動しよう」
(#ФωФ)「はあ? なぜ我輩の方が譲歩せねばならぬ!!
迷惑をかけている方が遠慮するのが道理──」
「わあああああああ!!」
──さらに大きな声が轟いた。
男と女の悲鳴。
ロマネスクが肩を跳ねさせ、猫のように飛び退いた。
発生源はショボンの部屋だった。
すぐさまドアが内側から開け放たれて、一瞬ほどの間も置かずに誰かが転げ出てくる。
(;`・ω・´)「ひ、ひいっ、ひいっ!!」
ショボンだ。ほとんど全裸。
すると、それを追って半裸の女が飛び出した。
||‘‐‘#||レ「死ね! 死ね!!」
アイスピック(酒を入れるときに使ったのだろう)を握っている。
どう考えてもショボンへ殺意を向けた言動。何事か。
他の商売女達は室内できゃあきゃあ悲鳴をあげているのみなので、単独犯らしい。
(;`・ω・´)「あ──あんた! 助けてくれえっ!」
(;ФωФ)「ひいんっ!? く、来るな! 離せ!! いやあああっ!!」
ショボンが一番近くにいたロマネスクに縋りついた。
ロマネスクの口から漏れた悲鳴が少女のように甲高くて、クールはこっそり吹き出した。
結果、腰を抜かした男2人が互いを盾にするように揉み合う、情けない光景が生まれる。
女は他の犠牲が出ようともとにかくショボンさえ刺せればいいようで、自棄っぱちな動きでアイスピックを振り上げた。
そうなると、クールが動かないわけにもいかない。
川 ゚ -゚)「その辺にしとけ」
女の手を足で弾くと、アイスピックは簡単に飛んでいった。
回転した末に、離れた床へと突き刺さる。
にわかに怒りがクールへ向けられたが、
鍛えているわけでもない女がクールに掴み掛かったところで何の意味もなかった。
捩じ伏せるのは一瞬。
申し訳なく思いつつ顔面を床に叩きつけるように倒したので、痛みと衝撃で女が静まった。
部屋の中で騒いでいた女達も静かになっていた。一連の流れに呆然とした、というか。
さて、どうしたものか。
基本的にロマネスクへ危害を加えた人間は殺せと言われているが、
厳密にいえば彼女が狙っていたのはショボンだ。ロマネスクではない。
('(゚∀゚;∩「……ショボン様っ」
なおるよがショボンに駆け寄る。
ショボンはというと、真っ青な顔で固まっていた。
川 ゚ -゚)「何があったんだ」
クールの問いにショボンは答えない。
仕方なく掴み上げている女の腕に体重をかけると、女が叫ぶように返事をくれた。
||‘‐‘#||レ「私の恋人が、ショボンに雇われて向こうの街に行ったんだ!
私は捨てられて、体を売るしかなくなって──
それからすぐに、その恋人が仕事中に事故で死んだって知らせが……」
川 ゚ -゚)「何だそりゃ。お前を捨てたのは恋人の独断だし、事故死ならショボンさんに責任はないだろう」
クールの言葉は耳に入らないらしく、ショボンのせいだと何度も何度も繰り返している。
徐々にショボンの硬直が解け、クールのおかげで自身が安全であることに気付いたのか
彼は途端に威勢よく喚き出した。ちなみにロマネスクはまだ怯えている。
(#`・ω・´)「ふざっっっけんな! 俺はショボンじゃねえよ、何で無関係の俺が殺されなきゃなんねえんだ!!」
||‘‐‘#||レ「なに言ってんだよあんたは!!」
(#`・ω・´)「だから──」
(;ФωФ)「ひいいひいい」
川 ゚ -゚)(あーあー)
( ´W`)「何です、どうしました」
町長と使用人がばたばたと近付いてくる。
誰も事態は説明しなかったが、この光景で粗方察したようで、
町長はひどく不審な目をショボンへと向けた。
ショボンは気付いているのかいないのか、「自分はショボンではない」という旨を
大声で女に説いている。いいのだろうか。
彼が言葉を重ねる度に、町長が顔を歪めていくが。本当にいいのだろうか。
ついに、町長が痺れを切らした。
( ´W`)「ちょっと待ってくれ、ずっと気になってたんだが、あんた──」
町長が口を開き、反射的にショボンが黙る。
直後。
('(゚∀゚∩「え? はい!」
なおるよが頭突きする勢いでショボンに耳を寄せ、続いて頷き、部屋へ駆け込んだ。
さも何かしらの指示があったかのような振る舞いだったが──
クールの位置から見えたショボンの口元は、一切動いていなかった。
ショボンも困惑気味になおるよを眺めている。
何やらごそごそやっていたかと思うと、大粒の宝石を2つ3つ持って戻ってきた。
そうして彼はそれを、
('(゚∀゚∩「どうぞ!」
||‘‐‘;||レ「……え……」
女へ差し出したのであった。
('(゚∀゚∩「ショボン様が、これを役立ててほしいと!
