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賢者の石!
やっと終わります!
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人生3度目。ホグワークでの初日の授業からはや数週間
何故か私は目をつけられており(良い意味か悪い意味かは不明)、セブルスの魔法薬学ではアピールしているハーマイオニーをスルーして尽く当てられて質問される
しかも、よく雑用を頼まれる
こき使われているとわかる
どこの優等生かと思うくらいほぼ毎回授業前の準備や片付けを手伝わされているので流石にセオやパンジーやミリセントから同情の眼差しを向けられる始末だ
まぁ寮に点が入るからいいんだけど
その度にドラコは喜んで、セオは自慢気な顔をしてくる
グリフィンドールからは睨まれるけど
レギュラスの魔法史ではよく当てられるし、あれ以降書類の分類や手伝い、準備物の移動等雑用を手伝わされる
別に断る理由もないから大人しく従ってるけど
苦手なダンブルドアからの接触はあの日からなく、割と平和に過ごしている
授業は問題なくついていけるからたまにパンジーにも教えている
基本行動はセオとが多いが、ドラコ達ともよく行動する
ミリセントともわからないところを教えている内に仲良くなって友人になった
そしたら何故か芋づる式に教えてくれという生徒が増えて、セオとドラコと分担して教えるようになった
ただ、クラッブとゴイルは私達では手に負えなかったのでドラコが叩いてやらせているが
原作よりもスリザリンの1年生は割と穏やかでよく談話室で勉強会をする仲になっていた
「だから何度言ったらわかるんだお前達は!」
ドラコが教科書を丸めてクラッブとゴイルを叩いて怒鳴るので、ミリセントとパンジーに教えていた私と読書していたセオは「またか…」と呆れる
「だって」
クラッブが片手に菓子を食べながら言い訳しようとするので、ドラコが取り上げる
「いつまで食ってるんだ!ユラ!こいつらがやり終わるまで菓子を見つからないところにやっとけ!」
「了解」
命令されて杖を振るってお菓子のあるお盆を浮かせて隠す
それに関心したパンジーとミリセントがパチパチと拍手してくれる
「そんな!」
「おい酷いぞ!?」
お菓子ごときで悲痛な声を絶望する2人に頭を叩いて「ここまでやれ!そしたら食わせてやる!」とドラコが言うので、「ママだ」と思ったのは仕方ないと言えよう
「じゃあひと通り説明したから、ここまでやってみて。絶対解けるよ。またわからないところがあったら私かセオに聞いてね」
私もミリセントとパンジーに言うと2人は返事をして取り組み始めた
邪魔してはいけないので、私は談話室のソファに座ってセオの隣で何回も読んだ本のページを捲る
「ユラ。その本は面白いか?」
「うん。まぁ何回も読みたくなるくらいには面白いかな。妙に頭に残る文体が読んでて心地いい。私はね」
「『魔法薬の副作用と知られざる効果』か。それ内容7年のものだろう?わかるのか?」
「うん。まぁわからないところもあるけど目で追ってるだけでも慣れるでしょ?」
嘘です
全部わかるしなんなら内容丸暗記してるけどそれは言えない
「本当に本が好きだね。この分だと今度の試験はユラが首席になりそうだね」
「買い被りすぎよ。趣味と勉強は違うってよく言うでしょ?」
「ユラのそういう謙虚なところは日本人だなって思うよ」
「日本人関係あるかな?それ言うならセオのたまにでるナチュラルな紳士さんの顔の方が英国人らしいと思うよ」
「たまには余計だよ。いつも心掛けてるさ。そういえばユラは母君が日本人だったね?日本語はぺらぺら?」
「まぁそうだね。行ったことはないけど話せるよ」
そりゃ話せるよ
私が1回日本語で奴に文句を言ったらまさかの奴に理解されてて絞められたのは言うまでもないだろう
普通知ってると思わないじゃん?
しかも通じるとか思わないし
「へぇ。僕一度見たけど、日本語は難し過ぎてね。早々に諦めたよ」
「漢字とひらがなとカタカナ3つもあるしね。仕方ないよ」
「あれを見たら古代ルーン文字の方がよっぽど簡単だと思ったよ」
「まぁ慣れないとそう思うかもね。正直母語のひとつでもあると実感なくて。そういえばセオはこの前発表された論文読んだ?魔法医学会のやつ」
「あぁ読んだけどやっぱり難しいね。魔法薬学に通じてるところしか理解できなかったよ。その様子だとユラは理解できたんだね?」
「まぁわからないところあったけどね。なかなか面白かったけど。そんなに使い所なそうだな。というのは正直なところ」
「まぁ実証結果があるとはいえまだまだ机上の理論に過ぎないからね。学生の僕達には使い所がないよね」
それからはつい夢中になってセオと他にも論文の話をしていた
「何の話してるのか全く分からないわ…」
「私もよ。あの2人本当に優秀過ぎでしょう…学生のレベル超えてるじゃないの…」
パンジーとミリセントが妙にわかり合って目の前で本を持って何やら難しい話をして盛り上がるセオドールとユラに軽く引く
「良いことじゃないか。今年のスリザリンは優秀な生徒が多いって専らの噂だからね。まぁ僕も負けないがね」
「どこかの問題ばかり起こす寮にユラが行かなくて本当に良かったわ」
「あんな幼稚な寮ユラには相応しくないからな。それにあのポッター。父上の仰った通りだ」
「調子に乗っているのよ。授業態度も全然真面目じゃないししかもあの穢れた血の女はいっつもユラが発言する時睨んでるわ」
「これだから穢れた血の奴は図々しく身分を弁えていないから嫌なんだ。出たがりの知ったかぶりの目立ちたがりめ」
「ユラは目立ちたくて目立ってるわけじゃないのに。でもあの穢れた血の女の鼻をあかせるならどんどんやって欲しいわ!」
ヒートアップしてそう叫んだパンジーの声にユラが無言で立ち上がった
「ごめんなさい。少し貧血気味だから私もう部屋に戻るね」
そう言って無言で言ってしまった彼女にセオドールは少なからずも気付いていた
彼女は賢く知識があり良識があるゆえに自分たちが当たり前にしている差別的な思想や発言に対して良い気分ではないことを
ユラとずっと一緒にいるセオドールだからこそ気づいたことだ
彼女は思慮深く、可もなく不可もなく、大人しく聡明だ
スリザリン生に相応しいかどうかと聞かれれば微妙なところだが、彼女の優秀さが一線を画しているからこそセオドールは自分のこれまでの考え方に疑問を持つようになった
彼女の口から聞いたわけではないが、彼女は差別的な言動を聞くと決まって哀しげな顔になる
微々たる変化だが、自分も表情に出ない方なのでセオドールには分かった
普通なら嫌悪するような反応があるはずだが、彼女のそれは憐れむようなそれだった
だからこそセオドールは疑問を持つようになった
それにユラはよくぼーっとしている
それは教室の一点を見つけめていたり、ふとした時廊下でだったり、らしくもなく授業中のふとした時だったり
日常の行動の多くで彼女の表情が少し変わる時がある
それにセオドールは驚いた
無表情で本以外何にもそこまでの興味を示さない彼女が唯一年頃の女の子らしい表情に変わる
だがそれは恋をしていると言うようなものではなく、哀しみが滲み出るものだった
彼女が差別的な言動をよく思わない理由、ふとした時に見せる哀しみを湛えた表情、並外れた優秀さ、その全てがセオドールにとって関心が向くものだった
セオドールは行ってしまったその背中を見ながら、再び目を伏せた
「どうしたのかしらユラ…うるさくし過ぎてしまったのかな」
「お前は声がデカい上に煩いからユラも怒ったんだろうよ」
ドラコが不安そうにするパンジーに突っ込む
「💢そんなことないわよ!」
反射的に否定するパンジーにミリセントとドラコとセオは内心で「そんなことしかない」と思う
「や〜いユラに嫌われてやーんの!」
「二度と教えてもらえないかもなぁ〜!」
調子に乗ったクラッブとゴイルが馬鹿丸出しで揶揄う
