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episode5「黒いユニコーン」
発売:2012年6月8日 脚本:むとうやすゆき 監督:古橋一浩 絵コンテ:村瀬修功/古橋一浩 演出:佐藤照雄 総作画監督:高橋久美子/玄馬宣彦/茂木信二郎


 南太平洋上空
トリントン基地管制
(通信)
"Attension, incoming VC202!"
(接近中のVC202に告ぐ!)
"This is Torrington Control. State your affiliation and objective."
(こちらトリントン・コントロール。所属と目的を明らかにされたし)
財団・通信士
(通信)
"Torrington Control, we are a transport belonging to the Vist Foundation, on a special mission from Staff Headquarters."
(トリントン・コントロールへ。こちらは参謀本部の特命任務を受けたビスト財団所属の輸送機)
"We are now delivering a prototype mobile suit. We're sending it you on a Base Jabber."
(現在、試作モビルスーツを搬送中。ベースジャバーに搭載しそちらへ向かわせた)
"Transmitting operation code from Staff Headquarters."
(参謀本部からの作戦コードを送る) 
トリントン基地管制
(通信)
"Operation code received. Special mission queried and confirmed."
(作戦コード受領。特命任務、照会、確認した)
"Approaching Base Jabber, descend to regulation atitude.
We'll guide you into final approach course――"
(進入中のベースジャバーへ、規定の高度まで降下せよ。最終進入コースへ誘導――)
財団・通信士
(通信)
"――Now commencing mission. Detaching suit... and deploying!"
(――これより任務を遂行。機体を分離、投下する!)
トリントン基地管制
(通信)
"Mission? What mission!?"
(任務? 任務とは何だ!?)
"Hey! Approaching Base Jabber! Follow our control instructions!"
(おい! 進入中のベースジャバー! こちらの管制指示に従え!)
  "I repeat, follow our control instructions!"
(繰り返す! 管制指示に従え!)


 メインタイトル『機動戦士ガンダムUC』


 トリントン市街 ユニコーン/デルタプラス
リディ 「ぁ……黒い……!」
バナージ 「ユニコーン……!?」
【《バンシィ》 NT-D発動】
リディ 「友軍……? いやっ」
「逃げろバナージっ!」


 サブタイトル episode5「黒いユニコーン」


 ラー・カイラム ユニコーン
バナージ 「あ……」
「……はッ!」

 ラー・カイラム MSデッキ
黒服(通信) 「ハッチ、開きません」
アルベルト 「解除コードは伝えたはずだ。さっさと引きずり出せ!」
リディ 「おい! なんであんたがここにいる! あの黒いユニコーンは何だ!?」
アルベルト 「あぁ……バンシィのことですな。一言では言えない事情があるのですよ」
リディ 「あっ」
アルベルト 「早くしろ!」
リディ 「待てよ! ――ぅ、ぐっ!?」
「ぐはッ……!」
アルベルト 「これは家庭の問題でもある。他人の家の問題には、軍といえども口を出せるものではないでしょう」
リディ 「家だって……?」
アルベルト 「お恥ずかしい話だが、彼……バナージ・リンクスは……父、前党首カーディアス・ビストが愛人に産ませた子供です」
リディ 「なッ……」
アルベルト 「ですので、詮索はご遠慮を」
リディ 「バナージが……」
黒服(通信) 「ハッチ、開きます」
リディ 「…………」


 ガルダ機内 マーサ居室
アルベルト(通信) 「あらゆる干渉を拒絶して、システムは完全に沈黙しています」
マーサ 「は……それで?」
アルベルト(通信) 「おそらく、バナージ・リンクスがロックをかけたのではないかと……」
「彼の認証がなければ、ラプラス・プログラムが新たに開示した情報を得ることは出来ません」
マーサ 「血のなせる業かしらね。気付いていたの?」
アルベルト(通信) 「えっ……いえ……彼が生まれた時、私は寄宿学校に……。まさかあの少年が――」
マーサ 「頑固なところがそっくり」
「彼女に説得してもらった方がよさそうね」

