おい、バトルしろよ   作:ししゃも丸

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やっぱアイアンマンは最高やな!(イギリスから届いた4KUHDを見つつ)


おそろしく速いはたく……オレでなきゃ見逃しちゃうね

 

 

 

 計画は順調だ。ロケット団の残党は予想通りの働きをしてくれている。

 スズの塔の崩落。

 これによりこの空のどこかにいるホウオウがその帰巣本能でこのジョウトに戻ってくるはず。正確な日にちはまだ不明だが、確実にあの塔へと戻ってきているのは間違いないはずだ。

 そしてついにあのルギアも捕らえることができた。あのゴールドという小僧と裏切り者シルバー、そしてクリスタルという小娘の頑張りのおかげで特に苦労もせず捕まえられた。これはまさに僥倖であった。

 残すはホウオウとセレビィを捕まえるためのボールの設計図。これはもう時間の問題だ。

 さらに舞台は整った。

 第10回ポケモンリーグ。そのエキシビションマッチのジムリーダー対抗戦。まさに私が理想とする舞台となった。

 だがそれよりも、私にとって最も素晴らしい報せが入った。

 ジムリーダーだけに伝えられた前回のポケモンリーグチャンピオンであるレッドが、その役目を辞退したと。それに伴い新たなチャンピオンが公式に決まったと。

 これで今の今まであの男が姿を現さなかったのに納得がいった。理由はどうであれ、アイツはこちらに関わる気はないのだと。

 

 

「アハハ! これで私を止める者は誰もいない!」

 

 

 誰もいない部屋で思わず感情的に叫ぶ。

 だがこれで、これでやっと会える。私のラ・プリスとラ・プルスに……。

 

 

 

 

 

 セキエイ高原ポケモンリーグ会場に向かうリニアモーターカー。カントーとジョウトを新たなに繋ぐ次世代のマシンが今回は特別にセキエイ高原へと向かっている。これの正式稼働運転はポケモンリーグが終了した後になっているが、今回はお披露目ということもあって稼働している。

 リニアモーターカーのカントーのジムリーダー達が乗っている車両の部屋の一つに、グリーンは手に持つ自分のではないモンスターボールを見ながら、ポケギアで妹であり新チャンピオンとなったリーフと連絡を取っていた。

 彼女はすでにリーグ会場の控室。自分達より先に紹介されることになっているからだ。

 

 

『あ──もうやだぁ……あんな大勢の前で出るなんてむりぃ……』

「三年前だって立っていたんだ。それぐらい平気だろ」

『それはそれだよぉ……でもレッドのヤツ本当にもういないんだね』

「ああ。だからってこれを預けていくなんて。何を考えているんだか」

 

 

 手に持つモンスターボールに入っているポケモンはカメックス。それもレッドのカメックスだ。それは自分だけではない。

 

 

『うん。わたしにはリザードンだもんね。さらにわたしはカビゴンも預かって、もう一体貰っちゃったけどさ……』

「あの場にはいなかったが、どうせブルーにはフシギバナを渡しているんだろうさ」

『ほんと、何を考えているんだか……』

「まったくな」

 

 

 ため息をつきながらグリーンは昨日のことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 昨日。マサラタウン南部にある桟橋。

 そこには旅立つレッドを見送るために大勢の人間が集まっていた。

 自分をはじめナナミ姉さん、リーフ、おじいちゃん、マサキ、ナツメ、カンナそして……ハナダのお姉さん。

 そのレッドは本当に旅立つのか怪しい格好だった。いつもの赤い帽子と下のジーパンはいい。問題はそれ以外だ。シャツは「I LOVE KANTO」だし、足は靴ではなくサンダル。それといつも身に着けるようになった左腕のガントレット。

 それを咎めれば。

 

 

「だって力を使うと溶けるというか……壊れるから」

「はぁ……まあ手ぶらではなくショルダーバッグを持って行くだけマシか」

「まあ一応ね」

 

 

 すると自分の言葉に続くように他のみんなもレッドに一言言っていく。

 

 

「くそ! まさかこの時のためにわたしをチャンピオンにしたのか! レッドのバカ!」

「すまんの」

「レッドくん。私との約束守ってね? またボロボロだったら一生責任とってね。私の」

「前向きに検討させていただきます」

「まったく。お前は勝手なんじゃからのう」

「あ、図鑑の件はありがとうっす」

「レッド……元気でな!」

「ああ。マサキもな!」

 

 

 マサキの時だけ熱い握手を交わすレッド。

 

 

「大丈夫? ちゃんとハンカチ持った? ティッシュ持った? あと私の写真持った?」

「持ったよ」

「うぅ……レッド、愛してる!」

「俺もだ、ナツメ!」

 

 

 と、見せびらかすように抱き合うナツメとレッド。

 

 

「……レッド、体には気を付けるのよ。私も……頑張るから」

「頼んだぞ、カンナ」

「え、何いまの……こう知らぬ間に通じ合ってる感じ……」

「何でもありませんわ奥様」

 

 

 気が付けば当たり前のようにいるカンナと軽い抱擁だけ交わすレッド。

 

 

「レッドくん」

「お姉さん」

「可愛い子には旅をさせろってよく言うけど、また旅立つのね。離れ離れになってもレッドくんの心の中に、私はいますからね」

「お姉さん……!」

「レッドくん……!」

 

 

 熱い抱擁を交わす二人にカンナがナツメに言う。

 

 

「いいんですか?」

「もう諦めたもの……」

 

 

 お姉さんから離れると、レッドがオレとリーフにボールを渡してきた。

 

 

