特別区Ⅰ類の論文で出題される頻出テーマの模範解答例(合格者答案)を公開しています。
現在公開しているテーマは下記の通りとなっています。
・高齢者の社会的孤立
・少子化対策
・子育て支援(男性の育児参加)
・社会保障(福祉)
・災害対策(危機管理)
・ワークライフバランスの推進
・多様化する住民ニーズ
・区民との信頼関係の構築
・財政健全化
・循環型社会(環境問題)
・組織におけるコミュニケーション
・職員としての意識
特別区以外の地方公務員試験でも出題頻度が高く、重要なテーマです。
論文試験を効率よく対策するためには、論文試験を「暗記科目」と捉えて「予想されるテーマの模範解答を可能な限り沢山記憶すること」が求められます。
特別区Ⅰ類の受験生はこの記事を是非参考にしてください(Ⅲ類・経験者・氷河期・障害者採用は傾向が異なるため責任は負いかねます)。
なお、県庁・市役所・国家公務員における頻出テーマは下記の記事にまとめています。
特別区以外の公務員試験を受験予定の人はこちらも読んでみましょう。
高齢者の社会的孤立
高齢者の社会的孤立とは、家庭や地域で人とのつながりがほとんどなく、社会的に孤立した状態に陥っていることである。高齢者単身世帯が増加している我が国において、この問題は深刻になりつつある。
なぜ近年、社会的孤独が深刻化しているのか。それは、高齢者を見守る地域および家族の機能が低下していることが原因であると考えられる。核家族の増加や個人のプライバシー保護を背景に、地域コミュニティや家庭内での高齢者を見守る機能は弱まっている。したがって、現代の高齢者は地域からも家族からも切り離され、孤独に苛まれている場合が多いと考えられる。
この問題は、高齢者個人にとっては生活の豊かさの低下を意味する。人間が社会とのつながりを断ち切られれば、コミュニケーションによって生まれる喜怒哀楽がなくなり、生きがいの喪失にもつながるからだ。高齢者の社会的孤立は、要介護となる高齢者や空き家の増加を招き、地域全体の活力の低下を引きおこす深刻な問題である。
私は特別区の職員として、高齢者の見守り機能を担っていた地域の社会的な結びつきを再生することが必要であると考える。
そのため、第1に、地域住民の交流機会を増やすことが重要である。例えば、港区で行われている「芝の家プロジェクト」が参考になる。これは、港区が区内の大学と協働して喫茶店を運営し、地域住民が集まるスペースを提供する取組である。これにより、地域住民が交流する機会が増えるとともに、特に大学生と高齢者との世代を超えた交流が生まれることも期待できる。また、豊島区では「地域貢献型空き家利活用事業」を行っている。これは、地域に貢献したいと考える空き家のオーナーと空き家を必要とするNPO法人や社会福祉法人等をマッチングする事業であり、実際に空き家をブックカフェへ改修し、地域住民の交流の場として活用した事例がある。このような取組は、地域の社会的な結びつきを再生することが期待されるだけではなく、空き家の発生予防にもつながる。特に、飲食を他者と共にすることは、リラックスしたコミュニケーションにつながり、異世代交流がしやすくなると考える。カフェやキッチンカーなどを利用した地域交流の場を提供したい。
第2に、高齢者の地域参加を促す取組が重要である。特別区内にはまだまだ元気な高齢者が多く在住しており、こうした高齢者が地域で活躍できるよう環境を整備する必要がある。例えば、目黒区では「めぐろシニアいきいきポイント事業」を実施している。これは、区内在住の65歳以上の方が「いきいきサポーター」として登録後、特別養護老人ホーム等で活動すると、区内の商品券と交換可能なポイントが付与される取組である。こうした元気な高齢者に対して社会貢献の機会を与える取組は、高齢者に地域活動への参加にインセンティブを与え、その後の地域イベントにも継続的に参加しやすくなる効果が期待される。また、一人で住む高齢者は外に出る機会があってもなかなか意欲がわかず、ひきこもりがちになる場合もある。定期的な訪問と、ビデオ通話のスキルを教えて短時間での気軽な会話ができる体制を整えていく必要がある。
今後、私は特別区の職員として、積極的に地域へ飛び出し、住民との協働により地域の社会的なつながりの再生に貢献したい。
少子化対策
少子化とは、合計特殊出生率が人口置換水準を長期間にわたって相当程度下回っている状態である。我が国の合計特殊出生率は近年微増傾向ではあるものの、人口置換水準2.1を大きく下回り、全人口に占める年少者の割合が低下し少子化が進行している状況にある。
