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大相撲 霧馬山 大関昇進が正式決定「大関の名を汚さぬよう」

相撲 2023年5月31日(水) 午前10:19

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大相撲 霧馬山 大関昇進が正式決定「大関の名を汚さぬよう」

日本相撲協会は、臨時の理事会を開き、夏場所で11勝をあげた霧馬山の大関昇進を正式に決めました。モンゴル出身力士の大関昇進は平成27年夏場所後に昇進した照ノ富士以来、6人目です。

31日午前に行われた伝達式の口上(こうじょう)で「謹んでお受けいたします。大関の名を汚さぬよう今まで以上に稽古して頑張ります」と決意を述べました。

また霧馬山が、しこ名を師匠の陸奥親方と同じ「霧島」に改名することになりました。大関昇進が決まったあとの記者会見で陸奥親方が明らかにしました。


霧馬山は小結だった、ことし1月の初場所で11勝、新関脇で迎えた春場所で12勝、5月28日まで行われた夏場所で11勝と三役で臨んだ直近の3場所の勝ち星の合計を「34」として大関昇進の目安「33」を上回っていました。



日本相撲協会は31日、東京・両国の国技館で次の名古屋場所に向けた番付編成会議と臨時の理事会を開き、霧馬山の大関昇進を正式に決めました。

新大関は去年の初場所後に昇進した御嶽海以来となります。

モンゴル出身力士の大関昇進は平成27年夏場所後に昇進した照ノ富士以来、6人目です。

31日午前中に相撲協会の使者が、東京・墨田区の陸奥部屋に向かい、大関昇進の伝達式が行われ、霧馬山は伝達式の口上で「謹んでお受けいたします。大関の名を汚さぬよう今まで以上に稽古して頑張ります」と決意を述べました。


霧馬山 しこ名を「霧島」に改名 師匠の陸奥親方と同じ


大関に昇進した霧馬山がしこ名を師匠の陸奥親方と同じ「霧島」に改名することになりました。大関昇進が決まったあとの記者会見で陸奥親方が明らかにしました。


強じんな足腰で粘り強い相撲が持ち味


霧馬山はモンゴル出身の27歳。

左四つに加えて前まわしを取っての寄り、さらに強じんな足腰を生かした粘り強い相撲が持ち味です。



モンゴルでは遊牧民としてゲルと呼ばれる移動式の住居で生活し、少年時代は1人で馬を乗りこなしていたということで柔道やモンゴル相撲などにも取り組みました。

相撲の経験はなく体重も70キロほどでしたが、来日してから陸奥部屋に入門して平成27年夏場所の前相撲で初土俵を踏むと、その年の九州場所で三段目で優勝を果たしました。



その後、幕下では左ひざのけがなどに苦しみましたが、師匠で元大関・霧島の陸奥親方をはじめ、同じモンゴル出身の元横綱、鶴竜親方からも指導を受けて体作りを進めながら相撲の技術を学んで着実に実力を伸ばしました。

そして、初土俵からおよそ5年で新入幕を果たすと、次の年の九州場所では新三役となる小結に昇進しました。

その後、いったんは平幕となりましたが、去年の秋場所で小結に返り咲くと、ことしの初場所で三役では初めての2桁となる11勝を挙げました。



新関脇で迎えた先場所は大栄翔との優勝決定戦を制して12勝3敗で初めての優勝を果たし、今場所は11勝をあげて大関昇進を確実にしていました。


地道な稽古で深めた自信


霧馬山が大関昇進を確実にした背景には、地道に重ねた稽古に基づく確かな自信があります。

霧馬山はみずから「大きな山」と位置づけた大関昇進に向けて初優勝を果たした先場所のあとも「稽古しかない」と決して慢心せずに成長を追い求めました。



先場所中に発症した右足の炎症のため、4月前半の巡業は休場することになりましたが、復帰してからはこれまでの分を取り戻すかのように稽古に励みました。

所属する陸奥部屋には、霧馬山1人しか関取がいないため巡業後は、積極的に出稽古に赴き、同じ関脇の豊昇龍や大栄翔、それに若元春などと連日、20番から30番、胸を合わせました。

さまざまなタイプの実力者を相手に立ち合いで当たってから四つに組む得意の相撲だけではなく、あえて突き押しに徹し、まわしにこだわらない相撲も試して取り口の幅を広げたことで、確かな自信と手応えを得て今場所に臨みました。



前半戦こそ大関昇進がかかった独特な雰囲気に飲まれて2敗を喫しましたが、師匠で元大関・霧島の陸奥親方や部屋付きの元横綱の鶴竜親方から「稽古場でやってきた相撲しか取れないから自分を信じて自分の相撲を」と発破をかけられると、重ねてきた稽古を思い出して再び気持ちを立て直しました。



その流れが本物になったのが9日目、先場所優勝を争った関脇・大栄翔との取組でした。

この一番で霧馬山は立ち合いでまっすぐ頭から当たり土俵際の突き落としで勝利をたぐり寄せて「だんだん当たれるようになってきた。気持ちもコントロールできるようなってきた」と手応えを口にしました。



ここからさらに調子を上げると12日目の大関・貴景勝との一番では、立ち合いで正面から当たって相手の圧力に屈せず力強く前に出て白星を挙げました。

この取組については土俵下で見ていた佐渡ヶ嶽審判部長も「いい内容の相撲だった。初日から見るとだんだん波にのってきている。霧馬山らしい相撲が取れてきている」と手放しで評価したほどでした。



そして、千秋楽を終えて積み上げた白星は「11」。稽古で培った確かな自信でプレッシャーをはねのけ、大関昇進という「大きな山」を見事上り詰めて見せました。


大関昇進の「口上(こうじょう)」とは


大関昇進は日本相撲協会の使者が新大関と師匠のもとを訪れて直接伝達し、新大関は受諾する意思を示すとともに大関としての決意を込めた「口上」を述べます。

過去の口上では四字熟語を用いる例が多くありました。

【貴乃花】
平成の大横綱・貴乃花が平成5年に大関に昇進した際には「今後も不撓不屈の精神で相撲道に精進します」と述べました。「不撓不屈」は「どんな苦労や困難にもくじけないこと」という意味で、貴乃花が横綱昇進の際にも用いていました。

【白鵬】
元横綱・白鵬が大関に昇進した際には「大関の地位を汚さぬよう全身全霊をかけて努力します」と口上を述べました。

【霧島(霧馬山の師匠 陸奥親方)】
霧馬山の師匠の陸奥親方が霧島として平成2年に大関に昇進した際には「稽古に精進し、大関の名を汚さぬように一生懸命頑張ります」と述べました。

【貴景勝】
4年前に貴景勝が初めて大関に昇進した際には「武士道精神を重んじ、感謝の気持ちと思いやりを忘れず相撲道に精進して参ります」と述べ「武士道精神」という漢字5文字に思いを込めました。



一方で四字熟語などを使わない口上もありました。

【稀勢の里】
元横綱・稀勢の里が平成23年に昇進した時は「大関の名を汚さぬよう精進します」と述べました。

【鶴竜(霧馬山の兄弟子)】
霧馬山の兄弟子で元横綱の鶴竜は平成24年に昇進した際「これからも稽古に精進し、お客様に喜んでもらえるような相撲が取れるよう努力します」と述べました。

霧馬山がどのようなことばを用いて決意を示すのか伝達式での口上が注目されていました。


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