司法書士試験の受験を検討している人は、どれくらい難しいのか?自分にも合格できるのか?とても気になるところですよね!
このコラムでは、合格率や合格に必要な勉強時間、偏差値で例えるとどれくらいなのか、他資格と比較しながら司法書士試験の難易度や難しいポイントなどについて解説します。
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目次
司法書士の難易度とは?合格率は4~5%
司法書士試験は、数ある国家資格の中でも「最難関資格」といえる、非常に難しい試験です。
それを端的に表すのが合格率の低さです。
令和4年度の試験では、受験者数12,727名に対して合格者数は660名で、合格率は、5.2%でした。
例年の合格率は4~5%程度で、少しずつ合格率が上昇傾向にありますが、それでも依然この低さです。
過去7年の合格率をまとめるたのが、以下の表です。
年度 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 |
令和4年度 | 5.18% | 12,727人 | 660人 |
令和3年度 | 5.14% | 11,925人 | 613人 |
令和2年度 | 5.16% | 11,494人 | 593人 |
令和元年度 | 4.39% | 13,683人 | 601人 |
平成30年度 | 4.32% | 14,387人 | 621人 |
平成29年度 | 4.07% | 15,440人 | 629人 |
平成28年度 | 3.94% | 16,725人 | 660人 |
受験者数は減少傾向にあり、直近2年は12,000人未満です。
合格者数はおおむね600人程度で推移しています。
合格率が直近2年はやや高くなっており、受験者数が減っても600人程度は合格者を維持する方針があるのかもしれません。
合格者の年齢層は、30~40代が3分の2近くを占めます。
20代の合格者は1割程度で、難関資格ゆえに合格までに時間がかかる人も多いからでしょう。社会人になってから受験する人も多く、令和4年度の合格者の平均年齢は40.65歳です。
関連コラム:司法書士試験合格者の平均年齢は?年代別合格者割合・最低・最高年齢まとめ
合格者の男女比は、男性が7割強、女性が3割弱程度で、男性が多いです。
多少合格率が上昇傾向にはあるものの、今後も5%を大きく超えることは考えにくく、9割以上が不合格になってしまう非常に難易度の高いシビアな試験です。
司法書士とは?基本をおさらい
司法書士とは、法律系の国家資格者で、登記など法律事務の仕事をする法の専門家です。
従来からの業務である不動産や会社の登記申請がメインの仕事ですが、仕事の幅は拡大しています。高齢者などの権利を守る成年後見人になったり、簡易裁判所における訴訟業務を行ったり、遺言書作成などの相続関係業務など、法律に関わる幅広い仕事をしています。
司法書士試験に合格することで、独立開業したり、司法書士法人や事務所で勤務司法書士になったり、仲間と合同事務所を作ったり、一般企業で法務の仕事をするなど、様々な働き方の選択肢ができます。
コンプライアンスが重視される昨今、高度な法律知識のある司法書士試験合格者は、就職活動においても有利です。
司法書士になるには、ほとんどの人は司法書士試験に合格しなければなりません。
一部例外として、法務局等で一定年数以上勤務した公務員が試験を免除される制度があります。
関連コラム:【司法書士になるには】資格を取る2つの方法と手順を解説
司法書士試験の概要
試験は年1回、毎年7月に筆記試験が実施されます。その後、筆記試験合格者は口述試験に進みます。
筆記試験は午前2時間、午後3時間の計5時間の長丁場の試験で、試験科目は11科目です。
午前は4科目の択一式問題で、①憲法(3問)、②民法(20問)、③刑法(3問)、④商法(9問)が出題されます(各3点、計105点)。
午後は7科目で、択一式問題に加え、記述式問題があります。
択一式問題は①民事訴訟法(5問)、②民事執行法(1問)、③民事保全法(1問)、④司法書士法(1問)、⑤供託法(3問)、⑥不動産登記法(16問)、⑦商業登記法(8問)です(各3点、計105点)。