少子化が深刻化している原因に、生涯未婚率の上昇と晩婚化が進んでいることが挙げられる。これは、結婚以外に幸せを求める考え方の広がりや若者の所得減少による結婚へのハードルの高さなどが要因である。さらに、結婚しても子どもを望まない夫婦も増えており、その原因に子育てのために必要な金銭面の不安や、女性のキャリアプランニングに対する不安などがある。特に都会での子育ての場合、核家族化や待機児童問題などを背景に、自分たち以外に子育てを頼ることができず、時間的にも肉体的にも負担を抱えやすい状態が強いられている。今後の日本では、少子化を放置することによって労働人口が減少し、現役世代の社会保障費の負担が増え、ますます増えていく高齢者の暮らしを支えることが困難になることが予想される。さらに、地域コミュニティの活力がなくなり、若者が地域の外に流出してしまい、地域経済が衰退化することにもつながる。
私は特別区の職員として、少子化対策のために子育てしやすい環境整備が重要であると考える。
第1に、保育施設と保育人材の充実を図る。例えば、公共施設の一部や空き家店舗等を活用し、保育施設をさらに増やす。保育施設の運営には保育人材の確保も必要になるため、保育士の処遇改善に取組、魅力的な仕事としてPRしていくことに努める。また、保育士の免許を持つ人や地域の子育て経験者を各区が雇い、区としてベビーシッターや家事代行サービスを運営する。この際、産後3カ月までは無料で派遣を頼むことができたり、最初の20時間までの利用は無料で依頼できるなどのサービスを展開すれば、子育てを外部に頼ることのハードルが下がり、そのあとも継続して依頼しやすくなる。
第2に、日常的に子育ての不安や悩みを解消できる場を提供する。核家族化が進む中、頼りにできる親類が近くにいない子育て世帯や、シングルマザー・ワーキングマザーも多く、子育てに関する不安を誰とも共有できず孤独を抱えてしまう人も多い。公民館等の施設を活用し、「離乳食教室」や「子育て相談会」などの気軽な交流場所を用意し、保健師や保育士の専門的な助言はもちろん、保護者同士でもコミュニケーションがとれる場を用意することができる。
このような取組は、すでに子どもを産んだ保護者に対する子育て支援ではあるが、一つひとつの取組が認知されていけば、「子育て世帯に優しい町」として安心と信頼を区民に与え、子どもを持つことへの心理的ハードルも下がると考える。少子化対策としての時間はかかるかもしれないが、今生きている子どもたちを大切にするという姿勢を示していきたいと考える。
今後、私は特別区の職員として、積極的に地域に飛び出し、多様化する子育て世帯のニーズの把握に努め、さらなる保育環境の整備に貢献したい。
子育て支援(男性の育児参加)
近年、社会全体として育児休暇の取得が進んでいる。現在の日本では子どもを持つ女性の約80%が育児休暇を取得しており、十分に浸透している制度であるといえる。一方、子どもをもつ男性の取得率は約3%に留まり、子育ての負担に男女間で偏りがあることをうかがわせる。
なぜ男性の育児休暇取得は遅々として進まないのか。その原因の一つに、男性が外で仕事をし、女性は家で育児や家事をするという男女の役割分担意識があることが考えられる。そのために男性が育児休暇を申請しにくく、育児休暇を取得したあとのキャリアに影響が生じてしまうケースもある。男性の育児休暇取得が進まないことで、育児に対する女性の負担が増し、子育てをする女性の社会進出やキャリアップが妨げられ、労働力人口を減少させる可能性もある。今後、少子化対策が重要になってくる日本において、社会全体として男女関係なく育児をしやすい環境づくりを推進していく必要がある。
私は特別区の職員として、以下の取組を推進していきたい。
第1に、民間企業や行政組織に対して男性育児休暇取得を推進する一環として、育休取得率の目標値を定めていくよう求めていきたい。具体的には、障害者雇用における法定雇用率制度が参考になる。企業規模等の条件を考慮して一定の取得率を定め、法定取得率を超えた場合には納付金を財源として助成金を支給する。このような制度を整えた結果として障害者雇用が広く浸透している現状を見るに、同様な施策を講じることにより男性の育児休暇取得に対しても同様の効果が期待できる。また、行政は民間企業に負担を強いるばかりでなく、自らも高い数値目標を設定して達成に取り組む姿勢が求められる。
留意点として、育児休暇等によって現場の人員が減ることによって、残された従業員の業務の負担が増えてしまう可能性がある。これが男性の育児休暇取得が進まない理由の一つだとも考えられよう。特に100人以下の従業員規模である中小規模にとって、育児休暇取得によって複数の労働力が減ることは、企業経営をしていく上で大きな痛手となる。育児休暇取得を推進する中小企業に対する助成金の割合を増やしたり、中小企業での育児休暇推進にあたっての実践例などを集めたりして、残された従業員が苦しまないように制度改革をしていく必要がある。
