pixivは2022年7月28日付けでプライバシーポリシーを改定しました詳しいお知らせを見る
※捏造過多
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ーーー「……だ………二……」ーーーー
ーーーー「……を…………め……」ーーー
暗い部屋、ヴォルデモートと思われる男の…自分が聞いたよりも少し高い声が響き、誰かにうっとりするように話しかけている声
だが、話しかけているであろう相手の声は聞こえてこない…
ハリーは夢の中でうなされていた
耳を塞ぎたくなるような女性の悲鳴と、嗚咽を洩らす声が響く…
そして、最後にいつも聞こえる
女性の悲しそうな声…
「……ごめ…なさ…ぃ………………」
と…
そして、何かを…肌を抉るような刺音が聞こえて、ハリーは目を覚ました
「はっ…はぁっ…はぁっ…」
まただ…
妙な黒い扉と水晶のような物がある所の悪夢を見た後、必ずこの夢をみるっ…
あの女の人の…声…
どこかで聞いたことがある
この世で、あれ程悲しげな声を聞いたことがあるか…と思うほどの消えてしまいそうな擦り声…
その一言で…どれだけの想いが複雑に絡み合っているのかがわかるほどの…
気付けば一筋涙が流れていた
あの人は…
誰だったんだろう…
ホグワーツに戻っきてから、毎晩この夢を見る
夏頃からずっと痛む傷痕もそうだし、不快で、苦痛のような悪夢の後でくる…酷く悲しい気分になるあの夢…
目覚めたら汗がぐっしょりで、気持ち悪い
ハリーは悩んだ末、ダンブルドアに対して苦い感情があったのもあり、ロンとハーマイオニーに夢で見たことを言った
今年に入って不当なことばかりで、ハリーの心は擦り減っていた
怒りや苦しみ、葛藤が胸の中に渦巻く
どうしようもない、歯痒い気持ちが…
「女の人の声…」
「それさ、本当に『例のあの人』…なのか?ちょっと違ったんだろ?」
「…あぁ…だけど、あれはあいつだ。証拠はないけど間違いないよ…だけど」
「その女の人がわからないのよね…『例のあの人』に関係のある人なのは確かだと思うけど…」
自分の話を信じている前提で、続けるハーマイオニーはハリーは少し驚いた
「信じてくれるの?」
「当たり前よ。そりゃ、変な話だけどあなたが夢で見たら信じるわ」
「そっか…ありがと」
ハリーは少し胸が暖かくなった
「その夢に出てくる女の人って何か話してたのか?」
ロンが何か手掛かりがあるかもと思い聞く
「いや…悲鳴だった………聞いてられないくらいの…」
思い出したハリーは胸を軽く抑えて暗い顔で言う
「ハリー…このこと、ダンブルドアに言った方がいいわ」
ハーマイオニーのひと言で、ハリーはまた苛立った
「去年も、誰も触ってないのに傷痕が痛むことがあったわね。ダンブルドアがこう言わなかった?『例のあの人』が感じていることに関係している。もしかしたら夢に出てくるその女の人のことも、知っているかもしれないわ。『例のあの人』と長年対峙してきた人よ」
「そうだぜハリー。ダンブルドアに言ったほうがいい」
二人して、ダンブルドアに報告しておいた方がいいと、視線で、声で、訴えてくる
ハリーは奥歯を噛み締めた
アンブリッジの罰則のことも、二人は言ったほうがいいと度々言ってきた
だが、ハリーにはどうしても言う気がなかった
自分には何もできない、と言われている気がして
何も任せてもらえず、何も教えてもらえない…そんな無力感と憤りがあった
ムキになっていると言われてもいい、だが、自分にも何かできると証明したいのだ
「『闇の帝王』がお前を狙っているのは承知しておられるな?」
「ええ。あの時からわかっていたことです…」
「自らポッターの囮になると?ポッターが手に落ちるよりお前が落ちる方が我々にとってはどれ程の痛手となるとわかっておられないようですな」
「私に彼の『服従』は’’もう’’効きません…’’耐性’’という言葉をセブルスならばよくご存知かと……もっとも…『磔』に関してはその限りではありませんが…それに『服従』に関して気づいたのは、クラウチJrが授業で私にそれを使った時でした。私は…彼にしかかけられたことがなかったので…まさか自分に耐性がついているとは、あの時まで思いもよりませんでした…」
「…っ…いつからだ」
セブルスの表情が、苦々しい、毒薬でも煽ったように歪む
「知らない方がいい………」
静かに、お茶を口に含みながらつぶやいた友人の目が暗く、深い闇と憂いに満ちているのを見て、セブルスは更に顔を顰めた
「私よりハリーです。早いこと『閉心術』の訓練をしなければ……校長は今の時点でなんと?」
「…待つしかないと言っておられる。お前と違い、ポッターは未熟もいい所だ。己の気の緩みと慢心で人が傷つく様を見なければ到底、我輩の訓練には耐えられまい」
「…それについては否定しません…今回、ハリーは彼と対峙していません。もし、そのままの、私の見た未来に変わりがなければ、あのピンク…ん゛ん゛。もとい、新人の先生に対抗して軍団を結成するでしょう。そして自ら’’あれ’’を守りに行く……危険です…とても…今回は手加減なしでもよろしいかと。どうか、最後までしてあげてください」
私と比べるのはやめてあげなさいよ
私も本当ならこんなことに慣れたくなかった…
それに私の場合、精神が成熟していた…だから耐えられたのかもしれない…
それでも…死にたくなるほどの苦痛だった…
でも、ハリーはまだたった15歳だ…普通の…本当なら若く、楽しい日々を過ごすはずの男の子だ…
「心の内を隠すのはお得意かと思われましたが…はて?我輩の思い違いでしょうかな?」
「そこは突っ込まないでよ。流してくださいな」
何故そこだけ拾う…
というより、セブルスもあのピンクばばあに授業中邪魔されてロンに八つ当たりしてたじゃん?
「ふん。気を緩めるのもいいが、お前に関してはそれはポッター以上に危険なことだとお忘れなきよう」
セブルスがこんなことを言いながら心配しているのはよくわかる…
恐らく、私がハリーの前に立つのを納得していないだろう…
友人想いなのだ…彼は…
「ご忠告を痛み入ります」
それに関しては…対策はある…にはある…
そうなるような状況をできるだけ回避したい…
どうか…
「それに、言われずとも校長に頼まれておりますからな、元から手加減など不要。あの傲慢な根性を叩き直せるとは実に愉快」
鼻で笑ったように言うセブルスに、苦笑いにしそうになる
悪意もここまでくると恨みに近いかもしれない…
まぁ…わからなくもないが…セブルスが恨まれ役に周るのは…本当に不憫だ…
アンブリッジの専横が最近目立ってきている…
あの女の子のような耳障り過ぎる気持ち悪い声で、各授業に顔を出して、先生方の調査をしている
マクゴナガル先生に関しては、流石に歩き回ることはしなかったが…
マクゴナガル先生強い…怒らせると怖い人だもの…
同じ女性の圧力というのもあるのだろう
「セブルスの方は…その、随分とストレスを溜めておられるようで…」
イライラしてるのが物凄くわかる…
たぶん私の他ならリリーくらいしか分からない程度に
あのショッキングピンクが余程目障りなんだろう
物凄くわかるよ…
未来と少し違うのは、スリザリンの監督生であるドラコとパンジーがあのおばさんに表向き従っているが、最低限しか従わないのが予定狂いなのだろう
実質、スリザリンを率いてるのは、寮の中でもリーダー格であるドラコだ。まぁうちの学年とその下に限られるが…
スリザリンは今や、ドラコを中心に回っていると言ってもおかしくない
徐々に…徐々にだが…
だが、確かに効果はある
ハリー達はドラコが大人しいことに数年前から疑いと違和感しかないようだが…
今、ドラコの頭にあるのはそんなことではない
だから、今回、ハリー達が組織する軍団を発見して、密告するのは上級生か、クラッブかゴイル辺りだろう
まぁ、密告することでハリーは神秘部に行くのだから、予定調和とも言える…
だけど、ひとつ違うのは、今回、アズカバンでの大量脱獄事件に関して、魔法省はシリウスではなく、ワームテールのせいにした
恐らく、正式に冤罪が大々的に周知されたブラック家の当主であるシリウスに擦りつけるには無理があったんだろう
いくら魔法省大臣でもブラック家に関しては容易に罪を着せることはできない
たぶん、ルシウスが少し働きかけたのもあるだろう…
危ないな…
それに、シリウスが正式に当主になって表にいることで…悪いが、何をするかわからない…
シリウスは危険を好む…
下手なことをされても…
恐らく、私とセブルスの目下の心配はあの一種のスリル中毒の馬鹿犬のことだ…
だけど、ハリーが心配でたまらない…
もし、ダンブルドアが現れなかったら?
ハリーが殺されたら…
私の知らない未来になってしまったら…
怖い…どうしようもなく不安が襲ってくる…
ダンブルドアは私を完全に信用していることはないだろうが…
でも…でも…もし…違うことになれば…
それに極秘でムーディに探してもらっている分霊箱は未だに見当たらない…
もしかしたら…本当に…彼の言ったように…二つしかないとしたから?