記述式問題は、①不動産登記法(1問)、②商業登記法(1問)です。(各35点、計70点)です。
総合得点は280点満点です(択一式210点、記述式70点)。総合得点の合格点は、200~210点前後となることが多く、75%程度は正解しなければなりません。
相対評価なので、年度により合格点は異なります。
また、午前の択一式、午後の択一式、午後の記述式のそれぞれで基準点(足切り点)があるので注意が必要です。
関連コラム:司法書士試験の日程は?試験概要とスケジュールを解説
司法書士の難易度を他の国家資格と比較
上述のとおり、司法書士試験の合格率は4~5%程度、試験科目は11科目で、幅広い学習範囲かつ深い知識が求められます。
そのため、合格に必要な学習時間は、3000時間以上とされています。
関連コラム:司法書士合格に必要な勉強時間は3000時間?勉強法と独学合格体験Q&A
司法書士試験の難易度をイメージするため、他の国家資格と比較してみましょう。
ここでは、一般的な評価での難易度の高い順に並べています。
ただし、難易度の観点や感じ方は人によって異なるため、この順位が絶対的に正しいとは言えません。
順位 | 資格試験 | 合格率 | 学習時間(目安) |
1 | 司法試験 | 25~40% | 6000時間 |
2 | 司法書士 | 4~5% | 3000時間 |
3 | 土地家屋調査士 | 8~10% | 800~1200時間 |
4 | 社労士 | 6~8% | 800~1000時間 |
5 | 行政書士 | 8~12% | 600時間 |
6 | 宅建 | 15~17% | 300~400時間 |
司法試験との比較
司法試験は、弁護士、検察官、裁判官になるための試験です。
合格率だけで見ると、一見司法書士試験の方が難易度が高く見えますが、実際の難易度を比較するのはそう単純ではありません。
まず、司法試験を受験するためには、前提として法科大学院を修了もしくは司法試験予備試験に合格する必要があります。すでに十分法律を学び、第一段階をクリアした人のみが司法試験に臨んでいるのです。
一方、司法書士試験は誰でも受験可能であるため、まだ合格レベルに程遠い受験生も多く、単純に合格率が低いから司法書士試験の方が難易度が高いとは言えないのです。
試験の形式も異なります。
司法試験は論文式試験が3日間、短答式試験が1日の計4日間にわたり実施されます。
論文式試験の科目は、公法系科目(憲法・行政法)、民事系科目(民法、商法、民事訴訟法)、刑事系科目(刑法、刑事訴訟法)、選択科目(知財法、労働法、租税法等から1科目選択)の4科目です。
短答式試験の科目は、憲法、民法、刑法の3科目です。
司法書士試験と重なる科目も多いですが、論理的な思考が求められる論文式試験が中心となること、4日間の長丁場になるという過酷さがあります。
総合的に見ると、今でも司法試験は法律系資格の最難関と言えるでしょう。
土地家屋調査士との比較
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記を行い、土地や建物に関する調査や測量を行う仕事です。
司法書士が不動産の権利に関する登記を行うことから、仕事の関連性が高く、ダブルライセンスとして相性の良い資格です。
難易度としては、司法書士よりは易しいですが、計算に苦手意識のある人にとっては思いのほか難しく感じるかもしれません。
土地家屋調査士試験の筆記試験は、午前と午後の2部制ですが、午前の部については、測量士補などの試験に合格すれば免除されるため、ほとんどの人が午後の試験のみを受けます。
午後の試験は、択一式問題(民法、不動産登記法、土地家屋調査士法)の3科目と、書式問題で土地・建物それぞれの作図があります。
書式問題には計算問題があり、三角関数や複素数の知識が必要です。
計算や作図など、暗記では乗り切れない難しさがありますが、科目数の少なさや合格率を考えると、司法書士よりはハードルが低いと言えます。
関連コラム:司法書士と土地家屋調査士の難易度を比較!どちらが難しい?