第2に、男女ともに育児休暇中の手当を増やしていきたい。育児休暇を取得できる雰囲気が職場にあっても、夫婦どちらも給料が無かったり、大幅な減額になってしまっては、経済的な理由から働かざるを得ない。最低でも、それまでの給料の6割以上の手当を支給できるよう働きかけていくべきである。
このような取組は、多くの租税を必要とし、簡単にできることではない。しかし、長い目で見れば、男性の育児休暇取得支援が広まることが特別区の魅力をPRする結果となり、地域経済の活性化にもつながると考える。海外では、男性も女性と同じように育児参加をすることが当たり前になっている国もあり、それらの国の事例を研究していくことも必要である。
私は特別区職員として、各種子育て支援の取組に全力で従事する覚悟である。
社会保障(福祉)
わが国の社会保障制度は、年金保険・医療保険・介護保険等を担う「社会保険」、児童福祉・高齢者福祉・障害者福祉等を担う「社会福祉」、生活保護に代表される「公的扶助」、そして感染症予防や予防接種等を担う「公衆衛生および医療」という4本の柱から構成される。
近年、これらの社会保障制度は持続可能性の観点から見直しが迫られている。なぜなら、高齢者や低所得者の増加により社会保障の需要が増加しており、必要な社会保障費が急増しているからだ。また、少子化による労働人口の減少や長引く不況と国際競争力の激化による税収の伸び悩みにより、社会保障財源の確保が難しくなっていることも背景にある。特別区においても、予算に占める社会保障費の割合が上昇することで、地域経済のために独自に活用できる財源は減少してしまう。一方で、社会保障費を削減しようとすると、受給対象の縮小や受給額の減少が避けられず、生活の安定を損なった状態から抜け出せない区民が発生する可能性がある。
今後の特別区における社会保障のあり方として、私は、病気や貧困などのリスク発生後の保障にとどまらず、それらの予防と自立支援に政策の重点を置くことが必要であると考える。なぜなら、高齢化が進む特別区において、区民の健康寿命を延ばす取組によって、社会保障への需要増大を抑制していく必要があるからである。
まず予防の観点からは、病気が悪くなったり要介護状態に陥ったりする前に、出来る限り健康を維持する取組を行う医療機関や介護施設に対して、行政は補助金を交付することが挙げられる。短期的に支出は増加するが、長期的には将来の社会保障費を抑制する効果が期待できる。
また自立支援の観点からは、企業が求職者を3か月間雇用し、求職者と企業が相互に理解を深めた上で雇用契約を交わすトライアル雇用をハローワークと協力して充実させる取組も推進したい。これにより、勤労意欲を失っている生活保護受給者に、早期離職することなく自分のペースで社会復帰を促せるのではないかと考えられる。
今後さらに少子高齢化が進む中で、全ての区民が平等に負担を分け合い、社会保障に充てるお金を確保しつつ、区民が希望が持てる社会を常に目指さなくてはならない。今後、私は特別区の職員として、地域の実情に応じた持続的な社会保障の維持に向けて、積極的に貢献したい。
災害対策(危機管理)
非常時に区民の安全を確保するために必要なことは、災害発生時に迅速な避難誘導や初期防災活動を行うことで、被害を最小限に食い止めることである。2011年の東日本大震災では、想定外の大規模な災害が発生したために公的な機関の機能が失われ、さらに津波などの二次被害への対応が官民ともに十分でなかったため、多くの死亡者が出る事態となってしまったことは記憶に新しい。今後も首都直下地震や南海トラフ巨大地震などが発生することが予測されており、未曾有の災害が起こる可能性がある。特別区職員は、常に非常時の対応について意識しておく必要があると考える
私は、特別区が非常時に区民の安全を確保するため、建物の耐震化を進める等の公助だけではなく、区民が自分自身と家族を助ける「自助」や、地域住民同士で助け合う「共助」の推進に政策の重点を置くことが必要であると考える。
なぜなら、災害発生当初において行政は状況確認や被害が深刻な地域への対応に追われ、個々の区民のケアまで手が回らないことが想定できるからである。災害発生時に区民それぞれが置かれる状況は異なり、行政の判断だけに頼っていると初動が遅くなってしまう。
