おい、バトルしろよ   作:ししゃも丸

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この前三章が終わる気配がないと言ったが気づいたら終わったでござるの巻


もう金銀どころかルビサファ始まってるよぉ……なんなのこの世界

 

 

 

 

 ジョウト地方某所。

 カントーを旅立って早半年が経過した。

 すでにレッドは最後のジムであるフスベジムを攻略しており、これでジョウトのジムバッジをすべて制覇したことになる。ちなみにタンバジムに関しては修行を終えた際に貰っている。

 お土産のいかりまんじゅうも大量に購入し、道中にあるシロガネ山でも軽く下見してから帰ろうと計画していたときのことである。

 頭上を一匹のポケモンが飛んで行ったのだ。それも一瞬でハッキリとは見えなかったが、その特徴的な翼は脳裏にしっかりと焼き付いていた。

 

 

「ファッ⁉ ぼ、ボーマンダ⁉」

 

 

 本来はホウエン地方にいるであろうボーマンダが、何故かここジョウトにいる。群れではないことから単独でこのジョウトに来たのだろうか。恐らくそれは珍しいことではないのだろう。他の地方のポケモンも、何らかの理由で移動をしたりすることもあるはずだ。

 レッドはついそのボーマンダが気になりFR号を出してその後を追う。リザードンを出して追わないのは警戒させないためと、何処へ向かっているのかを突き止めるためである。

 最初は森、次には森を抜けて草原へ。気づけば人工物があるところにたどり着く。しかしそこはレッドが知らない場所。マップにも載ってない、例えるならばゲームの画面外に存在する街や施設だろうか。

 

 

「なんでボーマンダがこんな所に……」

『キャアアア!!』

 

 

 幼い少女の悲鳴が耳に入る。

 つい足を止めた自分に舌打ちしてその声の場所へとFR号を走らせる。距離にして僅か数分。レッドの目には思いがけない光景が目に入る。

 それは一人の少年が手持ちのポケモン三匹でボーマンダと戦っている光景だった。その三匹はポチエナ、ラルトス、エネコ。どれもホウエン地方にいるポケモンだ。だが、ボーマンダのレベルはどう考えてもレベル50以上。対してポチエナ達は進化はしていないため正確なレベルは分からないが、10台に入ってるかないかだろう。それだというのに少年はボーマンダから逃げることなく、的確な指示を出して立ち向かっている。

 手を出そうとした時にはボーマンダは怖気づいたのか別の所へ飛んで行った。レッドもすぐに少年と少女の下へ駆け寄る。

 

 

「君たち大丈夫か⁉」

「……」

「ひっぐ……くす……」

 

 

 二人の前に立てば少年は立ち尽くし、少女は泣いていた。レッドは状況が状況なので、目の前の光景が怖くて少女が泣いているのだと思った。

 気づけば少年のおでこから血が流れているのに気づく。急いで顔を撒いていたターバンの布を千切って少年の頭に当てる。

 

 

「少年平気か?」

「……あ……うん」

 

 

 ボーマンダを撃退したというのに少年の顔は暗い。しかしそれよりも出血がまだ止まらない。生憎医療キットは持っていないのだ。日々の鍛錬の成果が出ているのか、そう簡単には傷を負えない体になってしまっている。

 どうするかと頭を悩ませていると、少し離れたところで爆発音が聞こえる。その方向へ目を向ければ、天に向けてあるポケモンが飛んでいくのが見えた。

 

 

「しぇ、神龍⁉ じゃなくてレックウザ!? ここはジョウトだぞバカ野郎! いいか少年、ここにいるんだ。大人達が後で来るはずだからな!」

 

 

 二人の傍にいてあげたいが、状況が状況だけにそう言ってられなくなった。FR号をボールに戻し助走をつけてその施設へと高くジャンプして向かう。

 空の上から見た状況では、内側から破られたらしく辺りには高そうな機械が見えた。これから推測できることはただ一つ。

 ここではレックウザが保管あるいは管理されていたということ。理由は大方ポケモンの研究とかを名目にしているのだろう。

 サンダー達やルギアの件もあるレッドにはただ怒りしか湧いてこない。拳を握り締め、情報を手に入れるために施設へと侵入する。未だ混乱状態のためかまだ見つかっていない。

 瓦礫が転がっているがすぐにかなり大規模の研究室へとたどり着く。物陰から覗き込めば、そこには先程のボーマンダが。さらにはここの研究員と思われると職員数名と、知っている人間が二人。

 

 

(センリとオダマキ博士⁉ なぜここに……)

 

 

 センリはまだわかる。主人公はジョウトからホウエンへと引っ越してきたのだ。センリがまだジョウトにいても不思議ではない。だが、なぜオダマキ博士がここにいるのかがわからない。

 そこでレッドはあることに気づいた。

 先程の少年と少女。その時は慌てて気づかなかったが、もしかしてあの二人がルビーとサファイアで、兄妹かあるいはそれぞれの子供か。あの容姿だとゴールドより幼い。予想だが5歳あるいは6歳あたりだろう。

 

 

「こ、これは一体⁉」

 

 

 

 すると新たな人物が登場した。それも二人の人間で、見覚えがあった。背の低い眼鏡をかけたアフロ頭。あれはポケモン協会の理事長だ。それに隣の老人は……テッセンか? 