「馬鹿なアンタ達にだけは言われたくないわ。二度とお菓子食べれないようにユラにしてもらうわよ」
と、友人を使って脅して流石に黙った2人
〜箒の授業〜
わかっちゃいたけど、マダム・フーチってザ・体育界系の女だよね
怖い
失礼だけど将来確実に頑固なガミガミ婆さんになりそうだ
「何をボサボサしてるんですか。みんな箒の側に立って。さぁ、早く」
怖い先生の号令で、グリフィンドールの生徒達と向かい合って箒の側に立つ
セブルスのせいでやたらハーマイオニーに敵視されてる気がする
溜息つきたいな
「右手を箒の上に突き出して、そして『上がれ!』と言う」
先生の指示で皆声を掛ける
ドラコは真っ先にやってできていた
箒は絶対心があると私はいつも思うよね
彼もすぐできていた
でもクディッチに興味なかったからつまらなそうだったけど
私もクディッチ興味ないし
「上がって」
私も声をかけて箒を掴む
そういや最初の頃上がってくれなくて彼に散々嫌味言われたな
「箒にさえ馬鹿にされるなんてさすが馬鹿女。情けなくて仕方ないよ」
あ、思い出したらムカついてきた
前を見るとハーマイオニーが苦戦していた
余計な口は挟まないでおこう
それから全員なんとか持って先生に言われた通り構える
見回ってくる先生を見て、私はドラコが違った握り方をしているのに気付いてまたグリフィンドールと喧嘩にでもなる前にそっとジェスチャーで伝えた
そしたら勘のいいドラコはすぐ気づいて静かにムキになりながらも先生が回ってくる前に握り直せて注意を受けることはなかった
「さぁ、私が笛を吹いたら、地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ二メートルくらい浮上して、それから少し前屈みになってすぐに降りて来てください。笛を吹いたらですよ。1ー。2の…」
先生が合図しようとしたら不安そうだったネビルが地面を蹴ってしまって先生の大声をよそにネビルはコルクが吹っ飛ぶみたいに飛んでいった
やっぱかと思って唖然とそれを遠い目で見た
そして暫く吹っ飛んだ後、ネビルすごい音を立てて落ちた
フーチ先生が追っていって、ネビルを支えて立ち上がった
「私がこの子を医務室に連れて行きますから、その間誰も動いてはいけません。箒もそのままにして置いておくように。さもないとクディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出てってもらいますよ」
そう言ってネビルを医務室に連れていった
姿が見えなくなってドラコが大笑いした
私はどうでもいいのでその場から少し離れようとした時、横からセオが手首を緩く握ってきた
セオが何を考えているのか分からなかったけど私は動けなくなって仕方なくそこにいることした
「アイツの顔見たか?あの大間抜けの」
それに釣られるようにうちの寮の生徒達が嘲笑った
だけど隣を見るとセオは笑ってなかった
「ごらんよ!ロングボトムの婆さんが送ってきたバカ玉だ」
思い出し玉を高く上げたドラコにガキだ…と思いながらハリーを見ると案の定ドラコに噛み付いた
「返せよマルフォイ」
静かなハリーの声が響き、ドラコがニヤニヤとした顔で反応した
「嫌だね。ロングボトム自身に見つけさせる」
そう言うと、箒に乗ってハリーを煽り始めた
案の定ハリーは乗せられてハーマイオニーに止められたのにドラコから思い出し玉を取り返しにいった
ホントガキだ…
「ユラ。何考えてる?」
ボソリとセオに聞かれて少し考えてから、「嫌いなら関わらなければいいのにと思って…」と答えるとセオは「そっか…そうだね」と驚いたことに肯定した
それからドラコが投げてハリーがそれを追い、見事にキャッチして戻ってきた
それをグリフィンドール生が喝采して盛り上がると、途端にマクゴナガル先生がハリーを呼ぶ声が響き、連れていていかれた
シーカーになるんだろうな
と思いながら笑ってるスリザリンの生徒達を哀れに思いながら見た
そういえば…一度彼に乗せられて箒で飛んだことがあったな
「箒にさえ馬鹿にされる君はこんなものが怖いのか?」
自分の箒の後ろに乗せた(まんまと乗せられて)嫌味な顔の彼にしがみつくのは癪なので箒の棒にしがみついて地上から離れてしまった距離に震えている私
「うっううっ煩いっ…普通はこんな高さでっあ、あ、安全ロープとかもないのにっ落ちたらどうするのよっ」
間抜けな姿この上ないが、それを器用にこちら側を向きながらせせら嗤う彼に言い返すこともできない
だってたかが棒一本にしがみついてんだよ?
考えでみてよ?無理無理無理!
「君の泣きそうな間抜け面は実に情けないな。飛べるコツを教えてほしいか?僕は別に君が飛べなくとも構わないが…いいのか?それで成績が落ちても?また僕に差をつけられるぞ?ま、とっくに追い越せないレベルでついているが」
いちいち癪に触ることしか言えない奴に言い返す余裕もなく
「やっややっやってやるわよ!これ以上差をつけられてたまるかっ!うひゃ!?!」
「ほら、僕にかまけて気を抜くと落ちるぞ?」
「べっべべ別にアンタにかまけてるわけないでしょ!こっちはしがみつくので必死なのよ!完璧で秀才天才の鬼畜でなんでもできるアンタにはわからないでしょうけどね!」
「ほぉう?鬼畜。ね?ならお望み通りの対応をしてあげよう」
ニヤリと笑った悪魔に次の瞬間箒から振り落とされて私は恐怖で声も出せずに落下した
もうダメだと諦めかけたところで衝撃に目を瞑ると何か温かいものに受け止められた感触があり、ゆっくり開くと目の前にド鬼畜野郎の顔が
殴ってやろうと拳を握って振り被ったのに出てきたのは塩っぱい涙だった
「うぅぅっ…このっド鬼畜野郎っ!最低!」
ポカポカ無駄に整った憎たらしい野郎の胸を叩いて泣き顔を見られたくなくて俯く
「やれやれ。君は泣き顔まで見られないものなのか。僕が落とすようなヘマをするわけがないだろう。箒に乗れもしない馬鹿にされている君と違って」
いちいち嫌味ったらしい皮肉野郎に降ろせと喚くとさらにガッチリ抱き込まれてなんの嫌がらせだ!と叫んだ
「喚くなみっともない。僕は煩い女は嫌いだ」
「嫌いでいいしっ…離してよっ…見れた顔じゃないなら見るなっ…性格最悪野郎っ」
「本当に君は仮面が剥がれると口が悪いな。それは僕の前でだけにしておかないと折角作ってる顔が台無しだぞ」
「アンタに言われても嫌味にしかならないのよ!」
「僕のことはどう呼ぶように教えた?あまり怒らせるなよ?」
叫んだ私にワントーン声が低くなった彼の声が頭上から聞こえてきて顔が見れずに俯いたまま涙が止まらず震えが出てきた
「ひぃっ…あ…ご…ごめ…っ…ト…トムっ…」
「謝るときはちゃんと目を見るんだ」
冷たく冷静な艶のある言葉が降ってきて恐る恐る顔を上げると嫌味ったらしい笑みのない奴の顔があって私はそれが逆に恐ろしかった
ポロポロ涙が出て口から出てくる言葉は謝罪と彼の名前
それに満足したのか、彼は降ろしてくれて自分の足がゆっくり草を踏みしめる音がどこか遠くに聞こえてくる
目の前にある彼のネクタイを目に写しながら顎にそっと手をかけられて上向かされた
上機嫌に歪められた紅い目に射抜かれて怖くなった
「へぇ…君でもそんな風に泣くんだな。今の顔はちょっとは見られる程度だね。悪くないよ。怖ったんだろ?…おいでよ。特別に僕が慰めてあげよう」
そう言う彼に私に断るという選択肢は与えられず、恐怖で勝手に手が動き彼のネクタイのすぐ下のベストに涙で濡れないようにゆっくり顔を横に向けて寄った
背中におずおすと腕を回して気に触ることをしないように添えるように抱き締める
そしたら蛇のような腕が私の肩と背中に回ってゾッとした
まるで蛇に絡めとられているような感覚
「箒に乗るコツはね。…君自身が箒を怖がらないことだ。箒を自分の’’道具’’として使い熟すつもりでいないと乗れやしないよ。箒如きに下に見られるなんて。僕が言いたいこと判るよね?」
ゆっくりとしたトーンで紡がれる彼の艶やかな言葉に震える体を押さえながら小さく首を振る
