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炎のゴブレット 〜1〜

炎のゴブレット 〜1〜 - chocoの小説 - pixiv
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30,209文字
転生3度目の魔法界で生き抜く
炎のゴブレット 〜1〜
炎のゴブレットはじまり

クィディッチ・ワールドカップから始まる恐怖

一方、トムは別で動きが初める
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2021年6月4日 02:13

捏造ありあり



——————————-

クィディッチも終了し、無事三年生は終わった
因みに、やはりというか、今回も主席だった
リーマスは自主退職して学校を去った
シリウス兄様はブラック家の当主として、色々動いているようだ
レギュ兄も学校がない間はブラック家で過ごしている

兄弟水入らずで過ごしているだろうが、クリーチャーは可哀想に…
昔からシリウス兄様はクリーチャーに当たりが強かった

休み期間に入る前、レギュ兄から「一度兄さんがいない時にクリーチャーに顔を見せに来てあげてくれないかい?」と誘われた

「時間があれば行く」と答えた


シリウス兄様とは、あれから口も聞いていないし、やり取りもない
寧ろ私はその方がいいと思ってる
シリウス兄様がいればハリーは大丈夫だ
任せていて問題ない
原作と違い、兄様は追われる身でもないし堂々とハリーを守ることができる
腐ってもブラック家の当主だから権力と財力だけはある
人望はあるけど人脈はないが


ドラコからは「来年はクィディッチのワールドカップがあるから、会場で会おう」と、ほぼ拒否権なしの決定事項で話を進められた

こうなればパンジーも道連れにしてやろうと視線を向ければ、「私興味ないの」とばかりに逸らされた
ホグワーツでのクィディッチではあんなに応援しているのに何なのだこの温度差は、と思ったのは仕方ない

げんなりする私に、セオは無言で肩に手を置いてきた
正直、クィディッチには死ぬほど、毛ほども、興味がない
それを知っているセオは「僕も行くからそんなしわしわの顔しないで」と言ってきた
まぁ、セオが来るなら少しはマシになるだろう
というか君もそこまで興味ないくせに

ちなみにセブルスからは、休みに期間中「呉々も問題を起こさぬように巻き込まれぬように」ともの凄く釘を刺された
あと、大量の宿題も
嫌がらせか何か、か
もしかしたら、ペテグリューを捕まえたのをセブルスの手柄にしたことを根に持っているのか



そして、もうひとつ

帰る日、私はダンブルドアに呼び出された
部屋へと続く、怪獣像(ガーゴイル)に乗って、校長室に向かった

部屋に入り、居心地悪くポツンと立っているとダンブルドアが奥から現れた

「呼び出してすまんのMsポンティ。オフューカスと呼んだ方がよいかの?」

「ポンティでお願いします。私に何か用でしょうか?」

「おぉ、そうじゃった。これを’’真の持ち主’’に返さねばならんからの。わしの方で安全は確認したから安心してよい」

引っ掛かる言い方をしてダンブルドアが手に何やら小さな布で包まれた包みを持って私の前に出してきた

「これは…」

「Msポンティの想い出の品じゃと思う」

警戒しながら、その包みをゆっくりダンブルドアの老人らしい手から受け取り、私は布を緩く解いた

そこにあったものを見て固まった

思わず包みごと私は落としそうになった

何故これが…
それに何故私に…
頭の中ぎぐるぐると混乱する


「………」

ダンブルドアは試している…
それか私がこれを持つことでどんな反応が起こるか見ている
闇の魔術が施されているかもしれないものをそう、やすやすと、渡すわけがない
だが、反応を見るためなら十分あり得る

「…これが’’想い出’’の品、ですか」

「Msポンティが2年前、図書室でわしに言うたことがあったの。『夢だと思うような形容したくない想い出』があると」

ほんと、よくそんなことを覚えてる…

「はい…」

「それを思うに、今回の功労もある上で、わしはこれを渡すことに決めたのじゃ」

何が目的…?
私を疑っているにしては不用心だ…いや、逆に渡すことで何かを期待した?

「君は今回、無実の者の人生を救った。これは驚くべきことじゃ」

別にそんな驚くことじゃない…
私は三度目でやっと動き出した…
全てが遅い…

「想像も絶する葛藤があったことじゃろう…わしは今も’’昔も’’。君を大事な生徒じゃと思っておる」

……
なら彼は…
彼はどうだったの…
あなたは彼をずっと疑ってた…
間違いじゃない…
当時でも貴方を出し抜く程の天才だった彼…
加えてあの本性…

「…’’彼’’のために心を痛めてやれるのは君だけじゃ」

…この世界で誰も…彼に同情する人なんかいないだろう…
分かってる…
そんなこと…
私もあんな最低な奴相手に心を痛めてなんていない…

包みを持つ手が震えていると、ダンブルドアが皺々の手を添えてきた

顔を上げると半月型の眼鏡を下げて薄青の目が私を不憫なものを見る目で見ていた

そんな目で見ないでほしい…
どんなにか私が憐れに見えるかはわかってる…

「わしは側にいてやれん。Msポンティ」

ハリーのことだろう…
私が彼の本性を誰よりも近く見てきたからこそ言っている…

「過ちを犯した老ぼれの’’頼み’’を聞いてくれるかの?」

…この人はある意味彼によく似ている…
…頼まれると断れない雰囲気を持っている…
…人を魅了する力がある…
こういう言い方をされると答えはひとつしかないように思う…

「…何をすれば?」

その後聞いたダンブルドアの言葉に、私は一気に頭が冷めていくのを感じた



















休み期間に入り、私は家に帰り、久しぶりにゆったりとした時間を過ごしていた

ダンブルドアから渡された’’櫛’’は、家に戻ってから触ろうとしたら黒い煙に変わり消えた…
その煙は私の体の中に入って行った…
気味が悪かった…
途端に気持ち悪くなった…

そんな憂鬱な日々が過ぎて、今は湖の側で気を紛らわせるように本を開いて文字を追っていた

「ひとつ聞きたいのだけど…」

「言ってみろ」

横にいる嫌味な彼に私は聞く

「…分霊箱は’’存在する’’って言ったわよね」

分霊箱が7つ存在するのは覚えている

「あぁ」

「’’彼’’は…この先を知っているの…?」

「そうでありそうでない。…分霊箱がどこにあるか、聞かないんだな」

「仮に答えても、あなたの言うことは信用できないもの」

「用心深くなったな。だがその心配は’’僕’’に関しては無駄と言える」

あ、そう
聞きたいことがいろいろある…
‘’彼’’が…オフューカスであったころ…私がナギニだと知っていたのか…
この先の未来が私の知っているものから変わるのか…
いっぱい聞きたいことがあるのに…聞かなきゃいけないのに…
怖い…
なのに…
口から出た言葉は

「………約束は守る…よ…」

「当たり前だな」

「……だから…「ナギニ」」

何を言おうとしたんだろう…
私は…

彼が人の言葉を遮ることは珍しい…

「少し、出かけよう」

は?
思わずポカンとした私は悪くない

ゆっくり立ち上がった彼を「は?」という顔で見上げて手を引かれた

少し歩いたところで足を踏みしめると、いきなり『姿現し』をした時のような気持ち悪さがきてふらついた

彼の手が肩にあるのを感じて支えられながら、目を開けると

不気味な…重く暗い空気が立ち込める田舎の村のようなところに来ていた…
どう見ても『ポートキー』か何かの魔法がかけられていた…
それか『境界線』のような何かだ


「ここはリトル・ハングルトンだ」

リトル・ハングルトン?
ロンドンのプリベット通りから数百キロ離れた村…
何故こんなとこに…

「ついてこい」

穏やかな口調でいい、私の手を引いてゆっくりと歩き出した彼に私は足を突っ張ろうとしたが…できなかった

行きたくない…
嫌な予感しかしない…
怖い…















手を引かれて来たのは、村を見下ろす程の小高い丘にある廃館…
あちこちの窓に板が打ちつけられて、屋根瓦が剥がれて、蔦が絡み放題になっていた…

こうなる前はとても立派なお屋敷だったのがわかる…

まさかこの中に入るの?
嘘でしょ…
普通に嫌なんだけど…

「まっ待ってトムっ…」

「どうした?まさか怖いのか?ふっ」

軽く振り向いて鼻で笑った彼に私はイラッとした
この野郎…

「怖くないわよ」

なんでいつも口から出てくるのはこんな言葉なのよっ…

「その歳になって無様に服を濡らさないように気をつけるんだな」

💢
自分の口許がひくひくと引き攣るのがわかる

「ご心配してもらわなくてもそんな惨事にはならないわよ」

本当に失礼を通り越してデリカシーすらない奴だ

「くっくっ…ならいい」

クツクツと上品に笑い中に入った彼に私は繋がれたままの手を振り払えず足を踏み入れる

中に入ると床がギシギシと音を立てて、カーペットもカーテンも破れてまさに廃墟だった

不気味なほど自分の足音が響く

手を引かれるまま奥に進み、円状の天井の高い大部屋に入った

「サロン…?」

サロンのような大部屋だ…
その真ん中に立って止まった彼に私も止まる…

「お前の探している’’もの’’はここにある」

振り返っていきなり言ってきた彼に私は心底意味がわからなかった

「別に…探し物なんて…」

何を言ってるの?
紅い目がすっと細められて、唇が緩やかに弧を描いた
ゾッとした
いつもより怖い…
そう感じるのはこんな不気味な廃墟だからか…ここは明らかに普通の館じゃない…