 ガルダ機内 客室
マーサ 「オードリー・バーン」
「偽名にしても素敵な響きですわね」
ミネバ 「私の移送は、ローナン・マーセナス議長も了解してのことか」
マーサ 「無論です」
「ローナン議長とは同じ目的のために働いておりますから」
ミネバ 「…………」
マーサ 「…………」
ミネバ 「…………ぁっ」
マーサ 「『ラプラスの箱』を封印いたします」
「殿下もそれを望んでネオ・ジオンを出立なされたと。ほどなく『箱』の鍵――ユニコーンガンダムがこのガルダへ運ばれてくる。それまではパイロットの少年がその守人となってくれます。殿下も知らない仲ではありませんわね。バナージ・リンクス。昨日の戦闘で開示された座標データをロックし、秘匿しているそうです。愚かな父親の妄想を妾腹の子が受け継いで、どれだけこちらが迷惑していることか……」
ミネバ 「……! バナージの……あの方が……」
マーサ 「私と組んではいただけないかしら、ミネバ殿下」
ミネバ 「……バナージを説得しろと?」
マーサ 「悪いようにはしませんよ。あなたに付き従うジオン残党の立場も保証します」
ミネバ 「ならばまず、マリーダ・クルスの身柄を返してもらいたい」
マーサ 「マリーダ中尉――プルトゥエルブが私たちの下で働いているのは、彼女自身の意志です」
ミネバ 「無理やり再調整しておいて……」
マーサ 「えぇ、させていただきました。かつてネオ・ジオンがそうしたように」
ミネバ 「……ッ」
マーサ 「あの憐れな生き物を造ったのは私たちではありません」
「私は彼女の内にあるものを解き放って、復讐の機会を与えてあげただけです」
ミネバ 「復讐……」
マーサ 「ええ。自分のようなモノを造った世界、男たちの論理が支配する世界への復讐」
ミネバ 「…………」


 ラー・カイラム ブリーフィングホール
ダリル 「最低限の情報は下ろしてもらわないと、艦は守れません」
ワッツ 「民間人に好きにやられちゃあ、たまらんですよ」
ブライト 「今の我々は、参謀本部の意向で動いている。財団もその一部と考えてもらっていい」
「ロンド・ベルの任務に変更はない。地球に進入したネオ・ジオンの船を捜索するのが、目下の本艦の仕事だ。もっとも、当初の情勢が変わってきたことは間違いないがな」
リディ 「…………」
ブライト 「捕獲したガンダム・タイプを、シャトルで空に上げる。それが済めばビスト財団も本艦から引きあげる」
「思うところはあるだろうが、各自、軽挙妄動は慎め。以上だ!」

 ラー・カイラム 艦内通路
メラン 「ガルダに運び込まれた物資、貴賓用の物ばかりだということです」
ブライト 「ルオ商会の情報通りということか……。彼と話はできるか?」
メラン 「あっさり了承されました。盗聴の危険はあると思ってください」
ブライト 「自分の艦なのだがな……」
リディ 「…………」

 ラー・カイラム 部屋
ブライト 「ちょっと話がしたい。いいかな?」
バナージ 「…………」
ブライト 「ブライト・ノアだ。このラー・カイラムの艦長を務めている」
「尋問官の手を焼かせているようだな。機体ともどもだんまりというわけか。技術スタッフが頭を抱えているよ」
バナージ 「誰にも見せちゃだめなんです。あれを誰かに知られたら、またその場所が戦場になって、多くの人が死ぬ。ロニさんだって……」
ブライト 「そのことは、そのまま黙っていればいい」
「あの偽装貨物船を脱出してきたのか?」
バナージ 「脱出っていうのとは違います。送り出してくれたって思ってますから」
「あんな作戦、キャプテンだって納得してなかったんです……」
ブライト 「そうだろうな。あの船の動きには、そんな気分があった」
「君は捕虜として扱われてはいなかった。自分の意思で行動する自由があったということか?」
バナージ 「それは……そうです」
「連邦の人たちが言うような、敵っていう感触は持っていませんでした」
ブライト 「なぜかな?」
バナージ 「おれは、軍人じゃありませんから……」
「敵味方っていう人の区別の仕方にはなじめないし、でも、そんな必要もない空気が、あの船にはあったんです」
ブライト 「そうか……よくわかった。ありがとう」
「あきらめるなよ。君の目には力がある。困難を糧にできる強い目だ。あきらめずにいれば、必ずチャンスをものにできる」
バナージ 「そんな力、おれにはありませんよ。全部偶然なんです。ユニコーンに乗ったのも、ここでこうしているのも……」
ブライト 「本当にそうかな?」
「その時、君の目の前にガンダムがあったことは偶然かも知れない。これまでガンダムに乗ってきた者たちも、皆そうだった。だが、ガンダムに乗るかどうかは自分で決めたことであって、偶然ではないはずだ。違うか?」
「その時、君にガンダムに乗る決意をさせたものは何だ」
バナージ 「……!」
「……助けたい人がいるんです。オードリー・バーン……みんなが、ミネバ・ザビって呼んでいる女の子です!」