したがって、災害発生時に区民が自助および共助を行えるよう、事前に対策を講じる必要があり、その具体的な内容について以下に述べる。
第1に、自助の観点から、地域の防災マニュアルを作成して区民に配布することが挙げられる。家の中の安全対策や備蓄品の用意をする、家族それぞれの連絡先を確認しておくなど、具体的なチェック項目シートをつくり非常時の対応について周知をしておくことで、区民の意識は着実に高まっていく。
第2に、共助の観点から、地域全体で実践的な防災訓練の実施を推進する。地震や洪水だけでなく、停電などについても防災訓練を実施することで、個々の判断力を養うことができる。訓練に際しては避難経路の確認だけでなく、災害弱者となる高齢者や障害者への対応も確認しなくてはならない。個人情報に注意しながらも、隣人に災害弱者がいる場合は最低限の声かけや手助けをできるように情報共有をしておく必要もあると考える。
第3に、共助をより効果的に働かせるために、弱まってしまった地域の社会的な結びつきを再生することが重要である。定期的な避難訓練の実施により、地域にどのような人が住んでいるのかを顔を見て把握することが避難訓練の重要な意義であると考える。また、行政が自治会の取組を広報誌で周知したり、区の窓口で転入者へ自治会紹介のチラシを配布したりすることで、区民の地域への帰属意識と共助の精神を育む効果が期待される。
区民に高い防災意識を持ってもらうためには、まずは行政が先頭に立って避難訓練や防災喚起をする姿をアピールしていくことが重要である。今後、私は特別区職員として、地域の実情に応じた自助と共助の取組を推進し、災害時にも命の危機を感じることのないまちづくりに貢献したいと考えている。
ワークライフバランスの推進
ワークライフバランスとは、働いて仕事上の責任を果たす一方で、子育てや介護、地域活動、自己啓発等にかかるプライベートな時間をしっかりと持ち、健康で豊かな生活を送ることである。
なぜ今、ワークライフバランスが求められているのか。第1に、日本には労働時間が長い状態が日常的になってしまっているために、家庭や自己啓発にさける時間が少なくなり、心身の健康を害している人が多い。これは区民の生活の質を直接的に低下させると同時に、地域の活力を次第に奪うことにもつながる。第2に、男性は外で仕事をし、女性は家で育児や家事をするという男女の性別役割意識が社会に根強く残っている一方で、共働き世帯が当たり前となっているという矛盾も生じている。仕事と育児や介護の両立に悩む女性が増加していることは、少子化に拍車をかける理由となっている。このような背景から、長時間労働の是正や男性の育児参加を促すためにワークライフバランスの推進が求められている。
私は、特別区職員としてワークライフバランスを一層推進していくため、まずは民間と協働し、長時間労働の是正や男性の育児休暇取得率に具体的な達成目標を設け、その達成を支援することが必要であると考える。具体的には、障害者雇用における法定雇用率制度が参考になる。企業の経営状態を考慮した上で数値目標を定め、それに満たない企業にはペナルティとして納付金を課す。一方、数値目標を超えた場合には納付金を財源として助成金を支給する。このような制度を整えたことで障害者雇用は実際に大きく伸びている。例えば、時間外労働時間の上限や休暇取得率などの数値目標を定め、達成を目指すことでワークライフバランスの意識向上の効果が期待できる。また行政も、民間企業に負担を強いるばかりでなく、自らも高い数値目標を設定して達成に取り組む姿勢が求められる。例えば、行政内部での労働時間や休暇取得率等の見える化に取り組み、HPや広報等で開示していくことで、姿勢をアピールしていくことができる。また数値目標に達していない企業には、先進的な取組や改善策などを示して、行政と協働で取り組んでいく必要がある。
ワークライフバランスは欧米では浸透した考え方であり、日本にとって先進的な取組も海外では一般的である。例えば、日本では一つの業務を一人の人間が責任をもってやり遂げることが美徳であるという文化があり、休暇を取得すると迷惑をかけると思ってしまう従業員も多い。だが、数カ月の休暇である「バカンス」をとる風習がある欧米では、自分が担当している仕事を誰でもいつでも引き継げるようにしておくことが常識であり、むしろ長時間労働をする従業員は能力がないと思われることもある。このような海外の文化を、経営者向けの講義やセミナーを通して伝えていき、会社のシステムから改革を進めていくよう呼びかけていくことも重要であろう。
