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『機動戦士ガンダムNT』(冒頭23分)
公開:2018年11月30日 脚本:福井晴敏 監督:吉沢俊一 絵コンテ:吉沢俊一
演出:吉沢俊一 キャラクター総作画監督:金 世俊 メカ作画監督:小松英司


 U.C.0079 オーストラリア ゴールドコースト郊外
リタ 「はぁ……はぁ……」
ラジオ音声 「繰り返してお伝えしております。今日、グリニッジ標準時7時20分、サイド3はジオン公国を名乗り地球連邦政府に宣戦を布告。現在、地球周回軌道上で連邦宇宙軍との戦端が開かれているようですが、大規模な電波障害が起こっており、詳しいことは分かっておりません」
先生 「リタさーん! 戻るのよ、戻ってきなさーい! 勝手をしてはいけないのよ!」
ミシェル 「どいてよ!」
運転手 「お、おい!」
先生 「リタさーん! 戻って……あっ、あんたたち! だめよ! 戻りなさい! ヨナ君! ミシェルさん!」
 
リタ 「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
ミシェル 「リタ! どうしたの、急に飛び出してさ」
ヨナ 「早く帰ろう。先生に――」
ミシェル 「あっ」
 ヨナ 「何?」 
ヨナ 「うわ! いまの、何? ヨナ……ヨナも見たよね?」
リタ 「…………」
 ミシェル 「あんたがやったの? ねえ、リタ!」
 ヨナ 「これから起こること?」 
 リタ 「…………」
 ヨナ 「止められないの?」 
 リタ 「怖いことが始まる……哀しいことも」

 U.C.0086 海岸
リタ 「ねえ、天国って本当にあると思う?」
ヨナ 「無いよ、そんなの」
ミシェル 「だね。神様がいるって人間が信じてたときの幻でしょ」
ヨナ 「いつかは死んで、苦しいことも悲しいこともなくなる」
リタ 「そうかな? ニュータイプは違うんじゃない?」

 現在 ヨナの居室
ヨナ 「リタ!!」


 U.C.0097 ニューホンコンシティ ルオ商会ビル本館
マウリ 「もちろん疑っているわけではありません。しかし万一、その資料をあなたに見せたことが露見すれば、私は逮捕されるだけでは済まないのです。最悪――」
ミシェル 「大丈夫です。マウリ中将」
マウリ 「は?」
ミシェル 「あなたに危害は及ばない」
マウリ 「はぁ……」
ミシェル 「易に太極あり。太極、両儀を生じ、両儀は四象を生じ、四象は八卦を生ず。陰陽二元からなる万物の運行を筮竹を使って探り出そうとするのが易。計算を使って確率を割り出すコンピューターと変わりありません。違うのは、その結果を読み解くのに易者の直感が必要とされるところ」
 マウリ 「ははあ、ミシェル様のお見立てであれば、なにとぞ、はい」
 ブリック 「…………」

 車内
副官 「よろしいのですか、信用して」
 マウリ 「ん?」
副官 「ルオ・ウーミン会長の次女といっても、本当の娘ではないのでしょう? ウーミン会長が病で臥せってからは、実子のステファニー社長が追放を企てているという噂も……」
 マウ 「ははっ。当たるらしいぞ、彼女の八卦は」
副官 「は?」
マウリ 「戦後の激動にあって、ルオ商会は一度として情勢を読み違えたことはなかった。グリプス戦役ではエゥーゴにつき、シャアの反乱ではいち早くラサから引き揚げて……」
副官 「まさか占いで?」
マウリ 「全部じゃないだろう。しかし事を決める際、ルオ・ウーミンがミシェルに伺いを立てていたのは事実らしい」
副官 「ですが、グリプス戦役なんて10年も昔の……その頃は子供でしょう、彼女」
マウリ 「そう。"奇蹟の子供たち"だ」
副官 「奇蹟の……?」
マウリ 「戦時中の与太話だよ」