「念のために渡しておくわ。あ、こいつらとはもう話がついてるから安心してくれ。あとリーフ」

「なによぉ」

「もしイーブイが進化したらこの手紙を読め」

「え、なんで?」

「いいから。そういう風に仕込んでおいたんだよ」

「仕込むって……エッチなんだからレッドは……」

「おませさんめ。……じゃあ行くわ」

 

 

 ラプラスの背に乗って手を振るレッドにこちらも手を振って返す中、ナツメが泣きながらレッドの名前を叫んでいる姿が酷いぐらいに印象に残ってる。

 ただレッドがいなくなると、突然ナツメが言い出した。

 

 

「うっ!?」

「どうしたんですか奥様⁉ つわりですか⁉」

「み、見えた……」

「え? 何が見えたんですか?」

「レッドが小さい女の子と一緒にいる姿が……」

『……』

 

 

 感動的なシーンが台無しだと我ながら思った。

 

 

 

 

 

 

『ジムリーダーの皆様。まもなくセキエイ高原に到着いたしますので準備をお願いします』

 

 

 車内にアナウンスが流れる。

 まさか今度はジムリーダーとしてポケモンリーグに出るとは思いもよらなかったと苦笑するグリーン。ポケギアの向こうでもリーフの方が慌ただしくなるのがわかる。

 

 

『あ、わたしの出番だ。じゃあまたねグリーン』

「ああ」

 

 

 ポケギアをしまって窓の外を見る。猛スピードで走っているのもあるが、外の景色は絶望的に見えない。

 しかし自分と違ってレッドはのんびりと青空が広がる広大な海の上にいる。自分からジムリーダーになってもいいと言ったのもあるが、自由に旅をしているアイツが少し羨ましく思えた。

 

 

「レッド。お前の旅はどうだ?」

 

 

 

 

 

『長らくお待たせいたしました! これより第10回ポケモンリーグを開催します!』

『ウオオオオオオオオオ!!!』

『ただいまポケモン協会理事長から大会の開催が宣言されました! 三年ぶりとなるリーグの開催に会場は熱気につつまれております! 司会はわたし、コガネラジオのクルミと!』

『どうもバトル大好き通りすがりのバトルお兄さんです!』

『以上二人で大会の進行を務めさせていただきます!』

 

 

 歓声に包まれる中、会場を照らすライトが落とされ入場口にライトがアップされる。

 

 

『ではご紹介いたします! 前回優勝者レッド──ではなく、新チャンピオンのリーフさんです!』

『ざわざわ……』

 

 

 理事長の紹介によって大掛かりな演出共に戦闘服に着替えたリーフが入場する。その姿に会場はどよめき、先程とは違って静まり返っている。

 

 

『えーわたしから説明させていただきます。何でも前回優勝者レッドさんはチャレンジャーであるリーフさんに負けたことにより、新チャンピオンがリーフさんになったようです。なお、この試合は協会のもと公正に行われたらしく問題がないと……』

『いやぁ。会場は大炎上ですね! 火種がレッドくんだけに!』

 

 

 バトルお兄さんの言うように会場からはリーフに向けてブーイングが飛び交う。理事長も予想していたとはいえ、どう対応すればいいか迷っていた。

 ただ当事者であるリーフは特にダメージはなく、むしろ大きなため息をついて入り口で待機していたスタッフに合図を送った。

 少しして一体のカイリキーが4本の腕を使って巨大な岩を運んでバトルフィールドの上に置く。高さはリーフの身長の数倍。その光景に多くの観客が静まり返りながら首をひねる。

 するとリーフは右手を振った。

 ──リーフのはたく! 

 瞬殺。

 まさに神業とも言うべきそれは、観客はおろかトレーナーですら捉えることができない速さで巨大な岩を粉々にした。

 

 

「おそろしく速いはたく……オレでなきゃ見逃しちゃうね」

 

 

 と、どこかにいるトレーナーが言った。

 リーフは理事長からマイクを奪い取って会場に冷たい声で言った。

 

 

『文句があるやつはここに来なさい。けどわたしはあのレッドを倒した。その意味、分かるよね?』

『ヒエッ……』

 

 

 その言葉で別の意味で会場が冷え込む。

 リーフはマイクを理事長に返すと、そのままチャンピオン専用観戦席に移動した。

 

 

『えーでは、気を取り直して! 本大会のセレモニー第2弾! ジムリーダー16人によるエキシビションマッチ、カントーVSジョウト8VS8の対抗戦です!』

『ご覧ください! 闘技場の中央が割れ、レールが現れました!』

 

 

 次の瞬間、リニアモーターカーが闘技場中央に停車。入り口が開きカントーとジョウトのジムリーダー総勢16人が姿を現す。

 

 

『ではこれより、ジムリーダー対抗戦を開始いたします!』

 

 

 ジムリーダー対抗戦。この真の目的は現在ジョウトで暗躍している悪を見つけだすこと。ゴールドが仮面の男と戦った際に手に入れた粉に、ジムバッジ特有の金属粉が付着していたことを知った協会はこれを企画した。

 もちろんあの仮面の男が動くなら、絶対に尻尾を出す。そう睨んでいた。

 だが、すでに仮面の男は動いていた。

 

 

 

 

 

 ジョウト地方エンジュシティ上空。

 雲を抜けたその先にデリバードに乗った仮面の男が9年ぶりにソレと対峙した。

 

 

『久しぶりだな……ホウオウ! お前を再び我が手足とし、セキエイに乗り込む!』

『ショオーーーーッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




運営からのお知らせ
レッドの離脱を確認。これより難易度調整を行います。







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