ウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキー氏の服装が「略式軍服」とインターネットで位置づけられた経緯について、「人間ジェネリック@DividedSelf_94」氏が調査していた。
ゼレンスキーは「略式軍服」を着たのか?|ヒト
最初に、ウクライナ侵攻が起きる2022年以前から2010年までを遡って「略式軍服」でグーグル検索をかけてみる。やはりない。
ウクライナ侵攻前には誰も「略式軍服」という言葉を使っていなかったのだ。
ゼレンスキー氏が礼をつくしているという反論のため「略式軍服」という概念が広まったが、そのような言葉の用例はほとんど見つからず、服装自体も民間で購入できる作業服にワッペンをつけただけらしい。
もちろん、その服装はウクライナがロシアの侵略にさらされつづけていることの象徴として意味があることも「人間ジェネリック@DividedSelf_94」氏は指摘している。
ゼレンスキーのあのパーカー姿は、国際社会の、なによりウクライナ市民の求める「空気」を立派に体現している。
それでも「人間ジェネリック@DividedSelf_94」氏はGoogleやTwitterを検索しただけなので、専門的につかわれている事例がないとは断言できないところがある。
そこで屋上屋をかさねるつもりで国立国会図書館デジタルコレクションの全文検索機能をつかってみたところ、わずか33件が引っかかっただけ*1。
国立国会図書館デジタルコレクション
どう見ても定着した言葉や概念ではない。ほとんどが翻訳で採用された言葉だったり、あくまで「略式の軍服」という意味の表現にすぎない。同一作品の重複も多い。
新しい用例は1975年の雑誌『現代』と1984年の雑誌『ミステリマガジン』で確認できるだけ。念のため、書籍や雑誌が全文検索できるのは20世紀くらいまでで、21世紀以降は電子書籍や論文ばかりとはいえ、定着した言葉とは考えづらい。
やはり「人間ジェネリック@DividedSelf_94」氏がしらべたように、反論のために生まれた概念がコピペのように広められたと考えて良さそうだ。
*1:ちなみに、実在しない言葉のようにインターネットの一部であつかわれていた「強制募集」は667件引っかかる。 hokke-ookami.hatenablog.com