2010年07月10日
パワーLEDを、放熱せよ!!
前回入手したパワーLEDは、秋月電子の通販で買った、1W、50ルーメンタイプ(黄色)。
このクラスのLEDは、かなり高温になるので、放熱器無しには常用できません。
1W以上のハイパワーLEDは、最初から6角形の放熱板が付いた形状で売っている商品も多く、これをさらに金属板等に固定して放熱を促す設計にするのが普通です。
ただ、そうすると自由な設計(小型化等)が難しいため、マニアの工作では「コア(Emitter)」の部分だけ買って来て、自分で放熱設計&自作をすることになります。
この放熱対策が難しく、そして自作LEDパーツの面白いところ。
現在制作中の「LEDウインカーⅡ」は、パワーLEDを4個使う予定です。(→ 5年以上前に作った自作LEDウインカー)
▲星形のベース(放熱板)が付いたパワーLED。
小さなウインカーのサイズ内で、放熱が十分に可能なのかどうか?
今回は、それを検証するため、いろいろトライしてみました。
リフローハンダは難しい…
最初は、ハンダ付けによる、放熱板の取り付けに挑戦してみました。
まずは1mm厚の銅板を切り出し、取り付け用パーツを準備します。→ アルミ板の切り方。
適当なサイズに切り分け、ボール盤で穴開けし、グラインダーでバリ取りをしておきます。
1,置きハンダ方式
銅板に小さく切ったハンダを置きます。
その上にパワーLEDを載せて、クリップで挟んで位置を決めたら、銅板の下からミニ・バーナーで炙っていきます。
と、一見、くっついたように見えましたが、後からLEDがポロッと落ちてしまいました。
LEDのベース部分まで、熱が伝わっていなかったようです。
2,予備ハンダ方式
予備ハンダとは、先に薄くハンダを付けておくことです。
まず、ハンダゴテで銅板の中央でハンダを溶かし、すぐにティッシュで拭き取ります(ハンダメッキ)。そして、LEDの裏側に、ハンダを溶かして盛り、準備OK。
さっきとおなじように銅板にLEDを載せ、下からジワジワと炙ります。
と、急にハンダが流れてはみ出し、LEDと銅板がピタリと、完璧にくっ付きます。
…でも、僕は見てしまいました! LEDの透明なドームの中が、一瞬曇ったのを…。
▲一瞬の曇りは、すぐに消えましたが、よく見ると内部に亀裂が残っています。
LED自体は、ハンダ程度の熱には耐えられるのですが、問題は透明な充填部。
確か、シリコン系だったと思いますが、空気中の水分を吸収しやすい材質で、水分を含むと高温での加熱時に破損してしまいます。
これが性能劣化に繋がるので、新品LEDにはシリカゲルが同梱されているんですね。
僕がハンダ付けしたLEDをよく見ると、ドームの中に、斜め方向の亀裂が走っているようです。
これはマズイ。ある程度の数をこなさないと、上手になれそうにありません。
というか、カンや熟練度に頼る工作方法では、歩留まりが悪すぎます。
ここは、他の手段を考えるべきでしょう。
注:リフローハンダは、通常はペースト状のハンダやリフロー炉を使用します。今回は、あくまで素人実験です。
取り付け金具方式
LED工作を扱ったサイトを巡ると、パワーLEDの取り付けには、「固まる放熱用シリコーン」がよく使われています。
これで取り付ければ話は早いのですが、屋外使用での耐候性・耐震性はどうなのでしょうか?
せっかく作るのなら、前回の自作LEDウインカーのように、5年以上は使えて欲しいものです。
今回は放熱に、アルミ板を使う予定。(銅の方が放熱性は良いのですが、錆びやすいのと、加工がしにくいため)
しかし、アルミという素材は、例えば瞬間接着剤でも、後からポロッと取れる場合が多々あります。
表面の酸化膜のせいか、(経験上)どうも、長期間の接着性に難があるのです。
そのため、今回は金具で固定する方法を考えてみます。
工具箱にたくさんあるステンレスのワッシャーの内径が、LEDのドームとピタリ同じだったので、まずは、これを加工してみましょう。
▲左:5mmボルト用のワッシャーの内径が、パワーLEDのドームにピッタリ。 / 右:必殺! 「膝のせ双頭グラインダー」。こうすると、ほとんど騒音が出ません。アパートでもOK!
ワッシャーを束ねて、グラインダーで削って形を整えていきます。
次に、放熱用のアルミ板をカット。寸法は、パワーLED一個あたり、25mm × 40mm。
ウインカーは長時間点灯するパーツではないので、この程度で大丈夫(だったらいいなぁ 笑)。
▲左、カッターでアルミ板を切り出していきます。→ アルミ板の切り方。 / 右:自作の金具(四角く削ったワッシャー)を取り付けた状態。
高さは、パワーLEDのベース部分が2.5mm、ステンレスのワッシャーの厚みが0.7mm。計3.2mm。
家にあったアクリル棒が3mm角だったので、これをスペーサーに使ってあります。
アルミ板に穴あけして、ビスとナットでLEDを固定。
試作品なので手作り感いっぱいですが、実用版ではもう少し工夫してみる予定です。
いざ、通電!
▲定格の350mAの電流を流して、放置してみます。明るさは、テスターによると約1500ルクス。
今回の実験は、放熱板の取り付け方法の確認と、サイズが十分かを見るためのテスト。
実験用電源に、テスターを介してパワーLEDを繋ぎ、徐々に電圧を上げていきます。
カタログ値の350mAの電流を流したところ、じわじわとアルミ板が温かくなって来ます。
数分後には、多少熱くなりますが、指で触れる程度。ウインカーはデューティで点灯・消灯を繰り返すのと(通電時間は半分程度)、長くてもハザードで連続10分位しか使わない部品なので、現状の2.5 × 4cmサイズで大丈夫そうです。(もっと小さくてもOK!)
