作用反作用の法則を回避することで
実現する永久機関

Sinohara Ibuki

はじめに

永久機関とは種々の定義があるが、『無限にエネルギーを取り出せるもの』と定義すると、エネルギー保存の法則より、実現は不可能と言われている。本稿ではエネルギー保存則を成り立たせるものが作用反作用の法則であると考え、反作用を与えずにエネルギーを取り出す方法を示す。これにより、永久機関が実現可能であることを述べる。上記の方法として、トランスの1次コイルに2次コイルで発生する磁束を鎖交させないことで、1次コイルへの投入エネルギーを現象させずにエネルギーを取り出す方法を示し、それを用いた実現可能な永久機関の構成を2つ示す

永久機関を実現する条件

エネルギー保存側では位置エネルギーが運動エネルギーに代わるなどしても、エネルギー総量が変わらないと説明される。

通常の発電においては運動エネルギーを電磁誘導などの現象を用いて電気エネルギーに変換するが、この時、発生した電気エネルギーと同じだけ運動エネルギーが減る。具体的にはコイルの発生する磁場が運動と逆方向の力を発生させ、運動エネルギーが小さくなる。

永久機関を実現するには、この逆方向の力を発生させない、または発生させても運動エネルギーを減らす方向に発生しないようにする必要があると考えた。多くの発電で利用されるタービンで考えることも可能だが、入力側では発電機に対して磁束を変動させればエネルギー源や構成は問わないため、以下では変圧器(トランス)を基にして実現する方法を示す。

基本となる構成

トランスでは1次コイルと2次コイルが一つの磁気回路でつながり、2次コイルで消費したエネルギーは1次側コイルから供給される。
2次コイルの巻き線が絶縁状態の時、1次コイルの巻き線には励磁電流Imが流れている。この励磁電流Imが発生する主磁束が2次コイルを鎖交し、2次コイルの巻き線に起電力を発生させる。
2次コイルの巻き線に抵抗を接続すると、負荷電流I2が流れ、磁束Φ2を発生させるが、それを打ち消す磁束Φ1を発生させる負荷電流I1が1次コイルで流れる。
励磁電流Imは負荷電流I1よりも無視できるほど小さいのが一般的である。

本稿で紹介する構成として、2次コイルで発生する磁束が1次コイルと鎖交しないようにする。
これにより、2次コイル側にはImとコイルの巻き線比に比例する電流が流れる。励磁電流Imは非常に小さいため、2次コイル側で流れる電流および、その時に消費できる電力は非常に小さい。しかし、2次コイルで使用した電力は1次コイル側に影響を与えない。

図1. 基本構成

緑色の線が2次コイルの巻き線を示す。構造体はフェライトなど、磁束を通しやすい物質とする。

1次コイルの巻き線は図の右側から延びる構造体に巻かれており、その主磁束Φは図の右側から延びる構造体の中を通る。また、主磁束Φは2次コイルの巻き線と鎖交する。

2次コイルで発生する磁束は図の左側の構造体の中を通り、1次コイルの巻き線と鎖交しない。

永久機関を実現する構成1

ここまでで説明した構成では1次コイル側(入力側)に影響を与えてずに電力を取り出したが、取り出せる電力は非常に小さく、かつ入力側の鉄損などの損失を考慮すると、入力側で消費されるエネルギーよりも小さいエネルギーしか2次コイル側では取り出せない。

そこで、2次コイルを複数個並べる構成をとる。

2次コイルは1次コイルに影響を与えない。かつそれぞれの2次コイルも磁気結合していない場合、励磁電流で発生する磁束から無限にエネルギーを取り出せることになる

図2. 永久機関を実現する構成1

図1の基本構成の2次コイルを複数個設置する。図の右側が2次コイルである。

2次コイルの巻き線は、それぞれの磁気回路の中に磁束を発生させる

永久機関を実現する構成2

構成1では2次コイル1つあたりで取り出せる電力が小さい。これは、通常のトランスでは負荷電流による磁束が1次/2次コイルで打ち消しあうため、1次コイルの励磁電流が発生させる主磁束Φが保たれるため、2次コイルの巻き線に発生する起電力は保たれるが、本構成では2次コイルの発生させる負荷電流I2による発生する磁束Φ2が主磁束Φを打ち消してしまうため、起電力が下がってしまうためである。
また、現実的に製造可能な回路として、実際に並べることのできる2次コイルの数にも制約が生じる。

そこで、2次コイルで発生する磁束を打ち消す、3次コイルを用意する。
構成1で2次コイルに発生させられる電流は励磁電流に依存したが、2次コイルで発生する磁束を3次コイルで発生する磁束が打ち消すことで、2次コイルで起電力が降下せずに、電力を使用することができる。
これにより、多数の2次コイルを並べる必要がなくなる。

図3. 永久機関を実現する構成2

図の左側が1次コイル、真ん中が2次コイル、右側が3次コイルである。

2次コイルと3次コイルは磁気結合しており、各コイルから発生する磁束は互いの巻き線に鎖交する。2次,3次コイルが発生させる磁束は1次コイルの巻き線と鎖交しない。