戦後やバブル時代の日本では長時間労働が当たり前であり、それが従業員同士の結束や会社への帰属意識を強め、日本の目覚ましい発展を支えてきたといってよい。ただ、これからは人生の質の向上が求められる時代である。私は今後、特別区の職員として地域の実情に合わせて、区民の誰もが自己の望む働き方や暮らし方を選択できる社会の実現に向けて、貢献したいと考えている。
多様化する住民ニーズ
日本のかつての高度経済成長期は、住民の行政に対するニーズは「物質的に豊かな生活」に対するものが多く、概ね画一化されていた。しかし現在、住民の要望は多様化している。
その背景として、第1に、成熟社会の到来が挙げられる。物質的な不足が少なくなり、自由で便利な生活が当たり前になったことで、個人が求めることが「生きがい」や「やりがい」などの生活の質を上げるものに変化し、価値観やライフスタイルが多様化したことが影響している。第2に、地域コミュニティの希薄化が挙げられる。地域の防犯や防災機能、高齢者や子どもの見守り機能を担っていた地域コミュニティのつながりが以前より薄くなり、それまでは隣近所を頼って解決できていた問題が解決できなくなったために、抱えた問題が行政に多く持ち込まれるようになったことが要因である。
しかし、財政的にも人材的にも限りがある特別区が、区民の多様な要望に全て対応していくことは困難である。
私は特別区の職員として、第1に、区民ニーズを把握する機会を拡大していきたい。具体的にはタウンミーティングの開催や、パブリックコメント、定期的なアンケート調査の実施等を充実することで、区民のニーズを広く理解することができる。この取組によって区民の声を集約することができれば、優先順位をつけて行政が対応することができ、素早く効果的な行政サービスを展開することができると考える。
第2に、官民協働を推進することが重要である。すべての要望を行政サービスだけで解決できない以上、民間企業やNPO等との協力が必要である。例えば、観光地での案内標識を増やしてほしいという要望に対して、商工会議所に計画や立案をお願いし、実際の設置業者の選定などは行政側で行うことで行政の負担を軽減させることができる。また、子育て支援施設に対する要望があれば、保育士資格を持つボランティアを活用して事業を外注することも有用である。ただし、より公益性が高い事業については行政が単独で実施する等、協働の推進に際しては注意が必要であろう。
第3に、説明責任を果たすことが必要である。多様なニーズに対して行政サービスを提供することは、前例のない新たな事業を実施する機会が増えることを意味する。したがって行政には、意見交換会や説明会などを定期的に開催し、事業の取組状況や目標の達成度合い等を区民に説明することが求められる。具体的には、事業計画段階で重要目標指標を設定し、定期的に指標の達成状況を客観的に評価して事業報告書を作成し、区民に公開して意見を求めることが有用であろう。行政の透明性を高めることで、区民参加型行政の構築と官民協働の活性化を図ることが期待される。
持続可能で活力ある地域社会の実現のためには、区民と協働した行政のあり方をつくることが重要である。私は今後、特別区の職員として区民の声に耳を傾けて信頼関係を築き、区民ニーズの解決に貢献したいと考えている。
区民との信頼関係の構築
特別区では、地域の防犯パトロールや食品ロスの削減活動等、地域住民や地域団体と行政が協働した取組が様々に展開されている。近年、区民との協働が積極的に推進されている背景として、区民ニーズの多様化や特別区の財政が逼迫していることが挙げられる。社会の成熟化や地域コミュニティの希薄化が進んだ現在、地域の抱える課題はますます複雑・多様化している。また、人口減少と少子高齢社会を迎える中で、増大する社会保障費や老朽化が見込まれるインフラ対策などの課題が山積しており、特別区の財政に余裕はない。そこで、行政が地域住民や地域団体と協働することで、持続可能な行政の構築が求められている。
地域住民と行政が協働するにあたり、その基礎となるのが区民との信頼関係である。信頼関係が構築されていなければ、協働の取組により課題を解決し成果を得ることは望めない。また、地域住民や地域団体の十分な担い手が集まらず、取組を継続することは困難である。区政の第一線で区民と接する特別区の職員として、私は、多様化している区民ニーズをしっかりと把握することと、得られた区民の声が政策にどのように反映されているのかを分かりやすく周知することが求められると考える。窓口での丁寧な対応や笑顔での対応はもちろん大切だが、さらに一歩踏み込み、地域の困り事に対して行政が誠実に対応していることを区民が実感できる取組を行うことが、信頼関係の構築には欠かせないからである。