じゃああと一つは?…
ダメだ…私がちゃんとしなければ…
今、校長は確かに忙しいが、私が事前に予告したためそれほど余裕がないわけではない…
寧ろ、余裕で対処していっているだろう…
あの女はスリザリンの生徒だった…
自分は正当に評価されないと思い込んだ酷い劣等感を抱えた持ち主
思想的にイカれてる女だ…校長にも恨みがある
当時からも不気味だった…
スラグホーン先生が「バカ」だと思っていたのは容易にわかるほど…
あの人もあの人で善人で…贔屓が過ぎた…
「ちっ」
あ、舌打ちした…
珍しい…
「今すぐ追い出してやりたいのがね」
セブルスさん
仮にも二重スパイをしている人なんだから、あまり本音を言うのは…
「それは満場一致の意見でしょうが、今は堪えないと…」
「ちっ」
また舌打ちした…
これはだいぶだな…
少し、いやだいぶストレスが溜まっているので、私は立ち上がってセブルスの空いた茶器に花茶を入れて、お湯を注いだ
閉じていた蕾が花開き、透明なお湯にゆっくりと色をつけていく
「大切な友人とこうして、お茶をするのも難しくなるね…きっと、大丈夫よセブルス。彼は滅びる」
机に置かれたセブルスの手を包み、目が合う
苦々しい、忌々しげなセブルスの眉間に皺が寄った
「……………」
彼と終わるのは…もう…私だけで十分…
責任は…私にある…
その日、深夜のグリフィンドールの談話室では、ハリーからの暗号の手紙を貰い、炎の中から現れたシリウスと、ロンとハーマイオニーは話を聞いていた
「邪魔が入らないうちに、急いだ方がいい。君の傷痕だが、痛むのはいい気持ちじゃないのはわかる。しかし、それほど深刻になる必要はないと思う。去年はずっと痛みが続いていたのだろう?」
「うん。ダンブルドアはヴォルデモートが強い感情を持ったときに必ず痛むと言っていた…だから、分からないけど、たぶん、僕が罰則を受けていたあの夜、あいつが本当に怒っていたとかじゃないかな」
「そうだな。あいつが戻ってきたからには、もっと頻繁に痛むことになるだろう」
「それじゃ、罰則を受けていた時、アンブリッジが僕に触れていたこととは関係がないと思う?」
「ないと思うね」
「アンブリッジのことは噂でしか知らないが、『死喰い人』でないことは確かだ」
「『死喰い人』並にひどいやつだ」
暗い顔でハリーが言った
「そうだ。しかし、世界は善人と『死喰い人』の二つにわかれるわけじゃない。あの女は確かに嫌なやつだーーーールーピンがあの女のことを何と言っているか聞かせたいよ」
「ルーピンはあいつを知ってるの?」
「いや、しかし、二年前に『反人狼法』を起草したのはあの女だ。それでルーピンは就職がほぼ不可能になった」
「狼人間にどうして反感をもつの?」
ハーマイオニーが怒りながら聞いた
「きっと怖いのさ。どうやらあの女は半人間を毛嫌いしている。去年は水中人を一網打尽にして標識をつけようというキャンペーンをやった。水中人をしつこく追い回すなんてのは時間とエネルギーの無駄だよ。クリーチャーみたいな碌でなしが平気でうろうろしているというのに」
このことに、ロンは笑ったが、ハーマイオニーは気を悪くした
「シリウス!まじめな話、あなたがもう少しクリーチャーのことで努力すれば、きっとクリーチャーは応えるわ。だって、あなたはクリーチャーが仕える家の当主なんですもの。それにダンブルドア校長もおっしゃったけどーーー「クリーチャーがブラック家の人間と認めているのは妹と弟だけだ。それで、アンブリッジの授業はどんな具合だ?」」
ハーマイオニーのクリーチャーを弁護する話の腰を折り、切って捨てて、尋ねたシリウス
「あいつは僕達にいっさい魔法を使わせないんだ!」
「つまんない教科書を読んでるだけさ」
ハリーとロンもハーマイオニーを無視して、シリウスに即答した
「ああ、それで辻褄が合う。魔法省内部からの情報によれば、ファッジは君たちに闘う訓練をさせたくないらしい」
「’’闘う訓練?’’…ファッジは僕たちがここで何をしてると思ってるんだ?魔法使い軍団か何が組織してるとでも思っているのか?」
「まさに、その通り。だと思っている。むしろダンブルドアがそうしていると思っている、と言うべきだろうーーダンブルドアが私設軍団を組織して、魔法省と抗争するつもりだとね」
「こんなバカげた話、聞いたことがない。ルーナ・ラブグッドのホラ話を全部ひっくるめてもだぜ」
「それじゃ、私たちが『闇の魔術に対する防衛術』を学べないようにしているのは、私たちが魔法省に呪いをかけるということをファッジが恐れているからなの?」
ハーマイオニーは憤慨して言った
「そう。ファッジは、ダンブルドアが権力を握るためにあらゆる手段を取るだろうと思い込んでいる。ダンブルドアに対して日に日に被害妄想になっている。でっち上げの罪でダンブルドアが逮捕されるのも時間の問題だ」
そこで、ハリーはふと、パーシーの手紙を思い出した
今は、魔法大臣付下級補佐官に昇進した権力思考のパーシー
家族と決別しているウィズリー家の三男
今や魔法省側の人間である
「明日の『日刊預言者新聞』にダンブルドアのことが出るかどうか知ってる?ロンの兄さんのパーシーが何かあるだろうってーー」
「知らないね。この週末は騎士団メンバーを一人も見ていない。みんな忙しい。この家にいるのは、クリーチャーと私だけだ」
シリウスの声には、はっきりとやるせない辛さが混じっていた
「それじゃ、ハグリッドのことも何も聞いてない?」
「あぁ、そうだな。ハグリッドはもう戻ってるはずだったんだが、何が起こったのか誰も知らない」
ショックを受けたような三人の顔を見て、シリウスは急いで言葉を続けた
「しかし、ダンブルドアは心配していない。だから三人とも、そんなに心配するな。ハグリッドは絶対大丈夫だ…」
「だけど…もう戻っているはずなら……」
ハーマイオニーが不安そうな小さな声で言った
「マダム・マクシームが一緒だった。我々はマダムと連絡を取り合っているが、帰路の途中ではぐれたと言っていた。ーーーしかし、ハグリッドが怪我をしていると思わせるようなことは何もないーーと言うか、完全に大丈夫だということを否定するようなものは何もない」
なんだか納得できないまま、三人は心配そうに目を交わした
「いいか、ハグリッドのことをあまりいろいろ詮索して回るんじゃないよ。そんなことをすれば、ハグリッドがまだ戻っていないことによけいに関心を集めてしまう。ダンブルドアはそれを望んではいない。ハグリッドはタフだ。大丈夫だよ」
それでも、三人の気が晴れないようだったので、シリウスが言葉を続けた
「ところで次のホグズミード行きはどの週末かな?実は考えてるんだが、犬の姿で会いに行こうと思う」
シリウスの言葉に三人が同時に声を上げた
「ほんと!?」
「ダメ!」
「きてくれるの!?」
ハリーとロンは嬉しそうに歓迎し、ハーマイオニーだけが否定した
「ああ、君に会いたいしな」
「嬉しいよっ…」
それから、微妙な顔をするハーマイオニーを無視して、ハリーとロンは次にホグズミードに行く日を教えて、シリウスが来るのを喜んだ
「『魔法省、教育改革に乗り出す、ドローレス・アンブリッジ、初代高等尋問官に任命』…ねぇ…レギュ兄が心配よ」
「そうだね。魔法省がどれだけ愚かなのか目に見えるよ。だが、あの女は僕が元死喰い人であることを知らなかった」
これは嬉しい誤算だ
私は、ショッキングピンク女に気をつけながら、今、レギュラスの隠された教授室にいる
いつもの教授室ではない
恐らくホグワーツでこの部屋を知っているのは、ダンブルドアかセブルスくらいだろう
「魔法省上級次官だったなら、記録を漁れるから知っていると思ったんだけど、よかったわ…」
正直、今年のあいつの専横によって、レギュ兄は生徒達からの癒しとして人望を集めている
もとから人望はあるから、その分アンブリッジは気に食わなかったようだが、課題は普通に「ふくろう試験」に向けて鬼畜なので、それが幸いしたようだ
それに腐ってもブラック家の人間だ
「…僕もその心配をしたんだけどね、ダンブルドアのおかげさ」
さすがだ
だが、ファッジが知っていれば…
いや、今のファッジなら、死喰い人逮捕に多大な貢献をしたレギュラスでも、ダンブルドアに大恩があるから、軍団の一因だと妄想を膨らませるだろう
「まぁそれも時間の問題かもしれない。ファッジは今、頭がおかしいから。だが、僕が心配なのは、オフィーを一人にすることだよ」
本当にどこまでもブレない…
私の心配ばかりしてくれる…
「私のことは大丈夫よ兄様。セブルスがいるもの…それに、いくらファッジが告げ口したとしても、魔法省はブラック家には、それなりの理由がなければ手を出せないわ。シリウスの冤罪の件もあるから。魔法省としては、ブラック家に関することには慎重になるわ」
