Photo:ゲッティーイメージズ,スプラッシュ/アフロ,ニュースコム,Instagram
昨今、海外で改めて問題視されている「クィアベイティング(Queerbaiting)」とは? (フロントロウ編集部)

LGBTQ+の注目度や話題性を搾取する「クィアベイティング」

 LGBQT+にまつわる話題が連日世間で注目を浴びるなか、「極めて卑怯なやり方」と批判を浴びているマーケティング手法がある。

 それが、ゲイだけでなく、レズビアンやバイセクシャル、トランスジェンダー、クロスドレッサー(自身の性を表現するにあたり、異性装を行う人)なども包括する概念である「クィア(queer)」という言葉と、釣りなどに使うエサを意味する「ベイト(bait)」という言葉を組み合わせた「Queerbaiting(クィアベイティング)」

画像: LGBTQ+の注目度や話題性を搾取する「クィアベイティング」

 実際には同性愛者ではないのに、ある人物やキャラクターが、あたかも同性愛者であるかのように匂わせたり、わざとバイセクシャルを予感させるような表現を使うなどして“性的指向の曖昧さ”をほのめかすことで、LGBTQ+の視聴者や消費者をはじめ、世間の注目を集めようとするこの商業戦略は、エンターテインメントや音楽、ファッションといったポップカルチャーの分野で昔から横行してきた。


「クィアベイティング」の起源

 「クィアベイティング」という言葉が誕生したのは、2010年代初頭。映画・メディア研究の専門家である米アリゾナ州立大学のジュリア・ヒンバーグ教授は、当時大ブレイクしていた米CWのドラマ『スーパーナチュラル』や英BBCの『SHERLOCK(シャーロック)』といった作品の中で同性の登場人物たちが、まるでお互いに友情や師弟関係以上の感情を抱いているかのような表現が登場したことが「クィアベイティング」という言葉が生まれるきっかけとなったと英BBCに解説。

画像: ジェンセン・アクレス演じるディーン(右)とジャレッド・パダレッキ演じるサム(左)のウィンチェスター兄弟がアメリカ合衆国各地を旅しつつ、超自然的存在(悪霊、悪魔、怪物など)を狩っていく米CWの人気アクション・ホラー・サスペンスドラマ『スーパーナチュラル』。

ジェンセン・アクレス演じるディーン(右)とジャレッド・パダレッキ演じるサム(左)のウィンチェスター兄弟がアメリカ合衆国各地を旅しつつ、超自然的存在(悪霊、悪魔、怪物など)を狩っていく米CWの人気アクション・ホラー・サスペンスドラマ『スーパーナチュラル』。

画像: ベネディクト・カンバーバッチ(右)が名探偵シャーロック・ホームズ役を演じマーティン・フリーマンが助手のワトソン役を演じた英BBCの大ヒット作『SHERLOCK(シャーロック)』

ベネディクト・カンバーバッチ(右)が名探偵シャーロック・ホームズ役を演じマーティン・フリーマンが助手のワトソン役を演じた英BBCの大ヒット作『SHERLOCK(シャーロック)』

 いたずらに同性同士のロマンスについて期待を抱かせておきながら、結果的には納得のいく展開にならなかったことで、LGBTQ+コミュニティや作品ファンたちから「視聴者を誤解させる」、「ミスリードだ」といったクレームが勃発。“クィアを釣る行為”という意味を持つ「クィアベイティング」という言葉が使われるようになった。

 製作者側は、保守的な視聴者や顧客を刺激しすぎず、かつ、LGBTQ+を含む幅広い層にアピールできる便利な戦略として長年クィアベイティングを使ってきた。しかし、LGBTQ+に対する理解が深まり、権利運動が盛んになった昨今では、LGBTQ+を食い物にするようなこのマーケティング戦略は、社会全体にとって「有害である」と厳しい目が向けられるようになっている。


有名ブランドのキャンペーンが炎上 

 クィアベイティングの例として最も記憶に新しいのが、人気モデルのベラ・ハディッドと “バーチャル・インフルエンサー”のリル・ミケーラが登場した米ブランド、カルバン・クライン(Calvin Klein)のキャンペーン「I Speak Truth in #MyCalvins(アイ・スピーク・マイ・トゥルース・イン・マイ・カルバン)」。

 カルバン・クラインの公式SNSで公開されたベラとリル・ミケーラの熱烈なキスシーンをフィーチャーした動画は、CGで作成された架空の女性であるリル・ミケーラとトップモデルのベラが、性別の壁や人間とバーチャル・キャラクターの壁を越え、現実と非現実の境界線を曖昧にした表現が幻想的だと話題に。

 しかし、LGBTQ+コミュニティからは「明らかなクイアベイティングである」として批判が殺到した。

 ベラは実生活では異性である男性ミュージシャンのザ・ウィークエンドと数年にわたって交際している異性愛者であり、そんな彼女がレズビアンを連想させる女性同士のキスを含むキャンペーン動画に起用されたことに「なぜわざわざストレートの女性を起用するのか」、「なぜ同性愛者を登場させなかったのか」と難色を示す人が続出。