 ルオ商会ビル本館 事務室
ブリック 「RX-0、ユニコーンガンダム。人の意志に感応する金属、サイコフレームで象られたモビルスーツ。しかし、いまやその名でこの機体を呼ぶ者はいません。……シンギュラリティ・ワン」
ミシェル 「技術的特異点。その登場によって、人類社会を根底から変えてしまうようなテクノロジー。未来予測の限界点」 
ブリック 「これをテクノロジーと呼んでいいものかどうか」
ミシェル 「ん?」
ブリック 「この波動のようなものの正体は、発生のメカニズムともども分かっていません。確かなことは、この波動を浴びた連邦軍機はことごとく、ジェネレーターが分解されていたそうです。そう、まるで組み立て前に時間が戻ったように」
ミシェル 「…………」
ブリック 「『ラプラスの箱』の鍵と目され、連邦とジオンの双方から追われたガンダム。それは、その争いの中で未知の力を示し始め、ついには人知の及ばぬ存在になった。サイコフレームがパイロットのニュータイプ能力と感応した結果か、何であれ制御できない兵器は兵器とは言えません」
「ミネバ一党が所有するシンギュラリティ・ワンと、連邦帰属の同型2号機は、監査人立ち合いのもと解体・封印。偶然手に入れてしまった神の力を前に、人類は尻込みをするしかなかった。しかし……」
 同・地下室
ミシェル 「お父様、行ってまいります」
  「時をも操る力……必ず手に入れて、もう一度……」
 同・事務室
ブリック 「コロニー落としを事前に察知、街を救った"奇蹟の子供たち"……」



 北米 コロラド 山岳地帯
マーサ 「移送のたびにこの騒ぎ……私の身柄にそれほどの価値はないって、いい加減分かりそうなものだけど」
情報局員 「そう謙遜したものでもないでしょう。ラプラス事変にビスト財団がどう関わったか、あなた以上に知る人間はほかに――」
 マーサ 「うッ!?」 
情報局員 「何だ、何事だ!」
護衛兵(通信) 「銃撃です!空から!」
  《ディジェ》
VS
《アンクシャ》《ジェスタD型護衛隊仕様》
情報局員  「囲ませるな!モビルスーツを散開させろ!」
 ディジェ
ヨナ 「こんなやり方!」
ディジェ隊
リーダー(通信)
「ヨナ、お前は後方支援だ!」
ヨナ  「しかし!」
ミシェル(通信)  「今あなたに怪我をされるわけにはいかないのよ」
ヨナ 「くッ!」
  《ディジェ》
VS
《グスタフ・カール》
 
マーサ 「うっ!」
情報局員  「貴様らーっ!」 
 マーサ 「ひぃっ!」 
ミシェル 「マーサ・ビスト・カーバイン。私を覚えていて?」
 マーサ 「ルオ商会の……ミシェル・ルオ? なぜこんな!?」
ミシェル 「アナハイムもビスト財団も貴女を見捨てた。私なら貴女に新しい人生をあげられる」
マーサ 「その対価は?」
ミシェル 「白き一角獣と黒き獅子……彼らに続く3人目の兄弟」
 マーサ 「……フェネクス」
ミシェル 「軍の記録は抹消されても、貴女はあの事故に立ち会っている」
 ディジェ
ミシェル(モニタ) 「教えて、すべてを。貴女は私を断れない」
 ヨナ 「断れない……」 
 U.C.0087 研究所
ミシェル(回想) 「分かるでしょ、ヨナ! あたしたちは本物じゃない。"奇蹟の子供"はたった一人! こうするしかない。3人とも生き残るには、こうするしか!」
 ディジェ
ヨナ 「嘘つき……」