これで、またレギュラスが不当に解雇などさせられれば今度こそ魔法省は立場がなくなる
ファッジもそこはアンブリッジに言っているだろう
まぁ、だからこそ余計にあの女が歯噛みするだろうが…
「ずっと思っていたが、どうしてそんなにスネイプを信頼しているんだい?」
むすっとした顔でレギュラスが不機嫌そうに言うので、苦笑いが出そうになった
「大切な友人だからよ」
「…そうか……まぁ兄さん程ではないが、僕はダンブルドアが彼を信頼しているなら何も言わないさ」
だからレギュラス兄様はシリウスとは反りが合わないんだろうね
まぁ私もだけど…
「それがシリウスにも分かればいいんだけれどね…私が心配なのはシリウスがハリーを心配し過ぎてこっそり学校にでも来てしまうことよ」
本当にそれだけが心配でしかない…
この時期にそんなことをされて、バレでもすれば…いくらブラック家当主でも大変なことになる
そう言うと、レギュラスはあからさまに額に手を置いて、長い溜息をついた
「はぁぁ…残念だが、兄さんに関しては、大いに’’やりかねない’’としか言えないよ……」
レギュラスの疲れた顔を見る限り、恐らく休み期間の間に何度か喧嘩をしたんだろう…
全く、どちらが兄なのかわからない…
「闘いにおいては大いに頼もしいのだけれど…シリウスは少々どころか、かなり危険を楽しむ気質があるから…それが今まで、なんだかんだでうまくいっているだけに、不安しかないわ…」
「まさにその通りだよ…頼むから滅多なことをしないように祈るしかない……」
それに、今回はルシウスは『日刊預言者新聞』について、何も言及していないし、語っていない
怪しまれない程度にしかファッジに関与していないだろう
「メンバーが次々と行方不明になっている。…それに加えて、高等尋問官職を導入したことに抗議した、ウィゼンガモットの古参のグリゼルダ・マーチバンクスとベリウス・オグデンは辞任している…ファッジの妄想に益々拍車がかかっているな…」
「そもそもダンブルドア先生が、大臣職を辞退して、バーテミウス・クラウチが出世を経たれなければ、ファッジは大臣にはなれなかったもの。クラウチが死んだ今、ファッジが唯一の恐れるのはダンブルドア先生だけになる」
「恐怖は人をおかしくさせるね…実際、ダンブルドアが一線を画して偉大なのも、人望があるのも事実だ。自分より上だと認めているからこそファッジは恐ろしいんだろうね」
「内側の不和こそ、暗黒時代を齎した一因だと学んでいないわ…」
彼の得意としたことだ…
誰よりもわかる…
唯一騙されなかったダンブルドアだからこそ、容易に踊らされないが、それが周りから見ればそうは見えない…
「魔法省のメンバーは総入れ替えされるべきだね…『例のあの人』にとって、今や魔法省は都合のいい存在でしかないだろうね…」
力を蓄えるために利用されている…
その通りだ…
「イエスマンばかりを側に侍らせることこそ一番危険だというのに…」
「オフィー…あの時と同じだ…嫌な予感がするんだ…また君を失いそうで…」
…
今年に入って、レギュラスはずっと私の心配をする
彼の中で、私の死がトラウマになってしまっているのはもうわかった
私は胸が苦しかった
こんなことなら、私がオフューカスだとバレないほうが良かったと心底後悔した…
私は…またレギュラスに心に傷を負わせてしまう…
「ダンブルドアを信じているからこそ、君が騎士団に入ったことも、ダンブルドアの命で動いていることには何も言わない。だけど…もし君に何かあれば……僕は…何をするかわからない…」
「レギュラス兄様。それこそ『例のあの人』の思う壺よ。『例のあの人』が唯一恐れているダンブルドアを信じないのは愚かなことだわ。一刻の感情で優先順位を間違えれば、多くの人が犠牲になる。それこそ、再び悲劇のはじまりよ。兄様ならわかってるはずよ」
「っ…」
レギュラス兄様が誰よりもわかっているだろう…
私は兄様を裏切るが…信じている…
きっと、私に何かあってもダンブルドアを信じてくれるはずだ
それから、不安と葛藤に揺れる兄様が落ち着くまで側にいて、私はそっと寮に戻った
恐らく、今日の『日刊預言者新聞』の記事で、ダンブルドアを失墜させようとする動きに気づいたハーマイオニーあたりが、ハリー達と行動を起こすだろう
予想もつかない出来事とはこのこと…
私が全科目で成績四年連続トップなのを、今ほど後悔したことはない
よく考えれば、「ふくろう」試験を余裕で越えられるスリザリン生というのはアンブリッジにとって、これ程使える駒はないだろう
授業でのアンブリッジの査察が裏目にでた
「あなたはホグワーツに入学してから、四年連続で試験でトップだそうですね?」
「はい」
このピンクだらけの部屋に一秒もいたくない
ついでに香水臭いこのババアの顔を見たくない
「とても優秀なのね。目立った問題行動もなく、スリザリンでは一目を置かれている生徒だとか」
「恐縮ですが、誇張されているだけだと思います。私は学生の本分を全うしているだけに過ぎません」
「まぁ、まぁまぁ、優秀なだけでなく、謙虚なのね。将来は魔法省に就職することを視野に?」
うざい…
「将来については十分に熟慮して決めたい思っておりますので、現在の段階で決めるのは早計かと思っています」
「思慮深いのね。とても良いことですわ」
うるさいわ
「聞けば、あなたのお父様は魔法省が求めるほどの優秀な人材だそうですね。ルーディン・ポンティ殿。彼はあなたのお父様ですね?」
一瞬だが、ドキッとした
父のことだから大丈夫だと思うが、やはり心配だ
「はい。ルーディン・ポンティは私の父です」
「では、あなたも将来はお父様のように通訳として仕事に甘んじるのですか?これほど優秀ですもの。魔法省ではそれ相応の活躍ができるわ。わたくしがコーネリウスに口添えしても良いのですよ。もちろん、わたくしの期待を裏切らなければ、の話ですが」
誰が甘んじてるだ
黙れこのショッキングピンクババア
「父には父の人生がありますので、私が必ずしもその道を辿るとは限りません。ですが、自分の能力が一番発揮できるところで働ければ、と思っております」
濁しとくしかないだろう
それに、一時的にでも我慢すれば、ハリー達を手助けできる
「矢張りあなたはとても見込みがありそうですわ。ふふっ。評価されるべき者は評価されなければなりませんもの。ええ。そうですわ。ダンブルドアはあなたがこんなにも優秀なのに、それなりの地位を与えなかったのが不思議ですわ。矢張りこの学校には憂うべき問題が多くあるようですね」
マジでやめてほしい
本当に余計なお節介だ…
それから、言わずもがな…私はアンブリッジにお気に入り認定にされた
自分を肯定する人間なら誰でもお気に入りなんだろうよ
セブルスには、うまく使え、と言わんばかりの顔をされ、レギュラスには心底心配された
ただ、私はアンブリッジが呼び出さなければ何もしない
ドラコとパンジーとセオには、同情しかされなかった
二人とも監督生になったことに対して、「ふくろう」試験があるこんな年に!と、余計な仕事が増えたとばかりの様子なのだ
まぁ、これはこれでいいのかもしれない
これをうまく使うしかない
そして、ハリーたちが動き出した時に、何かすればいい
だが、私はムカついてるし、ストレスが大いに溜まっているので、双子に’’いろいろ’’と横流しをし、アドバイスをしている
呉々も「使い所を考えて使ってほしい」と釘を刺したが
物凄く驚かれたが、ノリノリだった
双子は本能的に人を見るからとても物分かりがいい
私にとっては、ハッキリ言えばシリウスよりもある意味信頼できる
「よっ、貧血ポンちゃん」
アンブリッジには絶対バレない場所で、こっそり話しかけてきた双子に、私は振り向いた
「こんにちは先輩方」
「ポンちゃんにもらった’’あれ’’。とんでもないもんに変身したぜ。使うのが楽しみだぜ」
「ええ、私も楽しみよ。思う存分、あの化粧塗りたくった妖怪の顔面にでも突きつけてやればいいわ」
「「ぶふっ!」」
いかん、いかん、最近ストレスが溜まり過ぎている
あのババアのせいで
「お前がほんとはこんなんだって知ったらグリフィンドールのやつらはびっくりするだろうな」
「そうだぜ、ポンちゃんが俺らの味方って信じてるやつ「おい、フレッド」ごめんごめん…その、悪い意味じゃねぇから。俺らはそんなこと言ってないからな」
そうだろうね
あのババアのおかげで私の印象はグリフィンドールから見れば地の底まで落ちているだろう
特にハリー達は…
大丈夫
慣れている…
「いいんですよ、別に」
別にいい…
私はハリーにとって敵も同然だ…
恨まれていたほうがいい…
