県外校に在職時わいせつで処分 経歴偽り長野県教委で採用 北信の中学校講師を懲戒免職

記者会見で謝罪する県教委義務教育課の加藤課長(左)ら=23日、県庁

 県教委は23日、県外でわいせつ行為により懲戒免職となった経歴を隠し、4月に北信地方の中学校に臨時採用された40代の男性講師を懲戒免職処分とした。経歴を偽ったとして県教委が懲戒処分をするのは初めて。県教委義務教育課の加藤浩課長は「児童生徒、保護者らに心からおわび申し上げる」と陳謝した。

 処分は23日付。県教委によると、男性講師は10年以上前に県外の学校で教諭として勤務していた際、教え子にわいせつ行為をして懲戒免職となった。男性講師を処分した教育委員会は当時、氏名などを公表しなかった。長野県教委も今回、当時の被害者らへの心理的な影響を考慮して男性講師の氏名を公表せず、前回の処分を受けた都道府県なども明らかにしていない。

 男性講師は4月3日付で長野県教委が採用。県教委の臨時採用面接では履歴書の「処分歴」の欄に「ありません」と記載していた。過去の勤務校については懲戒免職処分に触れず「退職」とだけ記載。教員免許は処分後に失効したものの、再取得していた。

■名字の変更申し出きっかけに発覚

 わいせつ行為による処分歴は、本採用時に男性講師が名字の変更を申し出たことをきっかけに発覚した。自ら名字を複数回変えたとの説明を不審に感じた県教委職員が、4月1日に運用が始まった免許失効者情報を記録した文部科学省のデータベースで検索、過去の処分が分かった。

 男性講師は県教委の聴取に事実を認めている。採用直後に虚偽の経歴が判明して自宅勤務となっており、勤務中学での被害は確認されていない。県教委は懲戒免職処分の理由について「採用の可否に関わる重大な事実を隠していたため」としている。

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■運用開始の文科省DBで処分歴判明 チェック態勢、検証必要

 懲戒免職処分の経歴を偽った男性講師を採用していたと23日に明らかにした県教委。本人の記載した履歴書を中心に選考が進み、虚偽を見抜けなかった。今回、男性講師からの「名字を変えたい」との申し出をきっかけとして文部科学省が運用を始めたばかりのデータベースによりわいせつ行為による処分歴が判明。県教委側が事前チェックできなかったのか検証が求められる。

 「データベースも含めて何重にもチェックをし、今後同様のことがないようにしたい」。県教委義務教育課の加藤浩課長は硬い表情で話した。免許失効者の情報を記録した文科省のデータベースは4月1日、運用が始まった。

 わいせつ行為で懲戒免職となり免許を失効した元教員の復職を厳しく制限する「教員による児童生徒性暴力防止法」に基づき運用。同法は本年度から教育委員会などに教員採用時のデータベース検索を義務付けている。処分歴を隠すために改名するケースもあるとして、大学の卒業証書などに記載された氏名の確認も求める。

 だが、今回は採用時の面接がデータベース運用前だった。県教委によると、男性講師のような臨時採用の面接は一般的に履歴書に沿って、指導面の得意分野や人柄などを重点的に審査。経歴については「性善説」(義務教育課)に立っているのが実情という。男性講師は「10年以上も前のことで、履歴書に書かなくてもいいと思った」と話したという。

 県教委はこの日、データベース以外の再発防止策として、前任校への勤務態度の確認などを例示した。昨年度の県教委の懲戒処分はここ5年で最多の12件に上る。県教委の内堀繁利教育長は23日の記者会見で「非違行為根絶に向けた対策を打ち出したい」と述べた。

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