 ラー・カイラム 第二通信室
ブライト 「確かなのか。ゼネラル・レビルが動き出したというのは」
ベルトーチカ
(通信)
「試験航海中に参謀本部から直命を受けたようです。明らかに隠密任務をやらせるつもりですね」
ブライト 「狙いはネェル・アーガマ……なるほど、それがローナン議長を釣った餌か」
「『箱』の秘密を知った者を処分する……ビスト財団と参謀本部にも折り合うところがあったわけだ」
ベルトーチカ
(通信)
「どうなさるおつもりですか?」
「ゼネラル・レビルは地球艦隊再建の要。狙われたらネェル・アーガマはひとたまりもありません。そちらの直接連絡が難しければ、私たちルオ商会を通して危機を伝えることも……」
ブライト 「ベルトーチカ。"袖付き"の偽装貨物船に連絡を取りたい」
メラン 「艦長?」
ブライト 「連邦とネオ・ジオン双方にコネを持つルオ商会なら出来るはずだ」
ベルトーチカ
(通信)
「本気ですか、ブライト艦長?」
ブライト 「交渉するのに適役もいる。とびきりジオン嫌いな奴だがな」

 ガランシェール ブリッジ
カイ(通信) 「あんたらにとっても悪い話じゃないんじゃないか? いや、千載一遇と言ってもいい……と、思うがね」
「『ラプラスの箱』の鍵が搬送されたら、財団の連中はおたくらの姫様ごと宇宙(そら)へ上がるつもりだ。そうしたらもう手出しできなくなる」
ジンネマン 「どうして、あんたらを信用できる」
カイ(通信) 「参謀どもと結託して、ビスト財団が軍をいいように動かしているのは面白くない……そう考える現場の指揮官がいて、一方には財団の商売敵ともいえるルオ商会がいる。『ラプラスの箱』とやらの正体が何であれ、これを機に連邦と財団の癒着が深まるって結末は見たくない」
ジンネマン 「それを防ぐためならネオ・ジオンも利用する……か」
フラスト 「キャプテン……」
ジンネマン 「ベースジャバーを1機用意してもらいたい」
カイ(通信) 「あたってみよう。ゲリラ屋なりのやり方がある、というわけだな?」
ジンネマン 「ただ、我々だけでは心もとない。奇襲をかけて姫様を奪還できても、離脱できないのでは意味がない」
カイ(通信) 「だから最初から共同作戦だと言ってるでしょ。応援は差し向ける。「あんたらとは、因縁浅からぬ艦だろうがね」

 ネェル・アーガマ 艦長室
ミヒロ(通路) 「……ッ」
オットー 「とにかくな。こういう時はまず、落ち着くことだ」
「待機を命じられて20日近く。苛立つのはわかる。しかし、それぞれの長たる諸君らには常に落ち着いた行動を――」
ミヒロ 「艦長! 至急電です!」
オットー 「ふむ……ん?」
「……ぉっ!?」
「(ズズズズ)……ぅぬ……」
ミヒロ 「…………」
レイアム 「…………」
オットー 「……ぬ、ぅ……」
「ぶほぉっ……!」
ミヒロ 「きゃぁっ!」

