法律を武器にしている方が勝つ
労働者側もクビになった会社に復職するのは内心気が引ける。こうして労使の利害は一致し、前述したバックペイに多少の色を加えた金額で、めでたしめでたし、血を血で洗うような労働問題は決着する……。
これが、これまでの常識だった。
だが、私のように性格の悪いモンスター社員は「復職の権利」が換金可能であると同時に、交渉における強力なカードであることをはっきりと認識してしまっている。和解に応じず、「本気で復職したい」と主張し続ける労働者が出てきた時、企業側に残された選択肢はいくつあるのだろうか?
平成と令和でそれぞれ一回ずつ、20代の内に二つの会社から、私はクビを宣告された。普通はそんな短期間で何度も会社を解雇されない。きっと私自身にも少なからず問題があったのだろう。その上で、二つの訴訟経験を通して私は、「出るとこへ出た時、法律を武器にしている方が勝つ」という明確な学びを得た。
法に実社会が追い付いていないのか、実社会に法が追い付いていないのか、そんなことはどうでもいい。日本は法治国家。法を味方に付けた者が最後に笑う。
「業界の常識だから」「ウチの会社ではこうだから」「今までもずっとそうだったから」など、自分勝手ならぬ“企業勝手”な背景を裁判所は認めてくれない。裁判官の判断基準はあくまで法だ。私が経験した2つの裁判では「サービス残業をしないから解雇」等の解雇理由を会社側は主張したが、これは論外である。