先程は混乱して責任を逃れようとしてしまったが、やはりそれでは神に許されないだろう──と仰いました。
どう使うかはあなた次第ですが、納得の行くようにお使いください」
クールが離れる。女は暴れることなく、なおるよから宝石を受け取った。
それから今度は町長と使用人へ歩み寄り、
女へ渡したものほどではないが、なかなか立派な宝石を一つずつ。
('(゚∀゚∩「こちらは、ご迷惑をおかけしたお詫びだそうです」
( ´W`)「……はあ」
ひんひん鳴いていたロマネスクが、ぱっと表情を整えた。
金だの宝石だのが大好きな性分ゆえに、咄嗟に分析する癖がついているのだろう。
( ФωФ)「それ一つでしばらくは遊んで暮らせるほどであるな」
ふてぶてしく言う割に未だ腰を抜かしているようだが。
呆気にとられていた女と町長達が、その言葉に息を呑む。
きらきらと輝く石を見下ろし、両手で抱え込むと懐へしまった。
('(゚∀゚∩「遊んで暮らすだなんて! ショボン様はそんなことのために渡したんじゃありません」
なおるよが窘めるように言うと、町長はやや狼狽しつつも「勿論です」と答えた。
「街のために使わせてもらいます」と。
この様子では随分と怪しいところだ。
('(゚∀゚∩「それでは……すみません、ショボン様をお休みさせてあげてください」
なおるよが頭を下げる。
使用人は室内に残る商売女を追い出し、寝台を手早く整えた。
それらを見つめるクールの瞳は生温い。
('(゚∀゚∩「ショボン様」
(;`・ω・´)「あ──ああ」
ショボンに肩を貸して寝台へ横たえさせ、水を与えると、
なおるよはきびきびと廊下に戻ってきた。
ぴしっと綺麗に一礼。
('(゚∀゚∩「おやすみなさい。ショボン様はいつでも皆様の幸福をお祈りしています」
そして、扉は閉められた。
女は宝石を見直し、ふらふらと去っていった。
口元が笑んでいる。──結局は金で誤魔化される程度の恨みだったか。
町長達も、扉へ向けて「おやすみなさいませ」と声をかけてからその場を離れた。
ショボンの正体を暴こうという気勢は失せている。
川 ゚ -゚)「……寝るか」
残されたクールはロマネスクを担ぎ上げ、新しい部屋へ移動した。
されるがままのロマネスクがぼそりと呟く。
( ФωФ)「結局何なのだあの男は」
川 ゚ -゚)「さあな」
クールにもロマネスクにも関係のないことだ。どうせまたすぐ興味は消える。
分かることは、ただ一つ。
川 ゚ -゚)「どうせ朝にはいなくなってるだろうし、考えるだけ無駄さ」
#
('(゚∀゚∩「荷物をまとめてください」
と言いながらも、なおるよ自ら手当たり次第に鞄へ物を詰め込んでいるので、
彼は何をするでもなくなおるよを眺めていた。
(`・ω・´)「……何でだ」
('(゚∀゚∩「出ていくんです。今は勢いで流されてくれましたけど、朝になればまた疑われる筈ですよ。
『本当にあの男はショボン様なのか』──って。だから逃げましょう」
発言の意味をはかりかねた。
ぼんやりする彼へ、なおるよが顔を向ける。
('(゚∀゚∩「長居すればするだけ、ボロが出ます。
まあ今に至るまでで致命的なくらい出してますけど」
そこでようやく、「気付かれている」と悟った。
そもそも先程、勢いあまって自分自身の口で言ってしまったのだけれど。
(;`・ω・´)(──どうする)
なおるよの口を塞ぐか。
小柄な少年1人、簡単だ。
押さえつけて首の骨を折ればいい。
先は油断しきっているところを襲われたので動転したが、
自分から仕掛ける分には自信がある。
いや。待てよ。
落ち着いて見るに、なおるよの今の行動は、こちらに害のあるものではない。
「逃げよう」と言っているのだから。
(`・ω・´)「……どういうつもりなんだ、お前」
('(゚∀゚∩「僕はあなたの用心棒なので、あなたを護るために行動しますよ」