 ラー・カイラム 艦長室
ブライト 「笑うなよ。あの子の直感に賭けてみるさ」

 ラー・カイラム MSデッキ
アルベルト 「…………」
作業員A 「ガルダまでの移送に、なんでパイロットを乗せるんだよ」
作業員B 「上の考えることは、よくわからんな」
リディ 「ハァ……」
バナージ 「……! リディ少尉!」
「オードリーはどこです! 一緒に地球に降りたんでしょう! 彼女はどこにいるんです! リディさん!」
「ハァ……ハァ……ハァ……ぁっ!?」
ブライト 「…………」
「少し借りるぞ」
黒服A 「…………」
「……うぉっ!?」
ダリル 「おっとぉ、地球で転ぶと怪我するぜ」
黒服B 「ぬ……!」
ワッツ 「わかってねえなぁ。この艦の艦長は、あの人なんだよ」
黒服ABC 「…………」
 同・壁際
バナージ 「オードリーが……!?」
ブライト 「間違いない。ガルダへの空中輸送の隙をついて、"袖付き"のガランシェールが奪還作戦を決行する」
「彼らと共闘しろ。宇宙(そら)に上がって、救援に来るネェル・アーガマと合流するんだ。それ以外に『箱』の鍵を謀略の手から遠ざける方法は……彼女を救う方法はない。……やれるか」
バナージ 「やります」
ブライト 「私にできるのは、ここまでだ」
「……かつてガンダムに乗った者たちと同じく、君もガンダムに選ばれたのだと思いたい。いつもそれは、結果的に必然だった。良くも悪くも、だがな」
バナージ 「ブライト艦長……」
ブライト 「あとは君次第だ。状況に潰されるな!」
バナージ 「……!」
ブライト(心の声) (絶望を退ける勇気を持て。君がガンダムのパイロット……ニュータイプであるなら)

 ユニコーン
バナージ 「オードリー……」
「行くよ……!」



 ガルダ ミネバ居室
マーサ(回想) 「そのプライドの高さには、敬意を表するわ」
「でもそのプライドが人を殺すこともある。お分かり? あなたはたった今、あなたを慕うジオンの生き残りたちから未来を奪ったのよ。ビスト財団と共生するという、唯一の未来をね」
「プライドで男を殺せるのも女……いい女になることね。バナージ・リンクスという坊やのことも、肥やしにして」
ミネバ 「…………」
「バナージ……」


 ジェスタ
ダリル 「艦長、あのガキに何を……」
「妙な騒ぎの巻き添えは御免だぜ?」
ワッツ 「お坊ちゃんは知ってんのかな」
ナイジェル 「いや、あいつも置いてきぼりだろう。ブライト艦長のやることだ、何があっても慌てるな」
 デルタプラス
ブライト(通信) 「リディ少尉」
「ユニコーンを頼む。今はあれを守ることが、お前にとってもプラスになる。父上の判断は父上のものだ。お前は若い。自分の判断で行動しろ」
リディ 「了解」
「言われるまでもない……」
「あそこにミネバがいるなら……!」
ナイジェル(通信) 「出るぞ!」

 ユニコーン/バンシィ
バナージ 「…………」
「…………!」
マリーダ(通信) 「武装はすべて解除してある。無駄な抵抗はしないことだ」
バナージ 「マリーダさん!」
マリーダ(通信) 「私はプルトゥエルブ。マリーダなどという名ではない」
バナージ 「何を言ってるんです! どうしてそんなモビルスーツに乗ってるんですか!」
「キャプテンやみんなも心配して……!」
マリーダ 「気安く……話しかけるな」
バナージ(通信) 「おれですよ! バナージ・リンクスです!」
「キャプテンと……あなたのマスターと一緒に、地球に――」
アルベルト(通信) 「プルトゥエルブ。そいつのことは気にするな」
マリーダ 「了解、マスター」
アルベルト(通信) 「不調はないか」
マリーダ 「機体は万全です」
アルベルト(通信) 「お前自身のことだ。少しでも不調があるなら報告しなさい」
マリーダ 「はい」
アルベルト(通信) 「苦しい時は我慢するな? 辛ければ辛いと言っていい――」
マリーダ 「それは命令ですか」
アルベルト(通信) 「えっ……ぅ……」
バナージ 「マリーダさん……」
「……!」
「あれか……」

 空中
ガルダ/ 《アンクシャ部隊》 出撃
ガランシェール/ 《ギラ・ズール》待機

 ラー・カイラム ブリッジ
クルーA 「例のガランシェールです! ガルダの防衛隊が応戦中!」
「戦闘ブリッジ、開きます!」
メラン 「まだだ。ナイジェル隊各機に状況を確認させろ」
「ユニコーンをガルダに送り届けるのが我々の任務だ。戦闘に加わる必要はないとな」