 サイド4近傍 暗唱宙域
《ジェスタ(シェザール隊仕様)》部隊
VS
《フェネクス》
イアゴ  「逃がすか……! ちっ」 
  「くっ、フェネクス……。パベル、デラオ! スラスターだけを狙えるか!」
フランソン  「アマージャ、見えてるな!?」
アマージャ  「おうよ!」
フランソン  「速度、距離、追尾センサー……ロック!」
アマージャ  「また加速した!?」
フランソン  「なんでパイロットは耐えられるんだ!」
タマン  「あの青い光、スラスターの光じゃないですよ!」
イアゴ  「各機、奴の足を止める! 遠慮するな! 一気にいけ!」
  「RX-0、3号機……あのユニコーンの3人目の兄弟……どこから来た? どこへ行く? その腹の中には誰が――」
ミシェル(通信)  「シェザール隊各機、聞こえるか? ターゲットを追い込む。合図と同時に散開、指定座標オスターに再集結せよ」
イアゴ  「誰だ! 所属は!?」
ミシェル(通信)  「指示に従わなかった場合の安全は保証しかねる。10……9……8……」
イアゴ  「な、えっ!? シェザール001より各機、ただちに散開!」
ミシェル(通信)  「7……6……5……4……3……2……1……」
イアゴ  「足を止めた!?」
タマン  「後方より高熱源体接近!」
イアゴ  「えっ!?」
タマン  「隊長、あれは!?」
 イアゴ 「知らん! 何も聞いてないぞ!」 
  「指定座標オスカーに……ガンダム?」
 ナラティブガンダム
ヨナ 「う……うぅ……!」
《ナラティブガンダム》
VS
《フェネクス》
 輸送船ローズバット ブリッジ
通信士 「ナラティブ、さらに増速! ターゲットとの相対距離近づく!」
ブリック 「パイロットの生体、精神反応、安定しません。距離を詰めていられるのは200秒が限界かと」
ミシェル 「逃がさない……」 
 ナラティブガンダム
ミシェル(通信) 「ナラティブ、ハイメガ砲を使いなさい。このままでは振り切られる」
ヨナ 「今はだめだ。避けられる! くぅッ!」
「揺動修正、次弾着弾、1万2000、上底よし、射撃……今!!」
「いっけえぇ――――!!!」
「捕らえた!?」
「くっそ!」
「ぐうおぉ―――!!!」
 輸送船ローズバット ブリッジ
ブリック 「危険です、これ以上は」
ミシェル 「ナラティブ! さっさとハイメガ砲を使いなさい!」
 ナラティブガンダム
ミシェル(通信) 「その速度でコックピットから放り出されたら、死ぬのはあんたよ、ヨナ!」
 ヨナ 「くッ!」
「くぅおぉぉ――!!」
 輸送船ローズバット ブリッジ
ミシェル 「撃って!」
 ナラティブガンダム
ヨナ 「リタ! リタなんだろ! リタなら話を聞いてくれ!」 
 輸送船ローズバット ブリッジ
ヨナ(通信)  「おれだ、ヨナだ! ヨナ・バシュタだ! 聞こえているんだろう、リタ!」
 ナラティブガンダム
ヨナ 「いまさら遅すぎるってわかってる。でも、おれは――」
イアゴ(通信) 「ガンダム、聞こえるか! どこのどいつか知らないが、乗せられてやる!」
 ジェスタ(シェザール隊仕様)
イアゴ 「そのまま指定座標まで追い上げろ。ようやく見つけた不死鳥だ、ドジんなよ!」
 
リタ(魂) 「ねえ、天国って本当にあると思う? 天国はどうか分かんないけど、わたし、魂って絶対あると思うな。今が全部じゃない。何度だって生まれ変わるの」
 ナラティブガンダム
ヨナ 「リタ……」
 ジェスタ(シェザール隊仕様)
イアゴ 「バカ! 全機散開! 散開!」
 
リタ(魂) 「次に生まれ変わるとしたら、わたし、鳥になりたいな。ヨナは?」
 ナラティブガンダム
ヨナ 「…………」



 サイド3 メガラニカ
ミネバ 「危険な火遊びをしているようですね、モナハン・バハロ大臣。"袖付き"の残党を動かして連邦の作戦に介入しようなどと」
モナハン(通信) 「さすがよい耳をお持ちだ。しかしこれは高度に政治的な問題でして。メガラニカを我がジオン共和国の領域内に留め置くだけでも、不断の政治的努力がいるのです。ラプラス宣言で宇宙移民者独立の機運が高まっている中、姫様の居場所が露見するようなことがあれば……」
ミネバ 「すべては戦争回避のため、ということですか」
モナハン(通信) 「そうご理解いただければ」
ミネバ 「わかりました」
モナハン(通信) 「あっ」
ミネバ 「ジンネマンをここへ」
 
