〈社説〉地銀の店舗半減 「1行」の責任 強く自覚を
県内の地銀「1行」時代の現実が姿を見せ始めた。
2025年度をめどに合併を予定する八十二銀行(長野市)と長野銀行(松本市)が、両行で現在155ある県内の店舗を、同年度中に85店舗ほどに半減させる計画を明らかにした。
それぞれの店舗数は現在、八十二銀が109で長野銀は46。八十二銀単独の店舗数よりも、合併後の方が減ることになる。
車で15分かつ10キロ以内に複数ある場合は統廃合を検討する、との基準で試算した結果という。
地域に密着した各店舗はこれまで、身近な金融サービスの最前線の機能を果たしてきた。利便性の低下を心配する声が聞かれる。
合併の背景には、地銀が置かれた厳しい経営環境がある。
低金利が常態化し、融資と預金の金利差「利ざや」は縮小した。都市銀に比べ地銀は地盤の人口減少の影響をもろに受ける。一定の合理化はやむを得ない。
とはいえ、地銀は地域経済になくてはならない存在だ。地域からあまりに遠ざかっては困る。
両行に強く自覚してもらいたいのは、合併後の銀行が県内金融に占めるシェアの大きさだ。
帝国データバンクの22年の調査によると、2行をメインバンクとする県内企業の割合は計61・7%にも上る。懸念されるのが、寡占化、競争不在の弊害である。
本来なら、健全な市場競争があってこそサービス水準は維持されるものだ。だが大きく変化する事業環境がそれを許さなかった。
両行の経営統合は、寡占状態となっても独占禁止法を当てはめない特例法を適用し金融庁から認可された。合理化の一方で地域の金融インフラを維持する責任があることを、再確認してほしい。
店舗の統廃合は、ネットバンキングの普及などで顧客の来店機会自体が減った現状に対応する側面も強い。だが高齢者を中心にネットに距離感のある人は多い。デジタル化の下での接点の築き方を工夫していく必要がある。
気になるのが、合併後の融資姿勢だ。長野銀の総資産は八十二銀の約10分の1。純利益も20分の1ほどと開きがある。長野銀から融資を受けてきた中小企業には、八十二銀の方が審査が厳しく、合併後に融資を受けにくくなるのではと危ぶむ向きもある。
長野銀はきのう、完全子会社として八十二銀の傘下に入った。合併まであと約2年。両行は、懸念の一つ一つと丁寧に向き合っていかねばならない。