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2013年12月06日(金)

【宮本節子さんインタビュー】「誤解されてもいいので、まずは知って欲しい」

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12月10日(12月17日再放送)
シリーズ貧困拡大社会 第19回
「見えない世界に生きる―知的障害の女性たち―」
にご出演の宮本節子さんにメッセージをいただきました。

 

《宮本節子さんプロフィール》
大妻女子大非常勤講師・ソーシャルワーカー。40年間、障害者福祉・女性支援に携わる。

 

 

 

――知的障害のある女性と性産業の問題を見ていきましたが、
どのような感想を持ちましたか。

知的障害を持つ女性と性風俗産業がリンクされて社会問題化されたことはこれまで一度もありませんので、
取り上げてくださったことを非常に感謝したいと思います。

番組としては、性風俗産業という巨大な“社会的装置”に切り込むわけですから、
ともすると誤解を招く可能性はあると思いますけど、
でも、誤解は誤解として次につなげていただけたら、それはすごく嬉しいことです。
その誤解の裏側には何があるのかということを考えるだけでも問題ははっきりしますからね。

やはり今の福祉は、その巨大な“社会的装置”に取り込まれる女性に対して、
対抗手段を持っていないんです。
どういうことかと言うと、知的障害者福祉の現場も、婦人保護施設の現場も、
彼女たちには魅力的に映らないんです。
そのことは福祉の側がもっと誠実に見直す必要があるというふうに思いますね。

 

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――性産業で働く女性の中には、
セックスワーカーとして
プライドを持っている方もいるので、
社会的な課題としてなかなか見つけてもらえなかったところもあるのでしょうか。

そうですね。プライドを持ってらっしゃる方ももちろんいますし、
その存在を否定することはできませんが、
ただ、性風俗産業は女性の搾取を前提として成り立っていることは
認識しておくべきだと思います。
セックスワーカーと自認している女性たちは、
それを逆手にとって生き抜いているわけですからね。

 

――番組の中で伝えられなかったことはありますか。

やはり社会のシステムは男性のライフスタイルを中心に
まわっているんですよ。
福祉もそのご多分に漏れず、自覚はないかもしれないけれど、
男性のライフスタイルが基準なんです。
そういう意味でも、「女性であるがゆえの傷つきやすさ」を
抱える人たちの支援をどうするかというのは、
とても弱いところで、逃げていたところなんです。

 

――「女性であるがゆえの傷つきやすさ」とはどのようなことでしょうか。

女性の性が商品になるということです。
そのなり方たるや、福祉施設などに行く場合の給料と比べると、
とんでもない差があるわけです。
それなら、当面の生活を考えた場合、そっちに行きますよ。
そういうお金の問題もあって、
これまでは支援の対象にしなくてもいいだろうと
目をつぶってきたのです。
でも、そのなかでどういうことが起きているかというのは、
回りまわって婦人保護施設へたどり着いた
女性の姿を見ればわかります。
人格が崩壊していたり、身体や精神が傷つけられていたり、
あるいは子どもまで生まれている実態があるわけです。
その傷を癒やすのは生半可なことではないのに、
これまで見ようとしてこなかったんですね。

 

――それを未然に防ぐためにはどのようなことが必要になるのでしょうか。

性風俗産業は巨大な“社会的装置”だと言いましたが、
そのなかには4つの層があるんです。
ひとつは、そういう社会的装置を許容している日本の社会。
次に、それらを利用している顧客。
それから、それを供給している業者。
そして、その底辺にいるのが、商品になっている女性たちです。
その4つの層について、
売春防止法では「女性」と「業者」は対象にしていますが、
「社会」と「顧客」は対象としていないんですね。
これだけ巨大な社会的装置なのに。

 

――この問題とどう向き合っていくことが大切だと思いますか。

一般論としては、こういう実態があるというネットワークを
広げていくことだと思いますが、
じゃあ具体的な対策としてどうするのかというのは、
地域や利用者の特質を考えながら構築していくものなので、
こういう制度をつくればいいという万能薬はないんですね。

 

――では、地域に合ったネットワークを広げていくことが大事になる。

そうですね。そういう意味で言うと、
私は行政の現場を担当している人たちに、
その責務をもっと自覚して欲しいと思うんです。
山本譲司さんの著書を例にすれば、
刑務所の職員は知的障害を抱える犯罪者が多いという実態を
知っていたわけですよね。
でも、それは山本さんが本を書いたことで初めて表に出てきた。
じゃあその実態を知っていた職員たちは何をしていたの?
という話になるし、同じように、
知的障害者の福祉でも婦人保護施設でも、
現場ではこういう問題があることを知っていたけれども、
これまで表に出てこなかったわけですよ。
今回の放送があって初めて表に出てくる。
そういう外圧がなければ動けないのかと。
自分たちの担っている責務というのをより自覚すべきだと思いますね。

コメント

私も職員として施設の夜勤をしています。改めて仕事の大切さをさとりました。今ゆきづまっていたのですが。やはり自分の目標を思い出しました。最初は力になりたいというので、仕事につきました。今はそれを忘れていました。十代の頃父の虐待にあっていて高校を出ると自分で働いて自分のことくらいやれるよう頑張りました。母はそれを見ながらも助けてくれませんでした。ですから、弱者の気持ちがわかるのです。また再出発のつもりで仕事頑張ってやれそうです。自分だけじゃない事がわかり、他の人の力になれそうです。いい番組ですね。これからも知的障害者の人たちと分かち合うことで自分も救われるよう希望を持ち頑張ります、

投稿:あき 2013年12月17日(火曜日) 13時52分

老人介護施設で働いている職員です。
今日の放送をみて、以前いらっしゃった利用者さんで軽度知的障害を持ち、病気になる前は歓楽街でストリップをして生計を立てていた女性を思い出しました。
精神障害の果ての人格障害で人生の大半を精神病院で過ごし、高齢に伴う日常生活動作の困難と認知症で最終的に施設入所となったその方の入所サマリーを見ているだけで胸が引き裂かれるような気持ちでした。
オムツ交換に訪室するたび(不必要なほど)脚を大きく開いて、私が『どうしたの?』と尋ねると「こうすると、みんな喜ぶんだ。おかしいよ。」と本当に無邪気な笑顔でお話していました。
ああ、この人はこうするしか生き続ける術が無かったんだ。
過酷な状態に身を置く自分を無理矢理に肯定し続けた結果がこの人の心を壊してしまったのだと思いました。
私が遭遇した性産業で働く知的障害女性の悲惨な現実は今でも増え続けているのかと思うと、同じ女性としてもとても辛いです。
今回の放送で少しでもそうした女性の現状が改善されるように福祉行政の手掛かりになることを望みます。
同時にそうして身を守る術を持たない弱い立場の人間に擦り寄って漬け込む者がいることに非常に強い怒りを感じました。

投稿:シロボシ 2013年12月11日(水曜日) 01時08分

15年前、研究科で宮本先生にお世話になりました。先生のような現場のケースワークをしたく、地方公務員として働いています。先生の当時の課外授業でも今日の内容を取り上げていたかと思い出していました。先生のお元気な姿も嬉しかったのですが、現場でも軽度の知的障害者の問題を感じる日々です。施設勤務をしていた頃、性教育について取り組み、また男性職員と性の考え方が違っていたなと思い出しました。何とか就労させたい、目標を持って人生を歩むサポートをしたい、と微力ながら頑張っています。テレビを通してまた勇気つけられました。

投稿:ママレードまま 2013年12月10日(火曜日) 22時32分

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