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この作品「名前をつけてみようの会」は「オリ主」「爆豪勝己」等のタグがつけられた作品です。
名前をつけてみようの会/生涯ヲタクの小説

名前をつけてみようの会

8,543文字17分

昴のヒーロー名を色々と考えました。
すみません。勝手に次回の題名を変えてしまいました。ご了承下さい。

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2023年4月8日 09:27
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体育祭から二日後。
二日前の青空とは打って変わり、どんよりとした雲が立ち込める雨模様の天気だった。
しとしとと降り続く雨はなんだか物寂しい。梅雨入りしたら洗濯が乾かなくなるな、と家庭じみたことを考えながら校門を潜る。
土間では、八百万と耳郎が傘をくるくると巻いていた。
「おはよう、百ちゃん。響香ちゃん」
「おはようございます、昴さん」
「おはよう、昴。朝から雨とか最悪だね」
二人に近づいて声をかけると、八百万がひどく落ち込んでいた。
昴は耳郎に近づき、小声で聞いた。
「百ちゃん、朝から元気ないけど…何かあったの?」
「…それがさぁ、体育祭、全国放送でやってたじゃん。朝ね、通学中に体育祭のことで声をかけられて、ヤオモモ、『本戦まで行ったのに残念だったね』、て言われたみたい」
「ああ…なるほど」
ようやく納得できた。
八百万は本戦まで行ったが、初戦で負けてしまったことに落ち込んでいた。
昴も耳郎もどう励ませばいいのかと迷っていた。
そうこうしている内に教室に着いてしまった。
「やっぱりテレビで中継されると違うねー!超声かけられたよ、来る途中!!」
「俺も!」
教室に着くと、芦戸や切島達が朝のことで騒いでいた。
「私もジロジロ見られてなんか恥ずかしかった!」
「葉隠さんはいつもなんじゃ…」
「俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ」
尾白が困ったようにつっこみ、瀬呂が悲しそうに話した。
蛙吹が「ドンマイ」と声をかけると瀬呂は頭を抱えて叫んだ。
「たった一日で一気に注目の的になっちまったなー!」
「やっぱ雄英すげえな…」
後ろの方では上鳴と峰田が話している。
雄英から歩いて徒歩数分のところに住んでいる昴とは違って、遠くから通学して来るクラスメイト達は多く声をかけられたんだな、と思った。
それほど、あの体育祭は注目度が高いのだと改めて実感し、今後の生活では気をつけようと心に決めた。
「お早う」
「「「おはようございます」」」
相澤が入ってきた瞬間、全員が急いで席に着き、さっきまで騒いでいた芦戸や切島達が黙った。
「ケロッ、相澤先生、包帯取れたのね。良かったわ」
二日前までとは違い、ミイラだった相澤の包帯が取れていることに気づいた。
よく見ると、目の下に傷跡が残っている。
後遺症も残ってしまったのか、と心配だった。
「婆さんの処置が大ゲサなんだよ。んなもんより、今日の"ヒーロー情報学"、ちょっと特別だぞ」
相澤の"特別"という言葉でクラスに緊張感が走る。
ヒーロー科の授業には色々な授業があった。
実践的なヒーロー基礎学、というものもあれば、相澤が言うような情報学もある。
ヒーロー関連の法律など…難しい内容のものも多くあった。
一体何が特別なんだ、と、
クラスの皆があれやこれやと考えていると、相澤からの声が聞こえる。
一部の生徒が「テストだったらどうしよう」と青くなっている。
「『コードネーム』、ヒーロー名の考案だ」
「「「「胸ふくらむヤツきたああああ!!」」」」
グア!と一部生徒がものすごい勢いで立ち上がったり、声をあげたりしたので海里はビクッと驚いた。
隣の席の口田も、同じようにものすごく驚いたらしく、二人で目を合わした後、クラス内を見渡す。
しかし、前に立つ相澤がいきなり騒ぎ出す生徒を見て個性を使うほど怒りそうな気配を察し、皆すぐさまシーン!!と静まり返った。
すでに相澤の恐怖がクラスの皆には植え付けられている。
