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- 2014年10月号
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雪不足が招く米国西部の干ばつ
慢性的な水不足に悩まされる米国西部。重要な水源である山地の雪が減少しているのだ。広大な農地と都市を支える水を確保する方法はあるのか?
今年の日本列島は豪雨に見舞われたが、米国西部は慢性的な水不足に悩まされている。重要な水源である山地の雪が減少する傾向にあるのだ。
雪解け水に支えられてきたカリフォルニアの農業
米国カリフォルニア州に広がるセントラル・バレーには農業に適した条件がそろっていた。肥沃な土壌と温暖な気候に恵まれ、コメやアスパラガス、ザクロ、オレンジなど300種類以上の作物がよく育った。アーモンドやオリーブ、クルミに至っては、米国内の生産量のほぼすべてを占める。
このセントラル・バレーで農業をするには、とにかくお金がかかる。農地に水を引き込む灌漑設備が必要だし、不作で収入のない年にも備えなくてはならない。水利権をめぐる裁判や政治的な争いも日常茶飯事だ。農家の人たちはそうした争いで大金を得たり失ったりしながら、数百ヘクタールの土地を耕し、毎年作物を収穫して結構な売り上げを手にしてきた。
だが今後は、そうした運任せなやり方はもう通用しないだろう。
米国西部の水の供給源は、実は冬の雪だ。太平洋から吹き寄せる寒波が山脈に大量の雪を降らせ、山に積もった雪塊が西部地域の貯水塔となる。
春の雪解け水を活用するため、川に何百ものダムが建設されてきた。そのためコロラド川の水がカリフォルニア湾に流れ込むことはほとんどなく、かつて緑豊かだったデルタ地帯も、今は泥地が広がるばかりだ。サケをはじめとする魚も姿を消しつつある。ヨセミテ渓谷に匹敵するほど美しいといわれたヘッチ・ヘッチー渓谷は、サンフランシスコへ水を供給するため、1923年にダムの底に沈んだ。
気候変動と向き合う
気候変動によって米国の南西部では降水量が減り、北西部では増えるといわれているが、セントラル・バレーに関しては明確な予測がない。だが問題は、どれほどの雪が降り、雪塊がどれだけ長く山にとどまるかだ。豪雪の年もたまにあるとはいえ、西部の雪塊はここ何十年か減少傾向にあり、しかもその勢いは加速するとみられている。
「暖冬が増えることで山の積雪量が減り、春の雪解けの時期も早まっています」と、オレゴン州気候変動研究所のフィリップ・モート所長は話す。
雪塊の縮小と早すぎる雪解けは、干ばつが長引き、深刻さを増すことを意味する。水を確保するために、何かできることはあるのだろうか。
※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2014年10月号でどうぞ。
ミネラルウォーター「クリスタルガイザー」を、みなさんも一度は飲んだことがあるのでは? その源泉は、まさに今回取り上げた米国西部のシャスタ山にあります。西部の農家の人々が農業用水を確保している川の一つ、サクラメント川にも、シャスタ山の雪解け水が流れ込んでいます。数あるミネラルウォーターのなかでも、私が今一番飲みやすいと感じているのがクリスタルガイザーなのですが、米国西部の状況を知った後では、感謝の気持ちを抱かずには飲めません……。(編集M.N)