検察側は懲役10年求刑 被害者の女性「1日でも長く刑に服してほしい」

6日の論告求刑公判で検察側は、無防備に眠る女性の背中を包丁の刃先が折れるほどの強い力で突き刺したことや、刺した位置がずれていれば亡くなっていた可能性が高かったと指摘。動機が一方的かつ身勝手で殺意を持った計画的な犯行として懲役10年を求刑。

一方、弁護側は、実際に被害者が負った傷に致命傷となるものはなく、傷つける目的しかなかったとして傷害罪にとどまると主張。さらに仮に殺人未遂罪が成立したとしても、途中で犯行をやめていることを考慮して、執行猶予付きの判決を求めました。

この日は、被害者の女性の意見陳述も行われました。

女性は事件後、部屋の外で物音がするだけで怖くて動けなくなったこと、睡眠薬や精神安定剤を手放せなくなったことを述べ、そのうえで、また襲われるのではないかと恐怖や不安でいっぱいだと話します。

「殺したい人が2人いる」という発言が、別の同僚を指したものと弁解する佐藤被告の供述には「まだ殺したい人が2人いるんだと思うと余計に怖いです」とし、途中で犯行をやめようと思ったとする供述には「そんな素振りは何一つなかったです」と話しました。

そして、法廷で涙を見せた佐藤被告に「泣きたいのは私のほう、辛かったと泣かれても同情できません。1日でも早く自分の行ったことを反省して、1日でも長く刑に服してほしいです」と胸の内を語りました。

迎えた判決 最大の争点「殺意」の認定は

15日の判決の日、傍聴席はこれまでよりも多くの人で埋まっていました。
佐藤被告が姿を見せたのは、開廷の数分前。

記者席を除きほぼ全ての席が埋まった判決当日

開廷するとすぐ、金沢地裁の野村充裁判長は佐藤被告に判決を言い渡しました。

野村充裁判長「主文。被告を懲役8年に処する」

金沢地裁は、最大の争点だった殺意を認定し、殺人未遂罪を適用、同種の事件の中では重い部類として、懲役8年を言い渡しました。

金沢地裁 野村充裁判長

野村裁判長は佐藤被告の供述について「基本的に記憶がないと述べるなど曖昧で、刺した当時の状況の説明に信用できない点が含まれている」とし、自分に有利となる部分は明確に供述する不自然さがある一方で、被害者の自宅に行った目的などの説明が不合理だったことから、信用できないと説明。

一方で、裁判初日に証言台に立った被害者の女性の証言は、捜査当時から一貫していて、医師などの専門家の説明と整合性が取れていたことから、信用に足ると判断しました。

女性は、佐藤被告が「殺したいから」などと死を望む発言をしていたことや、救命行為を取らず、傷の心配をする言動も一切なかったことを証言していて、これらも殺意の推認につながりました。

「殺したい人が2人いる」被害者らを指すと推認

また、「殺したい人が2人いる」という発言は、佐藤被告の車の中から見つかった被害者らの顔が黒く塗りつぶされ、「死」などと書き込まれた写真を理由に、被害者らのことを指していたと推認しました。

犯行を中断したかどうか 「中止犯」の成立は

一方、もう一つの争点が中止犯の成立です。野村裁判長は、法律の目的に照らし、被害者に対して、亡くならないよう積極的な救命行為をすることが中止犯の成立には必要と説明。そのうえで、佐藤被告は、そういった行為を行っていなかったとして、成立しないと判断しました。

また、同種の事件の中で重い部類としたのは、佐藤被告の犯行が、かぎを用意するなど計画的に準備されたもので、その内容が相当危険で悪質だったためと指摘。

何ら落ち度のない被害者をうらやましさや嫉妬の気持ちの延長で、殺害しようとした意思決定は誠に身勝手で、犯行に至った経緯、動機に酌むべき点は全くないと強く非難しました。

佐藤被告は判決を言い渡される間も、体を動かすことはありませんでした。