いろいろ考えていたら、突然肩に温かい衝撃が来た
双子が私を挟んで肩を組んできた
「俺らはポンちゃんがいい奴って知ってるからな」
「フレッドの言う通りだ。じゃなきゃあんなもん、俺らにくれるわけないしな」
ニコッと笑いかけてきた双子に私は自然と眉が下がった
「ありがとう…」
「お、ポンちゃんがデレた」
「ひゅ〜こりゃレアだな〜」
前言撤回しようかな
「……トム…」
彼は最近出てきてない…
現れない…
わかってる…それが彼の狙いだって…
なのに…
なのにどうして…
私は…結局…あなたの力を借りようとする…
昔からそうだった…あなたの力がなければ…何もできなかった…
あなたが横から手を出してきたから…いつも…先回りして…私の
あの時だって…彼のアドバイスがなければ…私はなにもできなかった…きっと…帰ってくることができなかった…
私一人では…何一つできていない…
守れていない…
思考を読んで…見透かして…
いやだ…だめだこんなの…
「…あなたは……どうしたいのよ……」
トム…
ーーー「お前が僕に’’愛’’を教えた…誰かを愛することを」ーーー
違うっ
あなたはそんな人じゃないっ…
ーーー「ナギニ…」ーーー
やめてっ
そんな声で呼ばないでっ
ーーー「ナギニ。’’僕’’に助けを求めろ。不信感も猜疑心も全て捨てろ」ーー
捨てられるわけがないっ
何を言ってるのっ…
あなたの手は取った…屈辱を飲んで…膝をつき、頭を下げた…
だけどっ…
ーーー「お前のためなら’’僕’’はどんなことでもしてやる」ーーー
違うっ…
あなたは間違っているっ
ーーー「待っているよナギニ」ーーーー
………
私は…
あなたの…’’物’’じゃなかったの……
「…トム…」
みんながホグズミードに行って…誰もいない部屋で一人…
つぶやいた言葉に返事がないことが…
こんなにも苦しくなったことなんて…
今までなかった…
あなたの名前が…もう少し…ほんの少しでも…簡単に呼べたなら…
こんな…気持ちにならなかったのかな…
「最悪だよ。あのガマガエルにあいつがつくなんてっ」
ロンが恨みがましく怒りを露わにして呟いた
理由は言わずもがな、最近、ホグワーツ高等尋問官になったドローレス・アンブリッジのお気に入りのポンティだ
グリフィンドールが問題を起こしたり、減点されるようなことがあると、ことごくスリザリンの比べて彼女を引き合いに出すからだ
ロンの発言に、ハーマイオニーもハリーも何も言えずに静かに怒りを滲ませる
「…あいつやっぱり裏切り者なんだよ。ダンブルドアは騙されてる」
彼女が騎士団のメンバーだということを、未だに信じられないし、ダンブルドアが彼女を重宝するのも意味がわからない彼らは否定もしない
シリウスが来るというので、ホグズミードにある寂れた店に向かいながら、三人は重い空気に包まれた
「フレッドとジョージもおかしいよ。あんな奴がいい奴だなんてさ!」
ロンが憤慨しながら、グリフィンドールで彼女のことが話題に上がった時に、擁護した双子に腹を立てる
「そうだね…ダンブルドアが彼女を信頼してる理由がわからないよ…」
ハリーも今まで敢えて言わなかったことを言った
「ダンブルドアには何か考えがあるのよ…でもそうね。私もこの頃疑わずにはいられないわ…」
ハーマイオニーも、この頃の彼女の行動が全く理解できず、思わず呟く
それから三人は、ボロ店で、犬の姿で潜んでいたシリウスと再開した
ハリーは嬉しくて抱擁を交わし、最近の学校の様子を話した
「ハリー、君は防衛術を実践で学ばないのはまずい。今は特にな」
彼女のことを話してもシリウスは眉を寄せて不機嫌そうにしただけで流した
ハリーはそのことに少し違和感があったが、見なかったことにした
「でも、先生が魔法を使わせてくれないんだ…」
ハリーがそう言い、二人も肯定するように視線でシリウスを見る
「いるじゃないか」
「!そうよハリー。アンブリッジが魔法を教えないなら、私たちで先生を見つければいいのよ。闇の魔術と実際対峙したのはあなただけよ」
シリウスの言葉にハッと気づいたハーマイオニーが、それだ!と言わんばかりにハリーに言う
「私が教えてやりたいところだが、残念だがそれはできない。レギュラスも当てにならんだろう。一応教員だ。君はヴォルデモートと闘ったんだろう?」
ハリーは迷った
ダンブルドアに口止めされたが、今はダンブルドアが校長を辞めさせられるかもしれない緊急事態だ
自分たちでどうにかしなければならない
その気持ちが強かった
だから、ハリーはシリウスに打ち明けることにした
「違うんだ…僕はあいつの復活を見ただけなんだ…」
重い口を開けて、呟いたハリーに三人は「意味がわからない」と言いたげな顔をした
「あの日…あの時…ヴォルデモートと闘って…僕とセドリックに逃げるように言ったのは…」
「ユラなんだ」
その言葉に三人とも固まった
ハリーはあの日、墓場であったことをついに打ち明けた
ヴォルデモートと面識があったかのような会話をした彼女
鮮明に覚えている彼女とヴォルデモートとの会話
絶句した三人
最初に声を上げたのはシリウスだった
「くそッ!あいつはっ…あいつは最初からっ!奴の手下か!」
壁をダン!と怒りのまま殴り、憤慨するシリウスに三人は固唾を呑んだ
「…嘘だろ…」
青い顔で焦ったようにロンが言った
ハリーはこの際だからと、秘密の部屋の時、あのロックハートが開いた決闘大会で聞いた、声のことも言った
それを言うと、ますます彼女への動かぬ証拠となった
彼女がヴォルデモートの手下だという
思い返せばおかしいことばかりだ
シリウスの冤罪を証明したのも、ルシウスと懇意にしているのも
「待って。ダンブルドアがそれに気づいていないとは…「いや、ダンブルドアでも間違うことはある」」
ハーマイオニーの言葉にシリウスが被せるように言う
「だから私は散々警告したんだ!トーナメントの時からおかしかった!そうとなれば全て辻褄が合うっ!ヴォルデモートと対峙しておきながら生きて帰れるなんてあり得ないっ…」
見たことがないくらいシリウスが起こりながら言うので、三人は震えた
「あいつはっ…あいつは最初からっ…」
ペティグリューに裏切られた時よりも、激しいショックと怒りを隠させない様子のシリウスに三人は納得するしかなかった
彼女は
ヴォルデモートの手下だ
「クラウチJrの正体を見破ったのもそうだ!ハリーが墓場に送られることを始めから知っていたんだ!でなければ都合よく現れるわけがない!自作自演だ!」
かつてないほど重い沈黙が支配する
ハリーも例外ではなかった
もし、もし、彼女がオフューカスであった頃から…ヴォルデモートの手下だったならば…
両親が死んだのは…
そこまで思い至り、ハリーは今すぐ彼女を殺してやりたくなった
ヴォルデモートに対する憎しみと同じだ
自分を両親を殺したも同然の彼女は、今まで、のうのうと自分達に接して、挙句に、自分は彼女を信じかけていた
悩みも打ち明けていたのに
ひどい裏切りにあったような気分だった
裏切りなんて生優しい
もっと酷い
「ハリー、やらなきゃいけないわ」
ハーマイオニーのその言葉に、ハリーは火がついた
「ハリー。あいつのことは私に任せろ。ダンブルドアに至急警告する。騎士団にも周知させる。まずいことになった。他のメンバーが危ないっ」
ハリーに向ける優しげな灰色の目が燃えるようにギラギラとして復讐に燃えている様子を見ながら、ハリーは心を決めた
「うん。やるよっ……」
ハリーは拳が真っ白になるほど握りしめて、憎しみを飲み込んだ
ダンブルドア軍団の結成だ
「Msポンティ、今し方、シリウスから連絡があり、お主のことを警告してきた…」
アンブリッジの目をくぐり,許可がなければ入れない校長室で、彼女はダンブルドアから、シリウスの警告の話を聞いた
「どうやら、ハリーはシリウスに言ったようじゃ…すまぬ」
「…構いません…むしろ先生の立場を悪くしてしまい…それに、私が’’裏切り者’’なのは…事実ですから…」
薄いブルーの目が悔いるように、申し訳にそうに彼女を見る
途切れ途切れで、目に悲哀を称えて俯き言う彼女
自分に言い聞かせるように噛み締める様子に、ダンブルドアは彼女の手を優しく取って包み込んだ
皺だらけの手で、包み込んだ手からは温かな熱が伝わる
「っ…」
「お前さんには想像を絶する負担を強いておる……わしは…壊れてしまわんか心配でならん…」
「…私は…彼と同じだけの業を背負っています…赦さないでください…彼に…彼をああしてしまったのは…私です…罪もない人の多くの命をっ…」
「お前さんのせいではない。わしが、わしが悪いのじゃ。もっと早くにお前さんの苦しみに気づくべきじゃった…お前さんは逆らえんかった…責められることは何もない…」
