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北海道新幹線が函館駅に乗り入れると「はこだてライナー」はなくなるのか

文春オンライン / 2023年5月14日 6時0分

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現在は東北・北海道新幹線の終着駅になっている新函館北斗駅

弟は大泉洋! 新函館市長・大泉潤氏が公約にした「新幹線函館駅乗り入れ」は実現可能なのか から続く

 大泉潤氏の公約「新幹線函館駅乗り入れ」は新人候補の思いつきではなかった。函館市民の願いであり、3年前に鉄建公団OB、吉川大三氏が構想を発表していた。工事費用は既存の並行在来線の枠組みと、「はこだてライナー」廃止の経費削減、新幹線乗り入れの線路使用料で回収できそうだ。

費用について

――2015年に函館市企画部計画推進室政策推進課が、市民の意見に応える形で「約1000億円の地元負担になるから困難」と回答しています。「それが75億円とは信じがたい」という声もあります。

吉川 約1000億円は、フル規格新幹線の線路を新規建設した場合です。私の案は既存の複線の片側をミニ新幹線(秋田・山形)のような三線軌条にします。距離が短いのですれ違いはなく、単線で十分です。在来線の複線機能は残るので、旅客列車、貨物列車の運行に支障はありません。五稜郭駅には新幹線も停車させた方が良いので、ここに行き違い設備を設ければ将来の増発にも対応できます。

 ただし、車体が大きくなるので、途中駅のプラットホームを削るなど基礎的な改造費はかかります。過去のミニ新幹線の工事費と現地の状況を見込んで約75億円です。もともと除雪のために線路の施工基面幅に余裕があるので、移設すべき障害物は少ないはずです。しかもトンネルはありませんから、車両もミニ新幹線用ではなく、フル規格新幹線の車両をそのまま入れることも十分可能であると確信しています。

山形・秋田新幹線の実際にかかった建設費のデータから推定値を算出

――新在直通ですと、九州新幹線西九州ルートの新鳥栖駅~武雄温泉駅約50kmについて、単線並列型で約500億円、複線三線軌で約1400億円という数字があります。1kmあたり10億円、28億円。新函館北斗駅~函館駅間は約18kmですから、180億円、504億円になります。また、西九州新幹線の整備にあたり佐世保線を改良しましたが、この時の建設費から算出すると600億円以上必要ではないか、という意見がありました。

吉川 西九州新幹線は佐世保線の複線化と高速化、線増用の用地の取得、武雄温泉駅の在来線高架駅、及びこれへのアプローチ高架橋新設、途中の橋梁の新設・改良、防音壁の新設等を行いました。在来線の複線線増工事を行うもので、そのため高額となっています。まったく違う工事の内容を単純に工事延長で比較することは、意味がありません。

 函館乗り入れにともなう三線軌条化については、すでに重量貨物、特急列車が走行しており、路盤を強化する必要がなく、橋梁の架け替え等もありません。施工基面も除雪余裕幅があり、新たに広げることもなく、バラストを幅20cm追加で散布し、三線用枕木に交換してレールを敷設するだけです。在来線の通常の枕木交換費用から見ても工事費は妥当です。

 私は自分が算出した工事費の検証のため、山形・秋田新幹線の実際にかかった建設費のデータから物価高騰の影響を10%程度加味して推計を行いました。山形・秋田の場合は、車庫や停車場の費用も入っているので、これらを除外すれば推定値75億円は概ね妥当との結論も得ています。

工事費の捻出部分が新たな問題に

――地元紙によると、3月に開催された政策討論会で前市長の工藤寿樹氏と函館商工会議所会頭の久保俊幸氏が「函館~新函館北斗間にミニ新幹線を走らせることで生じる莫大な赤字を負担して、JR北海道が運行するわけがない」と主張したそうです。

吉川 これまでも莫大な赤字という抽象的な表現が用いられてきました。しかし、その根拠が説明されていません。感覚だけでものを言うのは無責任です。「新幹線車両が乗り入れたら赤字ではないか」とも問われますが、「はこだてライナーを新幹線列車に置き換えることと同じだから、はこだてライナーでかかる費用と同じことではないでしょうか。並行在来線の運用と合わせて考えるならば、むしろプラスになる」と思います。

――費用以外に3年前におうかがいした内容から変わったことはありますか。

吉川 工事費の捻出部分です。札幌延伸が現実的になって、並行在来線をどうするかという問題が出てきました。小樽駅~長万部駅間は鉄道廃止、長万部駅~函館駅間は協議中です。貨物列車があるから残すという方針を北海道庁は示しました。そうでなくとも、新函館北斗駅~函館駅間は残さざるを得ないと思います。

工事は単純な割に、工期は4~5年以上かかる

――バス転換という話も出てきそうです。鉄道に比べると、バスの方が国の補助制度は豊富なんですよね。しかも北海道の道路は北海道開発予算という国の制度でめんどうを見てくれますし。

吉川 地元の利用だけで、朝の通勤通学時間帯に500人/時以上の輸送力が必要になります。バスに転換すると、1時間に50人乗りバス10台、10人の運転士が必要です。でも、ほかの時間帯は1人1台で足りるとなると、それ以外の時間帯の9台9人分のコストはどうなるのか。そもそも運転手が不足しているので、民間会社だってできませんよ。

――バスが足りないと言えば、函館新幹線乗り入れ構想の工事中は鉄道が運休するのではないか、バス代行で大丈夫かと地元紙が指摘していました。

吉川 工事は三線軌条用の枕木交換と、レールをもう1本追加するだけです。通常の線路保守業務で行う枕木交換などと同じものです。保守業務は列車間合いや夜間工事で行っていますから、営業列車を毎日止めて行うことはありません。しかし、1日に作業できる距離と作業時間が短く、ベテラン作業員の確保も問題ですし、さらに冬は工事ができませんから、工事は単純な割に、工期は4~5年以上かかると思われます。