「さぁ探せ」

意味もわからず命令されて、私は一歩後退った
冷や汗が背中を伝うのがわかる
返事もできずに目の前に佇む彼から離れるように私はこの大部屋の中を歩いた

震える手を抑えて、早く見つけないと…と、何を探せばいいのかもわからず足と手を動かす
部屋の端から端まで探し回り、あとは中央にある無残に落ちたシャンデリアだけになった

シャンデリアの側に立っている彼の顔を見ないように、シャンデリアを見回す

膝を折りながら必死に何かわからないものを探していると、キラリと何か光るものが目に入った

落ちてカケラが散らばっているシャンデリアパーツをパキリと踏みながらいくつもある割れたガラスのロウカンのひとつを手に取り、中に入っている’’もの’’を掌に落とした

そこには蛇が噛み合うように見えなくもない金のアームにセンターストーンには三角の黒い石が嵌め込まれていた

これ…
彼が在学中に嵌めてた…

驚いて彼を見ると、いつの間にいたのか目の前にいた
いつの間にか指輪を取られ、彼が唖然として動けない私の右手を優しく取った

手に広がる温度のない彼の滑らかな手と指

「…な…に…」

「僕はこれをお前に’’渡す’’ために着けていた。やっとお前の指に飾れる」

穏やかな表情でいう彼に固まった
そして酷く冷たい指輪を私の人差し指にゆっくりと嵌めた
金と黒の指輪が私の指に鈍く輝く

「こ…れ…取れるの…よね…?」

「折角着けてやったのにそんな心配をするのか?どこまでも僕の苦労を無駄にしようとする女だな」

知らないわよあんなの苦労なんか
こんな恐ろしげなもの…

「今失礼なことを考えただろう?」

「………」

人の心を読むなっ…
プライバシーって概念はないのかっ

「…はぁ…まぁいい。僕はこれを在学中に渡そうか悩んだ。だがやめにしたんだ」

は?

「お前ならきっと、こうして生まれ変わっても僕を見つけてくれると信じていたからな」

見つけてない
見つけようとも思ってない
そもそも生まれ変わること自体想定外なのよっ
というかあんたに人を信じるなんてことができるわけない…

「これを肌身離さず着けているんだ。いずれ’’役に立つ’’」

信用できるわけない
そんな言葉…
あんたの言う’’役に立つ’’ほど保身的なものはない

「僕との約束だ。’’良い子’’のナギニは言うことを聞けるな?」


まただ
その言葉を使わないでよっ
私の体が勝手に反応する
嫌だっ
どうしてよっ

「そんな泣きそうな顔をするな。不細工だぞ」

やめてよっ
なんで今更そんなに優しくするのよっ

「やめてっ……やめてよっ…あんたの口からそんな言葉聞きたくないっ…」

「お前の屈辱に塗れた表情は愉快だよ。堪らなく可哀想だ…いつもは取り澄ましたような淡々とした表情が僕の言葉ひとつで歪むのは見ていてとても気分がいい」

最低っ…
あんたがこんな風にしたんでしょっ
最初は…最初はこんなんじゃなかったっ
私は大人であろうとっ…
関わらないようにしてたのにっ…
あんたの言う通り臆病だし卑怯だよっ…でもっ…それでも私にだってプライドがあるっ…
それを粉々にしてっ…全てっ…全てっ…

あんたじゃないかっ…

「どんなに取り繕っても意味はないさ。お前は僕に寄り縋る。僕がそう仕込んだ。おいでナギニ。…大丈夫。お前には、お前が天才秀才と認める僕がいる。お前は自分の見たものしか信じないだろう。だからこそお前の中で僕ほど’’信用している’’存在はいない」

何もかも見透かされている…
いつもそうだ…
人の心をまるでペンのように使い、上書きしていく
心に…体に…どんどん教え込まれていく…
自分でも知らないうちに…
それをもとからあったかのように、思っていたかのように思わせる…

恐ろしい…本当に恐ろしい…
彼が怖い…

指輪をつけられた私の手を軽く自分の方に引いて促してくる彼に私は頬にひと筋、温かいものが伝うのを感じた

「お前は’’脆い’’な」

そんなことを言って私の首元を引きよせて胸に抱き寄せてきた
温度がないのに彼の香りが広がった気がして…
自然と眉が下がって肩の力が抜けてしまった…

ダメだ…
どうしてそんな声で言うの…
どうしてそんなに酷いことを言うの…
どうして…

「っ…ぅぅっ…嫌いっ…嫌いよっ…あんたなんてっ…」

彼のローブをギュッと握りしめて恨言のように出てくる言葉…

「口が悪いな。思ってもいないことを言うなと何度も教えただろう」

艶やかな透き通る声で紡がれる呆れたような咎める言葉…
それにただ震えるしかできない……

「お前が震えるのは僕の前でだけでいい…」

そんな最低な呟きが遠くに聞こえてきた
それからどれくらい彼の胸で震えていたかわからない…
私は弱い…
隙を見せてはいけない相手に…
どうして…
彼は死ぬ……私も死ぬ…




















「ロンドンに?」

「うん。レギュラス・ブラック先生がご招待してくださっていて。いつもなにかとお世話になっているから受けようかと思うのだけれど、ダメかな?」

「構わないわよ。でもブラックって…」

「先生に気に入られているとは思っていたが…まさかブラック家にご招待されるほどとは…う〜ん〜…」

「あら、あなた。良いことじゃないの?ユラは私達の自慢の娘よ?優秀だもの」

「しかしだなぁ…」

「お父さん空気読んで頂戴?」

にっこりとした母が渋る父に圧をかけて微笑んだので、あっさり負けて許可を出した父
毎度のことながら弱すぎるよ父よ

そんなことで、私はレギュ兄に返事を送って、2日後ロンドンにあるブラック家の邸宅に向かうことになった

荷物を検知不可能拡大バックの中に入れて、さくっと準備した

レギュ兄からはすぐ返事が来て、「楽しみに待っているよ」的な言葉をもらった

「センリも来る?家で待っててもいいよ?」

「私は常に主と共にいる。そういえば王がまたあれをしたいと言っていた」

相変わらず律儀な紳士である
ちなみに’’あれ’’とは、以前にお風呂に入った時に湯船で水を溜めてバジリスクのストレス解消の為に泳がせた時のやつだろう

センリと同じくらい小さいサイズになったバジリスクを好きに泳がせていたのだ
変にストレスを溜められて毒を出すなんてことをされては私が困るので

どうやらそれを気に入ったらしい
今日の夜にでもやるか

「わかった。今夜ね」

ちなみにそれを見ていた奴に「バジリスクにこんなことをするやつはお前くらいだろうな」と、クツクツ笑いながら小馬鹿にされた

仕方ないじゃん
これしか思いつかなかったもん…
元の大きさになんてなられたらヤバいどころではない

「うむ。感謝する主。……主」

「どうしたのセンリ?」

「無理をしていないか?」

「…ありがとうセンリ…私にはセンリがいるから大丈夫だよ…大好き」

ベット上でしゅるしゅる指に絡みついてくるセンリに顔が緩んだ
優しいな

「ふむ…なら良いのだが。あまり無理をするようなら私は止めるぞ」

頼もしい
本当に頼もしい
この律儀で紳士なところをどこかの誰かにも見習って欲しいものだ
蛇にさえ負けているというレベル
いや、センリと比べるのも烏滸がましい
うちの子は世界一だ

あの日から…私は指輪を着けている
外そうと何度も思ったが…
できなかった…

母には「お年頃なのね」と何故か喜ばれた
とても複雑な気持ちだった
父にも「ユラもやっとそういうものに興味が出てきたんだね。お父さんは嬉しいよ」とか言う始末

別に興味はない
うちの両親は別の意味でとても平和である…
気が抜けるくらい…
私はその方がいいし、嬉しいんだけど…
今自分に起こっていることと、起こり始めていることを考えると素直に喜べない…

そんなこんなで、2日後になった
『姿現し』はまだ使ってはいけないので、ちゃんとルールは守ってロンドンに来た


















「クリーチャー。彼女が来るんだ」

「レギュラス様、彼女とはオフューカスお嬢様でしょうか?」

「あぁ…この前ね、クリーチャーのガレット・デ・ロアをまた食べたいと言っていたよ…」

「失礼ですがレギュラス様…クリーチャーはまだ信じられません…オフューカスお嬢様が生まれ変わって生きているなど…」

「まぁそう思うよね。でも会えば分かるよ。誰よりもオフィーの側にいたクリーチャーなら。容姿こそ違うが整っているし、何より雰囲気がオフィーそのものだ…」

1年前よりレギュラス様は変わられた
正確に言うならば、双子の妹君であらせられたオフューカス・ブラックお嬢様が生きておられた頃のように…

お嬢様が亡くなってから茫然自失になったレギュラス様…
クリーチャーはお嬢様を失ったレギュラス様に元気を取り戻していただこうとどんなことでもいたしました…

お嬢様が愛用されていた本をお勧めし、お嬢様の写真を飾ったり…

ですがレギュラス様はお嬢様を思い出される物を見るたびにお辛そうなお顔をされ、苦悶に満ちた様子でした

オフューカスお嬢様…
レギュラス様の双子の妹君でとてもお美しい方でした
聡明で控えめ、ブラック家の人間らしくないところもございましたが、とてもお心優しい方でブラック家の者としての吟持も持ち合わせておいでの非常に賢い方でした…

