私が自分でタップ交換をする
ようになったのにはきっかけ
がある。
20代中半の頃、よく行くビリ
ヤード屋のオヤジに最初の頃
はタップ交換を有料で依頼し
ていた。
しかし、ある時、タップトップ
が綺麗なRではなく斜めに削ら
れたぞんざいな仕上げで渡され
た。
こんな斜めだと撞いた時に位置
によってイングリッシュや反発
効果に差異が発生して玉撞き自
体に支障が出るから、平均的に
整ったRに成形してくれ、と頼
んだ。
そしたら、そのオヤジは自分の
仕事にケチつけられたと思った
のか、かなりふてくされながら
「そんな細かい事言うのあんた
ぐらいのもんだよ」と言い放っ
た。
先輩の顔を見たら「言い返すな、
放っておけ」と目配せした。
ほかにも汚い玉ビジネスをやっ
ていたのを先輩は知っていたか
らだ。
後年、バブル崩壊で店を閉じ
る時に私の職場に件のオヤジ
から連絡があった。金の無心
だった。
曰く、「うちには70万80万の
キューも置いてるからそれを
担保に金貸してくれないか」と
いうものだった。
販売在庫品ではなく、客の置
きキューの事を言ってるのだ
った。
東日本大震災の時にラッキー
菱沼さんの所から高価なケー
ス等が盗まれて販売されてい
たらしいが、玉突き界もろく
でなしのぬすっとは多い。
大抵は賭け玉狂いの連中だ。
店のオーナー含めて賭け玉が
大好きというような連中ばか
りだったのがビリヤード界
だった。賭け玉だけでなく、
どんな汚い事をしようが、
金をとったもん勝ちという感
覚の連中ばかりが棲息するの
が玉突きの世界だった。
強ければいいとするクズは
現代でも多い。
自分が玉を外したらキューを
台に叩きつけるヒステリーを
起こしたり折ったりする奴ら
がトッププロでございとイキ
ってでかい顔している。
また、指導者と勘違いしてる
奴も着帽タメ口喋りで偉そう
にコーチぶってる。
人間的質性が著しく低劣なの
がビリヤード界の昨今の常で
あるのだ。
玉屋のオヤジの無心は、人の
物を担保に金借りるなどもっ
ての外だと言って電話を切っ
た。
カスは昔も今も玉界に跋扈し
ている。
そもそも、玉が撞ければ偉い、
と思う時点でアウトだ。
人間的な質性が低い人間がい
くら玉突きが上手くとも、何
も偉くない。
だが、ビリヤードファンの中
でも勘違いしている者が多い。
上級者には人的クズが多いの
だが、社会では通用しないよ
うな言動や素行の人間たちが
それにあたる。
社会的なスカがどうして尊敬
に値しようか。
先輩が平ヤスリで成形方法を
玉屋でオヤジがいない時に見
せてくれた。
タップ交換のやり方も教えて
くれた。
そして、自分で交換するよう
になった。
気づくと先輩や別な店のマス
ターまでもが「タップ交換頼
むよ」という程の加工精度と
仕上げになっていた。
爾来、30数年、他人にタップ
交換を頼んだ事は無い。