「先生っ…これを…ハリーに、時がくれば渡してください」
彼女はある’’もの’’をダンブルドアに渡した
なかなか受け取らないダンブルドアの手にそれを置き、そのまま手で包ませた彼女の表情を見た時、ダンブルドアは無言で彼女を抱きしめた
親が子を労るように
「………わしは、また間違いを犯したのじゃな…」
ただひと言、つぶやいたダンブルドアに、彼女はダンブルドアの服を弱々しく掴んだ
「……あと少し。あと少しだけ…悪足掻きをさせてください……」
「……ナギニ殿…不躾じゃが、トムがお前さんに執着する理由がわしはよう分かった」
感慨深げにそうつぶやいたダンブルドアに、彼女は意味がわからなかったが、言葉だけを噛み締めた
「お前さんに、普通の人生を送らせてやりたかった…」
「………きっと…彼と共に終われるのは私だけですから…」
「…優しい子じゃ…誰がなんと言おうとも、お前さんは、わしの大切な生徒であり、子じゃ…」
ダンブルドアの言葉に彼女は心の中で否定した
「…十分過ぎるほどのお言葉です…ありがとうございます……」
ダンブルドアは、大切な’’子’’である彼女をしばらく抱きしめた
その日の夜…
「…ナギニ…」
「………」
久々に出てきた’’彼’’
なんとタイミングのいいことか…
「気づいたんだな」
「…おかしいと思ったわ…全て…あなたは…ずっと試していた…本当に…歪んでいるわ…」
「ナギニ…おいで」
聞いたこともないほど、彼が優しい声色で私を呼ぶ
体が勝手に動く
ふらふらと揺れる体は、腕を広げる彼の胸に向かう
ゆっくりと彼の前に行き、涙が頬を流れる感触を感じながら、彼の頬に手を添えた
「…本当にっ…不器用な人…」
細く、痩せてしまった、その手の感触を感じるように、目を細めて受け入れる彼に顔を歪めて見る
「…お前が’’僕’’をこうさせた」
「全て、私のせいってわけ…」
「ああ」
「…そう……」
全て諦めたようにそう呟いた彼女は、数秒してから、彼を抱き寄せた
それに逆らわず、彼は彼女がしたいようにさせた
「ナギニ」
「もう何も言わないで……きっと…まだまだ私に隠していることがあるんでしょ…今は…今だけは何も言わないで…」
「…いいよ。お前の好きなようにさせてやる。それでお前の気が済むなら。いくらでも」
そう言って、優しく彼女を抱きしめたい彼
そして、消えそうな声で…吐かれた言葉は…
「………嘘つき……」
だった
季節はあっという間に冬になった…
あの日から…ハリー達は、実践を教えないアンブリッジに変わり、ハリーを師として必要の部屋で訓練を始めた
日々感じる、ハリーの視線に、私は見ないふりをした
グリフィンドールの生徒達がひっそりと動くなか、スリザリンの生徒達、主に上級生や下級生はスパイになった
私もスパイになることを余儀なくされた
私は…また痩せたようだ…
セオが皺の寄った顔で心配してくれた
ドラコも、らしくなく表情を歪めていた
パンジーは、怒っていた
いい友人を持った
とても…
私には勿体無い…
食事が喉を通らず、食べてもトイレで吐いてしまう
マートルがいるトイレは、少し息ができた
「あんた、私より死人みたいよ」
「…そうね…」
死人に取り憑かれているようなものだもの…
流しで顔を洗いながら、自分のを顔を見ると酷いものだった…
成る程、セオ達があそこまで心配するのも頷ける…
「マートル…ごめんなさいね…静かな時間を邪魔して」
本当にごめんなさい…
本当のことを言いたい…
でも言えない…私は卑怯だから…あなたに謝る資格なんてない…
「いいわよ。あんたの今の顔面白いし。ここには誰も来ないんだもの。ハリーやセドリックなんて都合のいい時だけだったわ」
ポリジュース薬とトーナメントの時のことだろう…
「…そっか…」
正直、セブルスの薬がなければかなりきつい…
体調を崩すわけにはいかないのに…こんな時に…
なのに…なのに…
思うように体が調子を戻してくれない…
靄がかかったような記憶が毎夜私を苛む…
もう…全て投げだしたい…
何度思ったことか…
「飲み干せ。我輩の忠告をお忘れになったか?」
「いいえ…決して」
「ならば気をしっかり持て。体たらくもいいところだ」
「うん……アーサー・ウィーズリーは無事?」
「あぁ。校長が異変があればすぐに動ける準備をなさっていた故、命は取り留めた」
なら、次の段階に進む…
やっとあの女からもおさらばできる…
少し気が楽になった
「セブルス…ごめんなさい。少しだけここで休ませて…」
「…好きにしたまえ」
嫌そうな彼に、無理を言って研究室の肘掛け椅子に身を預ける
彼の用意してくれた薬が日に日に効果を増しているのがわかる
ゲロマズのレベルなどとうに越している薬のおかげで、なんとか正気を保てている…
薬中みたい…
少しだけ…少しだけ…
そう思っていたら、いつの間にか意識は暗闇に落ちていた
セブルスは、自分の部屋の研究室で、痩せ細ってやつれた友人の姿を目に写しながら、顔を歪めた
死んだように眠る友人の姿は、いっそ痛々しくみえる
シリウスから彼女に関して警告があってから、彼女は弱っていった
何故、彼女なのか
何故、こんなになってまでポッターを、皆を守ろうとするのか
セブルスがかなり強めに薬の効果をあげていることも気づいているだろうに、それがどれほど危険なことかわかっているだろうに
彼女の感覚はおかしなことになっている
痛覚をまともに受け取れなくなっている
虐げられることが当たり前で、逆らわない、余計なことは何も言わない、
おまけに『闇の帝王』の『許されざる呪文』に耐性がついている程、想像もつかないような目に遭ってきた
死にに行こうとしているようなものだ
たった一人の友人が着実に死に向かっている
セブルスは薄々それに気づいていた
「オフューカスっ…」
ダンブルドアは彼女を止めない、止めようともしない
それが必要なのだと分かっているが、彼にとってはたった一人の友人を救うこともできずに、苛立ちしか募らない
のうのうと守られておきながら、彼女を憎しみの篭った目で見ている
恐らく、誰よりも『闇の帝王』に近いし、知っているからこそ、彼女はハリーを守ろうとする
許せるわけがない
ハリーはリリーの忘れ形見だが、リリーは死んだ
リリーを永遠に愛している
だからハリーを守ると決めた
彼女は友人だ
生きている、確かにここにいる
だが、彼女は死にに行こうとしている…
『闇の帝王』が、『闇の帝王』となった責任を取ろうとして…
よく分かっている、どちらも選ぶことはできないと
突きつけられる残酷過ぎる真実に…セブルスは苛立ちと不機嫌を募らせていった
クリスマス休暇最終日、ハリーはシリウスの邸、本部で、モリーからスネイプが呼んでいると言われて、恐ろしさと疑問しかなかった
わざわざグリモールド・プレイスに訪ねてきたのだ
ハリーは自分が一体何をしたのか考えた
最後の宿題が最悪の「T」でも取ったのだろうか
モリーに厨に行くように言われ、ハリーはドアを開けて入った
中にはシリウスとスネイプがいた
目を背けて反対方向を睨みつけており、お互いの嫌悪感で重苦しい沈黙が流れていた
「あのー」
ハラーは遠慮がちに声をかけて、スネイプが振り向いた
「座るんだ、ポッター」
すると、シリウスが椅子ごと反っくり返り、椅子を後ろの二本足だけで支えながら、天井に向かって大声で言った
「いいか、スネイプ。ここで命令を出すのはご遠慮願いたいですな。何しろ私の家なのでね」
その言葉にスネイプの血の気のない顔に、険悪な色が広がった
ハリーはシリウスの脇の椅子に座り、テーブル越しにスネイプと向き合った
「ポッター、我輩は君一人だけと会うはずだった。しかし、ブラックがーー「私はハリーの名付け親だ」」
嘲るように笑ったスネイプにシリウスが大声で被せるように言った
「我輩はダンブルドアの命でここに来た」
スネイプの声がだんだん低く不愉快なものになっていった
「しかし、ブラック、よかったらどうぞいてくれたまえ。気持ちはわかる…関わっていたいわけだ」
「何が言いたいんだ」
スネイプの言葉に、シリウスは音を立てて椅子を元に戻した
「別に他意はない。君はきっとーーーあーー、イライラしているだろうと思ってね。何にも役に立つことができなくて。’’騎士団’’のためにね」
シリウスは赤くなった
スネイプはハリーに向き直り、勝ち誇ったように歪んだ
「校長が君に伝えるようにと、我輩をよこしたのだ、ポッター。校長は来学期に君が『閉心術』を学ぶことをお望みだ」
「何を?」
ハリーはポカンとした
「『閉心術』だ。ポッター。外部からの侵入に対して心を防衛する魔法だ。世に知られていない分野の魔法だが、非常に役に立つ」
ハリーは心臓が急速に鼓動し始めた
外部の侵入に対する防衛?
