私は仕事やプライベートで、鉄道にも飛行機にもよく乗る。

 

そして、どちらも大変好きな分野である。

 

空港にいったときには、展望デッキからTWRやアプローチを聞きながらタブレットのフライトレーダと実機を睨めっこしてるし、

鉄道も一番前や一番うしろに乗って、運転台のTIMS表示やスイッチなどに貼られたテプラをじっくり観察して新しい機能や改造がされてないかチェックすることをいつも怠らない(笑)

 

そんな私の行動をしってか、周囲から私は、鉄道と飛行機はどちらが安全なのかよく聞かれる。

私は迷わず鉄道と答えるのだが、世間にはいろいろ反論があるらしい。

 

そこで、私の大切なひとたちが尋ねてくる質問に応えるべく、どちらが安全か、勝手に決着をつけることにした。

まずなにをもって安全といっているのか、すなわち、何をもって安全でない、と思っているのか。

 

この手の質問をしてくる人たちの動機はたいてい、そのあと飛行機に乗る予定があって、聞いてくるようだ。

そして、私たちの周囲のひとたちのほとんどは、123の事故の頃から仕事しているし、羽田逆噴射や名古屋中華航空の事故をリアルタイムで見ているひとたちである。

だから、飛行機の怖いところ=トラブルがあると逃れられない死、というイメージがあることだろう。

 

さて、飛行機で死ぬ確率なんてゼロがいくつもつく確率で(それは確かなんだが)

世の中の交通機関で飛行機がもっとも安全で鉄道のほうが危ない、

なんて言うデタラメをいうひとがいるので、利用者が死ぬ確率で比較してみる。

 

日常生活でなければ意味がないので、日本で起きるレベルとする。

そうすると、飛行機で死ぬ確率は、鉄道で死ぬ確率の1200倍も高い。

 

もちろんいろいろな前提条件がある。

 

ここ37年間(1980年以降*)の


【飛行機】

分子

日本の管制圏内で発生した輸送交通の航空事故で死亡した乗客の数

(但し、東京ACC管制中の大韓航空機撃墜事件240名は含まない)

 

分母

日本の国内線すべての旅客総数

(便宜上、2016年実績×37年分)


【鉄道】

分子

日本国内を走行する鉄道会社の旅客列車に乗車中に列車事故で死亡した乗客の数


分母

日本国内のすべての鉄道会社の輸送人員数

(便宜上、2016年実績×37年分)



まず、分子となる事故による死者の数は、航空機が786、鉄道が170。航空機のほうが5倍くらい多い。

 

そう、航空機のほとんどは123の509名、鉄道のほとんどは尼崎の107名だ。

もし仮にそれらを除いても、航空機277、鉄道が63でやはり4倍強。(だが除く理由は無い)

 

分母となる乗客の総数は無論、鉄道のほうが多い。260倍くらい多い。

 

ゆえに、これらから私が勝手にみちびく、死なない率としては、

 

「鉄道のほうが、飛行機よりも1200倍死なない」

 

(*ちなみに、1980年以降とした理由は、それ以前は航空も鉄道も発展途上で、重大事故が連発しており今のレベルとは到底比べ物にならないから、未来の行動を決めるための統計値としては不適切であるため)

 

私の感覚とも一致するし、皆の感覚もこんなものではないか。


一人あたりの利用時間の長さの違いなどがあるので単純な比較は意味が薄れるが、承知の上で旅客数を揃えると、航空機では年間5000人も死ぬ計算になる。

どうだろうか、鉄道で脱線や衝突が頻発していて乗客が年間5000人も死んでいたとしたら、少なくとも今よりはるかに鉄道に乗ることをためらう筈だ。

つまり、怖いのは当たり前の感覚なのだ。

 

鉄道では列車同士の事故がもっとも危険と言われているが、いまのほとんどの鉄道は運転士がたとえタコでもイヌでも、不正さえしなければ、列車同士の事故はほぼ起こらない。

尼崎の事故以降、急曲線も自動的に強制減速するようになったので、あのような事ももう起きない。


ごく稀に法面崩壊や線路損壊などの自然災害があるかも知れないが、法面センサーや風除フェンスも充実してきているし、線路にヒビが一箇所でも入れば電気信号が途絶えて電車は止まってしまう。


やらかしたって停留所(分岐や行き止まりが無い駅のこと)に止まらないくらいのものだ。


真面目にやってる運転士には失礼だが、デクノボウが運転してるからといって死ぬことはないのである。

 

しかし、航空機は、数々のシミュレータをやってみているが、操作を間違えると結構簡単に落ちる。

人間の正確な確認や作業に頼るところが未だ大きすぎると思う。操縦者が有能で、慎重で、正確でないと簡単に大惨事が起きる。

半年前にもサンフランシスコで、エア・カナダ機があわやタクシーウエイで待機中の4機に向かって着陸しようとし、あわや10メートルの距離で回避した。勘違いで1000人が死ぬような作業なのである。


国内でも、記憶に新しい、広島空港アシアナ機の滑走路逸脱事故。ニュースなどでは滑走路逸脱がメインのように報じられたが、実のところ直前でゴーアラしようとしたが間に合わないで着地してしまっただけで、いわば墜落と呼ぶべきものの、地形が幸いして偶然、着陸のようなことになっただけなのだ。単なる滑走路逸脱とはまったく異なる。


成田でのフェデックス機も、貨物機だったから乗員だけの被害だったが、あれが旅客機だったら半分は死んでるケースだろう。


航空機は、ちょっと油断しただけでこうなるのである。


航空従事者の日夜の異常なほどの正確な慎重な確実な作業に支えられて、ようやく実現できている数字がこのレベルであって、

運転台で寝ていても駅に止まれて外から叩き起こされるような新幹線とは根本が違うことはしっかりと認識すべきと思う。