「というのも先日話した『プロからのドラフト指名』に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み、即戦力として判断される二、三年から…つまり今回来た”指名”は将来性に対する”興味”に近い」
相澤の言葉を聞き、「なるほど」と昴は小さく頷きながら聞いている。
なんだか野球のチームみたいだな、なんてことを思いながら聞いていた。
「卒業までにその興味が削がれたら、一方的にキャンセルなんてことはよくある」
続く相澤の説明に「大人は勝手だ!」と机をガンと叩く峰田を振り向く。
卒業後、そのままその事務所に雇われる…なんて話もよく聞く。
事務所も事務所でそりゃぁいい人材を雇いたいからなんだろうな、と思った。
すると葉隠が相澤に声をかけた。
「頂いた指名がそのまま自身へのハードルになるんですね!」
「そ。で、その指名の集計結果がこうだ」
前の黒板に、『A組指名件数』という見出しで集計結果が表示される。
それぞれの名前、指名数が棒線でわかりやすく表示されていた。
なんとなしに前を眺めていた昴は、見出しから名前の欄に目を移す。
その結果に目を見張った。
前に書かれている結果はこうだった。
指名数が多いものから上に書かれているのだが…。
【 A組指名件数 】
 轟 :4357
糸守 :4123
爆豪 :3556
飯田 :360
常闇 :301
上鳴 :272
八百万:108
切島 :68
麗日 :20
瀬呂 :14
「例年はもっとバラけるんだが、三人に注目が偏った」
黒板をみていた昴はポカーンと口を開けたまま前を見ている。
とてもドラフト二位の顔とは思えないほどに。
「糸守さん、すごい!」と口田が小さな声で言ったのが聞こえた。
言われた本人は「なんで…?」と目の前の結果が受け入れられずにいる。
黒板に書かれたものを見て、クラス中がざわめいた。
「だー!!白黒ついた!」
「見る目ないよねプロ」
イスにもたれかかり、天井をみあげる上鳴と、頬杖を両手でつきながら自分への指名がなかったことにプンプンと怒る青山。
「二位と三位が繰り上がって一位が三位になってるんじゃん」
「表彰台で拘束された奴とかビビるもんな…」
「ビビってんじゃねーよプロが!!」
斜め前の席の切島が言ったのは確かで、順位がそのまま反転している。
瀬呂が言った言葉に爆豪が噛みついた。
「すごいね、轟くん!」
「ほとんど親の話題ありきだろ…」
前の席の轟と、その後ろの葉隠もそんな会話をしていたし、麗日は「わあああ」と自分に指名がきていることに嬉しそうにしていた。
そして、同じような光景が緑谷のところでも行われている。
「無いな!怖かったんだやっぱ」
「んん…」
峰田が前の席の緑谷を小さくゆすっていた。
すると斜め前の切島が話しかけてきた。
「糸守、指名数すげえな!」
「…なんでかは…わからないけどね…」
「おいらはわかるとも。個性の良し悪しに限らずだな…」
「ああ゛?るっせーわ、玉!黙れや!ついでにデク!テメエもだ!!」
「おいら、まだ何にも言ってねえだろ…」
「何で僕まで?!」
自信満々に何か説明しかける峰田に、爆豪が何かを察して怒鳴り散らした。
言いかけた峰田は慌てて口を噤んだのだった。
緑谷は何も言っていないはずなのに、何故か怒鳴られていた。
だが、再び相澤が話し出す声が聞こえてきたので、全員一斉に前を向く。
「これを踏まえ、指名の有無関係なく、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう」
「「「「!!」」」」
「おまえらはひと足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験して、より実りある訓練をしようってこった」
相澤が言う「一足先の訓練」とは敵襲撃の事だと誰もが理解した。
「それでヒーロー名か!」
「俄然楽しみになってきたァ!」
合点のいった様子の砂藤と麗日に、相澤はコクリ、と頷く。
「まァ仮ではあるが、適当なもんは…」
「付けたら地獄を見ちゃうよ!」
相澤が再び説明を始めようとした時、相澤の言葉を遮り、誰かの声が大きく教室に響いた。
