その方から自家栽培の野菜を分けていただくことが多く、すごく体にいいと実感しています。
その方の野菜作りを見て、いろいろと学ぶことがあります。
昔ながらの農法で作っていて、見ていると本当に無駄が無いんですよね。木の枝を切って来て、添え木や棚を作ったり。
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また、農作物は決してコンスタントにできるものではないということも学びました。東京で生まれ育ち、ずっと都会暮らしでしたので、恥ずかしながら野菜を作ることを簡単なことのように感じていたんです。種を植えれば実がなるだろうと。
実際の様子を見て、天候に左右されたり、獣害に悩まされていることを知りました。うちの近くには猿、イノシシ、鹿が出ます。せっかく作ったキュウリを全部猿に食べられたり、竹林のタケノコがイノシシに食べられたり。
だからこそ、大切に育てられた野菜はありがたく、おいしい。僕自身が作ったものではありませんが、隣の方が作った野菜をいただくのがとても楽しみで。都会ではなかなか得られない喜びを感じます。
その延長上で、地方に根付いている料理が好きになりました。山梨ならほうとうとか。地元でしか食べられない料理を、地元で造られた酒と一緒にいただく。最高です。
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若い頃、世界中を旅させてもらった経験があります。
あれは20年くらい前ですかね。南米のボリビアに行ったんです。
そこでは、天竺(てんじく)ネズミという食用のネズミを食べる習慣があります。自分で締めて、毛をむしって料理するんです。僕も実際に経験しました。自分でさばいた時に、生き物の命をいただくというのはこういうことなんだと実感しました。料理といっても、フライにするだけ。味付けも岩塩のみ。とてもシンプルな食べ方だけに、よけいに命のありがたみを感じさせられました。
その経験があるから、自分で農作物を作って食べるという生活は、素晴らしいと思います。
僕が山の家に住みだして、来年で10年になります。叔父の家だったんですよ。叔父が亡くなり、住む人がいないと駄目になるからと、僕が住み始めました。
東日本大震災が起きた少し後くらいの時期です。震災の時、スーパーからあっという間に食料が消えましたよね。それを見てゾッとしましたし、何が起きても大丈夫なように、自給自足というものも考えないといけないと思うようになりました。
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将来的には畑もやりたいんですが、まだそこに至っていないですね。山の家で非常に広い庭があり、手入れをしないといけない木がたくさんあるんです。その面倒を見るだけで手一杯の感じですね。
でも庭にある梅の木に実がなれば、それで梅酒を作ったりして楽しんでいます。庭にはキウイフルーツの木もあってずっと育てていたんですけど、何年か前から実をつけなくなりました。ある年、猿が群れで来て、キウイフルーツを全部食べたことがあったんですね。それ以来、実がならなくなったんです。猿が取ったことが影響しているかどうかは分かりませんけど。農業は簡単に出来ないということを、身をもって勉強しているところです。
秋が深まりますと、隣の方がサトイモを収穫します。それを使って僕も手伝ってけんちん汁を作るんです。これがすごくおいしくてね。至福の時間を過ごしながら、深まる秋を感じます。(聞き手・菊地武顕)
たかはし・かずや 1969年、東京都生まれ。88年、ロックバンド・男闘呼組のメンバーとして「DAYBREAK」でデビュー。日本レコード大賞最優秀新人賞に輝く。また同年公開の「ロックよ、静かに流れよ」で映画デビュー。93年に男闘呼組解散後、1年間のアメリカ放浪を経て、舞台「NEVER SAY DREAM」、映画「KAMIKAZE TAXI」などに出演し、本格的に俳優活動を始める。出演映画「追想ジャーニー」が11月11日公開。