具体的な取組を以下に述べる。第1に、区民の声を直接聞く機会をより大切にする。例えば、杉並区で取り組まれていた「すぎなミーティング」が参考になる。これは無作為抽出により選ばれた区民が、区政の課題をテーマとして区長と直接意見を交換する場である。ミーティングの運営は特別区職員が担当するため、区長だけでなく特別区職員にとっても多様化する区民二ーズを把握できるだけでなく、区民との交流を通して信頼関係の構築に直接つながる良い機会である。このような取組を実施する際には、難しいテーマばかりではなく、「身近な体育館を自由に使うためには」、「自由に弾けるピアノの設置」など、幅広い世代が関心を持ちやすいテーマを設定するとより意見交換がしやすいと考える。
第2に、得られた区民の声が政策にどのように反映されているのかを分かりやすく周知することが重要である。パブリックコメントや自治会の集会等で区民が意見を述べても、自分の声が政策に反映されているという実感がなければ、行政参加への意欲は低下してしまうだろう。区のホームぺージや広報誌で、パブリックコメント等で得られた声がどのように新しい条例や決まり事に反映されたのか、どの世代が見てもわかりやすいような表現でアピールすることが効果的だと考えられる。中学生や高校生が見ても分かりやすい表現であれば、区政に意識の高い中学生や高校生からも信頼が得られ、将来的に官民協働の取組に前向きに参加してもらえることが期待される。
このようにして、私は今後、特別区の職員として地域に飛び出し、区民と直接交流する機会を積極的につくり、また成果をしっかり伝えていくことで、区民との信頼関係の構築に貢献できるよう励みたい。
財政健全化
財政健全化とは、自治体の歳入を増加させ、歳出を減少させることで財政収支を改善し、公債への依存度を低下させることである。北海道夕張市の財政破綻を契機に、多くの自治体が財政健全化を重要施策に位置づけている。夕張市は財政再建団体の指定を受け財政再建に取り組んでいるが、職員の給与削減に止まらず、各種事業の見直しが避けられない状況であり、住民福祉の低下をもたらしている。
全国の自治体で財政健全化が重要視されている背景の一つに、バブル崩壊以降の長引く景気低迷や日本の国際競争力の低下により、税収が減少傾向にあることが挙げられる。また、少子高齢化の深刻化により、社会保障に関する支出が急増していることも背景に考えられる。自治体の財政が逼迫することで、予算に占める公債償還費の割合が大きくなり、公共事業や教育等、住民の生活に不可欠な事業に十分な予算を投じることが困難になる。さらに、財政再建団体の指定に陥れば行政サービスの大幅な削減を余儀なくされ、住民に対して十分な福祉サービスを展開できない。
私は特別区の職員として、財政健全化に向けて現在の行政のあり方を見つめ直し、行政のスリム化を図ることが必要であると考える。なぜなら、行政自らが努力して歳出抑制を実現してからでなければ、歳入の増加すなわち区民への税負担増を求めることはできないからである。
具体的には、第1に、各職員のコスト意識の向上を図ることが重要である。また、既存の事業にかかる費用や労力を洗い出し、慣行的に引き継がれている事業や予算について、その必要性や妥当性をチェックすることが必要である。そのためには、区民を含めたチェックチームをつくり、成果が出せていない事業や代替案がある事業については、再検討を要請できる体制をつくっていく。最小の経費で最大の効果を発揮することが行政の使命であり、徹底的に無駄を省くことで自治体一丸となって財政健全化に取り組む機運を醸成することが期待される。ただし、区民の生命や安全に関わる業務や、長期的な成果を期待する業務については、過度にコスト意識を持ちこまないよう注意が必要であろう。
第2に、行政サービスの民間委託を積極的に活用することが有用である。限りある予算の中で、多様化し続ける住民ニーズに行政がすべて応えることは困難である。そこで、民間企業やNPOを新たな公共サービスの担い手として迎え入れる必要があると考えられる。公共性の高い業務は行政が担いつつ、場所や期間が限定的で比較的公益性の低い業務は民間委託を進める。そして、行政はその事業運営が住民の利益に則っているかどうか管理する役割を果たすことが望ましい。
公務員は、倒産や経営不振の可能性のある民間企業と違い財源支出に関するアンテナが低くなりやすい。持続可能な行政サービスを提供するために、常に支出用途や収入財源を意識できる体制を作っていく必要がある。
循環型社会(環境問題)