誰かどう見ても「大人で」「できた方」と言われるお嬢様…
兄君のシリウス様をお諌めするのはいつもお嬢様でした…

兄君達が去ってゆかれた時も、お父上とお母上がお亡くなりになられた後、邸にただ一人だけ残ったお嬢様は何も語られず、誰も責めることさえせず、ただただこの邸で兄君達が戻られるのをお待ちになられておられました…

毎日、本を読まれ、このクリーチャーといたいと仰られ…
普段通りにこそされておりましたが…もの鬱気なお暗い表情で…


ーーー「クリーチャー。ハーブティーを入れてほしいわ」ーーー


ーーー「シリウス兄様にも、レギュラス兄様にも…何か事情があったのよ。きっと…大丈夫」ーーー


あぁ
オフューカスお嬢様…
貴方様は辛抱強く…実に忍耐強いお方でした…
なのに…なのに…殺されてしまいました…
クリーチャーは見ました…
あの女が…お嬢様を殺めた時のことを…

お嬢様は最後の最後までブラック家の者として堂々としておられました.…


ーーー「私は誇り高いブラック家の者として生きて死にます。そして…兄達の妹として」ーーー



淡々とした様子で全く取り合わず答えたお嬢様に.あの女は…一度去ったと見せかけて…お嬢様を殺しました…

昔からブラック家直系の女性として賢く美しく聡い方であったお嬢様に劣等感を抱えておられたベアトリックス様…

全て兼ね備えたお嬢様は控えめに言って、とても平凡な方でした
纏う雰囲気に傲慢さはなく、高慢知己なところなどまるでない…
貴族らしくないお方…
ですが主人としての威厳はあり…クリーチャーはそんなお嬢様にお仕えできることを誇りに思っておりました…

何を言っても嫌味も皮肉も感じさせない…天性の才能をお持ちでした…
そんなお嬢様にあの女は良く思っていませんでした…





ーーー「クリーチャー。私が死んでも、兄達をよろしくお願いしますね。貴方はこの家の守り人よ」ーーー



はい。お嬢様。クリーチャーめはお嬢様との約束をお守りし、ずっとこの邸を守ってまいりました

レギュラス様がお戻りになられ、悲嘆にくれておられた中、クリーチャーめは責務を全うしております

かつてお嬢様が望まれたように、シリウス様もお戻りになられました

ですが…ですがクリーチャーめは思わずにはいられないのです

お嬢様がいなければ…

いけません
クリーチャーは屋敷しもべ
クリーチャーはこの家にお仕えしている


お嬢様は亡くなられた…
もうこの世にはいない

もっともブラック家に’’相応しくなく’’、もっともブラック家の者として誇り高い生涯を過ごされた…聡明で偉大なお方…

その方が…



「私が死んだ後も、この部屋をこんなに丁寧に維持してくれていたのね。流石はブラック家の『守り人』ね。クリーチャー」


レギュラス様がお招きになられたスリザリンのホグワーツの生徒…
レギュラス様が2年前より見るからにお元気を取り戻された理由…

オフューカス様の雰囲気をそのまま写したかのような子ども
子どもだというのに…自然とクリーチャーが頭を垂れたくなる雰囲気を持っていらっしゃる…



ーーー「会えば分かるよ……誰よりもオフィーの側にいたクリーチャーなら…」ーーー


クリーチャーは半信半疑でした
レギュラス様のおっしゃることとはいえ、死んだものが生きているなど…

ですがクリーチャーは確信しました…
この方は間違いなくオフューカスお嬢様…

容姿こそ黒髪以外は変わられましたが…全体的に小さいパーツで整ったお顔立ち…
東洋の血が入っておられるのは見ればわかりました…



「やっと会えましたね。クリーチャー」

まるで同じ目線にいるかのようにクリーチャーを見下ろしてくるお嬢様…

あの頃と同じでございます…


「オフューカスお嬢様…よく…よくお戻りになられましたっ…」

クリーチャーめは涙が溢れてきました…
なんと情けない…

「ええ。戻ったわけではないけれど……そうね。また会えて嬉しいわ。今世の私はユラ・メルリィ・ポンティという名前よ。イギリスの魔法使いの父と日本の魔女の母から産まれた子よ。だからこうして私をオフューカスとして迎えてくれるのは嬉しいけれど、レギュラス兄様とシリウス兄様がいる時だけにして頂戴ね」

おぉ…
なんと…生まれ変わられても純血とは…
それにこの仰り方は…間違いなくオフューカスお嬢様です


「オフューカスお嬢様…クリーチャーめはお嬢様との約束をお守りしてまいりました。ずっと…ずっと…」

「ええ。そうね。この家に縛り付けるような遺言を遺してしまって申し訳ないわ。でも、ありがとうクリーチャー。ご苦労でしたね。私は貴方をオフューカス・ブラックとして誇りに思いますよ」

「滅相もありませんお嬢様…クリーチャーめは当然のことをしたまでです。身に余るお言葉です」

「変わらないわね。……ねぇクリーチャー。よければまた、ハーブティーと、ガレット・デ・ロアを食べさせてくれないかしら?」

「もちろんでございますお嬢様。ローブをお預かりいたします。すぐご用意致しますのでお待ちください」

「ありがとう。ゆっくりでいいから怪我をしないようにね」

お嬢様の濃い青のローブ、東洋の柄が内側に施された大変美しいものです

それをお預かりして、ハンモックにお掛けし、クリーチャーは厨房に向かいます

またお嬢様のためにこれを作れるとは、屋敷しもべにとってこれほど名誉なことはございません

















ブラック家に行くまでに160程までにょきにょきと背が伸びた私

新しい、少し大きめの、これからずっと使えそうな濃紺のローブを父から貰い、内側には控えめに桜の花が散りばめられた刺繍が施されていて、私は凄く嬉しかった
懐かしい…桜…

同時にこれはオーダーメイドだな…と確信した

しかも日本の魔女だからか…年頃になってきた私の他所行き服は袴に似た…どっちかっていうと武寄りの漢服に近いものだ

いや、日本人だよね?
カジュアルに見えなくもないし動きやすい部類には入るけど…
うまいこと和と中と洋が混在してる感じだからいいけど…


たが、正直あんまりこれでマグルの往来を歩きたくなかったが、幸い人通りがないので良かった

ブラック家に着いて、私はレギュ兄が話しており、クリーチャーは知っていると確信した

クリーチャーが私を見て固まったからだ
レギュ兄は案外お喋りだった

だから私はオフューカスとして接した
そしたらクリーチャーが静かに泣いたから心の中でかなりギョッとした
前を見たらレギュラスのニコニコ顔があるし
良い性格してるよほんと
それからクリーチャーと少し話して、前のように接してくれるクリーチャーにローブを預かってもらった
私はレギュ兄に続いて長テーブルのある奥の居間に進んだ