「良い子だ。じゃあ次までに乗れるようになるんだ。できなかったら…」
その発言に今度こそ肩が震えてしまった私は「しまった」と思って更に涙が出てきた
それに気づいた彼は慰めるように肩を撫でてきた
それがどうしようもなく怖い…
「その様子だとよく理解しているようだから問題無さそうだね。まぁ精々頑張るんだ。この僕がヒントをあげたんだからできないなんてことはないだろう」
そう言って私は離れるタイミングは今だと思い、ゆっくり離れた
袖で涙を拭こうとすると、顎を指で取られてそっと彼の袖で拭われた
よく知った彼の香りが鼻を掠めて肩の力が抜ける
だけど怖いからやめてほしいと思ったけど、動くこともできず固まった
「っ…と…トムっ……」
「君の酷い泣き顔も見れたことだし僕は満足したよ。そろそろ戻ろうか」
至極愉快そうな表情でクスリと蠱惑的に微笑んだ彼
いつの間にか消えていた箒に私はゾッとしながら彼に手を引かれてまるで蛇に固められたように動けず、ついていくことしかできなかった
そこまで思い出して私は自分の腕を握りしめた
あの時は本当に怖かった
普通に見れば距離の近い男女に見えただろう
特に彼は顔がとんでもなく良かった
だが私は彼の本性を知ってた
だから余計に恐ろしい
あの後必死で練習してギリギリで乗れるようになった
練習してもをしても彼のあの声とセリフが頭を反芻してなかなか乗れなかったのだ
「……ラ」
彼は…
彼は人に恐怖心を植え付ける天才だった
人身掌握という言葉で足らない
どんなに強い魔法使いですら操っていた
「ユラっ!」
「!!」
セオの声が響いて呼ばれていることに気づいて顔を上げるとセオが肩を掴んで心配そうに覗き込んできていた
「せ…オ…ごめんなさい…ぼーっとして」
「呼んでも返事がないから心配したよ…また貧血…?」
「…気を遣わせてごめんなさい。そうかもしれない…悪いけど今日はもう休んでも良いかな?」
「…分かった。先生には僕から言っておくよ。夕食には来れそうかい?一度夕食前に迎えに行こうか?」
「う…うん。そう…だね。でも食欲はないかな…飲み物だけにしておく…」
食欲なんてない
食べ物を見る気分じゃない
心配してくれるセオが送ると言ってくれたが、セオは授業があるし遅れるとまずいから丁寧に断って私はひとりで寮に戻ることした
ふらふらしながら帰ろうと思ったら私は向かいから歩いてくる人に気づかなかくて避けれずぶつかってしまった
「っ!…すっすみませんっ…ふらふらしてしまってっ」
「Msポンティか。授業はどうしたのかね?顔色が悪いぞ」
まさかのセブルスだった
減点だろうか…
「すみません…あの…先程の飛行術の授業で…貧血っぽくなってしまって…次の授業はお休みさせてもらって…寮に休みに行くところで…友人に休むことは伝えてもらって…」
ダメだ…
目の前が霞む
頭に血が届いてない…
倒れると思った時、薬品の匂いがするセブルスに受け止められて私は気を失った
「すみません…あの…先程の飛行術の授業で…貧血っぽくなってしまって…次の授業はお休みさせてもらって…寮に休みに行くところで…友人に休むことは伝えて……もらって…」
土色のような酷い顔色でそう言うやいなや彼女は我輩の方に倒れてきて慌てて受け止めた
気を失った彼女を確認して改めて顔色を見ると血の気がない
貧血でここまでなるのは珍しいが…この歳ではあり得んだろうが、仮に女性特有のものだとしても些か症状が重い
何かしらの魔法を使用された痕跡もない
脈は乱れていふが問題と言うほどではない
しかし、血の巡りはよくない
放っておくわけにもいかず、東洋人特有にしても軽すぎる体を抱えて医務室に連れて行く他なく、改めて女子生徒を見下ろす
何かがおかしい
この妙に優秀な女子生徒が入学してきた日から、あの男の様子もそうだが、我輩の質問にもすらすらと答える様子にしても
スリザリンの生徒の噂では、7年までの範囲すら網羅しているレベル
久々の優秀な生徒の現れに、試す価値もあり、レベルの高い質問したが、この生徒は悩む様子もなく難なく答える
最初は異様にあの碌でもない兄弟の妹、オフューカス・ブラックに似ているこの生徒に動揺を覚えたが、彼女は彼奴らのせいで殺されたのだ
生きているわけがない
オフューカスの亡骸は確かに確かめたのだ
あり得ないと断じつつも日々の行動や言動、ふとした時に出てくる仕草や話し方、言葉の選び方、雰囲気や表情などは間違いなく彼女のものだ
何か高度な魔法で姿形を変えているのか、はたまた別人なのか怪しくなり、暫く彼女に雑用を任せて観察するが知れば知るほどオフューカスに生き写しのような生徒だった
ポッターやろくでもない兄ような性質の者を苦手とし、ブラック家の人間にしては、目を惹くような華やかさはなく、どちらかといえば慎ましく聡明だった彼女
そんな彼女は、リリーや我輩といることが多く、最初は迷惑だったが、オフューカスのもつ平凡で穏やかな何でも受け流してしまう性質や、魔法使いとは思えない珍しい雰囲気に絆され、気づけばよく学問の話をする仲になっていた
そんな彼女は実の兄だろうと、碌でもないと判断したことに対しては相手にしていなかった
杖を振り上げて追い返すほど
正直驚いた
「いくらシリウス兄様でも邪魔しないで。私はそういう幼稚なことを本気で楽しいと思ってる兄様は嫌い」
と言っていた
平凡だ目立たない方だったが、兄すら圧倒する知識と優秀さには驚いた
我輩は卒業まで彼女とよく行動するようになった
そうして悲劇となったのだ
あの軽薄な笑顔を振り撒く男がこの生徒に妹を重ねているとすぐ分かったが、成る程分からなくもない
何から何までこの生徒は容姿以外は彼女に瓜二つだ
煩わしい生徒共の視線を無視して医務室に連れて行き、マダム・ポンフリーに彼女を任せて考える
あの生徒は何かを隠している
その確信はあった
真実薬か開心術(レジリメンス)…
いや、11歳の体にはどちらも負担が大き過ぎる
確固たる証拠も確証もない
何か手を考えねばならんな
セブルスの前で気を失って倒れて目が覚めたら目の前にセオとパンジー、ミリセント、ドラコがいた
ここは…
「目が覚めたのね!よかったわ!」
「パン…ジー…ここは…医務室…?」
「スネイプ先生から医務室にいるって聞いて心配できたのよ!どうして倒れるまで言わなかったの!?」
「ごめ…んね…寮まで保たなかったみたいで」
「もう少し静かにしろパンジー。目が覚めたばかりなんだぞ。お前の煩い声は頭に響く」
ドラコがパンジーに注意して失礼だがありがたいと思ってしまった
そしてドラコに噛み付く彼女を見ながら、横で黙っているセオを見る
「ごめんなさいねセオ。送ってくれようとしたのに寮まで保たなくて…」
「別にいい。ユラは悪くない。僕が無理にでも送ればよかったんだ」
なんかめっちゃ責任感じてらっしゃる
「今度から断らずに送ってもらいなさいユラ。貴女頭いいけど体力そんなにないんだから」
ズバッとミリセントに言われて何も言い返せない
「う…うん。善処します」
「分かった。もうユラの大丈夫は信用しないことにするよ」
「え?ちょっと待ってセオ。なんで今のでそうなるの?」
「日本人の頑張る、善処するはアテにならないと聞いた」
「それどこ情報?それに私はハーフなんだけど?」
マジでなんの日本の勉強してるのセオは?
それ絶対間違っ…ってないことはないけど違うよ?
「夕食は来れそうか?今日はハロウィンだからご馳走だぞ?」
あ、無視なのね
そうなのね
夕食かぁ…でも食欲がないな…
胃に重いものばっかりだし…
まだ食べ物見たくない…
それに今日は原作通りならトロールが出る日だ
「ごめんなさい…行きたいんだけどやっぱりまだ目眩がして…食欲も無いから…皆行ってていいよ」
もともと人が多いところは苦手なんだ
「そうか。なら無理せずに大人しく寝とけよ。寮に戻るなら迎えに来るからちゃんと伝えろよ」
まだ顔色が悪いのだろう私に気を利かせてドラコがそう言って渋い顔をするセオを連れて行って去って行った
呉々も戻る時は知らせろと言われて
私どんだけ信用ないわけ?