循環型社会とは、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会システムから脱却し、廃棄物の発生抑制、廃棄物の資源としての再利用、適正な廃棄物の処理を行うことで、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷をできる限り減らしながら持続的な経済活動を営む社会のことである。
今、循環型社会の実現が求められている背景に、世界的な人口増加や経済活動の拡大により、天然資源の枯渇が危惧されている状況がある。資源の大半を輸入に依存する我が国において、輸入先の資源の激減は国内のエネルギー供給に直接影響する。また、廃棄物の最終処分場の確保が逼迫していることも循環型社会の実現が急がれる理由である。廃棄物が処理不能になれば経済活動は大きく停滞する。
民間事業者と区民は、循環型社会の実現を推し進める両輪であり、特別区の職員にはその両輪をうまく回転させるための環境整備の役割が求められると考える。なぜなら、民間事業者と区民が当事者意識を持って環境に配慮した活動を行う際には、そこに区政のサポートが必要不可欠だからである。具体的な取組を以下に述べる。
第1に、民間事業者の活動において、障害者雇用における法定雇用率制度を参考として、循環型社会の実現に資する具体的な達成目標を設け、その達成を区政が支援することが挙げられる。障害者雇用では、企業規模等の条件を考慮して一定の数値目標を定め、目標に満たない事業者にはペナルティとして納付金を課す一方、目標を超えた事業者には納付金を財源として助成金を支給している。そして、目標を下回る事業者を行政がフォローアップしながら、上回る事業者の先進的な取組を顕彰する等、制度の効果的な運用を図ることで、障害者雇用は大きく伸びた。循環型社会の構築においてもこうした施策を参考に、廃棄物の量や活用率などの目標数値を定めることで、包装の簡易化やワンウェイプラスチックの削減、マイバックキャンペーン等に取り組む民間事業者を増やすことが可能と考えられる。
第2に、区民の取組を進めるために、ホームページや広報誌等で環境に配慮した生活を実践するよう啓発することが挙げられる。必要以上のものは買わないこと、ワンウェイプラスチック削減のためにマイバック・マイボトルの利用や簡易包装製品を選択すること、食品ロス削減のために食材の使い切りや過度な鮮度志向を抑制すること、フードドライブ活動への協力を促し、ごみの発生を抑制する活動等を周知することにより、区民一人ひとりの意識改革と、それに基づくライフスタイルの変革を促す必要がある。周知する際には、外国人住民も理解できるよう多言語で表現すると共に、子どもや高齢者も分かりやすい平易な表現を心がけることが大切である。区民誰もが環境に配慮した活動に関して正しい知識を身に付けることが、循環型社会の実現につながると期待される。
今後、私は特別区の職員として、循環型社会構築の必要性を区民や民間事業者に粘り強く働きかけ、豊かな環境と経済発展が持続する社会の実現に貢献したい。
組織におけるコミュニケーション
組織内コミュニケーションとは、組織のメンバー間で情報や考えを伝え合い、お互いの認識の共有を図ることである。個人で職務を遂行するより、集団で協働して取り組む方がより大きな成果を得られることから、現代では目的を達成するために組織が構築されることが一般的である。そして、組織内コミュニケーションは組織が目的を達成するうえで不可欠な要素である。なぜなら、情報共有が円滑に行われることで、無駄が削られ組織の生産性が高まるからだ。また、信頼関係をつくることで個人の満足度が向上し、組織への帰属意識が高まることも効果として挙げられる。
しかし、現代の組織ではコミュニケーションが円滑に図られていないことも多い。その背景として、核家族化の進展や地域コミュニティの希薄化により、多世代間で交流する機会が減少していることが挙げられる。それにより、異なる考えを持つ人とのコミュニケーションを取ることが苦手な人が増加している。また、テレワーク出社やオンライン会議などが増えたことで、顔を合わせて気軽な雑談をすることもなくなったため、相談や報告がしにくくなっている現状もある。
私は、組織内コミュニケーションの理想的なあり方は、同期・同僚との「横」のコミュニケーションと、リーダーや上司との「縦」のコミュニケーションの両方が活発であることだと考える。同期や同僚とばかり仲が良くても上司の考えを知らなければ質の高い業務は遂行できず、逆に、上司への報告は丁寧でも他の同僚との関わりを持とうとしなければ分担や連携ができない環境をつくってしまう。どの立場の相手とも、お互いに報告や連絡が無理なくできる関係をもつことが重要である。
