国家主導の「落とし穴」
米ピーターソン国際経済研究所のギャリー・クロード・ハフバウアー上席研究員らがアメリカ産業政策の過去50年を振り返った論文(2021年11月)によれば、多くは惨敗という結果を招いていた。
成功を意味する「A」の評価が与えられているのは、ほんの一部で、日本などからの半導体輸入制限については「C」から「D」、日本などからの鉄鋼輸入制限も「D」で、つまり効果なしと判断された。
特に興味深いのは、トランプ前政権下で台湾の鴻海精密工業(フォックスコン)がウィスコンシン州に進出し、テレビ用大型パネルなどの製造で1万3000人の雇用と総額100億ドル(約1兆3480億円)の投資を謳い、州政府から8000万ドル(約108億円)の補助金を受けたケースだ。
同工場の計画は当初から具体性を欠いていた。現在でも768人しか雇用されず、撤退を余儀なくされている。累計投資額も7740万ドル(約104億円)にとどまった。ピーターソン国際経済研究所の評価は「B」から「D」で、事実上の不可だった。
やがて、アメリカでも補助金漬けで競争力を失ったゾンビ企業が大量跋扈するときがくるかもしれない。