倒れたの一回だけだよね?
解せなかったがそれなりに心配してくれたんだろうと感謝してもう一度目を閉じた
それからもう一度目を覚ますと深夜だった
多分原作通りならトロールの事件は終わったな…
ぼんやりと考えていると誰かが来た
コツコツと生徒の足音ではない大人の足音が聞こえて来た人を見るとレギュ兄だった
「えっと…ブラック先生?どうかされましたか?」
「ユラが倒れたと聞いてね。心配で見舞いに来た」
そう言って淡いグリーンのローブを揺らして横に来たレギュ兄に顔を動かす
「それは…その、ありがとうございます。ご心配をおかけしたみたいで…」
ナチュラルに額を指の背で触れられて少し驚く
「全くだ。君は優秀な生徒だがまだ子どもなんだよ。あまり無理をしてはいけないよ」
そう言って眉を下げて心配そうに微笑んだレギュラスの表情は妹であった頃に何度も見た兄のものだった
「はい…先生…」
「いい子だね」
ーー良い子だーーー
!
「じゃあ僕は用事があるからもう行くね。もう少し話をしていたいけど一応先生だし少し騒ぎがあったから」
そう言って頭を撫でてからローブを翻して行ったレギュラスの背中を唖然とみながら、先程の被ったあの言葉に身震いした
彼がよく私に言っていた言葉
まるで自分の所有物のようなペットのような…
レギュラスのそれは妹に対するものだとよく分かっているけど今一瞬被ってしまった
落ち着こうと思い、横にある水を魔法でキンキンに冷たくしてから飲んでひと息つき膝を抱え蹲った
「…なんでよ…もぉ…」
ぽつりと呟いた言葉は消えていく
「主よ。大丈夫か?」
ホント紳士的なタイミングですことねぇセンリは
「大丈夫よセンリ。心配してくれてありがとう…最近寒くなってきたしやられたのかな」
「それだけではないように見えるが?」
ホントこの蛇は…察しが良過ぎるのも考えものだな
「まぁいろいろ…かな…嫌な夢のせいもある」
うそだ
嫌なわけではない
彼との想い出は…恐怖もあったが…何故か忘れることができない
「そうか。夢は夢だ。あまりのめり込み過ぎるな。主は今を生きているんだ」
まじで蛇この子?
「うん…そうするように心がけるよ…ぼーっとしてるのを心配してくれてるんでしょ?」
「使い魔が主を心配するのは当然のことだ。それが幼き頃より見守ってきた子であれば尚更な」
あー
そういやそうだった
この蛇はある意味親代わりとしてついてきたんだったね
複雑だけどまぁ嬉しくないわけでないからいいけど
「…そうだね…ありがとう私のそばにいてくれて…それじゃもうちょっと寝るね」
「あぁ、ゆっくり休むといい。おやすみ」
「おやすみ…」
それから私はもう一度目を閉じて眠った
貧血も収まってマダム・ポンフリーに許可をもらって、お見舞いに来ていたレギュラスに送ってもらって寮に戻ると矢張りと言うか何というか女子トイレのトロール事件は起きていた
原作通りハーマイオニーをハリー達が助けに行ったんだろう
もし、物語のまま進むなら彼らはセブルスを疑ってハグリッドの元へ通うはず
ニコラス・フラメルのことについても調べるだろうな
クディッチが始まるけど見る気になれないな
あの歓声に包まれる雰囲気はまるで興味ない
でもハリーの箒にクィレルが呪文をかける、それを反対呪文で助けようとしたセブルスが疑われてローブを燃やされてしまう
それは阻止しないと
私はセブルスは救いたい
死んでほしくない
そしてクディッチ当日、矢張りハリーの箒は彼を振り落とそうと暴れ始めた
私はハーマイオニーが気付く前に彼に習ったことがある強力な反対呪文で暴れる箒を止めた
セオに気づかれないようにする為に、気持ち悪いから1番後ろのベンチに座って観戦することにしたのがナイスだったな
双眼鏡で見ながらセブルスが驚いた顔をして反対呪文をかけてるであろう人を探しているのを確認しながら、忌々しそうな顔をするクィレルの邪魔をするために試合が終わるまで私は反対呪文をかけ続けた
やっぱりスリザリンは負けてしまったけどセブルスは疑われずにすんだ
トロールの時は仕方なかったけど
その後、ドラコは荒れたが私はドラコが事あるごとにハリーに絡むのをさりげなく止めた
言い方さえ考えればドラコはもともと素直だし聡明だから納得してくれる
セオは私と一緒によくいるし多分それもあるかもしれない
そしてクリスマスが来て、地下での魔法薬の授業が終わり私はセオと帰っていると、ドラコがまたロンにいちゃもんをつけていた
「ウィーズリー、お小遣い稼ぎですかね?君もホグワーツを出たら森の番人になりたいんだろうーーハグリッドの小屋だって君達の家に比べたら宮殿みたいなんだろうねぇ」
ロンに失礼なことを言う彼の側に行く
「っユラっ」
「ドラコ。貴女は誇り高きマルフォイ一族でしょう」
家持ち出すとドラコは弱くなる
それだけプライドがあるからだ
あんに父親を失望させてもいいのか、と伝えるとドラコは舌打ちしながら
「助かったなんて思うなよっ」
とだけ吐いてクラッブとゴイルを連れて行ってしまった
セオとそれを見ながら私はひと息吐いて、自分の息が白いことに感慨深くなった
今にも掴みかかりそうだったロン達に向き直り、頭を下げる
「ごめんなさいね。ドラコもああ見えて努力家だから何かと有名な貴方達にツンケンしてしまうの。失礼なことを言ってしまっただろうけど許してあげて」
そう言うと、ハリーやロン、ハーマイオニー、ハグリッドは驚いて目を見開いている
まぁまさかスリザリンの生徒が頭を下げるとは思わないだろうね
「ユラ…君が謝る必要は」
セオが不満気に横で止めてくるが視線で「これくらいは許して」
と訴えると渋々といった様子で黙ってくれた
「ハグリッドもごめんなさい。じゃあ私達は行くわね。もしまた何か言われても相手にしないほうがいいよ」
そう言ってセオと踵を返して次の教室に向かう
「ハグリッドもごめんなさい。じゃあ私達は行くわね。もしまた何か言われても相手にしないほうがいいよ」
目の前の彼女、日本人の血が入っているらしい大人しそうなポンティはそう言っていつも一緒にいるスリザリンの男子生徒と行ってしまった
2人で何か話している様子を唖然と見ながら僕は驚いた
「まさかスリザリンの生徒が頭を下げるたぁな。ちゃんとした奴もいるもんだ」
ハグリッドがそう言って僕達は思わず顔を合わせた
「私、あの子好きじゃないわ」
ハーマイオニーがいつも魔法薬学で負かされているからか、不満気にそう言った
確か学年主席だろうと噂されてるほど優秀だって聞いた
争いが好きではなくて、いつもあのノットとかいう生徒といる
「まぁスリザリンの癖にあの生徒ホグワーツ始まって以来の優秀さだって噂だもんな。ハーマイオニーにより」
「そんなことないわよ!」
「ロン、ハーマイオニー、落ち着いてよ。彼女のお陰でマルフォイはどっか行ってくれたじゃないか」
そうだ
よく考えれば今回だけじゃない
クディッチ以来よく絡んでくるマルフォイを見かけては彼女はよく止めてきたんだ
マルフォイを逆上させることなく
「色んな噂あるよな。フレッドとジョージもあの生徒に関しては知らないことが多いってさ。両親は一応どっちも魔法使いらしいぜ」
ロンがそう言ってやっぱり彼女も純血主義で僕らのことを見下しているのか…と思ってしまう
「やっぱスリザリンの奴は鼻持ちならないよな」
「そんなこと言っちゃいかんぞロン。現にあの子はマルフォイを穏便に追っ払ってくれて頭まで下げて謝罪したじゃねぇか。もしあの子が純血主義なら絶対にあんなことはせん。前代未聞の話どころじゃねぇからな」
「どうしてそこまで言い切れるの?」
僕達を油断させる為に頭を下げたかもしれないじゃないか
「あのなハリー。魔法界で純血一族っていうのはとんでもなくプライドの高い連中ばっかなんだ。力の持つ一族の大半がスリザリンの生徒で、もし純血主義を掲げるスリザリンの生徒が俺達に頭なんか下げたと噂されてみろ。家ごと爪弾きにされるのなんか目に見えちょる。ロンはよぉ分かっとるじゃろ」
ハグリッドの言葉に僕は彼女が去って行った方を見た
なら何故彼女は危険を冒してまで僕達を助けるようなことをしたんだろう