(`・ω・´)「……。雇ったのは俺じゃねえぞ」
それへは何の答えもなかった。
荷物をまとめ終えたなおるよが、サイドテーブルの引き出しから備品の便箋と封筒、ペンを取り出す。
('(゚∀゚∩「置き手紙をしていきましょう。
『人助けをしているつもりでも、気付かずに恨みを買うことがあるのだと知った。
いつまた同じようなことが起きるか分からない、再び迷惑をかける前に街を出る』
──こう書いておけば、まあ、それっぽいですか」
(`・ω・´)「言っとくけど俺は字ィ書けねえからな」
('(゚∀゚∩「あなたに書かせるつもりはありませんよ、本人の筆跡に似せなきゃいけませんから」
昼間に見せてもらった「ショボン」の手紙と見比べながら、
なおるよは手早く手紙をしたためた。
小振りの宝石も付けておく。
その目付きは──今まで植えつけられたイメージの、無垢な少年のそれではなかった。
('(゚∀゚∩「夜明けになったら窓から外へ出ますよ。
ラクダに乗って、ショボン様の影響が及んでない小さな町へ向かいましょう。
そこから馬車なり何なり使って、駅がある町に移ります」
(`・ω・´)「この街を出るにも審査が必要なんじゃねえのか?」
('(゚∀゚∩「穴はありますよ。あなたがここに来るまでの数日間、ずっと街を観察してきたので分かります」
ふと。
なおるよが、顔を上げた。
('(゚∀゚∩「『本物』はどこにいるんですよ?
──まさか生かしとくようなヘマはしてませんよね?」
#
('(゚∀゚∩「こんな浅く埋めたんじゃ、見付かっちまいますよ……」
なおるよの計画通り、夜明けに街を出た。
貸しラクダ屋に忍び込みラクダを勝手に借りて(ちゃんと代金は置いていった)、
半日かけて砂漠を移動した。──「ショボン」の死体を探すため。
全く当てにならない記憶を頼りにラクダを歩かせていたが、
何もない場所から手先がはみ出ていたため、発見は存外に容易だった。
それを見たなおるよの発言が上記のそれである。
ひどく呆れた様子で。
('(゚∀゚∩「ここらの砂は特に風に飛ばされやすいんですよ。
もっと深く埋めないと」
(;`・ω・´)「……お、おう」
なおるよはせっせと穴を掘った。
その細腕でどうやって、というスピードで掘っていく。
それを眺めながら、昨夜のクールを思い出した。
クールもすらりとした手足で女を封じ込めていた。彼女と同じ組織から派遣されているのだ、なおるよは。
口を塞ごうなどという考えは愚策だったかもしれない。
昨日は自分自身を役立たずなどと評していたが、嘘だろうなと思った。
布で包んだ「ショボン」を穴に転がしたなおるよは、首飾りを外して、それも穴へ落とした。
('(゚∀゚∩「僕、これといって信仰は持ってないんですよ」
(`・ω・´)「……嘘ついてたのか」
('(゚∀゚∩「うちの組織にいる信徒は大人ばかりだったので。
僕ね、一生懸命勉強したんですよ? 無駄でしたけど」
砂を被せる。あとは風が適当に均してくれる。
一仕事終えたなおるよが、美味そうに水を飲んだ。
それを見つめていると──
どうしようもなく、笑えてきた。
(*`・ω・´)「……ふ……」
(*`・ω・´)「ふ、ふふ、くっくっく……」
(*`^ω^´)「ははははは!」
('(゚∀゚∩「うっわ、何。どうしましたよ」
(*`・ω・´)「いや──いや、俺もお前もニセモノだったんだなと思うとよ、くっ、ひひひっ」
('(゚∀゚∩「僕はあなたとは事情が全く違いますけど……まあ嘘つきなのは一緒ですよ」
(*`・ω・´)「くくく……お前、ずいぶん猫かぶってたんだな……ぷふ、ふはっ。
しかもお前、ふっ……たとえ本物のショボンと合流してたとしても──
それはそれでまた、はは、どっちも猫っ被りときたもんだ」
