「自分の代わりはいくらでもいる」が前提。社会人こそ真似したいジャニーズのアイドルたちの仕事術

    霜田明寛さんが上梓した『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)。ここにはSMAP、KinKi Kids、嵐、Kis-My-Ft2など最前線で活躍するジャニーズアイドルたちの努力が描かれる。

    顔がいい人生。きっと生まれたときから華やかに違いない。ジャニーズのメンバーたちは生まれながらに、恵まれているものだと思っていた。

    そんなイメージを打ち砕くのが、霜田明寛さんが上梓した『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)だ。霜田さんは、テレビ朝日の「8時だJ」やNHKの「ザ少年倶楽部」を舐めるように見て10代を過ごし、オーディションを受けた。

    それから15年、合否の連絡はまだ「ない」。

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    会社員として働く傍ら、ジャニーズのイベントに通いながら、返事を待っていると笑う。霜田さんは「大人になった今だからこそ、さらにジャニーズの魅力がよりわかるようになった」と言う。オーディションに受からなかった人でさえ虜にし続けるジャニーズの魅力とは一体なんなのか?

    「過去の発言を集めていくと、ジャニーズに所属する方の多くが、自分は『特別』だと思っていない。『普通の星』に生まれた人たちだったことがわかった。普通な自分と向き合って、死ぬ気で努力しているんです」

    例えばどんな人だろうか?

    1. 劣等感は当たり前。そこを糧にする

    まず、KAT-TUNのセンターとして輝く亀梨和也があげられる。亀梨は過去にこんな発言をしている。

    「僕は何の才能もないから目の前のことを精一杯やるしかなかった」

    中学生の頃に入所した亀梨の同年代にはすでに輝くスターがたくさんいた。自分がステージの端で踊る時、最前列のセンターでスポットライトを浴びる山下智久。仕事現場まで一緒に歩いていると、自分がやっと数人に声をかけられる時、後にKAT-TUNを組む赤西は、数十人に囲まれていた。

    10代の頃から「少なくとも、顔で商売できるタイプじゃないと思う」「立ってるだけで成立するスターみたいな人じゃない」と自身を分析していた。

    「亀梨さんって、僕から見たらすごく華やかな美形のスター。でも、大事なのは亀梨さんが自分を華やかではないと自覚し『立っているだけで成立するスター』になろうと、糧にしているところ。視座が尋常じゃなく高い」

    「一方、キラキラしているように見える山下さんもすごく努力家。最近、海外のアーティストに流暢な英語で取材をしている姿が話題になっていますが、ずっと……20年くらい前のジャニーズ名鑑で当時高校生の山下さんは『英語を話せるようになる』と目標を掲げてるんですよね。それをちゃんと実現させていて感嘆してしまいました」

    2. やりたいことと求められることのバランス

    会社から求められることと、自分がやりたいことでバランスを探すメンバーもいる。その最たる例が、堂本剛だという。ソロアーティストとしてサマーソニックの舞台にまで立つ彼には、そこに至るまでにこんな逸話があるという。

    「堂本剛さんは、自身で作詞作曲を手掛け、ソロデビューを果たした異例の存在です。しかも歌詞はアイドルとは思えないほど、内面世界を描いていた。当初、事務所からは『ラブソングを書くべき』と怒られたこともあったそうです」

    「ENDLICHERI☆ENDLICHERIというソロプロジェクトの立ち上げでは、自ら企画書を書いて、事務所にプレゼンしたそうです。あの堂本さんが資料を自ら配って、上層部から質疑応答を受ける」

    「堂本さんはアイドルとしてKinKi Kidsも大事にしている。『デビューからのシングル連続1位獲得作品数』でギネス記録を打ち立てる実績を出した上で、やりたいこともやる。『これからのアイドルは偶像ではなく、現実も見せていくべきだ』とも話しています」

    「方向性が違いますが、嵐の櫻井翔さんもバランス感のある方です。櫻井さんはラップパートを自身で作っていて、本当はヒップホップにもすごく造詣が深い。でも、本格派を極めすぎると嵐にハマらない。ジャニーズの範囲で表現できるヒップホップに落とし込んでいるんですよね」

    3. 同じグループ内でも、ブレイクする時期はバラバラ。それまでに準備をしておく

    数多いるジャニーズのメンバーの中で、ブレイクの時期は人それぞれ。10代の時に一躍脚光を浴びる人もいれば、30代で注目を集める人もいる。霜田さんが注目するのは「陽の当たらないときも準備をしているタイプ」だという。

    「山田涼介さんはHey! Say! JUMPでずっとセンターをはっているように見えますが、実はそうではない。中島裕翔さんが中央にいました。山田さんはある舞台の代役からチャンスを掴んでいったんです。急遽、アサインされていたメンバーが倒れてしまい『できる?』と聞かれたときに『できる』と答えた。それって、山田さんが主役の分の台詞も全部出来るように準備していたからだと思うんです。だから、チャンスが降ってきた時に主役になれる