 ジェスタ/デルタプラス
ナイジェル 「始まったか……」
ワッツ(通信) 「性懲りもなく、ジオンの奴ら!」
ナイジェル 「各機、陣形を維持! ユニコーンから目を離すな!」
リディ 「邪魔をして……!」

 ガランシェール ブリッジ
ジンネマン(通信) 「もっと船を近づけろ!」
フラスト 「本当にやるんですか!?」
ジンネマン(通信) 「中に入っちまえばこっちのもんだ」
フラスト 「まったく、歳を考えなさいよ! ……ッ!」

 空中
《ガランシェール》 《ギラ・ズール》
 VS
《ジェスタ部隊》

 バンシィ/ジェスタ
マリーダ 「何だ、この感覚は……」
バナージ(声) 「キャプテンとマリーダさんを、戦わせるわけには……!」
マリーダ 「……!」
《ユニコーン(U-MODE)》
 VS
《バンシィ(U-MODE)》
マリーダ 「チッ……」
ダリル(通信) 「ワッツ!」
ワッツ 「あぁん? ……おぉっ!?」
「何ぃ!」
ダリル(通信) 「ワッツー!」
 バンシィ/ユニコーン/ジェスタ
バナージ(通信) 「マリーダさん聞いてくれ! キャプテンが来ている。ガランシェールのみんなが、オードリーを……! ……!?」
《ユニコーン(U-MODE)》
 VS
《アンクシャ》
ナイジェル 「殺生はせずか……」
バナージ 「……!」
「乗り移るつもりなのか……」
 バンシィ
アルベルト(通信) 「プルトゥエルブ!」
マリーダ 「……はっ」
アルベルト(通信) 「ガルダに張り付いているベースジャバーを墜とせ! そいつは敵だ!」
マリーダ 「……了解」
バナージ(通信) 「だめだよ、マリーダさん!」
「……ッ!」
 デルタプラス
リディ 「あいつ、また……」
アンクシャA(通信) 「ラー・カイラムからの護衛はどうした!?」
アンクシャB(通信) 「全機下降離脱中! 損傷・落下した僚機の救援にあたっています!」
ワッツ(通信) 「あいつ、俺を踏み台にしてぇっ――」
ナイジェル(通信) 「海面までは付き合わんぞ……」
リディ 「そういうことか……みんなグルかよ」
「させるかぁっ!」

 ガルダ ミネバ居室
ミネバ 「バナージ……」
黒服(女性) 「殿下、シャトルの打ち上げを早めます。一緒においでください」
ミネバ 「…………」

 ユニコーン/バンシィ
マリーダ(通信) 「マスターはパイロットとコックピットが確保できればいいと言った」
バナージ 「目を覚ましてくれ! あなたのマスターは、キャプテンはそんなこと……!」
マリーダ 「うぅ……っ!」
バナージ(通信) 「あなたとキャプテンが敵同士になるなんて、絶対にあっちゃいけない!」
マリーダ 「プル……トゥエルブ……マスターは……アルベルト・ビスト……」
バナージ 「違うよ! あなたはマリーダさんだ! あなたのキャプテンは、ガランシェールのジンネマン大尉だよ!」
マリーダ 「……!? ぁ……っ……」
アルベルト(通信) 「プルトゥエルブ! 落ち着いて私の言葉だけを聞け。それ以外は、すべてお前を混乱させる敵の言葉だ!」
バナージ(通信) 「思い出してくれ! あなたとキャプテンは、あんなに信じて支え合って……」
アルベルト(通信) 「そいつの言葉を聞く必要はない! ガンダムはお前の敵だ! 早く捕まえて、ここへ連れて――」
マリーダ 「う……うるさい!!」
 ガルダ 格納庫
アルベルト 「プルトゥエルブ!」
マーサ 「ハッチを閉められないの!?」
ミネバ 「…………」
一同 「……!」
リディ 「君を迎えに来た」
ミネバ 「……!」
 ガルダ 機内通路
ジンネマン 「ん? 何だ……」

 空中
【《バンシィ》 NT-D発動】

 ユニコーン/バンシィ
バナージ 「マリーダさん……!」
マリーダ 「ガンダムは……敵!!」
バナージ 「……! ダメだ、ユニコーン! 引っ張られるな……! こらえろ……!」
《ユニコーン(U-MODE)》
 VS
《バンシィ(D-MODE)》