「おかえりオフィー。クリーチャーは泣いて喜ぶって言っただろう?」

「レギュ兄は人が悪いよね。あとお喋りね」

「うっ…まぁ仕方ないよ。言わずにいられないよ。それにクリーチャーなら大丈夫だ」

まぁそれには私も同意する
クリーチャーは滅私奉公かと思うくらいこの家に献身的に仕えてる

「それよりここにはどれくらい滞在するんだい?」

「二、三日かな。実はドラコに誘われて(拒否権なし)、クィディッチのワールドカップに行くことになってるの」

「それは本当かい?なら一緒に行けるね…」

「?レギュ兄はクィディッチにそこまで興味あった?」

「いいやあまり。ただファッジから招待されていてね。兄さんは、まぁ…あの通りだから魔法省側との交流はあまり快く思ってないんだよ」

あぁ成る程
最低限はしているだろうがそこまで深入りしてないだろうな
でもこれからはしてもらわないと困るんだけど…
レギュ兄がしてくれてるならいいか…

「兄さんが当主になったとはいえ、今までとあまり変わらなくてね…」

そうでしょうね
シリウス兄様は闇払いでもして情報を集めているんだろうな

「一緒に行っても良いけれど、私は貴賓席なんて行けないわよ?」

「それは僕に任せれば大丈夫。それにマルフォイに誘われているなら君を普通の席で観戦させる、なんてことにはならないさ」

いや、ごめん、普通の席でいいんだけど
心底

「わかりました。レギュ兄と一緒に行ましょう。ちなみにポートキーで?」

「『姿現し』でいいだろう」

「お兄様?しばしば私が14才ということをお忘れよね?それに、ワールドカップの会場なんだから『防止呪文』が掛かっているよ」

「僕がいれば問題ないよ。ブラックの名前は融通が効くからね」

それはそうだろうが…私情の塊だなこの大人
これはもう言っても聞かないだろうな…
それに私がやらなくても誰かに連れて行って貰えば法律には抵触しないだろう

「…はぁ…もう何も言わないよ」

「オフィーは昔から真面目だからね。少しくらい’’はめ’’を外しても’’全く’’問題に’’ならないよ’’」

引っ掛かる言い方するな
というか私は普通に検知不可能拡大呪文使ってるし…
兄様が思ってるほど、私はそこまで真面目というわけではない

「それより…指輪なんてつけていたかい?そういうのに興味があったんだね…」

私の右手の人差し指に嵌められている彼の指輪に目を留めて聞いてきた
まぁ…そりゃそうだよね…
若干冷や汗が流れたが、表に出さずに答える

「レギュラス兄様。そういう質問はちょっと…」

「いや、あぁ、その。オフィーはあまりそういうものに興味がないと思っていたから…ついね」

「ひとつくらいならね。それに、それを言うなら兄様こそあまり着飾らないよね」

本当はネックレスもあるが…
別に着けたくて着けてるわけではない…
ただ…

「僕は男だからね…家宝とかならまだしも、どこぞの詐欺師みたいなのはちょっと…」

引き攣った顔で思い出したように言うレギュラスに私は記憶の彼方に追いやっていたどこぞの自信家の詐欺師を思い出す

ロックハートか…

「…ごめん、レギュ兄。もう言わないよ」

「うん。気を遣わなくていいんだよ…むしろあれに騙されなかったオフィーは流石だよ」

当たり前だ
あんなの生理的に鳥肌が立つ

「あからさまだったからね…正直鳥肌が止まらなかったよ」

「はは…オフィーにそこまで言わせるなんてある意味大物なのかもしれないね彼は」

苦笑いしながらレギュ兄が言った

それからクリーチャーがハーブティーとガレット・デ・ロアを持ってきてくれて、レギュ兄とゆっくりとした時間を過ごした

三日間があっという間に過ぎて、私達は『姿現し』でクィディッチ・ワールドカップの会場に向かった





















一方ハリーは、休み期間中、アーサー・ウィーズリーの自宅で過ごしていた

ウィーズリー家のキッチンの暖炉で、ハリーは椅子に座って考え込んでいた
横ではロンとハーマイオニーが他愛ない話をして、なにやら言い合っている

そこにアーサー・ウィーズリーが魔法省から帰ってきた所で声をかけた

「やぁハリー。調子はどうだい?」

「ウィーズリーおじさん…はい。元気です」

「そうかそうか!それはよかった!Msグレンジャーも変わりないかな?」

「はい。ありがとうございます」

「ならば良い!いやはや!三人とも立派に成長してきたね!」

快活に言いながら、今年も一年何事もなく過ごせたことにアーサーは喜んだ

それにハリーは聞いてもいいものか…と悩み、シリウスに聞いても堅く口を閉ざして答えてくれなかったことを受けておずおずと口を開いた

「あの…ウィーズリーおじさん…」

深刻な様子で口を開いたハリーにロンとハーマイオニーは静かになり、「まさか…」と思った

「何だねハリー?」

「『オフューカス』という人をご存知ですか…?」

その瞬間、アーサーの顔から色が抜けた
明らかに聞かれたくないという様子で黙った

「どこでその名を聞いたのかね?シリウスか?」

「…は…はい…妹だって…」

ハリーは一瞬迷った
あのことを言おうかと
それに、ハリーはダンブルドアが彼女のことをオフューカスと呼んでいたので、怪しんではいたが信じてもいた

ダンブルドアが信じるならと
そしてシリウスとのやり取りからも
間違いなく彼女はオフューカス・ブラックだろうと

だが、ハリーは今まで聞いてきた事実からしても、あのオフューカス・ブラックが信用に値する人間か疑っていた

「そうか…シリウスが彼女のことを…」

歯切れ悪く、痛ましい顔でポツリと呟くアーサーに、ハリーはついに聞いた

「あの…その人はどんな人だったんですか…殺されたん…ですよね?シリウスと仲が悪いって…それに…父さんのことを嫌ってたって…」

思い切ってハリーが聞くと、アーサーはますます気まずい顔になった

「…………」

「ハリー、君が彼女について何を知ってるのかは知らない。だが、シリウスが何も言わないと決めたならこれ以上深入りするべきではない」

「でもっ…」

思わず彼女は生きていると言いそうになったハリーは口を閉ざした
ダンブルドアは何も言わなかったのだ

「彼女は死んだんだ。死んだ者のことを今更どうこういうのは、死者に対する冒涜だ。ハリー。それは君が一番よくわかっているだろう」

諭すようにアーサーに言われたハリーは思わず黙った

「はい…」

「『死人は口を聞けない』」

再度そう言われ、ハリーはますます不可解な、納得できない気持ちが芽生えた

何故、皆、彼女のことに関して口を閉ざすのか
何故、彼女は父を嫌っていたのか
もしかしたら、父を嫌っていたから…

と、証拠もない憶測ばかりが頭の中に渦巻く

シリウスが無実だと知っていたのは…
本当の犯人が誰か知っていたのは…自分がそれに関わったからじゃないのか…
父と母の死に…
それに彼女はスネイプと仲が良かったらしい…




煮え切らない想いを抱えたまま、ハリーは諦めて滞在させてもらっている部屋に戻った
ロンとハーマイオニーが遅れて来て部屋に入ってくる


「ハリー…」

ハーマイオニーがハリーの名を呼ぶ

「兄妹じゃないか……家族なのに…」

もう自分には持つこともできないものを持っているのに…
どうして…という苛立ちにいた哀しみを感じるハリーは顔を歪ませる

「ハリー…君が見たのは本当にその…その人…だったのか?…その…正直…「シリウスが嘘をつくわけがない!それにダンブルドアも否定しなかった!」」

自分が見たことを否定されるような言い方をされて思わず叫ぶハリー


ーーー「貴方とは縁も何もない赤の他人です」ーーー



あんな淡々と…
兄を助けたとは思えない言動…
あの時のシリウスの顔がずっと頭から離れないのだ

酷く傷ついたような…置いていかれた子どものような…
冷え切った家族の距離…
埋められない溝が見えた気がしたハリー


「…ねぇハリー。今貴方が気にすべきはそのことじゃないでしょう?」

ハーマイオニーがハリーの横に座り、言い聞かせるように言う

「そうだぜ。シリウスが言わなかったからなんだっていうんだ…今はシリウスの家族は君だろ?そう言ってたんだろ?」

「…」

ロンの言葉にハリーは「そうだ」と断言できなかった
シリウスは確かに自分を息子として扱ってくれている
だが…シリウスが本当に家族と想っているのは…と思ってしまうのだ

「…シリウスは…どうして教えてくれないんだと思う?…」

「…それは彼にしかわからないわ…私達は何も知らないもの」

「君の父親を嫌ってたんだろ?気を遣ったんだろ」

「…それだけじゃない気がする…きっと…何か僕に言えない理由があるんだ…」

「ハリー。仮にそうだとしてもそれは兄妹の問題よ。あなたが産まれる前の話だもの。深入りすべきじゃないわ…」

「なぁ考えてみろよハリー。仮にもそいつのお陰で君は家族ができたんだ。それって良いことじゃないのか?」

「…だけど…」

「ハリー。どうしてそこまで拘るの?」

わからない
それはハリーにもわからない
だが彼女が何か隠していることだけはわかるのだ
ハーマイオニーの言葉にハリーはもやもやとした腑に落ちない感覚が渦巻く







それからハリーは何も答えることができないまま、消化できない想いを抱えて眠った

その日、ハリーは夢を見た


古く…暗い…地下牢のような…ハッキリとした光景は見えてこない


ーーー「………し………て…」ーーーー

ーーーー「………ん…お……の……だ…」ーー



ただ判るのは…女性ものの華奢なローブの後ろ姿

そしてその奥にいる男らしき者の姿
肩から上は見えない



ただ、その男はその女性を抱き寄せていた…












そして、場面は変わり…酷く弱った、人間の姿ではないヴォルデモートらしきものが指示を出す声…

側にいる謎の男とワームテール

そして死の呪文を唱えて殺される瞬間…
響き渡る叫び声…



その光景を目にしたところでハリーはハーマイオニーに起こされて飛び起きた


「ハリー。ハリー!大丈夫?」

蝋燭を持って心配そうに覗き込むハーマイオニーにハリーは眼鏡を取ってつけた

「ハーマイオニー…夢か…」

「起きて!起きてロン!さっさっと服を着替えて」

グースカ寝ているロンに声をかけて促すハーマイオニー

「急いでロン!朝ご飯できてるわ!」

また眠ろうとするロンをハーマイオニーが注意して起こす
のろのろと起き出した二人は言われるまま準備した

















肌寒い外はまだ月が出ており、右前方の地平線が鈍い緑色に縁取られている
夜明けが近いことがわかる

ハリー達は、アーサー・ウィーズリーについていきながら暗い庭を歩いた

「マグル達に気づかれないように、皆いったいどうやってそこに行くんですか?」

クィディッチ・ワールドカップの会場を目指して歩くアーサーの隣に並んで聞くハリー

「組織的な大問題だったよ。問題はだね、およそ十万人もの魔法使いがワールドカップに来るというのに、当然だが、全員を収容する広い魔法施設がないということでね。マグルが入り込めないような場所はあるにはある。でも、考えてもごらん?十万人もの魔法使いをダイアゴン横丁や9と4分の3番線にぎゅう詰めしたらどうなるか。そこで人里離れた荒地を探し出し、できる限りの『マグル避け』対策を講じなければならなかったのだ。魔法省を挙げて、何ヶ月もこれに取り組んできたよ。まずは当然のことだが、到着時間をそれぞれずらした。安い切符を手にしたものは、二週間前に着いていないといけない。マグルの交通機関を使う魔法使いは少しはいるが、バスや汽車にあんまり大勢詰め込むわけにもいかないーー。なにしろ世界中から魔法使いがやってくるのだから」

