普段は使わない大切にして
いるナイフがいくつかある。
一つの物を結構ずっと大切
に持ち続けて使い続けるクチ
だが、保存保管モードの刃物
もある。
使わないナイフといっても、
コレクターズアイテムではな
く、必要とあらばいつでも使
うというスタンスで私はナイ
フを買い求めるが、保存重視
の物もある。
これもその一つで、バックの
505ナイトというバックの小
さいフォールディング・ナイ
フは90年代には肌身離さずに
いつも持っていた日用品だった。
この個体は、フライに飛びつく
レインボートラウトの印画が
気に行って購入した。購入場
所は、世話になっていた広島
市内の有名フライフィッシング
ショップだった。
バックの製品には製造年の
刻印がある。
私のこの個体は1995年製と
いうことだ。
購入したのは1998年だった。
この図は2012年当時、日本
国内にはネット上でバック
の製造年マークがアップされ
ていなかったので、米国の資
料をベースに手元の手書きの
メモを基に私が製作した。
結構時間かかった(笑)。
いくつかのナイフショップは、
バック社から出された資料と
思ったのか、私のこのウェブ
日記からこの図を無断使用し
ていたが、最近どこもがバック
社からのデータの二次利用に
切り替えたようだ。
私の日記やサイト記事(現在
表示一時停止中)は各方面で
参考にされることが非常に多
く、無断利用やまるまる盗用
も非常に多い。
一番驚いたのが『ラジオライフ』
誌が私のサイト記事「ベレー
のかぶり方」をまるまる盗用
したことだった。まるまるで
ある。
画像はモデルを使って撮り直し
てあるが、すべて私の画像と
同じアングル、ベレーの型の
つけかたから解説文章から、
なにからなにまですべて盗用
だった。
書いているのはフリーのライター
のようだったが、あれでギャラ
をもらうとしたらプロとは一体
何であるのかと首をかしげたく
なる。
ま、どうでもいいけど。
ナイフのことに話を戻す。
このバック505ナイトは1996年
製だ。Cマークの刻印がそれを
示している。
この個体は、1998年に広島市
内のフライフィッシング専門
店で購入した。未使用。
レインボートラウト=ニジマス
がジャンプして食いつこうとし
ているのはメイフライのスピナ
ーだ。ダンと呼ばれる亜成虫か
ら成虫となり飛行していると
ころをマスに狙われている瞬間
だ。
(ウルトラセブンのモロボシ・
ダンのダンは幼虫でも成虫で
もないカゲロウの亜成虫とい
う中間状態から取った名称だ)
カゲロウのスピナー=成虫は
極めて清浄な水生昆虫で、口
も肛門も存在しない。つまり、
摂餌をしないのである。その
機能を持たない。
水中から大気中に飛び立った
カゲロウは数時間から数日で
死ぬ。
ただ子孫を残すためだけに飛
行を続けて儚く死んでいくの
がカゲロウ=メイフライの成
虫=スピナーなのである。
儚く美しい。人間のようなお
どろおどろしい薄汚さは一切
無い。
カゲロウが一斉に羽化する
状態をハッチと呼ぶ。スー
パーハッチの時には、まるで
雪が舞い上がるような光景と
なる。彼らは生の最後の瞬間
をこうして飾り、そして潔く
死んでいく。日本人ならずと
も、欧米人でさえも、その透
徹した有り様と美しさに目を
奪われるという。人より美しい。
その美しいカゲロウという
水生昆虫を大好物にしてい
るのが渓流の中にいるトラ
ウト=鱒族なのである。
鱒という魚種は他の魚種と
かなり違った特性を持って
おり、とにかく釣る対象は
鱒でないと駄目だ、という
世界にハマった人は地球上
にかなり多く存在する。
日本でもそうした人は多く、
井伏鱒二などはペンネームに
まで鱒を使ってしまった。
ニジマス。外来種なので日本
の河川には自然棲息はしない。
管理河川もしくは管理釣り場
のポンド(池)にのみ生息する。
地球の南半球には鱒族は棲息
しなかったが、ニュージーラ
ンドをはじめ多くの英国系国家
には鱒族が人為的に移植され、
純天然化して多くの鱒類が棲息
するようになった。
ニュージーランドではレイン
ボーやブラウンなどのトラウ
トが60センチオーバーまで巨
大化して天然化して棲んでいる。
日本の河川に棲むトラウトは
イワナ、ヤマメ、アマゴであ
り、九州を除いて30センチ以下
の個体が多く、北海道などでは
さらに小型化する。
ヤマメ。陸封型であり、これの
海への降海型がサクラマスとなる。
小判型の幼形文様はパーマーク
と呼ばれ、これが降海する際に
は消えて銀化(ぎんけ)と呼ば
れる白銀色の魚体に変身する。
アマゴ。ヤマメの近似種。
降海型はサツキマスとなる。
広島県の市内を流れる太田川
はサツキマスが海から溯上す
る全国でも珍しい河川となっ
ている。
イワナ(ニッコウイワナ)。
鱒族は原始的な身体構造の
ため、エラが発達しておらず、