「そりゃ分かってるけどハグリッド…でもやっぱりスリザリンなんだ」
「私はあの子は好きじゃないけど、ハグリッドの言うことは尤もだと思うわ」
さっきまで嫌そうにしてたハーマイオニーがそう言って少し驚いた
「どうしてだよハーマイオニー。君いっつもあの生徒負けて悔しがってるじゃないか」
ロンが驚いたようにハーマイオニーに聞いた
「悔しいけどあの子が優秀なのは事実だもの。それに今の行動であの子が純血主義じゃないっていうことがわかったわ。だって魔法界の歴史を考えればあんな行動あり得ないもの。純血主義だったなら絶対に頭なんて下げないし謝るなんてことしないわ。そんなことすれば不利になるのは本人だもの」
ハーマイオニーが妙に冷静な態度でそう言って僕達は少し驚いた
ハグリッドは納得してる
「ハーマイオニーの言う通りだぞおめぇさんら。マルフォイはともかくあの子は案外普通に接したいだけかもしれんからなぁ。あんまり先入観で決めちゃなんねぇ。それこそマルフォイのやってることと同じだぞ」
ハグリッドにそう言われて、悔しいけど事実だったから反論出来なかった
言われてみれば僕達もスリザリンだからと先入観を持っていたかもしれない
クリスマス休暇も間近で、私は今年は家に帰らないことにした
というか帰りたかったけど、父と母が何故か日本に旅行に行っているので帰っても誰もいないのである
暇なことこの上ない
それなら学校で本読んでたほうがいい
つーか私も連れてけよ
行きたかったし
まぁ愚痴はここら辺にして、私は代わりに送られてくるプレゼントを少し楽しみにセオやドラコにクリスマスはこちらで過ごすと伝えた
パンジーはうちに来ないかと言ってくれたけど本読みたいからまた来年誘って欲しいと答えた
ドラコも今年ルシウスに話して、来年私を招きたいって言ってくれた
正直ルシウスは彼に近過ぎるから苦手なんだけどな…まぁドラコは良い子だし了承した
セオも是非うちに来ると良いと言ってくれた。あと何故か「クリスマス1人で大丈夫なのか」みたいな信用のない眼差しで見られた
酷いな
倒れたのは一回だけなのにさ
そしてクリスマス休暇に入り、実家に帰る彼らを校門から見送って私はひとり、積もる雪の中を踏みしめて校内の戻るため足を進めた
暫く歩いていると向かい側から歩いてくるセブルスに出会した
相変わらず不機嫌な顔だな
「おやおやこれは、Msポンティ。君は家には帰らないのかね?」
「はい先生。今年は父と母は海外に行って暫く帰ってこないそうなので…1人で家にいてもすることがないので図書室もある学校にいた方が有意義ですから」
背が高いから首痛いぜ
まだ11歳の体が恨めしい
まぁ成長してもセブルスを見上げるのは変わらないんだけど
白い息を吐きながら答えるとセブルスは眉を寄せたと思ったらなんか思いついた顔になった
あ、これ絶対クリスマス中に雑用やら薬品のストックやら作らされるパティーンのやつだ
「成る程。丁度いい。暇を持て余しているのならば魔法薬学の調合の手伝いをさせてやろう。君ほどの知識と腕があればなんなく作れるであろう。休暇中に足しておく薬をひと通り作ってもらう。今日の夕刻魔法薬学準備室に来たまえ」
素直に手伝ってって言えば良いのに
まぁでも彼に比べたらセブルスの嫌味というかツンは可愛いもんよね
「わかりました。では夕刻に準備室に伺います」
返事をするとローブを翻して行ってしまった
大広間のクリスマスツリーを見上げながら、原作を考える
ハリーとロンは休暇中はホグワーツに残ってニコラス・フラメルについて調べる筈だろう
そしてハリーは透明マントを貰い、みぞの鏡を見る
そういえば…彼とも何度も見たな
あんまり興味を示してなかったけど
「綺麗だな…」
「こんなもので見惚れる君の頭は余程単純らしい。ただの飾りだ」
「はいはいそうですね。その飾りをあなたの無駄にサラッサラッと黒髪にも飾ればきっとお似合いでしょうね。ついでに光らせでもしたら?どこにいるかすぐわかるわ」
「君はいちいち僕に喧嘩を売らないと会話できないのか?それにどうしたらそんな奇天烈な発想ができるのか僕には到底理解できないね。頭だけでなく想像力も貧困とは救いようがないな」
「💢」
いちいち喧嘩売らないと会話できないのはあんたでしょうがと思うけどもう疲れるし、クリスマスにまでムカつきたくもないので大人しくスルーしておく
「それより…今渡さないと受け取ってやらないぞ?」
は?
「隠しているようだけど、僕にプレゼントを用意しているんだろう?この僕が受け取ってやってもいいと言ってるうちに出したまえ」
隣で顎に指を当てて嫌味な顔で艶やかに微笑む傲慢不遜な彼に口許がヒクヒクと引き攣るのが自分でもわかった
確かに用意してるが何故こいつがそれを知っているのか
しかも受け取ってやってもいい?何様だこら
あぁそうだったそうでしたね俺様でしたね
美貌だけなら文句なしのモテモテの主席天才秀才様でしたね
ポケットに入れていた彼へのプレゼントに渋々取り出してムカつくので俯いて手に持ったまま渡させずに立ち尽くす
今すぐこの箱をぐしゃりと潰してやりたい
「どうした?僕のものだろう?渡してくれないのか?」
うざい
「…💢いらないなら捨てて。モテモテの天才主席様は私があげるものよりいっぱいいいもの貰えるだろうからねっ」
これ以上ここにいたらムカついて潰してしまいそうなので、彼の胸に押しつけて先に大広間を出る
一方、トムは彼女から押しつけられた小さな箱を丁寧に開いて中を見ると僅かに口角を上げて愉快に歪ませた
元に戻すとポケットにしまい大広間から出て行こうとする彼女の背中を追った
そして脚の長さのリーチですぐ追いつき後ろから耳元に
「君にしては悪くないセンスじゃないか。褒めてあげようか?」
と囁いて驚いて耳を真っ赤にして「なっななっ!何様だ!もらえるだけありがたく思え!」と小さく叫んでパタパタ逃げて行ってしまい、それをなんなく追いかけて、その後彼も、彼女に用意していたプレゼントを渡し、それを見て素直に喜んだ彼女の顔を見ながら彼は静かにほくそ笑んだ
彼から彼女に渡されるたものが彼女の命を削るものとは本人は知らずに
彼からもらったプレゼント…今はもうないけど普通に嬉しかった
なんというかセンスがいいというか…
確実に使えるもので自分では買わないものを用意してくるんだから本当狡い奴だと思う
私達はお金に余裕があったわけじゃないから自分の魔法頼りだった
数少ない彼が怖いと思わなかった想い出のひとつだな…
クリスマスツリーにも見飽きたところで私は大広間から出ようとした
だけどパタパタと足音が近づいてきて、振り返ると大広間の長いテーブルの上でロンとチェスをしていたハリーが私の前まできた
正直驚いた
「えっと…何か私に用事かな?Mrポッター、Mrウィーズリー」
少し息を切らせる彼と追ってきたロンに声を掛ける
「ハリーでいいよ。その…この前はお礼も言えずに…そのっ…ありがと。マルフォイのことも」
ハリーが言葉に詰まって言った言葉に一瞬反応が遅れた
「いいえ。気にしないで。あれはこちらが悪かったことなんだし。人として当たり前のことをしただけよ」
「!」
そう返すとハリーは少し驚いた顔をして、ロンも驚いたのかハリーと顔を見合わせた
そしたら私の方を見て今度はロンが礼を言ってきた
「その…僕達助けてもらったのに…ごめん…君が来てくれなかったら多分僕マルフォイに殴りかかってた…ありがとう」
まぁ、ぶっちゃけ殴られても仕方ないこと言ったし
ロンは悪くないよね
「本当に気にしなくていいのよ。殴られてても仕方のないことを言ったのはドラコだもの」
つい本音でそう言った私に2人は更に目を見開いた
面白いな
双子みたい
「だけどね、ハリー。Mrウィーズリー」
「ロンでいいよ」
「じゃあロンと呼ばせてもらうわね。堅いことを言うつもりはないんだけれど、ホグワーツでは生徒同士による私闘は禁止されているわ。私達はまだ1年生。まだまだ未熟なの。もしこれが知識もついて魔法の扱いもそこそこできるようになった上級生になれば話は別よ?だから腹が立ったことや其々許せないことがあるだろうけれどどうか収めて欲しい。私も注意してみておくけどできることにも限りがある。特にハリー、貴方の生い立ちは知っているわ」