「『姿現し』をする者は勿論いるが、現れる場所を、マグルの目に触れない安全なポイントに設定しないといけない。確か、手頃な森があって、『姿現し』ポイントに使ったはずだ。『姿現し』をしたくない者、またはできない者は『移動(ポート)キー』を使う。これはあらかじめ指定された時間に、魔法使い達をある地点から別の地点に移動させるのに使う鍵(キー)だ。必要とあれば、これで大集団を一度に運ぶことができる。イギリスには二百個の『移動キー』が戦略的拠点に設置されたんだよ。そして我が家に一番近い鍵が、ストーズヘッド・ヒルのてっぺんにある。今そこに向かっているんだよ」

そう説明して、アーサーは行く手を指した
オッタリー・セント・キャッチボールの村のかなたに、黒々とした大きな丘が盛り上がっている

一行は村に向かって、暗い湿っぽい小道をひたすら歩き、着いた時には空が白み始めていた

そしてアーサーの声掛けで各々『移動キー』を探していた時

「ここだ、アーサー!息子や、こっちだ。見つけたぞ!」

と大きな快活な声が響き、一同そちらに目を向ける
星空を背に長身の影が二つ立っていた

アーサーはその姿を認めると、「エイモス!」と声を掛けて近づいて行った

褐色のゴワゴワした顎髭の、血色の良い顔の魔法使いと握手した
男は左手にカビだらけの古いブーツをぶら下げていた

「皆、エイモス・ディゴリーさんだよ」

アーサーが紹介した

「『魔法生物規制管理部』にお勤めだ。皆、息子さんのセドリックは知ってるね?」

アーサーはエイモスの横にいるとてもハンサムな青年、ホグワークのハッフルパフ寮のクィディッチ・チームのキャプテンで、シーカーでもある彼を紹介した

「やぁ」

セドリックが皆を見回して挨拶した
皆も「やぁ」とぎこちなく挨拶を返したが、フレッドとジョージは黙って頭をこくりとしただけだった
去年のクィディッチの開幕戦でグリフィンドールを打ち負かしたことを未だに許していないのだ

それからカビブーツで会場に移動した一行は、それぞれのキャンプ場のテント場に向かい、試合が始まる前での準備をした

競技場へと続く大通りに面したウィーズリー家のテントの前では続々と魔法省の役人が忙しなく出入りしていた

アーサーは魔法省に勤めているので、何人もの人間と挨拶を交わした






そんな時、ハリー達はある人物達が大通りを道を歩くのを見た
濃紺のローブを羽織り、ローブから見え隠れする珍しい白と黒の民族衣装のような袖が広く長めのワンピース?のようなもの
和と洋が混ざったような小綺麗な恰好だ

緩やかに波打つ艶のある黒髪を綺麗にハーフアップにまとめ、独特な柄の髪紐で結んでいる
聡明さを湛える少し伏せられた目は黒く、いつもと変わらない
この休み期間で背がかなり伸びたのか、もともと大人っぽい雰囲気にさらに磨きがかかり、控えめな女性の姿と成長していた

その横には、薄緑の長いローブを羽織った背の高い青年のような顔の男

適切な距離でゆったりと歩くその者達にハリー達は驚いた


「なんでブラック先生とユラが…」

「そりゃ観に来たからじゃないか?まぁ一緒にいるのは怪しいけど…」

ハーマイオニーとロンがそれぞれボソリと言う横で、ハリー「やっぱり彼女はオフューカスなんだ…」と改めて思った



「レギュラス!レギュラスじゃないか!」

レギュラスの姿を認めた途端、ウィーズリー氏が声をかけて呼んだ

アーサーの声に気付き、薄緑のローブを着た男、レギュラス・ブラックは黒髪を揺らして振り向き、灰色の目を向けた

同時にゆっくりユラも振り向いた

顔を見合わせて何事かを話した後、二人はアーサーの元にやってきた


「やぁ。元気だったかいアーサー?」

穏やかな笑顔で話しかけて来たレギュラス

「なにかと物騒なことは起こるがうちは大丈夫」

それから何やら仕事の話をし始めた二人を他所に




ユラはウィーズリー双子に見つかり、絡まれていた

「よぉユラ!元気してたか?」

「どうせ休み期間もずっと勉強ばっかしてたんじゃないか?」

「それなりに元気でしたよ。それに、私はそこまで勉強好きなわけじゃないですよ先輩。読書が趣味なだけです」

「相変わらず真面目ちゃんだね〜!あ、だから貧血の弱々なのか?」

「ちょっとは体動かさねぇとまた倒れるぞ貧血ポンちゃん〜」

「ソウデスネー。人には得意不得意がありますから。突かないでくださいよ」

「そういやこの前聞いたやつ新商品の発明に役に立ったぞ!」

「そうですか。それは良かったです。使うのは私とスネイプ先生の目につかない所でお願いします」

「ひゅ〜相変わらずお優しいね〜。何でそんなスネイプに気ぃ遣うんだ?」

「グリフィンドールのためを思ってですよ。減点されたくないならせめてもう少しこっそりやってはどうですか?あまりやり過ぎると退学にされますよ」

「俺たちがそんなヘマするわけねぇーじゃん〜」

「おうよ!俺たちを誰だと思ってんだ?」

「悪戯を生き甲斐にしている(頭が)面白い先輩方ですね…」

「「その通り!」」

「そういうところですよ…」

呆れたような声を滲ませながら返した彼女は、アーサーと話していたレギュラスに呼ばれ、双子に丁寧に言葉をかけて行った




「おや、Msポンティ。会うのは2年ぶりだね?」

「ええ。ご無沙汰していましたMrウィーズリー」

「ああ。とても背が伸びられたようですな。いやはや、成長とは早い…して、何故レギュラスと?」

「彼女のお父上とは少し交流がありましてね。あまり外に出ない娘を連れ出してやってほしいと頼まれまして、保護者代わりとして私がお連れしたのですよ。Msポンティも友人から誘われていたので丁度良いと思い、ね」

外向きの笑顔でツラツラと作り話をいうレギュラスにユラは心の中で「相変わらずだ…」と、苦笑いになった

「ほう?失礼ですがMsポンティのお父上はどのようなお仕事をされて?」

「父はフリーランスの通訳として日本の魔法界との仕事を取り持つ仕事をしています」

「これはなんと!日本のですか!あの異世界のような島国の通訳をされているとは!素晴らしいですな!」

「ありがとうございます。父も喜ぶでしょう」


その後、アーサーの日本に関する質問が弾丸のようにあり、それに嫌な顔をせずに丁寧に朗らかに答えたユラは、レギュラスに促されお暇の言葉を述べて去って行った


















「ユラ!来てくれたんだな!…ってお前本当にユラか?前に会った時はこんなだっただろ?」

「こんな」と、手を自分の膝くらい位置に添えて言ってきたドラコ
私はそこまでチビではないぞ

「お久しぶりねドラコ。休み期間でとても背が伸びたのよ?」

「怒るなよ」

「あら、怒らせるようなことを言った覚えがあるの?」

「いや、僕は…その…そう!褒めたんだ!」

「そうなの…お褒めいただきありがとう?」

「ふふん!」

満足そうな顔をするドラコに私は「素直だ…」と思ってしまう
そして、ドラコの後ろからルシウスとナルシッサが来た

ルシウスとはシリウスの件から、あちら側の動向について変更があることに関しては連絡してくれている
今回のワールドカップで、矢張りデスイーターが襲撃をすることを教えてくれた
これは避けられないが…ルシウスは今回は加担せずにデスイーターを引き入れる手引きだけにしたようだ

