企業が和解したがる理由
つまり労働者側は、建て前もあるかもしれないが、解雇された会社への「復職」を前提に戦ってくるのだ(というより、復職を前提に戦わなければならない)。
モンスター社員を職場に戻すなど信じられないだろうが、ほっぺたをつねっても効果なし。悪夢のような現実は変わらない。地位確認が認められた場合、「金銭支払い」と「問題社員の復職」のダブルパンチの悲劇が待っている。
さらに解雇には、他にも問題が山積みだ。「不当解雇」という判断が下されれば、コンプライアンスやコーポレートガバナンスの問題は避けては通れない。誰かが責任を取る必要も生まれるだろう。社内社外を問わず、会社のメンツは丸つぶれになる。
社内政治においても、虎視眈々と既得権益の座を狙っている野心家からすると、ライバルを蹴落とすチャンスが到来することになる。さらに不満を抱えながら働いている従業員が勢いづき「俺も」「私も」と迷惑な権利を主張してくる可能性もある。
ひとつの解雇をきっかけに、地獄絵図のようなモラルハザードが起きても何ら不思議ではない。
だからこそ、だ。この争いは勝てそうにないと気付いた時、企業側は被害を最小にするために、判決が出る前に水面下で「落とし所」を見つけようとする。つまり和解交渉をして、金銭解決で円満退社に持ち込もうと考えるのだ。