素数に法則はあるのか? – 偉人たちが挑戦した素数の数式化

2020年5月20日

この記事ではこんなことを書いています

素数に法則はあるのでしょうか?

素数の研究の歴史は長く、歴史上の偉大な数学者たちが素数の法則を見つけることに挑戦してきました。

そんな彼らが見つけ出だそうとした素数の法則を紹介します。

素数に法則はあるのか?

”素数”は現れる順番に法則性がないと言われています。

法則性がないとは、整数を1から順番に数えていったとき、どのタイミングで素数が現れるかがまったく分からないということです。

”素数に法則がない”とは、”素数を数式化できない”ともいうことができます。

 

例えば、正の偶数を数式化したいとき、次のようにすればよいでしょう。

=2n,(n=1,2,)

この式を使えば、nに任意の値を入れることでどんなに大きな偶数であってもすぐに求めることができます。

これが数式化することのメリットです。

 

しかし、素数にはこのような数式が存在しません。

ですので、新しい素数を知りたいと思っても、すぐには知ることができないのです。

なので、新しい素数が見つかると、一大ニュースとして大きく取り扱われるのです。

それほど、素数は気まぐれで、神秘的な数なのです。素数の不思議な性質については、

も合わせてご覧ください。

 

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過去の偉人たちが挑戦した素数の数式化

素数は昔から神秘的な数とされ、多くの数学者たちが研究してきました。

その中で、素数の法則を見つけようとする試みも行われてきましたが、すべての素数をつくる式どころか、一部の素数だけを作る式すら見つかっていません。

ここでは、過去の偉大な数学者たちがどのような式で素数を表そうとしたのかを紹介します。

 

ピエール・ド・フェルマーの数式

フランスの数学者ピエール・ド・フェルマー(1607年~1665)は、

22n+1,(n=1,2,)

で表現できる数は素数であると予想しました。

22nの部分は、”22乗をさらにn乗する”のではなく、”2n乗が2の右肩に乗っている”形ですので注意してください。

つまり、

223

であれば、先に23を先に計算し、最後に28を計算します。

223=28=256

 

この数式のn0,1,2,3,4を入れると確かに素数となります。

220+1221+1222+1223+1224+1=3=5=17=257=65537

しかし、現在では、n=5以降は素数ではないことが分かっています。

n 22n+1
0 21+1=3,素数
1 22+1=5,素数
2 24+1=17,素数
3 28+1=257,素数
4 216+1=65537,素数
5 232+1=4294967297,素数ではない
6 264+1=20,素数ではない

 

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マラン・メルセンヌの数式

フランスのカトリック教会の修道士でフェルマーらと手紙のやりとりをしていたマラン・メルセンヌ(1588年~1648年)は、

2n1

で計算される数が素数になるのはn=2,3,5,7,13,17,19,31,67,127,257のときであると予想しました。

nの値も素数になっていることに注目です。

 

2n1で計算される整数は”メルセンヌ数”と呼ばれ、素数であるメルセンヌ数は”メルセンヌ素数”と呼ばれます。

nが大きな場合、メルセンヌ数は、巨大な整数になるため、メルセンヌの予想が正しいのかどうかはすぐには分かりませんでした。

 

メルセンス数が登場してから約200年後、メルセンヌ数が素数であるかどうかを判定できる”リュカ・テスト”が1878年に発表されたことによって、メルセンヌの予想は正しくないことが明らかにされました。

n=素数 2n1
2 221=3,素数
3 231=7,素数
5 251=31,素数
7 271=127,素数
11 2111=2047,素数ではない
13 2131=8191,素数
17 2171=131071,素数
19 2191=524287,素数
31 2311=2147483647,素数
61 2611=19,素数
67 2671=21,素数ではない
89 2891=27,素数
107 21071=33,素数
127 21271=39,素数
257 22571=78,素数ではない

 

レオンハルト・オイラーの数式

あの歴代数学者の中でナンバーワンの天才だったという呼び声も高いスイスのレオンハルト・オイラー(1707年~1783年)も”素数の数式化”に挑戦しています。

オイラーの考案した式は、

n2n+41,(n=1,2,)