できるだけ手は尽くしたらしいが、矢張り復活が近いのか…どうにもならなかったらしい

それだけで十分だ
ルシウスにはデスイーターから抜けることに尽力してほしい
容易ではないだろうが

「お久しぶりですな、Msポンティ」

ステッキを持ち替えて手を出して来たルシウスに応えてやんわりと軽く握手を交わす

「お久しぶりございます、ルシウス様」

「Msポンティ。去年ぶりですね。とてもお美しくなられて…聞きましたよ。ドラコのことを助けていただき感謝致しますわ。本当にありがとう」

ナルシッサとも握手を交わして社交辞令の挨拶と感謝を述べられる

「彼は私の友人ですから当然ですわ。ナルシッサ様もご健勝のようで何よりです」

「まぁ…ドラコは良い友人を持ちましたね」

「母上、ユラはオタクなだけですよ」

おいこら

「これドラコ。レディに対して失礼なことを言ってはいけない。すまないねMsポンティ。息子はまだ若いのだ」

そうですね
若いですね
エネルギーに満ち溢れている

「父上!?僕はもう14歳ですよ!?」

ドラコ、気にするところはそこか

「’’まだ’’14ではないか。お前はもっと多くを学ばなければならぬ」

親心だね
ルシウス本当に変わったな
ドラコがむくれた顔してる


それからレギュラスも挨拶を交わして、私達は競技場の最上階貴賓席に向かった

遠慮ではなく、本当に私が行ってもいいのか思わず聞いてしまった
だが、揃って「問題があれば聞いてみたいものだね」と、流石お金持ちの純血の家系の言葉が返って来たので私はもう突っ込むのをやめた

うん、私えらい
長いものには巻かれておこう






そして、貴賓席に着くと魔法省大臣コーネリウス・ファッジが忙しそうに要人達と挨拶を交わしていた
ルシウスとレギュラスも何やら話をしているので、私はドラコと並んで立ちながら宿題の話をしていた
大人の会話は大人に任せておこう

「ユラは魔法薬学の『アルマジロの胆汁』の課題終わったか?」

「ええ。その様子だと苦戦してるみたい?」

「そ、そんなことないさ」

「頑張ってね?」

「ふん、僕を誰だと思ってるんだ。それくらい早々に終わらせたさ」

「『アルマジロの胆汁』よりもドラコは古代ルーン文字学の方が苦戦していそうだよね」

不意に聞こえた柔らかい聞き慣れた静かな声にドラコと振り向く
濃紫ローブをローブを纏った背が伸びたセオがいた
まぁドラコも伸びてるけど
皆成長したんだな

「なんだセオドールか。遅いじゃないか」

「久しぶりねセオ。また背が伸びた?」

「あぁ。少し成長痛が痛くてね。…それは…新しいローブかい?」

すらっとしたミステリアス少年が、にょきにょきそのまま成長した感じだな 
細身だけどさすが、美少年だ

「えぇ。背が伸びたから今までのが合わなくなって両親から贈ってもらったの」

「少しいいかい?」

セオがローブを触りたそうにしてくるので、私は許可を出す

「見慣れない生地だね…とても繊維が細かくて肌触りがいい…重厚感もあるいい品だ…」

まぁ着物の生地だからね…
正直肩凝りが半端ないが、そこは魔法の力でちょちょいだ
というかよく分かるな…
セオってこういうの興味あったけ?

「日本の伝統衣装と同じ生地で作られているのよ。これはその中でも軽めのものだけど、気に入ってるわ」

「本当だな。こんな肌触りのもの僕は知らないな…ん?内側に何か刺繍されてないか?」

ドラコもしげしげと手に取りながら言ってくるので

「日本の伝統花を刺繍しているの」

「大方、お前があんまり女らしく着飾らないからお母上は気を遣ったんだろうな」

ドラコがしれっと失礼なことを言ってくる
こやつめ…

「ドラコ君?最近紳士としての自覚をお忘れのようじゃないかしら?」

「お前とパンジーは女扱いしても意味ないだろ」

なんと開き直りよった

「ふふっ…まぁ…ユラとパンジーは女性というより気のおける友人だよね。ユラはどっちかというとドラコのお姉さんみたいな印象だし」

そこ、何を笑っている
誰が姉だ誰が

「「誰が姉よ・だ!」」

ハマってしまった
さらに笑ったセオに主にドラコが突っかかって抗議している

仲良くしている?二人を見ているとレギュラスに呼ばれた

「どうされましたレギュラス様?」

なんだか賑やかに話している二人を置いて、側に行くとコーネリウス・ファッジが前にいた

あと、ルシウスも

なんだこの謎のメンツは
気まずい…
とても…
こんなお偉いメンツにただの子ども一人とは…
全員背があるので見下ろされる圧迫感と威圧感が凄まじい

「こちらが先程ご説明した、Msポンティです大臣」

何を説明した何を
ファッジの品定めするような視線が上から下へとくる
そして、手を出してくる

「レギュラス殿とルシウス殿からお話は伺っていますよMsポンティ。とても優秀なお嬢さんだそうで、私は魔法省大臣コーネリウス・ファッジだ」

差し出された手を握って軽く握手をしながら、控えめに作り笑顔を浮かべる

「お初にお目にかかります大臣。ユラ・メルリィ・ポンティと申します。まさか大臣自らお声をかけてくださるとは、光栄です」

正直、私はファッジに関しては「どうでもいい」というのが本音だ
これほど保守的な人は苦手だ

「いやはや、実に礼儀正しいお嬢さんだ。レギュラス殿が言った通りですな」

「ええ。彼女は私の自慢の生徒でしてね。この歳で『守護霊の呪文』を使えるのですよ」

え、ちょっとレギュラスさん?

「私の息子とも懇意にしているようでしてね。将来はとても有望でしょう大臣」

ちょっと待て
私は魔法省に就職する予定はないぞ
こんなところで就職斡旋される必要はないぞ
今後のためにファッジが必要だとしても私を紹介する意味ある?

「ほぉう!その歳で『守護霊の呪文』を!?なんと!それは将来有望ですな。Msポンティ。卒業後は是非魔法省の方に。はっはっはっ」

はは…
ははは…
巻き込んだことを覚えておけレギュラス、ルシウスよ
明らかにマルフォイ家とブラック家と繋がりのある私を引き込もうとしてるのがわかる
本当に権力思考な人だ
基本悪い人ではないんだろうけど…

「勿体ないお言葉です。大臣」









そんな感じで何とか引き攣りそうになる顔で返事をして、私はファッジとの挨拶を終えた

そして耳をつんざくような歓声の中、クィディッチ・ワールドカップが大臣の宣言で始まり、私は終始観ているフリをしていた

ドラコはうきうきと楽しそうにしていたが、セオと私は子ども同士で座りながら選手の分析だけたまにしながら、本の話をしていた

興味ないのだ
まじで

大人達は観戦しながら、ひそひそと裏話などをしていた
恐らく、レギュ兄とルシウスが連れてきた理由はここにあるんだろう

色々と耳に入ってくる

私は元来こういう裏で動くことは…得意ではない…



ーーー「お前は要領が悪いからな。僕には到底追いつけないが…まぁひとつだけ使えるところを挙げるなら…そうだな。…お前はその凡庸さを売りにすればいい。少なくとも僕はお前の凡庸で平凡なところを気に入っている」ーーーー


うるさい…
ならなぜ平凡な日常を送らせてくれなかったのか…
私は目立ちたくなかった…
あなたの玩具でも…物でもない…
単に育ちが一緒だった…それだけなのに…
自分が平凡なのはわかってる
才能に溢れ、天才秀才と認められたあんたにはわからないだろう…
なのに…なのにあんたは…それを間違ったことに使った…
どうして…






嫌な想い出がよぎって私は首をふるふると振って忘れることにした
無意識に指輪に触れながら気分は沈むばかり…
何故これを私に……

彼は私に渡すために着けていたと言った…
これは彼の物のはず…
何故……









ワールドカップが終わり、私は、握手の時に受け取ったメモ通り、人目のつかないところでルシウスと会った

「今回の襲撃は避けられない。私は息子を連れて先に邸に戻る。君はどうする」

「私もタイミングを見てレギュラスと戻ります。今回の狙いは『印』を出すこと…貴方の立場はとても危険よ。今回の件に関わらないのは正解だと思うわ…でも…本当にいいの?」

デスイーターをやめるといっても、未だに闇の陣営に身を置く彼はとても危険だ
しかもデスイーターのリーダー格でもある
もし、こちら側に情報を流しているのがバレれば…

「…『あの方』は滅びる。私は…二度も過ちは犯さない。今度こそ息子を守る」

「ルシウス…」

「私より危険なのは’’君’’だ。自分がしていることがわかっているのかね?もし君の存在が『あの方』に知られれば…」

「…ええ」

どうせ私はハリーが彼を葬った時死ぬ…
私は罪を償わなければならない…

ルシウスが責めるような目で見てくるのがわかる…

「…何故ポッターにそこまで命をかける」

心無しか苦しげな、忌々しそうなルシウスの言葉に私は心の中で否定した

私は彼の’’物’’だ…
だから私が命をかけるとすれば…彼以外にはいない…
私はそこまで…お優しい人間じゃない
見て見ぬふりをし続けた
私の手は彼と同じくらい血で汚れている…
だからこれは…

「強いていうなら、私のエゴよ…ルシウス。どうか貴方は家族を守ることだけを考えて」

「っ…オフューカス…」

まるで「何故だ」と言いたげな手が肩に乗せられた
それに軽く指先を添えてふるふると首を振る

オフューカスであった頃は、私は本当に何もしなかった
流されるまま…ただ悲劇を観ていた…関係ないと…
関わるべきではないと…

無関心を貫いていた私…彼が知る私はそうだろう
だから余計に私がここまで動くのが不可解に映るだろう…

「貴方は良い父親よ」

ドラコが彼を心から尊敬しているのはよく知っている
躾や教育はとても厳しいが、それはアブラクサスもそうだった…
彼は受け継いでいるに過ぎない…
妻と息子を心から愛していない人間ならそんなことはしない…
ダンブルドアのようなことを言うわけではないが、彼は愛を知っている…愛を知らない人は示すことなんてできるはずもない…