 ガルダ 格納庫
リディ 「早く、デルタプラスに――」
マーサ 「リディ少尉、ご自分の立場が分かってらっしゃるのかしら」
リディ 「分かっているからこうしている。ローナン・マーセナスの息子を殺せばどうなるか、そっちこそ分かっているんだろうな。バナージとユニコーンはくれてやる。だが彼女だけは返してもらう」
「何してる、早く!」
ミネバ 「私を連れ出して、それからどうするつもりなのです」
リディ 「ここを出てから考えればいい!」
ミネバ 「あなたは、何を守りたいのです。私という人間ですか、『ラプラスの箱』の秘密ですか、それとも家の名誉――」
リディ 「家なんかどうだっていい!」
ミネバ 「……!」
リディ 「ラプラスが爆破された百年前のその時から、すべてが狂い始めた。おれも、親父も……。ここにいる連中も、みんなその狂った結果に踊らされてるんだ。でもどんなに狂った世界でも、そこには百億の人間が生きていて……どうしようもないじゃないか。守っていくしかないじゃないか。ジオンの連中みたいに、何もかもひっくり返すわけにはいかないんだよ」
アルベルト 「そうだ、『箱』の秘密は守らなければならない。それはミネバ様も承知だ。だからこそ協力を――」
リディ 「黙れ! すべての元凶は、お前たちの宗主だ!」
「あんたらの宗主……サイアム・ビストが『箱』を手に入れたのは偶然に過ぎない。連邦政府初代首相の暗殺と、それを機に始まった強硬政策を逆手に取ってのし上がったまではよかった。ジオンがスペースノイドの独立を叫び一年戦争が起きて、すべてが変わった。レールに乗った連邦政府も、そいつを敷いたサイアム自身も、その時になってようやく気づいたんだ。自分たちがしてきたことの意味、『ラプラスの箱』が持つ本当の力に」
ミネバ 「あなたはそれを知っている。……教えてください。あなたをそれほどまでに苦しめる『箱』とは何なのか。ここにいる全員に知る権利があります」
リディ 「……!」
ミネバ 「バナージ……!」
リディ 「ミネバ! おれと来てくれ!」
ミネバ 「…………」
「……!」
リディ 「ユニコーンは危険だ。ニュータイプの実在を示すことで、百年前の祈りを呪いに変えてしまう。だから……」
ミネバ 「呪い……?」
リディ 「おれには世界を変える力なんてない。不完全な秩序でも、変える方法が無いならおれはそれを守る。それが、そうすることが君を……!」
(銃声)
黒服A 「上からだ、警戒!」
黒服B 「マーサ様!」
マーサ 「ネオ・ジオンなの!?」
ジンネマン 「……(手信号)」
ミネバ 「……っ!」
リディ 「……? ……ぅっ!」
「く……ミネバ!」

 ユニコーン/バンシィ
《ユニコーン(U-MODE)》
 VS
《バンシィ(D-MODE)》
【サイコ・フィールド 発生】
バナージ 「マリーダさん、やめてくれ!」
マリーダ(通信) 「光……」
マリーダ 「私を救ってくれる光……誰にも奪わせはしない!」
バナージ(通信) 「違う!」
バナージ 「これは違うよ、普通じゃない! これは危険な光だ!」

 ガルダ 格納庫
マーサ 「何をしているの!? ミネバを連れ戻しなさい!」
アルベルト 「ここは危険です! ユニコーンとバンシィが共鳴して、サイコ・フィールドが発生しているのかも知れません」
マーサ 「アクシズショックの再現というわけ……」
アルベルト 「ええ……もしそうなら、このガルダといえども……!」
.
ジンネマン 「ガランシェールが来ています。これで降下なさってください!」
ミネバ 「お前は!?」
ジンネマン 「すぐに追いつきます。お早く!」
《アンクシャ》 爆散
ジンネマン 「おわぁっ!」