「どうして…」
少し警戒するハリーに私は続けた
「それは有名だもの。でもそれは貴方にとって本意じゃないことも重々承知しているわ。本当なら平和な学生生活を送りたいと思っているだろうことも。私も目立つことが好きではないからそうだもの」
「でも君はよくスネイプに当てられてるじゃないか」
「ロンっ」
「いいのよハリー。事実だもの。私は元から魔法薬学が好きなのもあるけれどスネイプ先生は寮監だし、当てられるのも嫌ではないけど私の本意じゃない。まぁ多少スリザリンへの贔屓があるのは私も思うから。それとどんなに嫌いでも先生なんだからちゃんと敬称で呼ばないとダメよ」
「多少!?あんなやつに先生って呼ぶ価値ないよ!」
「ロンっ!すまないっ…悪気があるわけじゃないんだ。ただ僕達もそれだけの理由があるから」
「そうね。あなたたちがスネイプ先生をよく思わない理由があるように、ドラコにも貴方達をよく思わない理由があるのよ。それはスネイプ先生にも言えることよ」
そう言った私に2人は目を見開いた後に眉を顰めて
「ねぇハリー、あなたが生い立ちや噂だけで自分を判断されたくないと思っているように、スネイプ先生やドラコにもそれぞれ事情があるのよ。理由もなしに嫌ってるわけじゃない」
「それはっ…」
「っ」
ゆっくりとできるだけ穏やかに優しく言うと2人は反論したいのだろうができずに黙った
「私は理由を全て知っているわけではないけど…ドラコに関して言えば代々続く名門の家柄というのもあってああいう態度しか取れないのよ」
「それでもっ…血だけで」
「そうだぜ!」
「それはドラコが受けてきた教育のせいよ。子どもは親の背を見て育つ。何も知らないころからそれが当たり前のように教えられればそれが普通なのだと思うでしょう?成長して他人と話すようになって自分の家の常識と他の人の家の常識が違うと思ったことはない?」
そう言うと2人は顔を見合わせて心当たりのある顔をした
「あるでしょう?ドラコはそれが少し強いの。ハリー。あなたは亡くなったご両親に褒めてもらいたいと思うでしょう?認めてもらいたいって。ロンも両親に認められたいって思うことあるでしょう?」
2人は虚を突かれたように少し苦い顔になりおずおずと頷いた
「ドラコのお父様はとても厳格で能力主義の方よ。血筋を言うわけではないけど聖28一族であることに誇りを持ってる。いくら自分の息子が相手でもそれが甘くなることはない。与えたら与えた分だけの成果を求める。それが幼い頃から当たり前だったドラコは人一倍努力してできることは当たり前なの。だからあなたに負けたと思うと余計に突っかかってしまう」
ルシウスもそうだった
昔からアブラクサスの期待に応えようとしていた
彼はルシウスほど厳しくはなかっただろうけど、やっぱり純血思想は強かった
自分がされた教育はいやでも代々受け継がれる
「だからね。ドラコに何か言われたとしてもそういう目で見てあげて。憐れんだりすると彼怒ってしまうから。ハリーとロンにはMsグレンジャーという知性あふれる良識ある友人がついているでしょ?だからもっともっと知識をつけて…できたら彼を理解してあげて。少しずつでいいわ。大人の対応をしてあげて。じゃあ私は行くわね。あ、私がこれを言ったってことは秘密にしていて頂戴ね。良いクリスマスを」
立ち尽くすハリー達を後にして私は一度寮に戻り、制服に着替えて準備してからセブルスに呼ばれた準備室に向かった
「来たか、ではここに書かれてある薬を作れ。材料なら用意してある。クリスマス休暇中に全て。作り終えろ」
そう言って渡された羊皮紙の一覧には見覚えがあり過ぎる魔法薬の項目が
『生ける屍の水薬』
『陶酔薬』
『しゃっくり咳薬』
『万年万能薬』
『フェリックス・フェリシス 幸運の液体』
『解毒剤』
思っくそ貴方が書いた本の調合薬じゃねぇか
羊皮紙を見ながら思わず握りつぶしそうになったのは仕方ない
顔を上げて一応言う
「スネイプ先生。発言よろしいでしょうか?」
許可はもらう
これ以上無理難題を押し付けられてもたまらん
「よかろう。言ってみろ」
すごい圧力で見下ろされて思わず引き攣りそうになる顔を必死で取り繕う
「失礼ですが、この魔法薬は並の魔法使いでも調合が難しい上級魔法薬です。理論は承知していますが貴重な材料を使ってまで私に任せるのは何故でしょうか?もし私がミスをしては貴重な材料が無駄になります。そこのところを教えて欲しいです」
手を挙げて羊皮紙を持ちながら意見するとセブルスは眉を顰めた
実際作れる、それはもう余裕で
かつて彼にも教えてもらい(というか詰まらなそうにやらされて)、セブルスともあの本を一緒に作る上で2人で調合を繰り返した
そう。セブルスが書いたあの本に私はノータッチだったけど関わっている
調合を手伝っただけだけど
「スネイプ先生?」
黙っているセブルスの回答を大人しく待つために見上げる
そしたらセブルスは突然踵を返して棚を開いたと思ったらある物を手に取って私の前に差し出した
それを見て私は不覚にも目を見開いてしまった
気づいた時には遅くそれを見逃すはずのないセブルスがダン!と本を机に置いて低い声で言った
「見覚えがあるのだな。お前は何者だ。この本の存在を知っているのは我輩の他に1人しかおらん。だがお前はこれを明らかに知っている様子だった。答えろ。お前は何者だ」
だらだらと汗が流れてくる
どうする?
どうする?
こんなの予定外だ
セブルスはきっと言っても信じない
魔法界には解明されていないことが多い
実際逆転時計があるのだ
転生してり、生まれ変わりの類の魔法がないとも限らない
だけど私の場合は本当に偶然だ
仕方ない
「スネイプ先生」
「なんだね」
「私に開心術を使ってください。一部見せられない記憶はありますが、きっと私の口から言っても信じられないので真実を見てください。その方がきっと早い。大丈夫です。私は耐えられます」
妙に落ち着いた声が自分の口から出たことに少し驚きながらもきっと今セブルスを見上げる表情は泣きそうになっている
私きっと共有できる人が欲しかったのかも
数秒セブルスの返事を待っていると眉間に皺を寄せて「よかろう。だが嘘偽りを見せるならば真実薬を飲まされると思え。我輩が納得しなくとも飲まされると思え」とセブルスらしい警戒心の強いことを言われて私は了承した
そして私はオフューカス・ブラックとして生きて殺されるまでの一生をセブルスに見せた
セブルスとの想い出が流れる中、彼は立ち尽くしていた
リリーとセブルスと3人で過ごした日々
レギュラスやシリウスがデスイーターになり、置いて行かれた私
ブラックの家でクリーチャーと寂しく過ごした日々
そして戻ってきたレギュラスとシリウス
束の間の幸せの後、私は隙を突かれてデスイーターに殺された所まで
長く感じられたその記憶
終わった後、私は少し息を乱した
矢張りキツイものはキツいので立っているのが少し辛くなり机に手をついた
セブルスは唖然として背を向けている
そして無言のまま数分が経った
そして、セブルスは振り向いて凄い圧と戸惑いの顔で私に聞いた
「お前は…何故今別人として生まれ変わっている」
「…私にもわからないです。何かの魔法かと思ったけどいくら調べても該当するものも近いものも何も出てこなかったんです…」
「…本当にオフューカスなのか…嘘を申せば真実薬を飲ませるぞ」
「…嘘偽りなく前世の私はオフューカス・ブラックです。シリウスは兄、レギュラスの双子の妹。リリーとセブルス、貴方の友人です」
「…っ!…では私がこの本を書いた時にオフューカスに言った言葉を言え」
相変わらず疑り深いや
「『この本は僕達2人で成したものだ。だから目印をつける。本の背表紙の裏に僕達の名前を刻もう』」
私は書いてないし調合を手伝っただけだから名前を載せたくないと言ったから背表紙に刻むことにしたのだ
それを言うとセブルスはゆっくり近寄ってきて私の頬に手を当てて
「本当にオフューカスなのだな…」
そう言ってセブルスは抱き締めてきた
あれ?セブルスってこんなことする人だったけ?
