▼はじめにご挨拶
こんにちは。
わたしたちは東京の西側、稲城市の多摩川沿いにある古民家で
「いな暮らし」というカフェを母娘で開いています。
(撮影:藤村健一朗)
静かな住宅街に佇む、縁側とお庭のあるこの場所には、
赤ちゃんからお年寄りの方まで様々な年代の方が訪れ、
それぞれの時間を過ごしていきます。
靴をぬいでごろんと寝ころんだり、ひとり静かに本を読んだり、
お庭で子どもがあそぶのを見守りながら、縁側に腰かけて過ごしたり。
時も忘れてのんびりと過ごしていく方が多いお店です。
「いな暮らし」という名前の由来は ”稲城の暮らし”。
テーマは「たべよう・はなそう・つくろう」です。
食べたり、話したり、作ったりすることを通して、
暮らしの喜びや楽しさを分かち合える場に、という思いを込めています。
▼今回のチャレンジについて
いな暮らしは空き家だった昭和の古民家の空間をカフェにしています。
ここに新たに設置するのはオーブンを設置した工房です。
お風呂場だった一坪弱の部屋を改装し、工房を完成させることができたら、
これまで作ることができなかったお菓子やパン、ジャムなどの加工品も作ることができるようになります。
(完成予想図:うらわさやか)
お食事やお茶の時間を過ごしてもらうだけでなく、
お家で食べるおやつや、手土産になるものを持ち帰っていただいたり、
遠方に住む方にもお届けできるような仕組みを整えていきたいです。
▼私たちについて
「いな暮らし」という場を最初に開いたのは母のともみです。
”稲城の街で子育てをしながら、どんな年代、立場でも一緒に過ごせる居心地のいい場を作りたいと思っていました。
2011年の震災をきっかけに、 自宅のガレージにパラソルを立て、地元農家さんの野菜や天然酵母のパンなどを並べたマルシェからスタートしました。
地域の方々と交流を持ちながら、現在の古い一軒家と出会い、
ごはんやおやつも食べられるカフェという形に発展し、いまに至っています。”
(いな暮らしのはじまり、ガレージ時代:2012年)
こうして場を開いてみると、
この町に暮らす人たちと話す機会がぐんと増え、
地域にはこんなにもいろんな人たちが住んでいたのだと実感しました。
当たり前のようなことですが、自分たちで場を開いて、
実際に人と出会って話をするまでわからなかったことでした。
一方わたし(鈴木萌)は看護師でもあります。
(撮影:藤村健一朗)
看護学生時代、地域看護の分野に特に興味をもち、
病院ではないフィールドで活動したいと思うようになりました。
進路で悩んでいた時に救われたのが、
当時住んでいた茨城県つくば市の珈琲屋の店主やギャラリーオーナー、
髪を切ってくれていた美容師さんや鞄職人のおじさんなど、
地域に根ざして生活する人たちの存在でした。
(訪れる度に街の人との出会いがあった美容室poco.a.poco)
学生時代の体験から、地域のなかに学校でも会社でも家でもない、もうひとつの居場所があることが、その町に暮らす人々を支えるのでは、という考えに至りました。
いな暮らしもそのひとつになれたらと、母のともみと思いを同じくして、共にカフェを営むようになりました。
場を開いてみたことで、多様な生き方・はたらき方の人たちと出会い、
かつて空き家だったこの場所から、様々な企画や表現が生まれていきました。
生音ライブ会場になる日もあれば、
縁側に出張コーヒー屋さんが来ることも。
ハンドマッサージで癒しの時間を届けにきてくれた人もいました。
みんなでちくちく針仕事をしながらおしゃべりする日もあれば、
空間全体がアート作品になったこともありました。
これまで出会ってきた人たちと一緒に、この場所で、この町で、やってみたいことや表現してみたいことを、ひとつひとつ実現することができました。
どれもわたしたちだけでは見ることができなかった風景ばかりです。
誰と何をどう組み合わせるかによって、見える景色や起こる出来事は、
こんなにも自由自在に変化するのだなぁと日々実感しています。
▼プロジェクトをやろうと思った理由
ガレージにパラソルを広げて開いていた頃から、並べていた天然酵母パンがありました。
稲城のぶどうで起こした酵母を使ってパンや焼き菓子を焼いていた「ぱんノート」のちかこさんが作っていたものです。