友人からは「無謀」と…“深夜0時”まで開いている古着店 そのワケを店主に聞くと
■友人に言われたのは「地方で深夜まで」は「無謀」
赤ちょうちんやバーがぽつん、ぽつんと明かりをともす通りの外れに、午前0時まで開いている古着店「Nora Used Clothing」(ノラ・ユーズド・クロージング)」がある。長野市中心街の権堂アーケードに近い同市鶴賀田町。12坪の店内には、欧州や米国製の年代物の古着や動物柄の服が300着ほど並ぶ。
開店は午後1時。「午後7、8時に店を閉めても事務作業で遅くまで残るから、その間にお客さんが来てくれたらいいかなと思って」と店主の中條勝博さん(37)は話す。
麻績村出身。明科高校(安曇野市)を卒業して長野市の美容専門学校で学び上京、美容師になったが25歳で腱鞘(けんしょう)炎を患い、仕事が続けられなくなった。客として通っていた世田谷区三軒茶屋の古着店でアルバイトを募集しているのを知ったのは、そんな時だった。
「1カ月くらいのつもり」だったが、毎日さまざまな古着を扱ううち、見たこともないような服に出合い、流行の移り変わりも知ることができる奥深さに魅了された。店長を任されるまでになったが、店は2015年に閉店。すぐに同じ三軒茶屋で自身の店を開いた。アルバイトをしていた店が深夜営業だったことから、普通に午前0時まで営業することにしたという。
複数の店を構えるなど経営は順調だったが、「故郷の長野県でいつか店を開きたい」と考えていた。長野には、売りにしているロックバンドのTシャツや動物柄を扱う店はあまりないとも感じていた。実家に近く、知り合いも多い松本市での開業も考えたが、「甘えが生まれるのではないか」と思い、あえて19年に長野市に移住。東京の店はスタッフに譲り、準備を本格化させた。
新型コロナ流行に伴う中断を経て店舗を探し、美容系の店が入っていたという今の場所に、自身も美容師だったこととのつながりを感じて「ピンときた」。昨年7月、オープンにこぎ着けた。
長野で深夜までの営業は無謀だと友人らには言われた。確かに来店は1時間に1人か2人。それでも午後9時以降は全品10%引きにするなど工夫し、通う人は徐々に増えた。ある日の午後9時すぎ。来店した市内の男性(34)は妻の誕生日プレゼントに動物柄のTシャツを購入し、「仕事が終わった後でも買えるので、ありがたいですよ」。月3回くらいは来店するという。
中條さんは古着の買い付けで月1、2回は東京に行く。服の山から「これはという掘り出し物を見つけた時が面白い」という。そうした一着を手にした「お客さんが喜んでくれるのが何よりうれしい」。その笑顔に出会いたいと、今日も夜遅くまで店を開けて待っている。(桂川明)