そう思ったけど、再開できたことが嬉しくて私もハグした
まるで存在を確かめるように強く抱き締めくるセブルスの震える大きくなった体を感じながら暫くそのままでいた
それから離れて、落ち着いたセブルスに私はこの際だからと日本人であった頃の『ハリー・ポッター』というか創作物の話をセブルスに話した
セブルスを死なせないためには必要なことだった
終始信じれないと言う顔だったが、別の世界で生きていた頃の記憶があるというのは全くない話ではないと言ってなんとか納得してもらい
これから起きることを’’大まか’’に話した
そして今回の首謀者がセブルスの思ったとおり、クィレル先生に間違いないと
だけどこれからこの通りに行くとは限らない
私と存在がいるから
このことも注意して話した上で彼は納得してないだろし半信半疑だが理解は示してくれた
「では今回ポッターは賢者の石をクィレルに奪われぬように余計なお節介を焼き、またしでかすと?」
言い方にだいぶというかかなり私情しかないが
「物語通りに行けばそうですね。私も正直先のことは読めませんが出来事だけならばその通りになる可能性が高いかと思います」
「ひとつ聞く。何故このことをお前の兄でなく我輩に教えた?」
「私の前世がどうあれこれを知っても全て信じず冷静に対処できるのはセブルスだけと思ったので話しました。昔の記憶がどうであれ、私はこの世界に生を受けた時点でオフューカス・ブラックであり、ユラ・メルリィ・ポンティには変わりまりません。私からすればこちらが現実です。寧ろ前世の記憶のほうが物語なのではないかと思うくらいですよ」
「ふむ…成る程筋は通っている。もしあの男に話しておれば妹が生きていたと喚き鬱陶しい姿を振りまき私情による失態を晒しておったところだろう。良い判断だ」
いや言い方…
悪意しかないな
でも何故だろう、想像できる
気持ちはわかるけどセブルスが嫌いなのはどっちかっていうとシリウスかと思ってたよ
レギュラスは割と穏やかな方だったけどな…
「ともあれ、我輩もこちらの世界が物語だというお前の記憶に関しては信じておらん。参考にはさせてもらおう。事実お前の言った通りのことがこれから起きればな。だがあくまで参考にするだけだ。今のお前は我輩の友人であったオフューカスであり、生徒のMsポンティだ。そこは変わらん」
そう言われて何故だがホッとした
やっぱりセブルスには話してよかったよ
椅子に腰掛けながら言うセブルスにまぁ取り敢えず現時点では上々かな?と思った私
いや待てよ?というか
「いつから疑っていたんですか?私がオフューカスだと。この嵌め方からしてかなりの確率で確信していましたよね?」
「強いて言うならば入学式の時からだ」
「うそぉ…」
「それからあの男の様子がおかしくなってな。お前に対する雑用やらをやたら押し付けていると聞き、我輩も授業で歳に見合わぬ言動や知識に違和感を覚えた。そして気づいた」
気をつけていたのに何故だ
解せぬ
というか雑用押し付けたってセブルスが言えることじゃないと思う
「今失礼なことを考えたな」
何故わかる
「そこは気付かないふりをしてください。…それよりも私は必要以上にハリー達に関わる気はないつもりなのですが、セブルスはどうするつもりで?」
「敬語」
はい?
「お前のその話し方は違和感がある。2人の時は以前のように話せ」
成る程ね
まぁ友達がいきなり敬語で話すのは違和感あるよね
「わかったセブルス」
「よろしい。我輩も基本信じておらん。必要以上に関わる気はない。だが兆しがあればその都度対処する」
賢い選択だな
流石セブルス
ひとり納得しているとセブルスが何やら調合の器具を出し始めた
「え、何してるの?」
「ここにきた理由を忘れたか?予定通り全て調合をしてもらう。お前には瞬きする間に熟るレベルであろう」
と妙に愉しげない様子で言い放った
「当たり前のことを聞くな。お前が我輩の寮生なのは変わりない。オフューカスだと分かった以上これまで以上の課題をこなしてもらう」と言っているような気がして私はこの先更なる雑用を押し付けられる予感がした
しまった
こういう奴だったのだ
その後、全て作り終えるまで一歳休憩させてもらえず、流石に久しぶりだし疲れてへばった私を見下ろした満足気なセブルスの顔を見て、「言わなかったこと確実に根に持ってる」とスリザリンらしいより磨きがかかった陰険さを身をもって知った私だった
来年から私、生きてるかな?
別の意味で使い倒されて死ぬかも
そして案の定、ハリー達がニコラス・フラメルについていそいそ調べている間のクリスマス休暇中、私はほぼ一日の半分以上を魔法薬準備室で調合をして(させられて)過ごした
読書する時間がなくなった
ほんと陰険なんだから
私も人のこと言えないけど
いやポジティブに考えよう休暇中だけで済んでよかったと
そしてこの先の休暇もこき使われることがないように祈ろう
彼に関してもそうだが、何故私はこうこき使われ要員なのか…
呪われてんのかな?
まぁ歴代のワースト1は間違いなく奴だが
ぶっちゃけ私も原作に関してそこまで詳しいことは知らない
ほとんど映画で観た出来事しか知らないのだ
しかもここまで刻が経つとうろ覚えもいいところだ
だから不確定なことはセブルスに言ってないし言えない
セブルスも参考にする程度だって言ってるしあてにしない方が正解かもしれない
そんなこんなで私のクリスマス休暇返上は終わり、セオやドラコ達が学校に戻ってきた
セオは実家から本を持ってきてくれてプレゼントしてくれた
ドラコも実家からプレゼントにしていい本を持ってきてくれてプレゼントしてくれた
パンジーからも本で、なんかもう私に対する皆の認識がよく分かった時だった
私日本人だった頃はそこまでガリ勉じゃなかったんだけどな
こっちにきてから案外面白い勉強が多いから楽しくなっただけで決してガリ勉ではない
決してな
娯楽の手段であったスマホがないだけであったらとうに勉強など放り出している
そんなこんなで友人から貴重な本達を貰った素敵なオソリマスだった
だが私が1番嬉しかったのは両親からの日本食のお土産&クリプリだった
これでお腹に優しい日本食が食べれる
重たい食べ物ともおさらばだ
とりま量がまぁまぁあったのでセブルスにお願いして(勿論交渉して条件付き)彼の部屋の使っていない厨房に置かせてもらった
めっちゃ嫌な顔されたけど
まぁその後私が食べたくて仕方なかった味噌汁と米を一緒に食べたらチクチク文句を言われなくなったので合格ということだろう
まぁ置かせてもらっているので食べに来る時は作り置きしておくとだけ伝えた
何も言われなかったので許可されたということだろう
そして驚いたのが何故かレギュラスからクリスマスプレゼントをこっそり貰ったのだ
いつも手伝ってくれてるお礼だって
お高い文房具をくれた
羊皮紙、羽根ペン、あと本も
こんな値段のやつあるんだと思ったよね
まぁ妹だった頃一応ブラック家だったからそれなりの物は与えられてたけど
まさか今世でも与えられるとは思ってなかった
まぁそれをセブルスに言ったらすっごい皺の寄った顔で「何をしておるのだあの男は…」って頭が痛そうな様子で言ってたな
まぁ、まだ私のこと妹だって知らない上に教授がいち生徒にあげるのは問題だよね
レギュ兄って結構そこらへんはちゃんとした印象があったけど、違ったんだな
そんな感じで色んな方面からプレゼント(という名のこれからも励めよという賄賂&プレッシャーともいう)を貰い、私は私でなかなか良いクリスマスを過ごしたのではないかと思う
あれからハリー達は、よく図書室でハーマイオニーと3人でいるのを見かけて、多分賢者の石のことを鍵つけたと確信して、ハグリッドのところに行こうとするだろうから、私はドラコが深夜に外出しようとするのを談話室で本を読んでいたところで会った
「こんな時間にどこに行くのか知らないけど、見つかったら先生に減点されるよ」
何故、ちくれば自分も巻き添えになることがわからないのか