社労士との比較
社労士は、社会保険や労務管理の専門家で、資格を取っても必ずしも独立開業せず、企業内で働く人も多い傾向があります。
社労士試験の試験科目は8科目で、すべてマークシート方式です。
難易度は司法書士より低いと言えます。
労使関連の法律が試験科目となり、具体的な数字を選択させるなど、専門性の高い詳細な知識が求められます。
正確に暗記しなければならない内容も多いですが、それでも司法書士試験程ではありません。
司法書士試験よりは、社会人が働きながら合格しやすい試験と言えるでしょう。
関連コラム:司法書士と社労士の難易度を比較!どちらが難しい?
行政書士との比較
行政書士は、官公庁などに提出する書類作成を行うのがメインの仕事で、仕事の性質が司法書士と似ている面があります。
試験の難易度としては、司法書士よりは大分易しいと言えるでしょう。
司法書士試験とは異なり、絶対評価の試験で一定数を超えれば合格できるので、目標点を定めやすく、対策を立てやすいと言うメリットがあります。
試験科目は8科目あり、択一式問題と記述式問題があります。
ただし、記述式問題といっても、司法書士試験の申請書をゼロから作成するほど大変なものではありません。
択一式問題の科目は司法書士試験と重なるものが多く、司法書士試験の合格者はそれほど対策をしなくても行政書士試験にすんなり合格できるケースが多く見られます。
逆に、行政書士試験に合格した人が同じ感覚で司法書士試験を受けても、全く太刀打ちできないことが多く、それくらい難易度には大きな差があると言えるでしょう。
関連コラム:司法書士と行政書士の難易度を比較!どちらが難しい?
宅建との比較
宅建士は、不動産売買などの取引の際に重要事項説明などを行う仕事で、多くの場合不動産業に従事する人が取得しています。
難易度としては、司法書士よりはるかに易しいと言えます。
試験科目は4科目で、すべてマークシート方式で問題数も少なめです。
学習範囲もそれほど広くないため、司法書士試験の10分の1程度の勉強時間で足り、働きながらでも数か月で合格できる人も多く存在します。
独学でも合格を目指しやすい試験といえます。
関連コラム:宅建士と司法書士を比較!仕事内容・難易度・年収・キャリアプランは?
講師が動画で解説!司法書士の難易度ランキング
アガルートアカデミー司法書士試験講座の竹田篤史講師が、合格率、勉強時間からみる司法書士の難易度ランキングを動画でも発表、解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
司法書士試験の難易度を大学の偏差値に例えると?
司法書士試験の難易度を大学入試に例えると、どれほどの難易度といえるでしょうか。
もちろん資格試験と大学入試は全く異なる試験であり、大学入試は学部によっても難易度が異なるため、一概に比較することはできません。
馴染みのない司法書士試験の難易度について、具体的なイメージを持つための参考資料とお考えください。
大学 | 偏差値 | 試験 |
東京大学、京都大学 | 68~ | 司法試験・予備試験 |
慶應大学・早稲田大学・上智大学 | 65~67 | 不動産鑑定士・司法書士・弁理士 |
明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学 | 60~64 | 土地家屋調査士・中小企業診断士・社労士・行政書士 技術士二次試験・通関士・マンション管理士・ケアマネジャー |
日本大学・東洋大学・駒澤大学・専修大学 | 55~56 | 技術士一次試験・宅建・測量士・管理業務主任者・社会福祉士・インテリアコーディネーター |
繰り返しになりますが、上記はあくまで目安です。
東京大学出身の司法書士の中には、東京大学入試よりも司法書士試験の方が大変だったと話す方もいますし、後述のとおり、大学に行っていない方で司法書士試験に合格した方も多数いらっしゃいます。
司法書士試験合格者と出身大学の関係
司法書士試験合格者には、東京大学出身者もいれば、高校卒の方もいらっしゃいます。
また、大学卒の方の場合、出身学部は法学部だけでなく、その他の学部の方も数多くいらっしゃいます。