私にはわからない…
示すこともできない…
最低で薄情な…彼が言うように’’卑怯’’な人間だ…
だから…


「どうか守って」

ドラコを
何も知らない彼を…

何の罪もない彼らに尻拭いさせるわけにはいかない
今度こそ…
ハリーに彼を葬る重荷を押し付けるのだ…

彼の目を見てそう言うと、苛立たしげに歪められた

「…それじゃあ。また」

そろそろ戻るために踵を返した私
だが

「オフューカス」

小さく名前を呼ばれて軽く振り向く
シルバーに近いプラチナストレートのブロンドの髪が暗闇の中で輝く
難しい顔をしている

「何かしら」

「用心しろ」

そう言うと、ローブを翻して行った
珍しい
ルシウスがそんなことを言うとは…
彼の方がよっぽど危ない立場だというのに…

セブルスもダンブルドアから言われて未だに二重スパイを続けている…
私が先のことを教えたことでまだそこまで警戒すべきことはないが…
はっきり言って分霊箱が見つからない以上手探りなのは変わりない…
それに私は以前のパーティで死喰い人に目をつけられている
恐らくは良い意味でだ
まだ知らなかったルシウスにより紹介されたことで、私もあちら側の陣営に片足を入れてしまった

















その夜、お祭り騒ぎになるキャンプ場が突然悲鳴と絶叫に変わり、人々の走る音が聞こえた

ハリーとロン達はアーサーに急いで起こされてテントを出た
まだ残っているそこかしこの火の明かりで、みんな追われるように森へと駆け込んでゆく

キャンプ場の向こうから何かが奇妙な光を発射しながら、大砲のような音を立てて向かってくる

大声で野次り、笑い、酔って喚き散らす声がだんだん近づいて来る

そして突然強烈な緑の光が炸裂し、辺りが照らし出された
魔法使い達が一塊になって、杖をいっせいに真上に向け、キャンプ場を横切り、ゆっくりと行進してくる

その魔法使い達は、黒いフードをかぶり、仮面をつけている

燃え上がるテントの間を抜けて、その魔法使いの塊はどんどん向かってくる

「お前たち!森へ入りなさい。バラバラになるんじゃないぞ!フレッド!ジョージ!ジニーを責任もって守りなさい!」

アーサーの言葉に、フレッドとジョージはジニーを連れて、ロンとハリーとハーマイオニーは人の波に流されながら森に走った

ビル、チャーリー、パーシーは近づいてくる一団に向かって、もう駆け出していた
アーサーもその後を急ぎ、同時に、次々と四方八方から魔法省の役人が飛び出して騒ぎの現場に向かう

ハリー達は森に入った

競技場への小道を照らしていた色とりどりのランタンはすでに消え、木々の間を黒い影がまごまごしと動き回っていた
子供たちは泣き喚き、ひんやりとした夜気が伝って、不安げに叫ぶ声や恐怖に慄く声が響いている


ハリーは顔も見えない誰かにあっちこっちへと押されながら歩いた

その内、強くもみくちゃにされ、ハーマイオニーやロンが自分を呼ぶ声を聞きながら、転んで気を失ってしまった



















「…………リ…」

頭がぐわんぐわんとする中、焦げた匂いと、自分を呼ぶ淡々とした声に薄らと目を開けるハリー

「……リー」

誰かが自分の側で呼んでいるのがわかる

「…ハリー」

ハッキリと自分の名前が聞こえて目を開けたハリーは目の前にいる人物に少し驚いた

「よかった。目が覚めたのね。こんなところで気を失っているなんて危ないわ」

独特な民族衣装を思わせる白と黒の帯のゆったりとしたワンピースの上から濃い青のローブを羽織る女性
膝をつき、憂げな黒い目がハリーを覗き込んでいる

「ハリー?」

「ゆ、ユラ…じゃなかった…オフューカスさん…」

「そっちの名前では呼ばないで頂戴。誰もいないときなら構わないけど…それよりどうしてこんなところに?」

「…転んじゃって…」

「そう。気をつけて…ここは危険よ。魔法省が今『死喰い人』を探し回っているから早く戻るのよ。『ルーモス』」

特に問い詰めることもせず、ユラが『灯り』を唱えて、杖が光った

「ロンやハーマイオニーを見なかった?それにどうしてユラはここに?」

ユラに手を差し出されて、一瞬迷ったがその手をとり立ち上がった

「見てないけど…多分貴方を探してるわ。この辺りにいるなら灯りに気づいて来てくれるといいのだけど…私はレギュラス先生と来たから、一応彼がいないと戻れないの…」

「ブラック先生と?先生はどこに?」

「魔法省の役人と犯人を探しているわ」

「ユラをひとりにして?危険だよ!」

「リリー似て優しいのね。私より貴方の方が危険よ。それより怪我はない?」

いきなり母親の名前を出されて褒められたのでハリーは戸惑った

「あ、あぁ…大丈夫だよ。ユラ…あの、母さんを「ハリー!!」」

「知っているの?」と聞こうとしたハリーは自分を呼ぶ高い声に遮られて聞けなかった

声の方を見るとロンとハーマイオニーがいた
ユラの灯りに気付いたのだろう

ハリーとユラが立っているところまで来た二人が近づいてユラの姿を認めると、少し訝しげな驚いた顔をした

「二人が来たようだし私は行くわね。また新学期に会いましょう」

そう言ってローブを翻して行こうとしたユラにハリーは思わずローブを掴んだ

「待ってオフューカスさんっ」

ハリーの行動にロンとハーマイオニーは驚いた顔をした

「……私はユラよ」

「母さんに似てるって…君は…母さんを知ってるの?」

どうしても…
どしても聞きたいこと
ハリーにとっては亡き両親の学生時代の頃を知る者は周りに多くいるが、あまり語ってくれない
ユラが…オフューカスが何か教えてくれるとは思っていないが聞かずにはいられないのだ

「……ええ」

「…母さんと君は…」

ハリーが何か聞こうとした時、突然、恐怖を掻き立てる叫びではない呪文を唱える声が響き、緑色に輝く何かが暗闇か空に立ち上った

空へと舞いがったそれ


「あれはいったい…」


それは巨大な髑髏だった
エメラルド色の星のようなものが集まって描く髑髏の口から、舌のように蛇が這い出していた
見る間にそれは高く高く上り、緑がかった靄を背負って、あたかも新星座のように輝き、真っ黒な空に輝き、真っ黒な空にギラギラと刻印された


その瞬間、周囲から爆発的な悲鳴が上がった



「ハリー!早く行くのよ!」

髑髏に目を取られていたハリーはハーマイオニーが叫んで上着を引っ張るのに現実に戻ってきた

「いったいどうしたんだい?」

顔面蒼白で震えるハーマイオニーを見て、ハリーは驚く

「ハリー、あれは『闇の印』よ!」

ハーマイオニーが力の限りハリーを引っ張りながら、呻くように言った

「『例のあの人』の印よ!」

「ヴォルデモートの?」

「ハリー、とにかく急いで!」

ハリーは急いで後ろを向いた
そしてロンとハーマイオニーも空き地を出ようとした瞬間、ポン、ポンと立て続けに音がしてどこからともなく二十人の魔法使いが現れ、四人を包囲した

杖を向けてくる魔法使いにハリーは「伏せろ!」と言った

「ステューピファイ!(麻痺せよ!)」

と魔法使い達が唱えたが、何かに弾かれたような音がした

「オっ…Msポンティ!バーティ!杖を下ろしてくれ!」

「やめろ!やめてくれ!私の息子だ!」

そして、聞き覚えのある声二つが響きハリー達が見ると、ユラを庇って立っている魔法史のレギュラス・ブラック先生とアーサー・ウィーズリーがいた

普段は穏やかで取り乱さない表情が、焦ったように眉を寄せて、歳をとっても儚げな、少年のような顔を怒りで歪めている

「先生。私達は大丈夫よ…」

「オ…Msポンティ…よかった。怪我はないかい?」

背中に庇ったユラに振り向き、上から下までざっと見て怪我をしてないか見た後念のため尋ねるレギュラスに

「ないですよ。ありがとうございます」

安心させるように言ったユラにホッと息をついたレギュラス

「ロン、ハリー、ハーマイオニー、皆無事か?」

続いてアーサーが大股で近づいてきてハリー達が無事か真っ青な顔で聞く

だが、そこに無愛想な冷たい声がした

「どけアーサー、レギュラス殿」

クラウチ氏だった
魔法省の役人と一緒に、ジリジリと四人の包囲網を挟めていた

「誰がやった?」

刺すような目で三人見ながら、クラウチ氏が言った

「お前たちの誰が『闇の印』を出した?正直に言え!君達は犯罪の現場にいた!」

「バーティ!子どもだぞ!」

「馬鹿なことを言わないでくれバーティ!『闇の印』は印を持つ者にしか出せない!」

レギュラスが咄嗟にそう叫び、ユラの肩を強く守るように抱き寄せる

「っ!」

「じゃああの…仮面を付けた人達は…奴の僕(しもべ)達だったの?」

「そうだ…『死喰い人』だ…」

「おまえたち、あの印はどこから出てきたんだね?」

アーサーが落ち着いてそう聞くと、ハーマイオニーは声のした方を指差して「木陰に誰かいたわ…何が叫んだの…呪文を…」

ハーマイオニーが怯えたようにそう言い、バーティの表情はますます厳しいものになった「誰が信じるものか」と顔に書いてある

「呪文を唱えたのかね?お嬢さん、あの印をどうやって出すのかよくご存知のようだ。どうかねレギュラス殿?」

バーティがレギュラスに意味ありげに聞き、レギュラスは些か不愉快な顔つきで答えた

「あの『呪文』を子ども達が知っているわけがないだろう。それに私のことを疑うならあり得ないと言っておく。それはバーティ、’’貴方が一番よく’’知っているだろう」

冷静な声が響き、バーティは眉を寄せる

レギュラスは元死喰い人と言われている
ハリー達はそのことがまだ信じられない
穏やかで優しくて、平等な魔法史のレギュラス・ブラック、というのが彼らの中でのレギュラスに対する印象だからだ