ひそひそとローブを羽織って行こうとするドラコにページを捲りながら話しかけるとあからさまにビクッとしてこちらを向いた
暖炉の火がぱちっと鳴る
「ユラ…お前なんで起きてるんだ」
「目が冴えて眠れなくてさ。ドラコがくれた本の続きも気になるし。私も外の空気を吸いたいけどこんな時間に外出して見つかるのも嫌だから大人しくここにいるんだよ」
「っ!」
「心配しなくても放っておいても問題を起こすと思うわよ」
「なんでわかる」
「見ていればわかるわ。巻き込まれて減点されるようなこと嫌でしょ?不本意じゃない?狡猾なスリザリン生の賢い判断らしくないじゃない」
「…っ…あぁそうだな。僕はもう部屋に戻る。お前も夜更かしばっかりしてないで寝ろよ。また貧血で倒れるぞ。その方が迷惑なんだからな。スリザリンは軟弱だと思われるようなことするなよ」
少し焦ったように早口で言って自室まで戻って行ったドラコを見て、まぁこれでドラコは行かないだろうと思って私も部屋に戻ることにした
だけど、翌朝ドラコとは違うスリザリン生がハリー達を追いかけていたようでマクゴナガル先生に50点の減点を食らっていた
それを監督生に注意されるのを私達は見ていたからドラコも思うところがあったかもしれない
まぁ当然罰則として、そのスリザリンの生徒とハリー達が禁じられた森に行くことになったらしい
そして、案の定セブルスが怪しまれてしまい、ハリー達は焦り出して賢者の石を守ろうと動き出したようだ
その日はセブルスの元で優雅にお茶をしていた
私は日本茶
セブルスも日本茶がお気に召したようで同じだ
「ひとつ聞く」
「なんなりと」
「クディッチでポッターの箒に反対呪文をかけていたのはお前か?」
「まぁそうですね。あのままだったらMsグレンジャーがセブルスだと勘違いして止めそうだったから。気持ちはわかるけどもう少しハリーに優しくしないと動きにくくなるよ」
余計なお世話だろうし聞く気もないだろうけど一度くらい一応言っておく
案の定嫌そうに顔を歪めてる
ほんと嫌いだな
リリーは大好きだったのにね
まぁ憎らしい気持ちはわからなくもない
「ちっ」
舌打ちしやがった
ほんとリリーの言うことしか聞かないからね
リリーや。セブルスはあなたがいなくなって拗らせてしまったぞよ
しかもジェームズなんかと結婚するから
失礼だがあれのどこがいいのかさっぱりわからん
人の趣味はそれぞれだ
うん。これ以上は言ってはいけないな
「よく考えれば気がつくことに先入観が邪魔をしてる。スリザリンというだけで目の敵にされるのは仕方ないけど…」
「お前がそんなことを言うとは驚きだな。お前ならば純血の一族がどれだけ厄介なのか理解しておるであろう」
「…そうだね…あくまで表向きはという意味においてはある程度の理解はあるかな」
「ほぉう?理解できる。ではなく、ある。だと?」
「差別ではなく分別は大事かなってだけだよ」
「分別だと?」
「ある程度の序列は組織を束ねる上で必要だって話だよ。実際その縮図が学校だよ。学生の学年、監督生などの役割があるのは右も左もわからない下のものを導くためにいる。ある程度の人権と自由を尊重するのが前提だと思うけど…まぁ今のホグワーツってあの頃に比べれば自由度が高いけど」
前世も全前世もホグワーツは今よりもっと暗く厳格だった
ダンブルドアに変わってから明るくなったけど…
まぁ学年の特色も大いに関係してると思う
まぁ日本に比べれば数倍自由だけど
「それが不満だというように聞こえるな」
「不満ではないよ。私は個人的な理由。うるさいのも人が多いのも好きじゃないから……セブルスも自由度が高いのはイマイチだなって思うでしょ?」
私の場合単に慣れてなかったからもあるな
「自由度が高い故に己の力と価値観を過信する愚か者が増える。とんだ弊害だな」
うん
賛同するけど本当に個人的な理由だな
わからなくもない
そんな感じでポツポツとほぼ愚痴になってしまった話をしてから私は寮に戻った
その夜、学年度末パーティーが行われた
豪華な夕食が並べられた大広間にはスリザリンが七年連続で寮対抗杯を獲得したお祝いに、広間はグリーンとシルバーのスリザリンカラーで彩られていた
もしハリーが今回原作通りに賢者の石を守りに行ったならあのグリフィンドールに変わる
席についてダンブルドアの言葉を待つ
「また一年が過ぎた!」
「一同、ごちそうにかぶりつく前に老ぼれの戯言をお聞き願おう。何という一年だったろう。君達の頭も以前に比べて少し何かが詰まっていればいいのじゃが……新学期を迎える前に君たちの頭から綺麗さっぱり空っぽになる夏休みがやってくる」
……
何故か遠くに聞こえるダンブルドアの声を聞きながら何度目かもわからないこの光景に私の表情は暗くなるのがわかった
「それではここで寮対抗杯の表彰を行うことになっとる。点数は次の通りじゃ。四位 グリフィンドール 312点。三位 ハッフルパフ 352点。レイブンクローは426点。そしてスリザリン 472点」
その瞬間スリザリンから歓声が上がり、ドラコも機嫌が良くなる
「よし、よし、スリザリン。よくやった。しかしつい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて」
空気を打ち壊すように至極穏やかな声でダンブルドアが言った
チラッとセブルスを見ると「は?」みたいな顔をして、レギュラスも訝しげな顔をしてる
大広間全体が静寂と化し、スリザリンの歓声が無くなった
そしてひとつ咳払いしたダンブルドアが、ハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビルに私情ばりばりの点数を与えて旗の色が一気にグリフィンドールに変わった
案の定そこかしこ、というか隣と真前で聞こえてるくるスリザリン生徒の落胆と野次の声
対して耳をつんざく程喜び喚くグリフィンドールの生徒達
他の寮の生徒達もスリザリンがトップから滑り落ちたことで喝采してる
セブルスが苦々しい作り笑いでマクゴナガル先生と握手を交わす
その喝采の中、私は頭の中で遠くに彼の声が聞こえた
あれは…
「何か言いたいなら言えばいいだろう。その口は何のために付いているんだ?」
脚を組んで傲慢不遜に顔も上げずに言い放つ彼に私は立ち尽くしていた
「……」
何も言えずにただ突っ立って黙っている私に痺れを切らした彼が溜息をついて本を閉じ立ち上がってゆっくりと歩を進めて私の前に立った
顔を見上げられずに俯いている私
「言え」
ただひと言
命令され、私はおずおずと口を開いた
「…トムは……凄いよ…天才で秀才で………でも」
「続けて?」
「……やっぱり…何でもない…」
「聞こえなかったか?僕は’’続けろ’’と言ったんだ」
少し苛立ちが含んだ艶やかな声に怖くてびくりと震える肩
その震えをなんとか抑えて私は口を開いた
「…ーーーー……よ…」
その日、私の言ったことは…気の迷いだったか…慎重に選んだ言葉なのか…自分でもよく覚えてない
何故あんなことを言ったのか…
自分でもよくわからない…
ただそれを言った時、彼の薄く形のいい唇は歪なほどに弧を描いていた
それから落胆して文句を言うドラコやパンジーの愚痴を聞きながら試験の結果が発表された
私はハーマイオニーを抑えて学年トップ
そしてハーマイオニー
その次にセオだった
皆嬉しがった
狡猾を謳われるスリザリンの生徒が首位に食い込み知識で圧勝したのだ
皆喜んだ
特にセオは自分のことように喜んだ
とてもいい友人を持ったと思った
だけど私はその時も思ってしまった
彼ならきっと圧倒的な差をつけて首席だっただろうと
そして、怒涛の3度目の1年生は終わり、私は次の年まで家に帰った
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セブルスと再会を果たし、記憶を共有した彼女
賢者の石はあっけなく終わり、次は秘密の部屋
ホグワーツでの1年はセブルスとの再会を果たして終わりを迎える