    「ジャニーズの定義を『チャンスに全力で答えるのは当然。なんでも出来て当たり前なのがジャニーズ』と語っているんです。『できない』と言った時点で、代わりを務める人がたくさんいる環境だから」

    山田さんと同じHey! Say! JUMPでは、伊野尾慧さんも方向性は違えど、準備をしていた組だ。当初は「仕事がなかった」と漏らすような存在だった。そんな中、明治大学理工学部建築学科に入学し、研究、論文、仕事を同時進行させた。

    「仕事で活躍できていないと思う状況があるなら、別のところでちゃんと努力する。ジャニーズなのに自発的に大学に行く。結果的にそれが彼を唯一無二のアイドルにしていた。学業にも邁進するタイプでは、Snow Manの阿部亮平さんは上智大学の修士まで出て、気象予報士としても活躍されていて……NEWSの加藤シゲアキさんは作家ですし……加藤さんを見て、僕は文章を書き続けるなら、加藤さんの見ていない世界を見ないといけないと考え、会社員になることを決めました」

    「少し違いますが、関ジャニ∞の丸山隆平さんもドラマ主演を務めるようになったのが30歳目前で、30代に入ってからブレイクしたと言っていいでしょう。関ジャニのメンバーだと、渋谷すばるさんや錦戸亮さんは、ジュニアだった10代の頃から目立っていた。でも、そうやってキラキラしたメンバーに対して嫉妬するわけでもなく、甘えてだらけるわけでもなく、ひっそり鍛錬していたんですよね。同じグループでもブレイクする時期が違う」

    4. 30代になったら考えたい、後輩との関わり方

    新しく社長になった滝沢秀明についてはどう思うのか? 仕事ざかりの30代だ。

    「滝沢さんは、本当に後輩思いの方なんだと思います。例えば、最近ではSixTONESとSnow Manという2組を同時にCDデビューさせた。2組同時はジャニーズ史上初めての試みですし、彼らはYouTubeでも人気のあるグループだったのでCDデビューという形もなくなるのでは、とも言われていたんです」

    「それでもCDデビューを選ぶ。リスクもありますけど、それだけ本気なんだと思いました。エンタメ王道を引き継ぐという強い意志を感じるといいますか……。両グループともメンバーは20代半ば。嵐はデビュー時10代だったわけですから、すごく歳を重ねてからのチャンス。彼らをデビューさせることで、もっと若いJr. の子たちも、勇気づけられたと思うんですよね。自分たちも頑張ろうって」

    「例えば、30代になると会社を経営する側への不満とか溜まってくるじゃないですか。愚痴を言いたくなったり。でも、その中で、滝沢さんは常に経営側とタレントの間に入るという形で、後輩たちのケアを考えているように見えます」

    「滝沢さんって、もともと映像編集が趣味でドラマに出演したときも自分でカメラを回してメイキング映像を作っていたりしたんですよ。2010年頃には『滝CHANnel』っていうWEB動画サービスも展開していて……登場するのは、デビュー前のKis-My-Ft2、A.B.C-ZやSexy Zoneとか。後輩に華を持たせる。30代なら自分を磨きたくなっちゃうのが普通なのに」

    5. ジャニーズは常に「前例」を壊してきた。超ベンチャー思考

    「ジャニーズって聞いたら、芸能界で言ったら大企業ですよね。そこに入れただけでもすごいのに、みなさん全然慢心せずに『壊してやろう』って戦ってるんですよね。ベンチャー企業みたい」

    本書で紹介される16人は、まさに「アイドルという枠組みをいつも壊そうとしてきた」メンバーでもある。

    無骨な男性像を良しとする芸能界に、中性的な王子様のようなアイドルを誕生させたのがはじまりだった。栄華を築く中で、SMAPはバラエティ番組に出演し「おもしろさ」という新しい魅力を作った。堂本剛はひとりのアーティストとして内面世界を描き、傷つきもがく姿を見せた。一方、アイドルなのに不良のかっこよさを凝縮させたKAT-TUNは、王子様像をある意味壊した。芸能界の真ん中にいながら、大学に通いニュースキャスターや小説家としてデビューするメンバーもいる。

    今、ジャニーズが新しく作っている像はなんだろうか? そのひとつが年齢だという。

    少年隊や近藤真彦ら先人はいたものの、SMAP以降、40歳を迎えても最前線でアイドルとして活躍できることが示されてきた。未完成な若者たちが成長していくのを見守ることに醍醐味があるアイドルに「成熟」という新しい楽しみ方を提示しつつある。

    「ジャニーズのみなさんによってアイドルの寿命が伸びてると思うんです。30歳からの『顔』って自己責任というか、内面だと思っていて。10代の顔は先天的なものが大きいかもしれない。そこから20代を仕事で駆け抜けて磨かれた内面が30代を境目に出てくる」

    「ジャニーズの皆さんがかっこいいのは、内面を含めた積み重ねの日々が外見として表れているんですよね。皆さんの努力を見ていると、僕も頑張りたいって思えるんです。才能とは、天から授かるものではなく、死ぬ気で身につけるものだって」

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