 ユニコーン/バンシィ
バナージ 「これじゃオードリーが!」
マリーダ 「完全に制御している……。あの子がこんな風に……」
「あ……あの、子……?」

 ガルダ ハッチ
リディ 「動くな、いまそこへ行く!」
「……何してる、早く手を!」
ミネバ 「リディ、私とあなたの行く道は違う」
リディ 「そんなことを言ってる場合か!」
ミネバ 「私はザビ家の女です」
リディ 「…………」
ミネバ 「この目で『ラプラスの箱』の正体を見極めます」
「歪んだ秩序でも、戦争よりはマシだと信じてきましたが……。それが人を窒息させるだけのものなら……」
リディ 「ミネバ……」
ミネバ 「父や祖父のように、大罪を犯すことになるのかもしれない。でも、私は……」
リディ 「ひとりで世界と戦うつもりか!」
「誰も世界が変わるなんて信じちゃいない。みんな自分のいない百年後の世界なんかどうでもいいんだ! そんな奴らのために……そいつらを敵に回して、そうまでして何の意味が……!」
ミネバ 「ひとりではありません」
リディ 「……! ミネバ、やめろ!」
ミネバ 「さようなら、あなたのことは忘れない」
リディ 「ミネバあぁー!!」
 空中
ミネバ 「受け止めなさい、バナージ」

 ユニコーン
バナージ 「……はっ」
「オードリー!」
「やれるな、ユニコーン!」
【《ユニコーン》 NT-D発動】
ミネバ 「……!」
バナージ 「なんとかする!」
ミネバ 「ぅっ……」

 デルタプラス
リディ 「くっ……」
「……!」
(嗚咽)
 バンシィ
マリーダ 「まだ……来る」


 ガランシェール ブリッジ
ミネバ(通信) 「フラスト、苦労をかけました」
フラスト 「……! いえ……」
「バナージ! キャプテンとマリーダの救出、お前が頼りだ」
 ユニコーン
バナージ 「はい」
「……君の声、はっきり聞こえた。嬉しかった。自分がなんでここに居るのか、わかった気がした。君が呼んでくれたから」
ミネバ 「私だって」
バナージ 「この感覚が本物なら、マリーダさんにもおれの声が届いているはずなんだ。必ず連れ戻すよ。君はここで待っていて、いいね?」
ミネバ 「…………」
「はい。頼みます、バナージ・リンクス」

 空中
《ガランシェール》
 VS
《ガルダ》
《ユニコーンガンダム(D-MODE)》
 VS
《バンシィ(D-MODE)》


 ガルダ 格納庫
ジンネマン 「うぅ……」
「ん……?」
「……!」
 ガルダ格納庫/ユニコーン/バンシィ/デルタプラス
リディ 「忌まわしいガンダムどもが!」
「……!」
マリーダ 「お前もガンダムか!」
リディ 「うわっ……!」
《デルタプラス》 大破
マリーダ 「ガンダムは敵! 倒すべき敵!」
バナージ(通信) 「やめてくれマリーダさん!」
バナージ 「お願いだ、正気に戻ってくれ!」
マリーダ 「いちいち頭に響く声を出す!」
バナージ 「頭が痛いのは、本当のあなたが抵抗している証拠だよ!」
「……!」
 ガルダ格納庫/ユニコーン/バンシィ
ジンネマン 「マリーダなら聞け! 俺だ、ジンネマンだ!」
マリーダ 「何だ……!?」
「ジンネマン……マスター……」
ジンネマン 「財団の奴ら、再調整しやがったな……!」
「マリーダ、戻って来い! お前が戻れば、みんな元通りだ!」
マリーダ 「ハァ……ハァ……ハァ……うっ……くっ……」
「マスターは……私のマスターは……!」
ジンネマン(回想) 「俺の娘だ……名前はマリィ」
「生きていれば、お前と同じ年頃に……」
マリーダ 「うっ……」
ジンネマン 「そこを開けて降りてこいマリーダ! 一緒に宇宙へ帰るんだ! 俺と来い! 俺を独りにするな!」
マリーダ 「うッ……はァッ……」
バナージ 「……!」
リディ 「くっ……このガンダムめが!」
「ガンダム! ガンダム! ガンダム! ガンダム! ガっ……」
マリーダ 「私が、ガンダム……?」
「私が……敵!」
【《バンシィ》 NT-D解除】
ジンネマン 「マリィ……」
バナージ 「…………」