モナハン 「ふむ……」
秘書 「大臣」
モナハン 「あれで大人しくするタマではない。メガラニカから目を離すな。ゾルタンにも警告を」
秘書 「はい」
モナハン 「ふんっ」



 クラップ級巡洋艦ダマスカス 整備デッキ
アマージャ 「おい、なんで俺たちが後回しなんだよ」
タマン 「知りませんよ。ナラティブが最優先だって」
アマージャ 「ナラティブ?」
 
イアゴ 「艦長」
アバーエフ 「絡むな、イアゴ隊長。俺も被害者だ」
イアゴ 「何なんです?」
アバーエフ 「増援だ。実験中の新装備を持ってきたから、ありがたく受領しろとさ」
イアゴ 「増援? 『不死鳥狩り』は参謀本部直轄の機密任務ですよ」
アバーエフ 「その参謀本部が送り込んできたんだ」
イアゴ 「アナハイム社の連中ですか」
アバーエフ 「いや、ルオ商会だ」
パベル 「ルオ商会って、あの地球の大商社の?」
デラオ 「なんだってまた」
アバーエフ 「アナハイムから委託されて、あのガンダムの実験運用を行うそうだ。まあ仲良く……ん?」
イアゴ 「…………」
デラオ 「すんげー重装備」
アマージャ 「まともじゃねえな。強化人間じゃねえの? あり得るでしょ。フェネクスと同じですよ」
フランソン 「ガンダムにはガンダム、強化人間には強化人間か」
パベル 「俺ら凡人は、どうすりゃいいんすかね」


 同・艦内通路 重力区画
ブリック 「申し訳ありません。この区画は我々が借り受けておりますので」
イアゴ 「俺はここのモビルスーツ隊の隊長のつもりなんだがね」
ブリック 「承知しておりますが、スーツのメンテナンスは機密事項として許可を」
イアゴ 「……分かったよ」


 同・整備デッキ
メカニック 「おい、お前さあ」
タマン 「見学、見学! いいでしょ」
 
パベル 「オプションなんだ、あれ」
フランソン 「ご本尊が拝めるな」
 
タマン 「あれ? なんつーか、痩せっぽちだな」


 同・応急操舵室
医師(盗聴) 「(……ザザ)……バイタルは正常の範囲内ですが」
ミシェル(盗聴) 「分かった。外してちょうだい」
イアゴ 「へへっ」
 同・医務室
ミシェル 「さっさと着て」
「なんで逃がしたの」
ヨナ 「逃げられたんだ」
ミシェル 「嘘つき」
ヨナ 「おまえほどじゃない」
 同・応急操舵室
ミシェル(盗聴) 「そう、わたしほどじゃない。あんたは嘘が顔に出る。昔から」
 同・医務室
ヨナ 「あのまま追い込めば撃墜される可能性があった。生きて捕獲しなけりゃ意味がないんだろ」
ミシェル 「その程度で墜ちるものなら、最初からいらないのよ! 分かってるでしょ? 彼女はもう人間じゃないのよ。"奇蹟の子供"が本物の……」
ヨナ 「…………」
ミシェル 「私はその力を手に入れたい。その権利はある。みんな私のしたことなんだから。あの子はいつも私の欲しい物を持ってる」
「休んでおきなさい。待っているつもりはない。今度はこちらから仕掛ける」
ヨナ 「…………」


 戦艦グルトップ ブリッジ
ゾルタン (W.A.モーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」ト長調 K.525 の鼻歌)
「フンッ」


 メインタイトル『機動戦士ガンダムNT』

 エンドロール 主題歌「Vigilante」









 

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