したがって、司法書士と学歴又は出身大学に相関関係はありません。
先にご紹介した通り、司法書士試験に挑戦する方の年齢もかなり幅があります。
20代の方もいらっしゃれば、定年退職をした後に一念発起して挑戦する方もいらっしゃいます。
つまり、司法書士試験を目指すにあたって、有利不利はほとんど無いと言って良いでしょう。
やる気にさえなれば、挑戦するに遅いということはなく、どのような立場の方であっても目指すことができる資格であると言えます。
関連コラム:大学生は司法書士短期合格に有利!メリットと両立するためのポイント
司法書士試験の難易度が高い理由
上述した通り、他資格と比較しても、合格率の低さや必要な勉強時間の多さから、司法書士試験がかなりの難関資格であることがわかります。
それ以外にも、以下の点から司法書士試験は難しいと言われています。
相対評価であること
司法書士試験は、一定の点数を超えれば合格できる絶対評価ではなく、上位5%位に入る高得点を取らなければ合格できない相対評価の試験です。
そのため、何点程度を目指せばよいのかという目標が立てづらいという特徴があります。
比較的易しい問題が多めに出題された年度では、基準点(足切り点)が8割程度などかなり高くなることもあります。
午前の択一式問題、午後の択一式問題、午後の記述式問題のいずれか一つでも足切り点を下回ればそこでアウトなので、とてもシビアな採点方式です。
なじみのない特殊な法律科目が多いこと
司法書士試験は司法試験や行政書士試験と共通する科目も多いのですが、独自で出題される科目に「不動産登記法」「商業登記法」などがあります。
これらの科目は、択一式問題と記述式問題の両方で出題されるメイン科目なのですが、多くの人にとってなじみがなく、具体的なイメージがわきにくい内容です。
記述式問題が解けるレベルに到達するためには、単なる暗記ではなく深い理解が必要で、苦手意識を持ってしまう受験生も大勢います。
「捨て科目」を作れないこと
司法書士試験は上述のとおり相対評価で、上位約5%以内に入らなければいけないため、全科目についてしっかりと得点できるだけの知識が必要です。
いわゆる「捨て科目」を作ることは基本的にはできず、11科目すべてを丁寧に学習する必要があります。当然暗記しなければならない内容も膨大です。
計画的に全科目をバランスよく学ぶ必要がある点も、司法書士試験の難しさと言えるでしょう。
難易度が高い司法書士試験に合格するためにすべきこと
では、難易度が高い司法書士試験に合格するためには、どのような対策が必要なのか、そのポイントを紹介します。
いつまでに合格するか明確に目標を立てる
司法書士試験は、長期間だらだらと勉強をすれば受かるレベルのものではありません。
長期戦になればなるほど、集中力低下などからかえって合格が遠のいてしまうことも多いのです。
いつまでに合格したいのかを明確に意識して、それに向けてその時が自分の実力のピークになるようにイメージしながら勉強することが必要です。
意志の力は想像以上に重要で、絶対に短期間で合格する!という気持ちで取り組まなければ、いつまで経っても合格することはできません。
関連コラム:司法書士合格に必要な勉強時間は3000時間?勉強法と独学合格体験Q&A
着実に知識を身に付けていく
司法書士試験に簡単に合格する裏ワザや近道は基本的にありません。
しっかりと学習計画を立て、それに沿って着実にコツコツと勉強を続けていくことが、結果的には合格への一番の近道です。
予備校や通信講座では、自動的に効率的な学習プランに沿った学習ができるように設計されているので、それに素直に従って勉強し、日々コツコツと知識を定着させていくことが大切です。
予備校・通信講座を利用する
司法書士試験は試験科目の多さ、学習範囲の広さなどからいかに計画的に、効果的な勉強を続けられるかが大きなポイントです。
自己流の学習計画ではほぼ太刀打ちできず、独学で合格できる人はほとんどいません。
自分に合った予備校、通信講座を利用することが不可欠だと言えます。
各予備校、通信講座の特徴を吟味したうえで、自分にとって最適な講座を受講しましょう。