です。これ以外にも素数の式を考案しましたが、この式はその中の一つです。

オイラーの二次式が作る整数は、なんとn140の時に、立て続けに素数となります。

n n2n+41
1 1^2-1+41=41,素数
2 2^2-1+41=43,素数
3 3^2-1+41=47,素数
4 4^2-1+41=53,素数
5 5^2-1+41=61,素数
6 6^2-1+41=71,素数
7 7^2-1+41=83,素数
8 8^2-1+41=97,素数
9 9^2-1+41=113,素数
10 10^2-1+41=131,素数
11 11^2-1+41=151,素数
12 12^2-1+41=173,素数
13 13^2-1+41=197,素数
14 14^2-1+41=223,素数
15 15^2-1+41=251,素数
16 16^2-1+41=281,素数
17 17^2-1+41=313,素数
18 18^2-1+41=347,素数
19 19^2-1+41=383,素数
20 20^2-1+41=421,素数
21 21^2-1+41=461,素数
22 22^2-1+41=503,素数
23 23^2-1+41=547,素数
24 24^2-1+41=593,素数
25 25^2-1+41=641,素数
26 26^2-1+41=691,素数
27 27^2-1+41=743,素数
28 28^2-1+41=797,素数
29 29^2-1+41=853,素数
30 30^2-1+41=911,素数
31 31^2-1+41=971,素数
32 32^2-1+41=1033,素数
33 33^2-1+41=1097,素数
34 34^2-1+41=1163,素数
35 35^2-1+41=1231,素数
36 36^2-1+41=1301,素数
37 37^2-1+41=1373,素数
38 38^2-1+41=1447,素数
39 39^2-1+41=1523,素数
40 40^2-1+41=1601,素数

すごい精度で素数を表現していることが分かると思います。さすがはオイラーです。

しかし、オイラーの考案した式も、n=41を超えると、素数ではない整数が出てくるようになってしまいます。

n n2n+41
41 41^2-1+41=1681,素数ではない
42 42^2-1+41=1763,素数ではない
43 43^2-1+41=1847,素数
44 44^2-1+41=1933,素数
45 45^2-1+41=2021,素数ではない

現在では、”n2n+41”のような”多項式”では、素数だけを作る式は作れないことが証明されています。

 

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いま注目されている素数の法則を表す式

ここまで見てきたように、すべての素数を作る式や、一部の素数だけを作る式は、いまも作られていません。

素数を数式化することは不可能のような気がしてきますね。

 

しかし、メルセンヌ数を作る、

2n1

という式は、最大の素数を見つけるために使われているのです。

その理由は”リュカ・テスト”を1930年代に改良した”リュカ-レーマー・テスト”を使えば、メルセンヌ数が素数であるかどうかを判定できるからです。

 

1952年には、はじめてコンピュータを使って、157桁のメルセンヌ素数(n=521)が発見されました。

1961年には、1281桁(n=4253)と、1332桁(n=4423)のメルセンヌ素数が、1人の人物によってほぼ同時に発見されました。

ところが、2つの素数を見つけた人物が、大きい方の1332桁の素数を先に印刷したため、小さい方の1281桁の素数は一度も最大の素数として脚光を浴びることはありませんでした。

”オリンピックの100m走で、銀メダリストもオリンピックレコードだったけど…”という感じでしょうか?

 

今後も素数の法則を探す研究は続けられるでしょう。

もしかすると、素数の数式化も夢ではなくなるかもしれません。

 

まとめ

  • 素数が登場する順番に法則はない
  • 歴史上の偉人達が素数の数式化に挑戦してきたが、未だに成功していない
  • メルセンヌ数は今後の素数の発見に役立つと期待されている
  • 今後の素数分野の研究に期待!

※コメントの反映には少し時間がかかります

2020年5月20日数学の面白いネタ数字に関する面白いこと

Posted by yoshi