('(゚∀゚∩「善人をみんな偽善者扱いするのは捻くれすぎだと思いますよ、僕」
(*`^ω^´)「うひゃひゃひゃひゃ!! ああ何だお前、やっぱガキか! そこら辺の考えは甘ェんだな!」
なおるよが怪訝な顔をする。
ますます笑えてきて苦しい。
ひいひいと息を引き攣らせながら、彼は「ショボン」の鞄から小瓶を出してみせた。
蓋を開け、中身をなおるよの頭にかける。
当然ひどく驚いたなおるよが、逃げるように後退った。
('(゚∀゚;∩「ぶわっ! な、何ですかよ! ……油?」
甘ったるい匂い。
なおるよは懐からハンカチを出して頭を拭った。
とろりとハンカチに絡む香油を見下ろし、いっそう顔を歪める。
(`・ω・´)「お姉ちゃん方が夜の商売でよく使う香油だ。
たまに男も使う」
('(゚∀゚∩「男が?」
(`・ω・´)「ケツ穴に塗るんだよ」
なおるよの顰めっ面が最高潮に達した。
いいかげん笑い疲れてくる。
彼はなおるよの背中を叩いて、小瓶を遠くへ放り投げた。
(`・ω・´)「年上から恵みを受けたら、そいつの言うことを聞かなきゃならない──だっけか?
大層な教えだよな」
('(゚∀゚∩「……まったくですよ」
なおるよの細い脚が、「ショボン」の埋まっている場所を何度も強く踏みつけた。
しばらくして満足したか、ラクダの鞍に腰を下ろす。
('(゚∀゚∩「じゃ、行きますよ」
(`・ω・´)「おう。町に着いたら、金は山分けにしてやるよ。
……や、待った、やっぱり6:4……いや……7:3で頼む」
('(゚∀゚∩「とりあえず中央へ着くまではあなたのものでいいですよ。
ただし昨日みたいな無駄遣いは許しません」
(`・ω・´)「あ?」
('(゚∀゚∩「はい?」
(`・ω・´)「中央? 行くのか?」
('(゚∀゚∩「行きますよ。そのための旅でしょう?」
(;`・ω・´)「はあ? いや、だから、俺はショボンじゃねえんだよ。
行ってどうすんだよ」
('(゚∀゚∩「上手いこと新政府に入れば、すぐには無理でしょうが、
いずれは今持ってる金額がはした金に思えるようになりますよ」
(;`・ω・´)「俺はこの金でしばらく遊べりゃそれでいいんだって」
('(゚∀゚∩「僕はそれじゃ駄目なんですよ!」
(;`・ω・´)「は?」
('(゚∀゚∩「世のなか金ですよ、金。
僕は神は信じませんがお金は信じてますよ」
('(゚∀゚∩「あなたが新政府に入って、僕を護衛として雇い続けてくれれば
僕にも組織にもたっぷりお金が入ります!
だから──」
なおるよの乗ったラクダが歩き出す。
彼も慌ててもう一頭のラクダに跨がり後を追った。
先を進むなおるよが振り返って、微笑む。
('(゚∀゚∩「これからもよろしくお願いしますよ、『ショボン様』」
(;`・ω・´)「……、……よろしく」
逃げたい、とは思ったが。
なおるよの乗っている鞍に宝石やら金やらが積んであるので、そうもいかなかった。
斯くして。
彼は今後も、「ショボン」を名乗ることとなった。
.
('(゚∀゚∩「まずは読み書きを教えないといけませんよ。
マナーや一般常識も。
あ、国民カードの指紋のとこ、削るか塗り潰すかしないとなあ」
('(゚∀゚∩「中央に着くまで、やることがいっぱいありますからね!
覚悟してくださいよ!」
(;`・ω・´)「……なおるよちゃん、あのよう、」
('(゚∀゚∩「ん? 何か文句が? 縛ってあっちの街に突き出しましょうか?」
(;`・ω・´)「……いえ」
3:偽者の貴族 終
173 :同志名無しさん:2015/05/17(日) 18:05:32 ID:pLGLZa9g0今日はここまで
(`・ω・´)と(´・ω・`)は父親が同じ。(本編には全く関わってこない設定)
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