それから二人が静かに睨み合い、沈黙が流れて、バーティは役人を引き連れて証言のあったところに向かった













「すまない…本当にすまない一人にして。怖かっただろう…」

レギュラスが眉を下げて悔いるようにユラに言うので、アーサーは意味がわからなかった

ハリーは納得できたが、あの時のやりとりを見てなかった、聞かされただけのロン、ハーマイオニーは俄かに信じられないでいた

「大丈夫ですよ先生。もう戻りましょう」

「…あぁ。すまないアーサー。私達はこれで失礼するよ」

「あ、あぁ…Msポンティは大丈夫かね?」

「ええ。大丈夫ですよ。失礼しますね」

そう言って、レギュラスは手を出して、ユラはそれに手を置いて『姿くらまし』で消えた




















「…聞きたいことがあるんだろう?尤も、お前の質問は予想できるが」

呆れたような声色で、木の枝に乗って足を組みながら見下ろして言ってくる彼に私は眉を顰めた


あの後、私はレギュラスとブラック家に戻り、その日のことを話して後日帰路についた

安全のために『姿現し』で戻ってきた

レギュラスは不安そうに、私がデスイーターに殺されたことでトラウマになっているのだろうと思っているようで、とても申し訳なさそうな様子だった

悔いているような…


私の知ってる通りに行くなら、今回…



「…なら、答えてよ」

「その答えは前にも言っただろう。’’彼’’と’’僕’’は別者だ。彼は僕であり、僕は彼でない」

「言葉遊びをしたいわけじゃないのよ。…人が…死んでしまうかもしれないのよ…」

「そんな言い方をするお前には返事をしたくない。不愉快だな」

「っ!どっちがっ…」

「お前が激情を向けるのは僕にだけだ。それに、お前は他人にそこまで関心はないだろう」

ええそうよっ…
ないわよっ
あんたの言う通りよっ…
知らない人が死のうが私は…
でもそれではダメだって気づいたのよっ…
やっと…
遅すぎた…

「…お願いよっ…トムっ…私は…私は…」

セブルスも…
セドリックも…
もう誰も…
目頭が熱を持って…頭が熱くなる…
貴方が彼と違うっていうなら……教えてよ…

「…いいだろう」

さっきとは違う、思いついたような彼の声が聞こえて思わず顔を上げると目の前に彼がいた

「その代わり僕に何を’’して’’くれる?」

もう…私にあげられるものなんてないじゃない…
既に命を…
約束したんだから…

「何でもいい。今ならどんなものでも受け入れてやる。僕の機嫌を損ねないように考えてみろ」

そんなの…何でも良くないじゃないの…
本当に勝手で最低…

「………わかr「わからないはなしだ」……」 

本当に性格悪いっ…
破綻してるっ…
わからない…
わからないわよ…あんたが素直に頷きそうなことなんて…

かなりの沈黙の後…
私は悩みに悩んだ結果…
体が無意識に動いていた


彼に向かって控えめに腕を広げてた


「ん……いつも…してもらってるから……これしか…思いつかない…」


なんだこれ恥ずかしい
こんなのやりたくない…
こいつはいっつもこんなこと平然とやってんのか…
あり得ない…

顔を背けて待っていると無言で温度のない体がきた


背が高い彼の体が被さってくる


首元に顔を埋めてきて…まるで子どもが親の首元に抱きつくみたいに…抱きついてきた

なんとなく…
なんとなくだが…彼の広いような酷く小さな…
その背中に腕を回してポンポンと叩いた

ピクリと彼が動いた気がした…

私も背が伸びた…
それでも彼の胸くらいの位置だが…
彼の背中に易々と手を回せるくらいだ…抱きしめられる…

背が高いのに…
今は…
今だけは彼が子どものようで…

気のせいだ…
彼は’’そういう風’’に魅せることができる…
でも…
それでも…


何も言えずに黙っていると、彼が首元で動き

「’’彼’’の切り分けた魂は二つだけだ」

思わず固まった
嘘……
二つだけ?
どうして?
7つあるはず…

「お前の為だよ。僕は当時お前を守るためにあらゆる手を尽くした…お前は信じないだろうが」

耳元で呟かれる言葉に私は何も言えない…
信じてない…
信じられるわけがない
貴方は…
貴方は…私を支配してた…
実験台にして…
笑い事で済まされないことを…平然としてきた…
私が誰にも言えないのを見透かして……

「’’彼’’’が復活するのは’’必要’’なことだ。君は、助けようと動くだろう。僕は止めない。必要なら手を貸してやる」

怪しすぎるっ…
そんなの…そんなの…
どうして?
自分が復活できるのに…

「……セドリック・ディゴリーを…助けたい…」

本当なら炎のゴブレットにハリーの名前が入れられることを止めたい
だけど無理だ…
避けられない…
避けられないなら…
せめてセドリックは…
セドリックに思い入れがあるわけでも関わりがあるわけでもない…
ただ彼は巻き込まれただけの罪のない人だ…
殺されるのは……あまりに…

「……以前お前を連れて行ったところを覚えているか?」

唐突に聞かれて思わず唖然とした
正直連れ回されすぎて…
でも以前と言った…

「…あの…廃墟の…たしか…リトル・ハングルトン…」

「『リドルの館』。あの近くには僕の父だったものが眠っている」

彼のゾッとするような低い艶のある声で私は肩が震えた
まさか…
まさかそんな…

「僕が教えてやるのはここまでだ。あとはお前の頭次第」

私の髪を弄んでいるのだろう
詰まらなそうに淡々と言う彼に私は足が地面に縫い付けられたように動かなかった…

彼は全て…
彼の背に回る手が震えるのが止まらない
怖い…
怖い…
本当は怖くてたまらない…
これから起こることが…
自分にはどうにもできないのではないかと…
私はハリーみたいに勇敢でもない…

「止まっているぞ」

突然の声にあからさまに驚き、心臓がドクドクと鳴った
まるで思考を覗かれた時のような恐ろしさ…

背を叩く手が止まっていたことだろうか…
それしか思い当たらない…
促す彼に恐る恐る続けて…

ポン、ポン、と軽く触れるように叩く…

本当なら思いっきり叩いてやりたい…

「それはやめておいた方がいいぞ」

っ!
人の頭を覗かないで欲しい!
やめてよっ!

「な…なにがかな…」

「無礼なことを考えただろう。…全くお前は、粗暴なところは直らないようだな。それなりに取り繕えても矢張り本性は隠せないようだな」

鼻で笑ったように嘲ってくる彼に私は随分久方ぶりに感じる血が昇ったような熱を感じた

「〜!…も、もういいでしょっ…」

頭に血が昇って手を下ろして逃げるが勝ちしようとしたが、無理だった

「まだ、僕は満足してないぞ?あれだけヒントをやった見返りがお前の抱擁ひとつで済まされるんだ。僕の寛大さに感謝しろ」

💢
尊大で傲慢な物言いに口許がヒクヒクが震える
人の命がかかっているというのになんだその態度はっ…
あんたにとっては人生や人なんてチェスの盤上でしかないだろうっ…
だけどみんな生きてるんだよっ…

どうしようもない怒りと苛立ちを覚えながら抱き寄せられた腕を払うこともできずに大人しくしていた

私は結局’’物’’でしかない…
彼の盤上で動く駒…
酷く滑稽で…卑怯な…
王様の横でぬくぬくと自分の命が脅かされないようにしている…

ペティグリューと同じだ…
本当最低…

私も…彼も…





それから彼の気が済むまで私はそのままでいた
大人しく…
これ以上不機嫌にならないように…










—————————————


炎のゴブレットは長くなります!

かなり捏造ありますが、どうか突っ込まずに!

炎のゴブレット 〜1〜
炎のゴブレットはじまり

クィディッチ・ワールドカップから始まる恐怖

一方、トムは別で動きが初める
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100573915979
2021年6月4日 02:13
choco

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