パワーLEDの現状
LEDは、その高い発光効率から、発熱が少なく明るいイメージがありますが、トータルで考えると、現状でやっと電球に近づいたかな。というレベルです。
例えば、家庭用の電球型LED。
ここ1年くらいで急速に普及してきましたが、まだまだ完全に置き換えに耐える所までは至ってません。
写真は60W型の電球型LED。
6.6Wで明るさは350ルーメン(1,980円)。
正面では電球並みの明るさですが、横や後ろ側には光が回らず、全体では電球に負けてしまいます。(JIS規格での60W電球の明るさは810ルーメン)
いったい、どうして効率が良いハズのLEDが電球にかなわないのでしょう…?
実は、設計上、明るさを上げるのは簡単なのですが、それを電球のサイズに納めた場合には、放熱が間に合わないそうです。
電球だと、ガラスと金属だけで作られているので、100℃を越える温度でも全然平気!
対して、LED電球の場合は、LED自体も、駆動回路も半導体が多用されていて、温度条件が厳しいのです。
しかも、電球なら、赤外線や様々な波長でエネルギーを四方に放出するのに対して、LEDは特定の波長の光(しかも一方向に)しか出せません。発光の変換効率は30%程度と高いのですが(電球では、約10%程度)、残りの電力の70%は小さなチップに蓄熱される事になります。
◆ 1ワットタイプのLEDの熱量
3V×0.35A=1.05W | 1.05W×70%=0.735W |
↑ LEDのパワー | ↑ LEDの熱 |
そのため、この熱をどう逃がすかが、パワーLED運用のカギとなるわけ。
僕が放熱にこだわるのも、こういう背景があるからなんですねー。
注:Super Flux LED等は、熱的には設計が楽です。ただ、面積あたりの光量ではパワーLEDが優るようです。
ちなみに、自動車のウインカーに使われる電球は12V21W。
で、一般的な電球20Wの明るさは、目安として170ルーメン程度です。(黄色だと、もう少し低いかな?)
--> パワーLEDを、固定せよ!
Posted by IGU at 23:54│Comments(3)
│工作、いろいろ
この記事へのコメント
私も大電流LEDのリフロー実装で破損した事がありました。(当時はシリコン樹脂の吸湿の事を知りませんでした…。)
現在は秋月電子以外にも共立電子でもXeon IやXeon 3シリーズが売られている様です。
前述した破損したLEDは秋月電子で売られているLEDに似た形状(中国製では一般的な形なので類似品が多数あったりする)です。
通販経由で買ったものですが、乾燥剤など同封されていませんでした。
そのままクリーム半田(Digi-Keyで買ったもの)をStar基盤に塗ってヒートガンで半田付けしたら内部のシリコン樹脂が全体的に割れてしまいました。
「やばい!」と言う事で乾電池2本を繋いでも点灯しませんでした。
因みに半田付け前の確認では全部点灯していたのでボンディングワイヤーが断線していた様です。
これを機に固まる放熱用シリコーンを使う様になりました。
又、ヒートガンで半田付けするのはDigi-Keyで買ったLEDに限定しています。因みにDigi-Keyで大電流LEDを買うと、吸湿性の高いものは乾燥剤がついてきます。
現在は秋月電子以外にも共立電子でもXeon IやXeon 3シリーズが売られている様です。
前述した破損したLEDは秋月電子で売られているLEDに似た形状(中国製では一般的な形なので類似品が多数あったりする)です。
通販経由で買ったものですが、乾燥剤など同封されていませんでした。
そのままクリーム半田(Digi-Keyで買ったもの)をStar基盤に塗ってヒートガンで半田付けしたら内部のシリコン樹脂が全体的に割れてしまいました。
「やばい!」と言う事で乾電池2本を繋いでも点灯しませんでした。
因みに半田付け前の確認では全部点灯していたのでボンディングワイヤーが断線していた様です。
これを機に固まる放熱用シリコーンを使う様になりました。
又、ヒートガンで半田付けするのはDigi-Keyで買ったLEDに限定しています。因みにDigi-Keyで大電流LEDを買うと、吸湿性の高いものは乾燥剤がついてきます。
Posted by しもえる at 2011年05月05日 17:45
工作は、やってみないと始まりません。
そして、失敗談は、絶対に次の人の参考になると思います。
(失敗しなくても済むって、いいなぁ 笑)
あと、どういう考えで、何を工夫したか等。
ブログに、くだらない話を書きながら、役に立っていたらいいなぁと考えています。
そして、失敗談は、絶対に次の人の参考になると思います。
(失敗しなくても済むって、いいなぁ 笑)
あと、どういう考えで、何を工夫したか等。
ブログに、くだらない話を書きながら、役に立っていたらいいなぁと考えています。
Posted by IGU at 2011年05月05日 20:08
このブログをよんで一番驚いたのが膝のせ双頭グラインダーです。
電子工作でつかうはんだこてなどは音がたたないので怖くないのですが、
電動の工具は少し恐怖心があります。
グラインダーでカンナの刃を削ったのですが火花がものすごく出て汗。
それ以降苦手なのです。
膝のせなんて僕からしたら神業級です。
電子工作でつかうはんだこてなどは音がたたないので怖くないのですが、
電動の工具は少し恐怖心があります。
グラインダーでカンナの刃を削ったのですが火花がものすごく出て汗。
それ以降苦手なのです。
膝のせなんて僕からしたら神業級です。
Posted by oji at 2016年05月04日 20:43
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