画像: ベラ・ハディッドと恋人のザ・ウィークエンド。

ベラ・ハディッドと恋人のザ・ウィークエンド。

 カルバン・クラインがLGBTQ+の顧客を獲得するためや、先鋭的でクールなブランド・イメージを創り上げるために、あえて異性愛者であるベラを起用してクィアベイティングを行なったとの指摘が相次いだ。

 炎上を受け、カルバン・クライン側は、この動画は指摘されているような意図で制作したものではないと弁解したものの、「異性愛者を同性同士のキスシーンに起用することは、クィアベイティングだと認識される行為だと理解しています」と過ちを認め、公式に謝罪した。


 LGBTQ+の注目度や話題性をマーケティングツールとして使うこの行為が問題視される一方で、一部では、人々がクィアベイティングに厳しく目を光らせるようになったことこそが、社会の流れが前進している証だとポジティブにとらえる人もいる。

 まずは、「一体、クィアベイティングの何がいけないのか? 」、「どういった行為がクィアベイティングと見なされるのか? 」を議論し、深く理解すること、そして、不正は糾弾していくことが、これまでLGBTQ+のアイデンティティーを翻弄し、LGBTQ+カルチャーを都合よく商品化してきた“作り手”や“売り手”の姿勢を正すことに繋がるのかもしれない。(フロントロウ編集部)

2023年9月1日(金)に全国公開されるディズニー最新作『ホーンテッドマンション』より本予告編と本ポスターが解禁。<ホーンテッドマンション>に住む999人のゴーストたちが次々と襲いかかる本予告に期待高まる。(フロントロウ編集部)

『ホーンテッドマンション』より本予告と本ポスターが解禁

 創立100周年を迎えるウォルト・ディズニー・カンパニーが、ディズニーランドの人気アトラクション“ホーンテッドマンション”を実写映画化。ノン・ストップの驚きと興奮が押し寄せ、“恐怖”と“笑い”のハイブリッドを映画館で体験できる、超エンタメ・アトラクション・ムービー『ホーンテッド・マンション』が誕生! 2023年9月1日(金)より劇場公開となる。

 世界中で愛され続ける人気のアトラクション「ホーンテッドマンション」にインスパイアされた本作の舞台は、不気味にそびえる洋館“ホーンテッドマンション”。医師でシングルマザーのギャビー(ロザリオ・ドーソン)は、ニューオーリンズの奥深くにあるこの館を破格の条件で手に入れ、9歳の息子のトラヴィ(チェイス・ディロン)と共に引っ越してきた。だが、うまい話にはウラがある──この一見豪華すぎるマイホームで、2人は想像を絶する怪奇現象に何度も遭遇する。彼らを救うため、かなりクセが強い心霊エキスパートたち(科学者ベン、神父ケント、霊媒師ハリエット、歴史学者ブルース)が集結。はたして彼らは、この“呪われた館”の謎を解明することができるのか...?

画像: 『ホーンテッドマンション』より本予告と本ポスターが解禁

999人のゴーストたちが襲いかかる本予告編が解禁

 この度、公開されたのは、999人のゴーストが住んでいる呪われた館<ホーンテッドマンション>で、心霊エキスパートたちがゴーストたちに襲われている場面がいくつも納められた本予告映像。一瞬で見逃してしまいそうなシーンの応酬は、まさに瞬きをするのも惜しいほどゴースト達からのサプライズが満載。

 超常現象専門家のベン(ラキース・スタンフィールド)、神父のケント(オーウェン・ウィルソン)、霊媒師のハリエット(ティファニー・ハディッシュ)、歴史学者のブルース(ダニー・デヴィート)らが、怪奇現象やゴースト達によるサプライズの数々に絶叫しながらもなんとか対処しようとしているさまは、どこかコミカルな雰囲気すら漂っており、ゴーストと彼らがどんな掛け合いや、攻防を見せてくれるのか、より一層期待が高まる仕上がりとなっている。また、併せて解禁されたポスターでは、水晶に映る呪われた館<ホーンテッドマンション>をまじまじと見つめる彼らが印象的なビジュアルとなっており、まさに本作の“主役”ともいえる、呪われた館<ホーンテッドマンション>から目が離せない。

 さらに、この映像の中でも注目なのが、<ホーンテッドマンション>に住むゴーストたちの姿。本作の監督を務めるのは、かつてカリフォルニアのディズニーランドでキャストとして働いていたという異色の経歴を持つ映画監督ジャスティン・シミエン。休憩中によく“ホーンテッドマンション”に乗っていたというほど、アトラクションを誰よりも溺愛している監督だからこそのこだわりに注目したい。

 アトラクションの“ホーンテッドマンション”でもおなじみの、“どこまでも続く長い廊下”や、“縦に伸びる部屋”、そして水晶をのぞく女性マダム・レオタ。また、ファンの間で“ヒッチハイキングゴースト”として親しまれている3人組のゴーストの姿も登場。中盤では、まさにアトラクションそのものとも思える、館で暴走するイスが登場するなどの遊び心も。さらに、ファンから伝説のゴーストとして高い人気を誇る、高いハットと片手に持つハットボックス(帽子を入れる箱)がトレードマークの“ハットボックスゴースト”も登場するなど、そのこだわりは底知れない。そんなシミエン監督だからこそ、作り上げられる本作は、ファンの期待を上回る究極の超エンタメ・アトラクション・ムービーとして期待大。(フロントロウ編集部)

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