 ホウエン地方にあるキンセツシティジムリーダー、使用ポケモンは電気タイプ。ホウエンのジムリーダーがなんでジョウトに。

 

 

「なんてことだ! あのポケモンが逃げ出したのか⁉ だが、どうして……」

「──それは、私の責任です」

 

 

 センリが声をあげた。おそらくセンリはどうしてボーマンダがここに来てしまったのか分かったのだろう。つまり、あの少年がセンリの息子だ。

 しかしそれも酷というものだ。一人の少女を守るために立ち向かい、そして撃退しただけだというのに。自分の子供を守るために、彼は父親としての役目を果たそうとしているのだろうか。

 物心ついた時には両親がいなかった自分にはわからない感覚だ。まあ前世のこともあるので、理解はできるが。

 そろそろ退散すべきか。そう思った時には一歩出遅れていた。

 

 

「おい! 貴様何者だ⁉」

「やべ!」

 

 

 ──レッドのギガトンパンチ! 

 咄嗟に床に拳を叩きつけて粉塵を起こしてその場から飛び去る。

 僅かな時間で多くのことが起き、たくさんのことを知ったせいか頭の中がおかしくなる。レッドはとりあえず、この場所から遠ざかることだけに専念し空を飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 カントー某所。

 あれから空を飛んでいたレッドであったが、結局飛行時間は15分程しかもたず、その後はいつものようにリザードンの背に乗って移動していた。気づけばジョウトを過ぎ、シロガネ山を通過しカントー領空に入ったところだ。

 とりあえず、目下の課題は飛行時間を延ばすことだろうか。新たな訓練メニューを考えているとポケギアが鳴った。相手はナツメだとわかるとすぐに出た。

 

 

「あ、ナツメ。どうした?」

『どうした、じゃないわよ。さっきから電話してたのに出ないんだもん』

「ごめんちょっとあって。それで?」

『ポケモン協会から出頭命令よ。何でも、チャンピオンであるあなたに紹介したい人間がいるって』

「なんで今更。ていうか、何で直接連絡してこないんだよ」

『だってレッド。あなたポケモン協会の番号着信拒否してるじゃない。だから私が代わりに連絡しろって言われたのよ。それと理由は知らないわ』

「あ、そうだったわ」

 

 

 一瞬、あの施設に居たことがバレたのかと思って冷や冷やしたが取り越し苦労だったようだ。しかし紹介したい人間とは誰だろうか。まったく想像がつかない。

 

 

『で、今どこにいるの?』

「いまカントー領空。あと数時間したら着くよ」

『わかった。じゃあ待ってるからね』

「うん。じゃあまた」

 

 

 通話を終えてふと悩んだあと、連絡先からある番号にかける。かけて数コール以内にその相手は出た。

 

 

「あ、俺俺。今から会えない? え、そうそう二人きりで。ちょっと頼みたいことがあるんだよ。うん、今どこにいるんだ? ふーん。じゃあ今から行くわ。ああ、じゃあまた」

 

 

 電話を切ってリザードンに新たな目的地を告げる。

 ふうと小さなため息をついたあと、普段からは考えられないほどの弱々しい声をあげた。

 

 

「もう金銀どころかルビサファ始まってるよぉ……なんなのこの世界」

 

 

 ゴールドから始まり、ウバメの森で会った仮面の男が実はヤナギで、なぜかボスキャラになってること。終いにはルビーとサファイアにトドメのレックウザ。

 なんでジョウトでこんなにたくさんのことが起こっているのか。まったく訳がわからないよ。

 レッドは混乱している。なぜ、こんな面倒な世界になっているのかと。さらに拍車をかけるのは祠で見せられた未来。

 

 

「もうさ、俺がどうこうしようがもうどうにかなってるじゃん……」

 

 

 なのでもう考えないことにした。下手に考えると余計に混乱してしまう。物理(そのままの意味)には強いが頭はよくないのだ、自分は。

 しかしそれよりも、レッドには一つ許せないことがあった。

 この世界の調和を乱そうとするなら、例えそれがポケモンや人間だろうと容赦はしない。

 