ハリーは思った。自分は取り憑かれていない。そのことはみんなが認めた
「その『閉ーー何とか』を、どうして僕が学ばないといけないんですか?」
ハリーは思わず質問した
「何故なら、校長がそうするのがよいとお考えだからだ。一週間に一度、個人教授を受ける。しかし、何をしているかは誰にもいうな。特にドローレス・アンブリッジには、わかったな?」
「はい」
「誰が教えてくださるんですか?」
スネイプの眉が吊り上がった
「我輩だ」
ハリーは腸が溶けていくような恐ろしい感覚に襲われた
スネイプと課外授業…
こんな目に遭うなんて、自分が何をしたというのか
ハリーは助けを求めて、急いでシリウスの顔を見た
「どうしてダンブルドアが教えないんだ?なんで君が?」
スネイプに食ってかかるシリウス
「あまり喜ばしくない仕事を委譲するのは、校長の特権なのだろう、言っておくが、我輩がこの仕事を懇願したわけではない。ポッター、月曜の夕方6時に来るのだ。我輩の研究室。誰かに聞かれたら『魔法薬』の補習だと言え。我輩の授業での君を見た者なら、補習の必要性を否定すまい」
スネイプはそれだけ言うと…旅行用の黒マントを翻して立ち去りかけた
「ちょっと待て」
「我輩はかなり急いでいるんだかね。ブラック、君と違って、際限なく暇なわけではない」
「では要点だけ言おう。なぜあいつを野放しにしておく」
「あいつ?はて?我輩には誰のことか検討もつきませんな。どこかの口の軽い愚か者が、ダンブルドアの言葉を無視して告げ口しようとも我輩は何も言いますまい。これ以上話すことないですな」
スネイプがハリーを忌々しげに睨みながら、言うので、ハリーはダンブルドアとの約束を破ったことを言われてバツの悪い顔になった
「ハリーは正しいことをした。スニベルス、そもそもこの個人教授の発案は本当にダンブルドアなのか?あいつは『闇の帝王』の手下だぞ!」
「そうだっ…あいつは両親を殺したようなものだ!」
便乗するようにハリーもそう叫び、スネイプの顔はますます凶悪に歪んだ
「黙れポッター。お前如きが彼女を語るな。全く…ほとほと呆れてものも言えん。碌でもない名付け親と同じで、子どものように癇癪を起こすことしかできんとは…はっ…校長と彼女の頼みでなければ、我輩はお前なぞに時間を割かないというのに」
心底、軽蔑するように言ったスネイプ
「スニベルス!!貴様っ!!」
「シリウスのことをそんな風に言うな!」
ほぼ同時に噛み付いた二人
「言っておくがな、ポッター。お前のちっぽけな覚悟など、お前が手下と呼んでいる者の足元にも及ばん。この程度で、ムキになり泣き言を言っているようではな。『闇の帝王』はさぞかし両手を挙げて喜んでいるだろうな。お前がどんなに直情的で操りやすい愚かな子どもかと」
スネイプは忌々しげにハリーに近づいて、吐き捨てた
そして、シリウスが食ってかかる前にスネイプはローブを翻して今度こそ去った
横ではシリウスが怒鳴っているが、スネイプはそんなこと意にも返さず颯爽と行った
私は毎晩あの夢を見る…
去年から、ドラコとセオが帰るのは私の家だから、三人でずっと行動している
毎晩、深夜に起きてしまう私の側にいたのは…
「ナギニ…大丈夫だ。お前には’’僕’’がいる」
普段は恐怖の対象でしかないあの紅…
それが細められて、汗がぐっしょりと滲んで肩で息をする私の肩を落ち着かせるように抱く’’彼’’…
「…っ……やめてよ…」
「聞く義理はない」
どうしてよ…
どうしてそんな拒否権もない言い方をするのにっ…
どしうして今更優しくするのっ
あなたが…わからない…
クリスマス休暇が開けて、事態は刻々と変化していた
ババアによる、教育令にも益々拍車がかかり、私はグリフィンドール、特にハリー達を監視するように言いつけられた
ドラコ達もそうだった
だが、私たちはある程度監視する程度に留めた
そこに、ハーマイオニーがリータ・スキーターと取引して、『ザ・クィブラー』の雑誌に彼が復活したことを肯定するような内容を書かせた
私が双子にひっそり仄めかしたスキーターのアニメーガスの件を伝えてうまく使ったようだ
まぁハーマイオニーならすぐそのことに気づいたろうが…
念には念を、だ
ハリーのためというより、単にあのババアの焦る顔が見たいのもある
それが察した双子は嬉しそうに新しい発明品などの話をしてきた
それに、私はババアにバレない程度に、双子にババアの動きを伝えている
それをうまく活用してくれることを祈るばかりだが…
『ザ・クィブラー』の三月号が出された
案の定、ババアはお冠で、わなわなと震えながら、ハリーのインタビューが載った、彼の完全な復活説をところをグシャリと握りしめて燃やした
たくさんの賛同とハリーの勇気に感動の手紙が、ハリーの元に来て、ババアは、ハリーに罰則を課して、ホグズミード行きを禁止し、「『ザ・クィブラー』を所持しているのが発覚した生徒は退学処分に課す」と、アホ丸出しの教育令を発令した
それによって学校内の空気が一気に変わり、グリフィンドールの生徒はしばらく湧いた
「君がなぜここにいるのか、分かっているのだろうな?ポッター?」
スネイプは、低い、邪悪な声で言った
ハリーは今、スネイプによる個人教授を受けている
「我輩が、なぜこんな退屈極まりない仕事のために夜の時間を割いているのか、分かっているのだろうな?」
「はい」
ハリーは頑なに言った
「何故ここにいるのか、言ってみたまえ。ポッター」
「’’閉心術’’を学ぶためです」
死んだうなぎを見つめながら言うハリー
「その通りだ。ポッター。そして、君がどんなに鈍くともーー…二ヶ月以上も特訓をしたからには、少しは進歩するものと思っていたのだが。闇の帝王の夢を、あと何回見たのだ?」
「この一回だけです」
ハリーは嘘をついた
「おそらくーーー」
スネイプは暗い、冷たい目をわずかに細めた
「おそらく君は、こういう幻覚や夢を見ることを、事実楽しんでいるのだろう。ポッター。たぶん、自分が特別だと感じられるのだろう。重要人物だと?」
「違います」
ハリーは歯を食いしばり、指は杖を固く握りしめていた
「その方がよかろう、ポッター」
スネイプが冷たく言った
「お前は特別でも重要でもないのだから。それに、闇の帝王が死喰い人たちに何を話しているかを調べるのは、お前の役目ではない」
「ええ、それは先生の仕事でしょう。やつの手下と仲良くしているらしいですからね」
ハリーはつい口から出てきてしまった言葉に、そんなことを言うつもりはなかったのに後悔した
慌ててスネイプを見ると、彼は凍えるほどの冷たい目をしていた
「左様。だが、それは君が決めることではない。ポッター。校長がお決めになることだ」
ゾッとするほど、冷静な声で、そう言ったスネイプに、ハリーは身震いした
同時に、やはり、ダンブルドアは彼女が手下だと分かっていて何もしないのか、手下だと気づいていないんだと確信した
「お喋りは終いだ。『レジリメンス!』」
合図もなく、突然杖を向けられて、呪文を唱えたスネイプに、ハリーは心の中の想い出を覗かれた
想い出に介入し、「反吐が出そうだ」と呟くスネイプに、ハリーは耐えきれなかった
「僕だけの想い出だ!はぁ…はぁっ!」
「我輩には見える。訓練せねば、『闇の帝王』にも筒抜けだ」
椅子に座るハリーに近づき、スネイプは冷たく続ける
「読み取った記憶を武器に、お前を苦しめるだろう。『闇の帝王』の侵入を受けたら、お前など2秒と保つまい」
冷静に、馬鹿にするように、告げるスネイプ
「父親そっくりだな。怠け者で。傲慢で「父さんのことをそんな風に言うな!」」
父親を馬鹿にするスネイプに、ハリーは立ち上がって反論した
「弱虫」
「僕は弱くない!」
「では証明しろ。己の感情を制御し、自分自身を支配するのだ」
再び杖を構えたスネイプは「レジリメンス」と唱えた
再び、大切な友人との記憶、夢に見る記憶、多くの感情が丸裸にされて、踏み入られ、踏み荒らされる
苦痛にも似たその感覚に、ハリーは冷や汗を流して叫んだ
「やめろ!!」
再び、立ち上がって研究室から出て行こうと叫ぶ
「それで制御したつもりなのか?」
「もう何時間もぶっ続けだっ、休ませてっ」
出て行こうとするハリーに、スネイプは眉間に皺を寄せて、凶悪な顔をした
「休ませてだと?『闇の帝王』は、休んではおらんぞ。お前とブラックは似ておる。不当な扱いばかり受けてきたと、子どものように嘆いて。気づいておらんだろうが、人生とは不当なものだ。お前の父親は、我輩にそれをよくよく、それを、思い知らせてくれたっ!」
「父さんは立派な人だった!」
「お前の父親は卑劣だった!」
思わず叫んだハリーの襟を掴んでスネイプは椅子に突き飛ばした
そして、ほぼ同時に杖を向けて「レジリメンス!」「プロテゴ!」と唱えた
その瞬間、ハリーは、自分のものではない記憶で満たされた
鉤鼻の生徒が、自分と丸眼鏡をつけた生徒と、その後ろにいる何人かのグリフィンドール生に杖を向けられて、宙に浮かされている
ーー「来いよムーニー!パットフット!」ーー
ーー「スネイプ!」ーーー
ーーー「いいぞジェームズ!」ーーーー
ーーー「さぁて、スニベルスのズボンの脱がせる脱がせるの、見たいやついるか?」ーーーー
ハリーはスネイプに杖を向ける男子生徒が自分の父親だと分かった
そこで、浮かされているスネイプが地面にゆっくり着地した
ーー「セブルス、そんな子ども放っておいて行きましょう。あなたが相手をするに値しないわ」ーー
女子学生だろうか、黒髪に、灰色の、ハリーでも美しいと思う女性が、スネイプに近づき、父親達の方も見ずに声を掛けていた
ーー「オフューカス!!!お前またスニベルスなんかの味方をするのか!」ーー
父親の後ろにいた、自分の知っているシリウスに似た、それよりも若い、とてもハンサムな男子生徒が叫んでいた
シリウスだ
ーーー「あなたがくだらないことをしているからです」ーーー
呆れたように淡々と言い放ったオフューカスに、父親を押し退けてシリウスが彼女の目の前で言った
ーーー「お前の兄だぞ!兄と呼べ!なぜ俺の言うことを聞かない!」ーーー
ーーー「人の名前もちゃんと呼べない方の名前を呼ぶ義理はありません」ーーー
他人行儀に、感情の籠っていない、淡々とした様子でそう言った彼女
それに対して…
パシン!!!!
