2021.03.02
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内戦再び!

シビル・ウォーⅡ

 マーベル・コミックスの歴史の中でも、そのショッキングな展開で読者に屈指のインパクトを残した作品と言えば、2006年に展開した大型クロスオーバー『シビル・ウォー』を挙げる人が多いのではないでしょうか。
 政府がヒーローを管理する「超人登録法」の可否を巡って、マーベル・ユニバースのヒーローたちが、それぞれの思想を負って対立。賛成派の代表にアイアンマン、反対派の代表にキャプテン・アメリカが立ち、マーベル・ユニバースの大部分のヒーローたちがどちらかの派閥に属する形で繰り広げられた戦いは、その後の展開も含めてユニバース全体に大きな影響を与えることになりました。
 それから10年が経過した2016年に、以前紹介した『シークレット・ウォーズ』によって、マーベル・ユニバースの多元宇宙が消失。その結果、世界観が一新されて、新体制となる『オールニュー・オールディファレント・マーベル』がスタートします。
 『オールニュー・オールディファレント・マーベル』では、従来から存在したヒーローチームなどがメンバーを含めて再編成され、連載されていたさまざまなマーベル・コミックスのシリーズが全て刷新されました。
 次なるステップへと踏み出した、新しい動きが始まった中で展開された大型クロスオーバーこそが、本作『シビル・ウォーⅡ』になります。

未来がわかる予知能力をどう使うか?


 事件のきっかけは、因子を持つものをインヒューマンズへと変化させてしまう、「テリジェン・ミスト」でした。
『インフィニティ』事件の際、インヒューマンズの王ブラックボルトによって発動された「テリジェン・ボム」で発生したテリジェン・ミストは消え去ることなく、巨大な雲である「テリジェン・クラウド」となって大気中を漂い、インヒューマンの遺伝子を持つ人間を覚醒させていきました。普通の大学生ユリシーズもその一人で、「未来を体験できる」という予知能力を持つインヒューマンズとなってしまいます。
 その能力を活用すれば、未来に起こる悲劇や事件を未然に防ぐことができる。その事が、ヒーローコミュニティに大きな波紋をもたらすことになります。
 宇宙規模の事件から地球を守るために設立されたアルティメッツ、女性ヒーローだけで構成されたヒーローチームのA-フォースの中心メンバーであるキャプテン・マーベル(キャロル・ダンバース)は、ユリシーズの予知能力を有効活用し、事件の芽を事前に摘む事を主張します。
 一方、アイアンマン(トニー・スターク)は、そのキャプテン・マーベルの判断を危険視し、「未来はあくまで可能性であり、予知を軽々しく信じてはいけない」というスタンスをとり、両者は反目し始めるのでした。
 その後、ある事件によってキャプテン・マーベルとアイアンマンは共通の大事な友人を失った事から、関係性に大きな溝ができてしまいます。
 そしてユリシーズの「アベンジャーズの旧メンバーが大きな被害をもたらす」という予知を巡り、災害や事件を事前に防ごうとするキャプテン・マーベルとその考えに賛同するヒーロー達、そしてそれに反対するアイアンマン側のヒーロー達の間に決定的な亀裂が生じ、ついには激突。
 戦いが激化する中で、ユリシーズが世界の先に待ち受ける、さらなる悲惨な運命を見せたことから、状況はより悪化してしまいます。
 再び勃発してしまったヒーロー同士の内戦、「シビル・ウォー」は、どのような結末を迎えるのか?

ヒーロー新世代の内戦

 前作『シビル・ウォー』では、体制派のアイアンマンと反体制派のキャプテン・アメリカという図式を中心とした戦いが描かれましたが、時を経た続編では、キャプテン・マーベルが体制派、アイアンマンが反体制派という形で陣営を形成することになります。アイアンマンの考え方の変化も踏まえ、前作と読み比べることでより作品の深みが増していくと言えるでしょう。
 ヒーロー同士の内戦としては、前作のようなユニバース全体を二分して揺るがすような大規模な戦争状況にこそなりませんが、戦いには新たなヒーローやガーディアンズ・オブ・ギャラクシーが参戦。世界が大きく変化した状況で行われる、新旧世代を取り混ぜたヒーロー同士のバトルは、大きな見所となっています。
 また、物語の主軸となる「未来予測」は、今後のマーベルユニバースに起こる事件を垣間見る形でもあり、この『シビル・ウォーⅡ』自体が壮大なプロローグとして読み解くことができるようになっているのも注目ポイントです。

文・石井誠(ライター)

シビル・ウォーⅡ(2020.3.28発売)

 [ライター] ブライアン・マイケル・ベンディス
 [アーティスト] オリビエ・コワペル 他
 [訳者] 御代しおり
 [レーベル] MARVEL
 本体3,500円+税/B5/296P
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