酸素量が多い水質が良好な上
流域でしか生息できない。
イワナ類は河川の最上流に
棲息する魚種である。サケ科
であり、その近似亜種は多い。
ゴギというのは地球上で一番
赤道付近に棲息するサケ科の
魚で、存在するのは日本列島
の本州広島県・島根県であり、
県の天然記念物となっている。
金色に輝く魚体を持つ、ゴール
デン・チャーとも呼べるイワナ
がゴギだ。
発音のイントネーションは
「ゴ(-) ギ(-)」であり、
「ゴ( ̄) ギ(_)」ではない。
ゴギ(in 広島 2016)
スピナーのフライは私はあま
り使わないが、摂餌とピタリ
と合った場合には爆釣になる
のがスピナーのフライだ。
ただし、食い付かない時は
全くもって食い付かない。
こういうドンズバ似せのフライ
よりも、なんじゃらもんじゃら
フライ(何を模したかよく分か
らないフライ)のほうが汎用性
も高く、よく釣れる。
この画のような成虫=スピナー
を模したフライは、そのもの
ドンズバを鱒が食べている時で
ないとまったく食いつかないし、
マス男さんたちは興味を示さな
いのである。
スピナーのフライ。
ただし、ドンズバフライはハマ
ると投げれば即食いつくほどに
よく食う。
スピナーでの釣りは、時、場所、
時間と鱒の摂餌状態がすべて
ビタリと一致した時の釣りで
あり、難しいゆえに人気も高い。
ただただ釣れるようなフライを
投げるのであれば、エルクの
ヘアを使ったエルクヘアカディ
ス(トビケラを模した白いフラ
イ)が最強であり、あれほど釣
れる毛鉤は存在しない。ナン
ジャラモンジャラを除いては(笑
私がマーチブラウンのスピナー
で釣りあげたアマゴ。
だが、このトラディショナル
なロイヤルコーチマンのよう
ないわゆるいかにもフライの
お手本ですよ~みたいな毛鉤
は実は案外と釣れない。
フライ自体は芸術的な美しさ
だとは思うが、私も何個か巻
いて、フライワレットに入れ
てはいても、現場で実戦投入
することはほとんどない。
フライボックスの御守のよう
なものだ。
私が考案して自分で巻いた
変則フライ2種。専門誌に
紹介された記事を抜粋。
どちらも特定状況下での爆釣
フライだ。右下のウーリー
バッカーがいわゆるナンジャ
ラモンジャラ。これを巻く
時間は1分ほどだ。
広島のテレビ番組に出演した
時に城みちるさんに巻き方を
教えたのもこのフライ。
そのシーンも放送された。
失敗だったのが蜂フライだ。
スズメバチにソックリな毛鉤
を作ったのだが、似過ぎは食
わぬのフライフィッシングの
教えの通り、まったくもって
サッパリだった。
あれもフライボックスの肥や
しに転じた御守フライとなった。
意外によく釣れたのがうちの
ワンコの毛をちょっと失敬し
て作った毛鉤で、これは雄犬
と雌犬、毛色の違いによって
フロート効果が違い、適宜使
い分ければかなりいける毛鉤
となったのだった(笑)。
キャバリアでいえば、白+薄茶
のブレンハイム色よりも、白+
黒+茶の三毛のトライカラー種
のほうが毛質がシルクのよう
な感じであり、水に沈みやすい。
この理由はよく分からないが、
複数のブレンハイムとトライカ
ラーが実際に家にいて試して
みたので、それはゆるぎない
事実として私は理解している。
事実というものは、このように
真実に接して真実を理解した者
が感知できる不動の客観性を持
つ事象の認知のことであり、
個人がごく私的に風呂屋の
湯船で「思い出し」たり、
「思いついた」りするもので
はない。
フライフィッシングという釣
りは、待ちの釣りではなく、
山と川と大気との状況を読み
込み、狙いを絞り込んで、自
分からどんどん積極的に攻めて
行く釣りだ。
マスを知り、水生昆虫を知り、
自然環境を知り、人間以外の
森に住む生物たちに精通しな
いとまったく釣りにならない
釣りである。
ファッション感覚では足を踏
みこめないのがフライフィッ
シングだ。
そもそもレジャー感覚では
フライの場合はキャスティン
グ(竿を振る技術)さえも
一切できない。
私は#5でフルラインキャスト
出しを90年代にすでにやって
いたが、普通にフライに通じ
ていない人の場合、前後60
メートルのキャストどころか、
前方7メートルにさえもライン
を投げることができない。
そうした技術が絶対条件とし
て必要な釣りがフライフィッ
シングなのである。
なんだか、エセではない本物
の剣術や刀術の世界に通じる
ものがある。
フライフィッシングの世界に
は礼法はないが、渓流におけ
る礼儀はフライマンたちには
存在する。
それは先行者がいる場合、そ
の人を溯上途中で追い抜いて
はならない、という暗黙の絶
体ルールだ。(用具のゴミ等
を河川に捨てないという人と
して当然のことはマナー以前
の問題なのでここでは省く)
フライマンは総じて紳士である。
これ、ホント。