横と縦のコミュニケーションを円滑にするための取組として、第1に、横のコミュニケーション対策として、研修制度を充実することが挙げられる。年次別研修や階層別研修、職種別研修等を定期的に開催し、対面で話をする機会をつくることで集まった人たちの連帯感を醸成させる。そこで築かれた人間関係やネットワークは、その後の業務においても横のコミュニケーションの拠り所となるだろう。
第2に、縦のコミュニケーション対策として、メンター制度が有用であると考えられる。他部署の先輩メンバーがよき助言者としてメンターとなり、経験の浅いメンティに対して、個人的な相談やキャリア形成、能力開発等について助言を与える定期的な機会をつくる。メンティは業務の方法やコミュニケーション方法への理解が深まり、メンターはマネジメント技術を身に付ける機会となる。これにより、縦のコミュニケーションが活発化することが期待される。
現代において、人事担当者が採用基準として最も重要視することが「コミュニケーション能力」であると言われている。しかし、非対面業務が増えていく中、個人のコミュニケーション能力の育成とともに、システムとしてコミュニケーションをとりやすい環境を構築していくことが重要であると考える。
職員としての意識
特別区の職員は区民全体の福祉向上のため、健康福祉・産業振興・インフラ整備・教育など区民生活に関わる幅広い業務を担っている。
特別区の職員に求められる心構えとして、第1に高い使命感と倫理観を備えることが必要である。なぜなら、特別区の職員は区民への奉仕者として法令に従って業務を行い、区民の福祉に貢献するべき存在だからである。
第2に、職務遂行能力を高めるため、日常的に自己研鑽の努力することが重要である。今後、人口減少や自治体財政の逼迫が深刻化していくと予想されており、多様化、複雑化する課題に対して最小のコストで最大の成果を生むことが特別区職員に強く求められるからだ。
私は特別区の職員として、第1に、使命感と倫理観を養うため、区民の声に丁寧に耳を傾ける職員になりたい。具体的には、窓口や電話で区民に対応する際、区民の話を丁寧に聞き、様々な事情を持った区民の考えを理解することに努めたい。窓口には、老若男女様々な区民が訪れるはずである。一人ひとりにしっかり時間をかけることが重要であると考える。また地域のイベントに積極的に参加することで、区民のニーズを深く知ることができる。区民にとっても、職員と直接対面することが、より安心感と親近感を持つきっかけになると考える。また、区民との対話や交流の機会を増やしていくことで、区民の立場になって働く姿勢が培われると考える。
第2に、職務遂行能力を高めるために日常的な自己啓発活動に努めたい。私はこれまで自分の人生の糧とするため、広報や経理の知識・ウェブ制作技術・ファシリテーションスキル・英語力など様々な分野の技術習得に励んできた。特別区の職員は数年で他部署への異動を繰り返すため、状況に柔軟に対応できるスキルが必要である。そのために、農業や税務、児童福祉などのこれまであまり見識がない分野の勉強もするとともに、コミュニケーション能力やマナースキルなどの対人スキルも磨いていきたい。時間があるときには、主な例規や要綱の勉強をして、幅広い知識をもって正確かつ効率的に業務を行える人材に成長したい。常に自己啓発に努めることで、限りある時間の中で成果を生み出す力が養われると考えている。
第3に、最も基本的で当然のことだが、オフィス以外でも常に特別区の職員であるという意識を忘れないようにすることが必要である。教員や市職員などの公務員が不祥事を起こすと、あっという間にメディアに取り上げられ、区民の行政への不信感を生み出す。私たち特別区の職員は区民に奉仕する存在である。そのため、車の運転中やお店での飲食などのプライベートな時間においても、常に法令を遵守し、区民の模範となる生活をしていくことが信頼される行政づくりにつながると考える。
私はこれから特別区の職員として、高い使命感・倫理観と職務遂行能力を身に付け、区民・民間組織・行政の三者がより豊かになるよう貢献するべく、職務に励む決意である。
特別区の過去問
なお、特別区の過去問は下記の記事で紹介しています。
特別区は論文対策が極めて重要となるため、過去問で出題があったテーマは一通り目を通しておきましょう!
裁判所の模範解答例を公開中
なお、下記の記事では「裁判所の論文模範解答例(合格者答案)」を公開しています。
この記事を読んでいる特別区受験生の中には、裁判所を併願している人もかなり居るでしょう。
裁判所の論文対策として、是非参考にしてください。