2023.05.21
# AI

ChatGPTに俳句を詠ませて分かったホワイトカラーのやはり甘くはない未来

生産性は上がるが余剰人員も生まれる

ChatGPTに俳句を作る能力はありません。では俳人はすべて安泰でしょうか? ChatGPTは俳句を作る手伝いをしてくれるので、それを使いこなせる俳人が有利になり、使えない俳人は不利になります。これと同じことが、ホワイトカラーを含むあらゆる知的職業において起こるでしょう。

ChatGPTに俳句が詠めるか?

ChatGPTが俳句を作れるかどうかを実験してみました。

by Gettyimages

まずは、「プロンプト」と呼ばれる指示文の書き方。

「ChatGPTに俳句を作ってもらいたいのですが、どのようなプロンプトを書いたらよいですか?」とChatGPTに尋ねたところ、次の事項を指定せよとの回答でした。

1.季 語(テーマや季節感を表すもの)、2.表現やイメージについての要望。

そこで、季語を「クレマチス」とし、庭でクレマチスの花が咲き始めている状況を説明するいささか長めの文章を書いて、「新しい俳句を作ってほしい」と指示したところ、直ちにいくつかの俳句が得られました。

しかし、どれもひどい出来映えで、箸にも棒にもかかりません。

「クレマチス」というカタカナは俳句には向かないのかと思い、「クレマチスと春という言葉が入っている俳句でこれまでに作られたものを、5つ教えてください」と指示したところ、直ちに5つ示してくれました。

これを見るかぎり、この言葉が俳句向きでないとはいえないようです(なお、これらが、現実の人間によって作られたものかどうかを尋ねたのですが、曖昧な答えでした)。

要するに、現在の段階では、人間を感動させるほどの俳句を作る能力はChatGPTにはないことが分かりました(「将来も絶対にできない」とはいえませんが)。

俳人の方々は、どうかご安心ください。

3月9日公開の「AIに『ローマの休日」続編のアイディアを出させたら、実にお粗末、殴り倒したくなった」で述べたように、小説や映画の筋書きを書いてほしいという要望に対して、AIはまことにお粗末な答えしか出してくれません。それと同じことです。

 

AIの創造能力を判定するには、俳句の出来栄えを見るのが、一番簡単だと思います。

判定する側から言えば、長い文章を読まなくとも、わずか17字で判別できるからです。作る側から言えば、わずか17字で、これまでにない新しい作品を作り出そうというのですから、大変なことです。しかも、いまの場合は、「クレマチスという言葉を使え」と制約しているので、残りは10字しかありません。10個の文字の組み合わせでこれまでになかった世界を作り出そうというのは、極限の創作活動と言えるでしょう。

これについてのChatGPTの能力がいまのレベルである限り、創造的な仕事に従事している人は、あまり心配しなくてよいでしょう。むしろ、創造的な仕事の価値が上がると考えてよいでしょう。

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