前市長は「はこだてライナーはJR北海道が運行する」という約束を取り付けたと言っていたが…

――新幹線がどうかという前に、並行在来線は鉄道で残さなくちゃいけない。

吉川 並行在来線を残すとなれば、その費用と函館乗り入れの投資とセットで考えましょうと。並行在来線をJRから譲渡されるときに、鉄道施設は再整備します。嫁入り支度みたいに。きれいにして引き継ぎます。その時にマクラギの更新など軌道強化もやっていただく。軌道の強化と言っても、いままで特急「北斗」や貨物のディーゼル機関車が走っていましたから、そんなに手を入れることはないはずです。

 電車の「はこだてライナー」とディーゼルカーも譲渡されますが、「はこだてライナー」の電車は不要となりますから、電車だけの保守費用も節約できます。道庁は「北海道新幹線並行在来線対策協議会」の資料を公表していますが、総額の結果しか読み取れません。この内訳が分かれば、具体的に節減額の算出が可能となるので、調査を深める必要があります。

 前市長の工藤さんは「並行在来線化しても、はこだてライナーはJR北海道が運行する」という約束を取り付けたと言ってました。でもね、JR北海道が函館市役所に提出した文書(平成23年12月13日)には、『札幌開業後(第三セクター移行後)においても、アクセス列車の効率的な運行および利便性が損なわれることのないよう、弊社としては第三セクターからアクセス列車の運行委託を受ける用意があります』と書かれており、委託を受けると言っているだけで、JRが運行経費を含め行うとは何も言っていません。これは約束とは言いません。

もう在来線電車はいらない

――「はこだてライナー」はなくなりますか。

吉川 「はこだてライナー」は北海道新幹線に接続するシャトル列車ですから、新幹線車両が函館駅に乗り入れるなら不要です。そうなると、電車の点検費用、整備工場、在来線側の架線と保守費用が不要になります。「はこだてライナー」の電車は全般検査(車検)のために、苗穂工場(札幌市)までディーゼル機関車が引っ張って回送しているのではないでしょうか。これも不要になります。

 ただし「はこだてライナー」は地元のお客さんの利用もありますから、それは別途、地元の方に使いやすい時間でディーゼルカーを走らせます。特急「北斗」も新幹線に役目を移行し、「はこだてライナー」がなくなることで、ダイヤに余裕が生まれ、在来線旅客列車と貨物列車の運行を維持できます。新幹線の方は上下それぞれ30分間隔程度なら単線でも運行可能です。新幹線車両の行き違い設備を設ければ、さらに多様なダイヤを組めます。

「はこだてライナー」はなくしますが、新幹線用の電化設備は残します。これは新幹線車両しか使わないから、この設備の保有及びメンテナンス費用については、第三セクター会社かJRのどちらが行うかは、今後の協議事項となり、貸付料金にも関係するものです。

シャトルをやめればマイナスになることはない

――工事費について、大泉市長はふるさと納税を増額して充当すると主張されていました。NHKの報道で、紋別市が152億9700万円、根室市が146億500万円などの数字が出ていました。函館市の10億円は少なすぎると思いました。100億の目標は夢じゃない。それだけの潜在能力がありそうですね。

吉川 大泉市長は「初期投資はふるさと納税で」とおっしゃいますが、並行在来線の整備と兼ねればいろいろ節約できて、単体で採算が取れるかもしれません。概算は正式な見積ではないので、今後、きちんと調査する必要があります。

――それで並行在来線は黒字になるのでしょうか。

吉川 「黒字化できる」とコメントしたことは一度もありません。並行在来線はどこも赤字で、自治体がお金を投入し続けなくちゃいけない。

 函館線を並行在来線とする場合、第三セクター会社は、普通列車用のディーゼルカーもシャトル用の電車もJRから購入し、さらには未来永劫、維持管理費を支出しなければなりませんが、新幹線が直接乗入れれば、シャトル電車は不要になり、この費用がまず軽減されます。

 乗入れる新幹線車両は、JRの所有であり、メンテナンスもJRが行うので費用は掛かりません。電化による設備については、先ほども述べたようにこれからの協議になりますが、その費用はシャトルであろうと乗入れ新幹線であろうと変わりませんから、並行在来線問題と一緒に考えれば、「やらないより、やった方が良い」ということです。

 黒字になるかどうかは、今後の需要予測調査や経済波及効果を見て考えることで、とにかくシャトルをやめれば、それだけで、それにともなう費用が軽減され、JRからは線路使用料が入るので、第三セクター会社としては、プラスになってもマイナスになることはあり得ません。

 そのあたりがどうも理解しづらいみたいで、選挙の時も並行在来線問題については語られなかったような気がします。

――札幌~函館を直通できれば、JR北海道にとって儲かる話ですね。

吉川 そう。だけど、私が最初に東京から来た列車を分割するっていう話をしたものだから、その話ばかり取り上げられるんですけれども。たとえば「分割すると言っても、新函館北斗駅のプラットホームは10両分しかないから、函館行き編成を連結しようにも長さが足りない」という批判があります。それはフル7両とミニ4両にすればいい、というような話を講演で話しました。

大泉潤函館市長の公約「新幹線函館駅乗り入れ」のブレインに「線路」「車両」の構想をすべて聞いた へ続く

(杉山 淳一)

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