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プラスチックの物理性質(3)―比熱、熱伝導率、線膨張係数:プラスチック材料の基礎知識(20)

この記事では…

プラスチックの熱的性質を示す、比熱、熱伝導率、線膨張係数について解説する。

(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

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物体は全体として動いていなくても構成する分子や原子は熱運動している。温度は熱運動の激しさを表す尺度である。理論的には熱運動が完全に停止するのは絶対温度0K(-273℃)であり、温度が上昇するにつれて熱運動は次第に活発になる。

プラスチックの熱的性質はポリマーの集合体であること、温度が上昇すると熱運動が活発になることなどと関係がある。表1に各種プラスチックおよび鋼の比熱、熱伝導率、線膨張係数を示す。

表1 プラスチックおよび鋼の物理的性質

比熱

比熱は単位質量の物質を単位温度上昇させるに要する熱量[J/(kg・℃)]である。従って、比熱の値が大きいほうが暖まりにくく、冷めにくいことを表す。表に示したように、鋼の比熱は0.434 J/kg℃に比較して、プラスチックは1.0~2.3kJ/kg℃の範囲であり約3~5倍大きい値である。このように、鋼に比較してプラスチックは温まりにくく、冷めにくい材料である。そのため、成形するときには溶融させるには大きな熱量を必要とし、冷却するときには大きな熱量を放出する特性がある。

熱伝導率

熱伝導は分子の熱運動が隣接している分子に順次伝わる現象である。熱伝導率は熱の伝わる方向に垂直の等温平面の面積を通って単位時間に垂直に流れる熱量と流れる方向の温度勾配の比であり、単位はW/(m・℃)である。従って、熱伝導率が大きいほど熱は伝わり易いことを表す。表に示したように、鋼の熱伝導率は60.0 W/(m・℃)であるのに比較して、プラスチックの熱伝導率は0.2~0.6 W/(m・℃)であり約1/100~1/300程度の値であるので、プラスチックは熱が伝わりにくい材料である。

プラスチックは熱伝導率が小さいため容器類に使用すると内容物が冷えにくいこと、容器に熱い食品を入れて手で触っても火傷をしにくいことなどの利点がある。一方、発熱体を内蔵するハウジングなどに使用すると放熱性がよくないため内部温度が上昇しやすいこと、成形する時に冷却に時間がかかることなどの短所にもなる。

線膨張係数

温度上昇によって物体の長さが膨張する割合を温度当たりで表したものが線膨張係数である。表のように、鋼は1.2×10⁻⁵(mm/mm)/℃であるが、プラスチックの線膨張係数は6.0~20×10⁻⁵(mm/mm)/℃であるので、6~18倍大きな値である。従って、プラスチック製品は温度によって寸法が大きく変化することに注意する必要がある。実用的には次の留意点がある。

①金属部品と成形品を一体化して組み立てるときには、膨張・収縮差によって成形品が引張や曲げ応力を受けるので変形や割れが生じることがある。

②金具をインサートする成形では線膨張係数差による残留応力が発生する。

次回へ続く

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PlaBase編集部
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