新聞を見るとそこには…
2016年6月21日。Aさんは前日に起こった事件のことを新聞から知る。衝撃を受けたAさんは、すぐに車で秋田市へ向かった。元妻が拘留され、愛実ちゃんの遺体が保管された管轄の警察署につくと、Aさんはさっそく事情聴取を受けることになった。聴取が終わった夕方、Aさんは、警察の計らいで愛実ちゃんの最後のお別れをすることになった。
「もちろん、会いたいという気持ちはすごくありました。だけど不思議なことにすごく足取りが重かったんです。一歩踏み出すのがすごく重かった。
検視室で私を待っていた愛実は、裸に布団をかけられただけの状態でした。司法解剖時に髪を剃って開頭したのか、頭には包帯が巻かれていました。首を絞めて殺したそうでしたが、絞められた部分に痕らしい痕はありませんでした。穏やかな表情とはかけ離れ、赤紫色の顔で、何かを訴えたそうに、大きく口を開けていました。
変わり果てたわが子の姿を目の当たりにし、殺されたという現実をまったく受け入れることができず、何の言葉も出ず、涙も出ず、ただただ体を震わせていました。なぜ震えていたのかは私自身わかりません。他人であってほしいという気持ちかもしれませんし、この子供はたぶん他人なんだという風に自分に言い聞かせていたのかもしれません」
――それが愛実ちゃんとの最後のお別れだったんですか?
「いえ、翌日の午前中に、今度は私の母と祖母の3人で、愛実に会いに行きました。新生児の頃、よく面倒を見てくれていた母と祖母に、愛実を一目会わせたい――そう思ったんです。
『こんなに大きくなったのにな。なんでなんでなんで』と母と祖母が対面した途端から泣きじゃくりました。私も声を上げて、大泣きしました」
そのときの心情についてAさんは次のように語った。
「元妻にどれだけの恐怖を最期、感じさせられて、亡くなっていったのか……ということです。一番信頼しているはずの母親に首を絞められている姿が人生の最期だと思うと、かわいそうでかわいそうで……そんな考えが浮かんできました」
前編でも触れた通り、1年後の2017年に行われた刑事裁判では、元妻が愛実ちゃんを道連れにするといった動機が日記から判明。殺害の意思はあったと認められ、一審で懲役4年が求刑された。
「死因は裁判で判明しました。ゆるい力で十数分間、締め付けられたそうです。近くにタオルがあったということなので、もしかするとタオルで絞めて、そのまま放置をした可能性があると。残忍だと思いました」
元妻は控訴する。犯行の記憶を思い出せず、身に覚えがないということで無罪を主張した。しかし、彼女の訴えは認められず、事件から2年近くがたった今年(2018年)3月、一審の求刑通り、最高裁にて懲役4年という刑が確定した。
現在、Aさんは毎朝、仏壇に飾っている愛実ちゃんの遺影に向かって手を合わせている。そのときAさんは心の中で愛実ちゃんに語りかける言葉があるという。
「『いつも1日たりとも忘れることはなかったんだよ。決して捨てたわけじゃないから。それはわかってね。ずっと今でも愛しているんだよ』という言葉です。もし生きて再会していたら、この言葉を直接伝えてあげたかった……」
そう言うと、Aさんは感極まって涙を流し始めた。向かい合って話を聞いていた私は、無言で頷くことしか出来なかった――。