 クリムト
アルベルト 「……!」


 ネェル・アーガマ ブリッジ
ミヒロ 「フラスト・リバース60秒前」
「全艦、逆加速防御」
ヘルム 「バリュート、準備よし」
サーセル 「目標、ガルダより離脱して上昇中」
「接触予想ポイント、誤差修正マイナス8。これより本艦は、熱圏上層に接近。目標をテザー・ケーブルで引き上げる」
ヘルム 「各員、艦の高度と速度から目を離すな」
レイアム 「ガランシェール……"袖付き"の偽装貨物船……。インダストリアル7から我々をつけ回していた奴です。本当にいいのですか」
オットー 「いいも悪いも、ブライト指令からの直命だ。それに、やることがあるってのはいいもんだ。それが何であってもな」
レイアム 「…………」
サーセル 「目標、機関出力が低下した模様! 予定上昇曲線から離れていきます」
オットー 「何だと!?」

 ガランシェール ブリッジ
ジンネマン 「どうした」
フラスト 「エンジンにトラブル発生。出力上がりません!」
ジンネマン 「踏ん張れんのか。地球をもう一周するだけの燃料は残っていないぞ」
フラスト 「これで目一杯です……!」
ジンネマン 「手はずどおり、因縁浅からぬ艦が迎えに来ているが……」
「さすがに虫がよすぎたか」
ミネバ 「あれは、連邦とジオンという括りの外に置かれた艦。届きさえすれば、道も拓きましょう」
ジンネマン 「しかし……」
「……!」
ミネバ 「バナージ!」
ジンネマン 「クワニ! アイバン! 何を……」
「無茶しやがる……。フラスト! いけそうか」
フラスト 「上昇中ですが、軌道まで戻るにはパワー不足です」
ミネバ 「…………」

 ネェル・アーガマ ブリッジ
オットー 「もっと高度を下げられんのか」
ヘルム 「限界です!」
オットー 「よし、テザー・ケーブル射出!」
レイアム 「テザー射出!」
タクヤ 「宇宙(そら)に帰ってこい……バナージ!」

 ガランシェール上部
【《ユニコーン》 NT-D発動】

 ネェル・アーガマ ブリッジ
タクヤ 「届いた!」
オットー 「接続したか!?」
レイアム 「それが……!」

 ユニコーン/ガランシェール
バナージ 「ぬうぅ……ぐッ……!」
ジンネマン 「ダメだ! 機体が裂けちまう!」
ミネバ 「バナージ!」
バナージ 「ぐうぉお……くっ……!」

 ガラシェール上部
【《ユニコーンガンダム》 覚醒】
【サイコ・フィールド 発生】

 ガランシェール
ジンネマン 「何だ、この光は……」
 ネェル・アーガマ ブリッジ
オットー 「……!」
タクヤ 「……!」
 ネェル・アーガマ
ミコット 「…………」
 ラー・カイラム
ブライト 「…………」
 クリムト
アルベルト 「…………!」
マーサ 「…………」

 ガルダ 格納庫
リディ 「ハァ…スゥ…ハァ…スゥ…ハァ…スゥ…ハァ……」
「ハァ……ハァ……ハァ……くッ……ぐ……」
「ガンダム……!」



 宇宙/ユニコーン
バナージ 「ふぅ……」
「……!」

 ネェル・アーガマ ブリッジ
オットー 「どこのどいつだ!?」
サーセル 「識別信号、該当あり。これは友軍です!」
「軌道正面より発砲確認。高度差12、距離400、ドゴス・ギア級……ゼネラル・レビル……!」
オットー 「間違いないのか!?」
サーセル 「間違いありません!」
レイアム 「ゼネラル……レビル……」
サーセル 「モビルスーツが来ます! 多数!」
 ガランシェール ブリッジ
フラスト 「怪物級ですぜ……やっぱり罠かよ!」
ミネバ 「違います! この展開の仕方は、ネェル・アーガマも攻撃対象に……!」
ジンネマン 「いっしょくたに殲滅しちまおうって腹か……」

 ユニコーン
バナージ 「そんな……」
「……ダメだ! ……! ここまできて……」
「…………はっ」

 宇宙
《ローゼン・ズール》
 VS
《リゼルC型部隊》
《ジェガンA2型部隊》

 ユニコーン
バナージ 「フル・フロンタル……」

 宇宙
《シナンジュ》
 VS
《ゼネラル・レビル》
《リゼルC型部隊》

 シナンジュ
フル・フロンタル 「……(ニヤリ)」


 エンドロール 主題歌:BROKEN MIRROR







 

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