その瞬間、乾いた音が響いた
彼女の頬を叩いたシリウスに、ハリーは目を見張った
ショックだった
ハリーの中で言いようのない驚きと失望が支配した
ーーー「ひゅ〜!シリウス相変わらず妹には容赦ねぇ〜!」ーーー
煽り立てるような自分の父親の言葉…
その時、スネイプの声が響いた
「やめろ!!!」
現実に戻ってきたハリーは、瞠目してスネイプを唖然と見た
喉からでかかる言葉が音にならない
スネイプは、静かにハリーの胸ぐらを掴み、
「…訓練は、もうこれきりだ…」
驚くほど静かに言った
「ぼっ僕…」
「出て行け。行け」
何も言えずに、ハリーはスネイプの部屋を早足で出て行った
「セブルス、忙しいのにありがとう」
向かいでゴブレットをコトンと置いた友人がそう言い、痩せてしまって真っ白だった表情に、少し赤みが戻り、ホッとしていた
薬の不味さは最初の頃と比べて比ではないだろうに、それを平然と飲むようになった彼女
イカれている
感覚が鈍ってきている
とても悪い方向に
自分の痛覚を痛覚として認識できず、受け入れている
セブルスは、それが分かってきただけに、苦い顔が隠せない
「余計なことを心配する暇があれば、その顔をどうにかしてはいかがかな?」
「それ、別の意味に聞こえるよ…でも、セブルスの薬を飲むと一番効果があるから、大丈夫よ。あとは私の体力の問題だから」
そんなことはない
まず、あの強さの薬が一番効くと言っている時点でおかしい
体力の問題ならば、こんな強力な薬を使う必要もない
体力でどうにかなるようなレベルではないのだ
心の問題だ
セブルスがやめた、ハリーの『閉心術』の訓練など比にならない
セブルスでも不可能だと思うことをしているのだ
彼女が、もうある程度壊れていることは、真実を知ってから気づいたが、今はそれ以上の負担を自分に課している
罪を
闇の帝王を生み出した罪を、共に償おうとしている
「ふん、たしかに、今のお前の体はどこもかしこも、冬の枯れ木のように脆そうですからな」
「そうかもしれない…」
あっさりと肯定して、お茶を口に含む彼女の表情は、暗く、悲哀に満ちていた
「ご自分がイカれているというご自覚はありますな?」
「多少感覚が鈍くなっているのは…そうね。自覚しているわ…」
決して多くを語らず、余計なことを言わない彼女は、セブルスから見ていて、何かに躾けられているようなものに見えた
深く、深く…
「誰のせいとは言わないところを見ると、お前にも多少の情があるように見えますな」
意地悪な質問をしているのはセブルスも自覚している
だが、友人が命をすり減らしているのを黙って見ているほどできてはいない
文句や、嫌味の一つや二つ言いたくなる
「…酷い話だけれど、…なかったと言えば、嘘になる……産まれた時から…側にいた彼は…あまりにも近すぎた……」
「側にいた、とは随分と好意的な表現をなさるようですな」
「……側にいた…それに許されなかった……監視されていた……彼を一番近くで見てきたけれど…彼ほどの天才は…いなかった…本当に…だけど…」
「自分が原因だ。とでも言うつもりかね?」
「私はそこまで彼のことを理解していない………彼の考えることなんて…私には想像も及ばないことばかり…私は彼の’’物’’で’’玩具’’だったもの」
「…自分で認めるとはな。なんと嘆かわしい」
「そうね。ただの物言わぬ人形よ……最低で卑怯な人間…」
ぽつり、ぽつりと…長い…長い時間をかけて、やっと最近、聞けば、語るようになった友人に、セブルスは眉を寄せた
「ならば我輩も卑怯な人間ということですな」
自然と口から出ていたセブルスは、驚いて顔を上げる友人をじっと見た
沈黙が流れる中、彼女は、ただ「…ありがとう…」と呟いた
魔法省の後ろ盾があるクソ女の集ったスパイ…
私は、スパイとしてアンブリッジに任命された
別に志願したわけじゃない
当然やるわよね?という具合で勝手に任命されていた
もちろん、表上は従うが、真面目にやる気などあるわけが無い
「ユラ、眠れているのか?ひどい顔だぞ…」
ドラコが心配して肩に手を置いてくれる
「ええ、心配してくれてありがとう。あなたも辛いでしょうに…」
「父上に比べればこんなこと辛いうちに入らないね。むしろあのババアの顔を見てるだけで吐きそうだ」
すごい嫌悪感だ
むしろ良い
「香水臭いったらないわ!」
叫んだパンジーが談話室の扉を乱暴に蹴りながら来た
「あの女、香水の化け物なんじゃない?しょっちゅう、振ってるわよ。鼻を抑えたくてたまらないわ。こっちに移ったらどうしてくれるのよ」
パンジーが鼻を摘んで「おえぇ~」と言う
スリザリンの談話室はアンブリッジは監視してないからまだマシだ
「体臭と混ざって最悪の悪臭を放っているよね。もはや公害だよ」
アンブリッジのせいでストレスが溜まっているセオがますます最近辛辣である
「え?なに?セオドールが怖いんだけど…」
パンジーがつぶやいた
「お前は静かに毒吐くよな」
ドラコがつぶやいた
「…同感だわ」
私もつぶやく
それから暫くしてから、『占い学』のシビル・トレローニー先生がクソ女に解雇されるということが起きた
生徒が集って、注目が集まる中、現れたダンブルドアが「この城から追い出す権限は持っていない」と、ハッキリ言い、クソ女は静かに怒りに燃えた
理由は他にもある
ダンブルドアがあらかじめ、次の『占い学』の先生に任命したケンタウルスだ
とても綺麗だと思う…
プラチナ・ブロンドの髪に、驚くほど青い目で、頭と胴は人間、その下は黄金の馬、パロミノの体だ
名前はフィレンツェさんというらしい
案の定、半獣人を嫌悪して恐怖してるあのババアはメラメラと怒れるヤカンのような顔になった
窮屈でストレスしか溜まらない、学校生活で、とうとう事件が起きた
DA-ダンブルドア軍団を組織して、こっそり防衛術を練習していた、ハリー達が、スパイである、クラッブやゴイルはじめ、熱心な下級生達に跡をつけられ、チョウ・チャンが捕まり、セブルスがアンブリッジに提供した「真実薬」で、全てはかされ、全員捕まった
私は、アンブリッジに呼び出されて連行したハリー達と、捕まえたスリザリンの生徒達と顔を合わせた
おそらく、私は気づかなかったのか?と責められるのだろう
「ご覧なさい。あなたには期待していたというのに、捕まえたのはこの子達よ」
ハリー達、ロンやハーマイオニー、ネビル、ディゴリー、シェーマスやらグリフィンドールの軍団のメンバーが射殺さんばかりに睨んでくる
双子だけは申し訳なさそうな顔をしている
私は、普段通りに振るまい、クソ女に謝罪した
「申し訳ありません。「試験」の対策に集中していたもので、気づきませんでした。甘んじて処分を受けます」
「あなたのそういう従順なところは評価すべきところですわ。反省の証として、わたくしの期待を裏切ったことの罰をひとつだけで済ませましょう。それで全て水に流しましょう。寛大なわたくしに感謝なさい。コーネリウスにはこのことは伏せておきましょう。あなたの将来のためですもの。ええ」
傲慢にそう言って、私の前に来たクソ女は、私の頬を叩いた
乾いた音が響き、私は顔を伏せた
「…寛大なご処分、感謝いたします先生」
殴り返したい衝動を抑えて、頭を下げる
我慢だ…
こんなことどうってことない…
センリがうごうごと服の下で噛みつきそうな声で動いてる
「主っ…」
だめよセンリ…
見えないように軽く抑えて、止める
センリはずっとこのクソ女にイラついている
それはもう隙あれば噛み殺しそうなばかりに…
顔をあげると、双子がアンブリッジを射殺さんばかりに見ている
ハリー、ハーマイオニー、ロンは瞠目している
ハリーはきっとセンリの声が聞こえたんだろう
「まさにわたくしが理想とする模範生の見本ですわ。さぁ、この裏切り者達をコーネリウスとダンブルドアに報告します。今度はわたくしの期待を裏切らないで頂戴ね」
「…はい」
それから、クソ女が、魔法省の者を呼び出して、大臣コーネリウス・ファッジ、キングスリー・シャックボルト、書記担当のパーシー・ウィーズリー、そして闇払い局のドーリッシュ
それらが集まり、DA-ダンブルドア軍団の名簿を持って、ダンブルドアを逮捕しようと、校長室に雪崩れ込んだ
部屋には、マクゴナガル先生も直立して、緊張した面持ちで立っている
部屋に入った時、私は連れてこられたのもあり、私の頬が僅かに赤くなっているのをチラッと見られた
すぐに逸らされたが
ダンブルドアとも目が合った
厳しい表情をした
パーシーは、なんだこの生徒は…という目を向けている
連れてこられたのは、ハリーと、密告者とされたチョウ・チャン
シャックボルトとは、チラッと目が合ったが、お互いすぐ逸らした
「ずっと見張っていたのです。ご覧ください。ダンブルドア軍団。わたくしが申し上げていたことの動かぬ証拠です。コーネリウス。『例のあの人』にかこつけて恐怖を煽っても騙されませんわ。嘘で煙幕を貼って、その影で、魔法省を我が物にせんと策を巡らせていたのです」
ペラペラと妄想と嘘がよく出る口だ
「その通りじゃ」
あっさりと肯定したダンブルドア
その瞬間、ハリーが叫んだ
「だめです先生!先生じゃない!僕が!」
「わしを庇おうとせんでもよい。名簿には、はっきり。ダンブルドア軍団と、そう書かれておる。ポッター軍団ではない。わしが組織作りを命じたのじゃ。責任は、全てわし一人にある」
机に寄りかかりながら、ゆっくりとした口調でそう言った
「『日刊預言者新聞』にふくろうを送れ。急げば朝刊に間に合う。ドーリッシュ、シャックルボルト、ダンブルドアを連行しろ。アズカバンへ。そこで裁判を待つのだ。陰謀と、扇動の門で」
懐疑心と妄想に駆られた大臣とドーリッシュ、クソ女がにじりに寄る
その声には喜色が含まれている
「その問題に突き当たると思うた…幻想を抱いておられるようだな」
校長席の方に回り込み、ダンブルドアが私たちの方を向く
「わしが、’’神妙’’にすると。だが、わしは、アズカバンに送られるつもりはない」
穏やかな声でそう言ったダンブルドア
「もうたくさん!連行して!」
クソ女がそう叫んだ瞬間、後ろから来た彼の不死鳥が真上にやってきて、手を叩いたと同時にダンブルドアは美しく燃えて消えた
その衝撃で吹き飛んだ四人は立ち上がった
「お気に召さないでしょうが、しかしあの方は、兎に角、’’粋’’ですよ」
シャックルボルトが感心したようにファッジにそう言った
その後、私はクソ女に、紹介されて、ファッジと再び顔を合わせた
二度目だ
「おぉ、君は確か、Msポンティだったね?ルシウス殿とレギュラス殿から紹介された時のことを覚えているよ。女史からも君の優秀さはよく聞き及んでいる。お父上はお元気かな?」
人好きする笑顔で話しかけてくるファッジに私はひとつ頭を下げた
ファッジの後ろにはシャックルボルトが私をじっと見ている
「まぁ、コーネリウスと面識があったのね。素晴らしいですわ」
クソ女の感心したような声が聞こえる
耳障りな…
「お久しぶりでございます大臣。その節は、ありがとうございます。父でしたら変わらず過ごしております。お気遣い痛み入ります」
握手を交わした私に、パーシーが睨んでくる
本当に…権力に目の眩みやすい…
「はっはっは…いやはや、相変わらず、実に謙虚で礼儀正しいお嬢さんだ。あの時の私の目に狂いはなかったようですな。これは将来有望だ。ルシウス殿も君を高く評価しておりましたからなぁ。将来は是非、魔法省に。まだ学生だろうが、是非とも女史と共にこの学校の改革に助力して欲しい」
誰がするかハゲ
「もったいないお言葉でございます。私はまだ多くを学ぶ未熟な者ですので、これからも期待に応えて努力していきたいと思います」
誰が馬鹿省なんかに入るか
「うむ。実に素晴らしい。これこそ本来生徒のあるべき姿だ。女史、彼女はとても有望で価値のある人材だ。是非とも良きに計らってくれたまえ」
計らわなくていいわ
「ええ、コーネリウス。彼女は素晴らしい見本となるはずですわ」
それから、くだらない自尊心と馬鹿な会話、私の将来についての勝手な話に、私は聞き流しながら、早く寮に戻りたい…と、そんなことをつらつら考えていた
その夜…
「ナギニ。お前は、また、’’僕’’以外に傷つけられたな」
張られた頬に滑らかな指を伸ばして、するりと温度のない手を添えてくる彼
「…あなたにだけは…言われたくないわ…」
あなたがそれを言えるの?