 

「マジでポケモン協会潰そうかな……」

 

 

 それが本当かどうかは、彼のポケモン達にしかわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 数日後。

 セキエイ高原・ポケモン協会本部にあるサーバー室。ここにはカントーとジョウトのポケモンあずかりシステムの本体が置いてある。それだけに室内は広く、コード類や電源ケーブルなどが入り乱れている。

 二つの地方を管理しているだけあってそれは巨大で、マサキが開発して実装されて以来トレーナーの数だけ利用者は多い。24時間常に稼働し、多くの利用者がポケモンを預けてはボックスから出している。

 そして逆を言えば、このメインサーバーのハッキングに成功してしまえば預けているポケモン達を自由自在に操れるということでもあった。そのためポケモン協会本部でもこのフロアは特に警戒が厳重になっているのだが、すでに一人の少女によって侵入されていた。

 白い上着を羽織っているが、下には黒いノースリーブ型のワンピースを着ている少女ブルーによって。

 

 

「へっくし! うーやっぱり寒いわね……」

 

 

 上着は着ていて多少はマシなのだが、下がとても寒くて時折あたる冷房の風でスースーしてしょうがない。

 文句を垂れながらも自前のミニノートパソコンを巧み操り作業を進めていき、何でこんな所で仕事をしているのかを思い出す。

 

 

 

 数日前。

 突然ポケギアから連絡が入った。相手はレッドでその時は珍しいこともあるなと思って出た。なにせ、レッドから連絡が来ることは少なく、どちらかと言えば彼をからかうためにこちらから連絡することが多かったからだ。

 電話に出れば頼みたいことがあるから今すぐ会いたいとのこと。どうやらジョウトから帰ってきたらしく今カントーにいるとのことで、すぐに場所を指定して会うことにした。電話を切ってまず思ったのが、二人きりで会いたいと言ったことだった。

 これはちょっとドキッとした。

 いつもはナツメと一緒にいる彼がそういうことを言うとは。さては本当に愛人契約を、なんて思ったりもしたが頼みがあると言っていたのですぐに笑いながら否定した。

 そして一時間もかからないうちに、リザードンに乗ったレッドが現れた。

 

 

「よ、久しぶり」

「そりゃあ半年も経ってるもの。で、頼みって何? しかも二人きりでなんて。今から逢引でもするの?」

「お前は本当におませさんだな。まあ、今から言うことを聞いてくれたらしてやらんでもないが」

「……冗談でしょ?」

 

 

 ブルーは動揺しながら言った。

 

 

「マジだよ。そんぐらいのことをしてもらうし、それなりの対価は必要だろ? それともこのジョウト土産のいかりまんじゅうで手を打つか?」

「いらない」

「即答かよ。美味いのに」

 

 

 そう言いながら一口で大きい饅頭をほおばるレッドをどこか可愛いと思ってしまったブルー。ワザとらしい咳払いをして、その頼みの内容を聞いた。

 

 

「で、何をしてほしいの?」

「ちょっとポケモン協会に潜入してある情報を盗ってきてほしいの」

「……ごめん。言ってる意味はわかるけど、納得いかないことがあるわ」

「なにが?」

「あんた、半年前にポケモンリーグで言ったことを忘れた訳じゃないでしょうね? もう悪いことをするな、日の当たる所を歩けって。それを言った本人が、またあたしに手を染めろって言うの?」

 

 

 別に怒ってるわけじゃない。ただレッドの本心が知りたいだけだった。なんで今更犯罪を起こせと頼むか。あの公の場で、オーキド博士にも言われて犯罪には手を染めないと誓ったのだ。まあ今でも裏で色々やってはいるが、悪いことはしてない。

 問われたレッドは平然と答えた。

 

 

「バレなきゃ犯罪じゃねぇし」

「……呆れた。あんたがそう言うとはね」

「一応言っておくけど、俺だって警察に色々とマークされてるんだぜ?」

「なんで?」

 

 

 それは初耳だった。いい子、とまではいかないがレッドは自分程手を汚していないはずだが。

 

 

「えーと。ヤマブキシティ外壁の破壊疑惑と、市街地での破壊活動」

「あー。あったわね、そんなこと」

「全部ロケット団の仕業だって言い張ったけど」

「間違ってはないわよね……?」

「で、話を戻すけど。手を染めろ云々に関してはまあしょうがない、すまん、ごめん。けど、お前しか頼めないんだよ。こういう裏の仕事。俺だと目立ちすぎるし、バカだからソフト面には弱い。それにナツメは巻き込みたくないし」