散々っ…散々痛ぶったあなたが…
「いい加減、強がりを捨てたらどうだ。見ていて呆れてくるぞ」
強がりじゃないっ
絶対に違うっ
「…呆れればいいじゃない……どうせ…何もかもお見通しのくせに…」
「生意気だな。だが事実だ。お前のことで’’僕’’にわからないことなどない」
あっそう…
知ってるわよ…
私に限らず、あなたは全て見通せた…見透せた…
「そうね……私はあなたのことを理解できなかった…」
私は…
私が…あなたを少しでも理解する努力をしていたなら…何か変わっただろうか…
いけないことだと分かっているのに…最近…つらつらとそんなことを考えてしまう…
「したかったのか?…それなら’’杞憂’’だ」
「どういう意味…?」
「そのままの意味さ。お前が’’僕’’に関して心配することなど何もない。初めから、お前は’’僕’’と’’彼’’を’’みていた’’」
妙に含みのある彼の言葉は今に始まったことじゃない…
寧ろ、含みがないことのほうが珍しい…
今まで私は深く考えないように…見て見ぬ振りをしてきた…
だけど…
卑怯な私を写す彼の紅に……読み取れない感情が…浮かんでいる…
どうして…そんな…喜色に満ちた目をしているの…
そんな目…見たことがない…
‘’彼’’が現れてから…私はおかしい…
自然と伸びた指先は…彼の紅い瞳を縁取る長い睫毛…目元に触れていた…
「…なんだ」
そんな…どうしてそんな…優しい声で聞くの…
あなたはそんなじゃなかった…
「…っ……あなたといると…辛いことばかり…」
耐えられない…
とてもじゃないが…限界などとうに越していることなんてわかってる…
「…あぁ……そうだな。だが、それ以外が想像がつくか?」
わかってる…
わかってるわよ…
私にはこんな惨めな姿がお似合いなんでしょ…
卑怯で最低な…私なんて…
「………お前に’’合わせてやる’’…よく考えるんだ」
意味がわからないわよ…
「……………」
「返事は?」
ほら…
いつだってあなたは人を従わせようとする…
「…はい……」
私の指を取って、軽く薄い唇に押しつけた彼は、消えた
そして、後日、魔法省令が発令されていた
『ドローレス・ジェーン・アンブリッジは、アルバス・ダンブルドアに代わり、ホグワーツ魔法魔術学校の校長に就任した』
と
広間の石壁に飾られた、新しい発令に、この額縁全てぶっ壊してやろうかと何度思ったか
しないけど
それは双子に任せる
そして、ダンブルドアが戻っきたら、あの二人は退学にはさせないだろう
同時に、『尋問官親衛隊』などというアホ丸出しの隊まで集めて、私は例外なく、その親衛隊のリーダーにさせられた
クソダサい着けたくもない謎の「I」の銀バッチも付けさせられて、今すぐ目の前で踏みつけてやろうかと思った
我慢だ
我慢
あの日以来、私が大臣の覚えもいいこともあり、私はクソババアに生徒達を見張るように言われてる
ストレスどころではない
クソババアに見えるところだけで、生徒に注意して、私はあくまで試験に向けて力を入れている、時間を割いていると見せかけた
ハリーやグリフィンドールの生徒達からは、ますます刺すような目線で見られたが…
双子だけは、私にこっそり接触してきた
ムカつきとストレスがだいぶ溜まっているので、双子の計画を知り、私は全力で支援した
やるなら、派手にやってほしい
ダンブルドアが戻ってきたら、退学は取り消しだろうから、あのクソババアの顔面にでもぶつけてやれ、と、パイ投げの要領で、私の知識を提供した
私が打たれたことを謝ってもしてくれた
本当に優しい
折角、情報をくれていたのに、油断して、と
別に良い
これは想定内だ
それに、私が打たれたことを知った、セオとドラコとパンジーは、クソババアに対する怒りを増幅させた
これは予想外
表面上は、従っているが談話室で四人の時は、貴族教育を受けた上品な紳士淑女とは思えない放送禁止用語が飛び交っている
少し嬉しかったのは秘密だ
それから、ホグワーツはますます、窮屈なものになった
クソババアは、ひとりでに閉鎖された校長室から閉め出されて、名ばかりの校長である
ザマァだ
それを知って談話室で高笑いしたパンジーが思い出される
あれはなかなか愉快だった
ホグワーツに、ひいては、肖像画達である歴代校長にも認められていないということだ
進路相談で、私はセブルスと話していたのだが、クソババアが、乱入してきてカオスになった
私の将来はない
だから、ただのもともと形だけの茶番だった
なのに、「あら、スネイプ先生。彼女はコーネリウスの覚えがいい生徒ですから、このまま問題を起こさなければ、魔法省に起用されますわ。後見人はこの、わたくしが勤めますから心配なくてよ」
とか、宣うので、私とセブルス揃って真顔から微動だにしなかった
まぁ、形式上はちゃんと返事したが…
うん、とは言っていない
そして、マクゴナガル先生が、『失神呪文』を四本も食い、倒れて運び込まれ、ハグリッドが罠にかけられて咄嗟のところで逃げたことなどがあり、殆どのダンブルドア寄りの教員が解雇された
ついにO.W.L「ふくろう」の試験日が来て
双子の計画を一緒に練って、私は大広間で、まるで、刑務所のように開催される試験を受けた
三度目なので、すぐ終わった
そして、静かな沈黙が支配する中、双子が箒に乗って試験を最高にぶち壊してくれて、城の空に花火が上がった
龍の花火に追いかけられて、逃げたクソババアの顔面には、トロールの涎のようなものが直撃し、まさに爽快な様に出来上がった
私は……
することは決まっている…
ルシウス…
一方、ハリー達は、アンブリッジの部屋でシリウスを救うために、神秘部に行くため、忍び込んでいた
だが、クラッブとゴイル、スリザリンの下級生に捕まり、ルーナ、ジニー、ロン、ハーマイオニー、ネビルは並んで立たされ、ハリーは座らされて、アンブリッジに尋問を受けていた
頑なに吐かない、ハリーに、アンブリッジはスネイプを呼び、真実薬を渡すように言ったが、チョウ・チャンに使ったものが最後だと言われ、断られた
そして、『磔の呪い』を使おうとしたアンブリッジに、ハーマイオニーが、ハグリッドが紹介していた巨人を、ダンブルドアの秘密の武器として白状し、アンブリッジを誘い出した
禁じられた森に案内し、うまくアンブリッジを出し抜いたハリーとハーマイオニー
同時に、ネビル達は、クラッブとゴイル達をお菓子を餌にうまく眠らせて、ハリー達と合流した
そして、ルーナの案で、セストラルに乗って神秘部に向かったハリー達だった
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次回は、神秘部から…
彼女は、’’彼’’に揺れ動く中、どう動くのか…