「彼女はダメで、あたしなら良いってこと? 都合がよすぎない?」

 

 

 ナツメの名前を聞いて少し目つきと態度がきつくなるブルー。

 何だかんだで、自分の女が大事なのだろうと、だから自分のような犯罪者には打って付けと言う訳か。

 

 

「何でそんなにイラついてるのかはわからんが、俺はお前を信頼してるから頼んでるんだよ。巻き込んで申し訳ないとは思うが、頼れるのがブルーしかいないんだ。頼む」

 

 

 頭を下げるレッドを見る。少しキツイ言い方をしたのは自分でも反省している。少し私情……嫉妬が混じったのは確かだからだ。

 結局、こいつはバカで正直者なのだ。頼れるのが自分だけというのも今なら分かる。グリーンやリーフ、オーキド博士にジムリーダー達。彼らには守るべきもの、背負うべきものが多すぎる。ナツメに関しても、今はロケット団であることを疑われないために真っ当にジムリーダーとして活動していると聞く。

 そう。自分には失うモノがないのだ。守るべきものはあるが、あの子はジョウトだし知っている人間などいないから問題ない。レッドはそれを何となく分かってるのだ。何よりも自分はどこにも所属していない。だからこそ信頼できるのだと。

 ブルーはため息をついて一つ、あることを質問した。

 

 

「仮に、あたしがヘマして捕まったら……助けてくれる?」

「助けるぞ。俺は身内とポケモンと自然に優しいレッドさんだからな」

「ははっ、なにそれ。……ほんと、惚れた女の弱みってやつかしらね」

「なんか言った?」

「バカレッドって言っただけよ。で、このブルーさんに何を盗んできて欲しいの?」

「それは……」

 

 

 

 

 

 

 現在。

 ──ここ最近のポケモン協会の理事長のスケジュールと極秘資料。主にポケモン研究について

 レッドに頼まれたのはその二つだった。

 このサーバー室にはポケモンあずかりシステムだけではなく、ここポケモン協会にあるパソコンとも繋がっているため、すべての情報がここに集まってくる。世にいる犯罪者はポケモンにしか目を向けない。それにこういうセキュリティをしっかり対策をしているところは少ないため簡単にサーバーに忍び込める。

 それに半年前のポケモンリーグで、この協会本部を下見しておいたのが幸いしているのもあった。なので簡単に建物に侵入できたし、現在進行形で見つからずに作業ができてる。

 

 

「えーと、あったあった。これね。会長のスケジュール表は」

 

 

 恐らく理事長秘書のデータだろう。ご丁寧に分刻みでスケジュールが書かれていた。適当にここ半年分をコピーし、次の作業に入る。

 問題はここからだ。極秘研究となると、やはりセキュリティは今までと違って強固だ。だが伊達に一人で生きていきた訳ではない。これぐらいのセキュリティならばいけるはず……よし、もうちょっと……いけた。案外簡単だった。

 

 

「えーと、うわ。結構あるわね……」

 

 

 画面を見ればずらりと数字や文字が表示されている。とりあえず検索をかけてみることに。レッドからもしもの時のと言われたメモを取り出す。

 

 

「れっくうざ? なにそれ。まあいいわ……レックウザっと。あ、出た」

 

 

 なんでレッドがこのことを知っているのかはあとで聞くとしてデータをコピーする。あとは侵入した痕跡を残さず撤収の準備に入る。すると、耳に着けていたイヤホンにぷりりから合図が来た。

 

 

「どう? 終わったかしら?」

『ぷりぷり~』

「ありがと。じゃあメタちゃんと一緒にこっちへ戻ってきてね」

 

 

 プリンのぷりりとメタモンのメタちゃんには予めあることを頼んでいた。下調べでレッドと会う前に謎の時間が割かれている情報を手に入れたので、二人にその場所と録音装置を持って探してもらっていたのだ。声からしてどうやらうまくいったようだ。

 ポケギアに表示されている時間を見る。そろそろレッドが理事長と会見するころだろうか。

 

 

「あとはレッドと合流するだけね」

 

 

 後片付けをすませ、ブルーは協会の女性職員の服装に変装してサーバー室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 




次で二章は終わりです。
今回はポケスペの時間軸を調べていてそれを参考にして書きました。
あとブルーも活躍させてあげたかったというのもありますけどね。

原作でこの話を読んでて、どうやってレックウザ捕まえてんだよwwwと思ったのは私だけではないと思う。

ちなみにレッドくんは恐らくこの年で12歳。ゴールドが8歳。ルビーとサファイヤは6歳という計算です。
まだ12歳。なんなんだこいつ……(ドン引き)

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