パン!と開いた扉から入ってきたミッドナイトに、全員の視線が集中した。
「この時の名が!世に認知され、そのままプロ名になっている人多いからね!!」
「「「「ミッドナイト!!」」」」
「まァ、そういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう」
「俺はそういうのできん」と呟きながら、相澤はゴソゴソと何故か寝袋を取り出す。
じゃあイレイザーヘッドはどうやって付けたんだろう?と考えた。
後に、相澤のヒーロー名を同期であるプレゼントマイクが付けたことを知った。
「将来、自分がどうなるのか。名を付けることでイメージが固まり、そこに近づいていく。それが『名は体を表す』ってことだ…"オールマイト"とかな」
相澤の言葉に昴は確かに、と納得した。
オールマイト。
その名前の通り、オールマイトは全ての人を助けるヒーローだ。
オールマイトはその言葉を表すには良い例だ。
その後、前の席の飯田からヒーロー名を書くフリップのようなものが配られた。
飯田の顔を見た時に、「そう言えば、いつもならこういう所で質問するのにな。今日は静かだな」と思った。
いつも率先して分からないことを聞く飯田だが、今日はいつもと違って、静かだった。
思い返せば朝のホームルームでも、いつもの声掛けがなかったことを思い出す。
何かあったのだろうか、と心配になった。
「十五分あげるから考えなさい」とミッドナイトに言われて、我に返った。
自分の両手で未だ、何も書かれていない真っ白なフリップをじっと見つめる。
何となく、横目でクラスの様子を見れば、すぐにペンを持って書き始める者、腕を組んで悩んでいる者、一度書いたが書き直す者、そんなクラスメイト達の姿が見えた。
昴はまだ、真っ白なフリップを持ったままで、まだペンすら持っていない。
「……」
幼い頃からヒーローを目指していたが、肝心のヒーロー名を考えていなかったことを昴は後悔していた。
身近なヒーローの名前を思い出すと、どれも個性に関連したモノばかりだ。
自分の個性から考えてみるが、二つもあるから良いものが思いつかない。
辞書を叩くと、ある言葉に目が止まり、早速ペンを走らせた。
そして十五分が経った。
満足げに、自分の書いた文字を眺める。
「じゃ、そろそろ。できた人から発表してね!」
「「「「!!!!」」」」
ミッドナイトの言葉に全員が驚いた。
まさかのクラスメイトの間での発表形式スタイルだとは思ってもいなかった。
騒つく教室の中、一番に名乗り出たのは青山だった。
堂々とフリップを持って教卓に立つ。
「行くよ…」
そう言ってス…とフリップをひっくり返すそぶりをする。
昴は皆がどう決めているか気になった。
青山はゴオ!という効果音が付きそうな勢いでフリップを掲げた。
「輝きヒーロー、”I can not stop twinkling.”」
「「「「短文!!!」」」」
「そこは”I”を取って”Can’t”に省略した方が呼びやすい」
「それね、マドモワゼル☆」
い、良いのか!?と全力で突っ込みたくなったが、その言葉を飲み込んだ。
二番目の芦戸が前に立った。
芦戸は自信満々な顔でフリップを出した。
「じゃあ、次、アタシね!"エイリアンクイーン"!!」
「ツー!!血が強酸性のアレを目指してるの!?やめときな!!」
間髪入れずミッドナイトに突っ込まれ、「ちぇー」と言いながら芦戸は自席に戻った。
クラス中のほとんどがそう思ったであろう。
何か面白い名前じゃないとダメなのか…?という空気に包まれる。
日曜日の夕方の某有名な番組のような展開に手をあげようとする者が一気に減った。
だが、そんな空気を戻してくれた救世主がいた。
「じゃあ次、私いいかしら」
「「「梅雨ちゃん!!」」」
「小学生の時から決めてたの、フロッピー」
「カワイイ!!親しみやすくて良いわ!!」
蛙吹のフリップを見て、昴も気持ちが和む。
空気を戻してくれてありがとう、ということと、可愛い名前に癒される。
やっぱり皆、小さなころからこういうことを一度は考えているのだなぁとも思った。
「んじゃ俺も!!剛健ヒーロー、烈怒頼雄斗!!」
「"赤の狂騒"!これはアレね!?漢気ヒーロー"紅頼雄斗"リスペクトね!」
「そっス!だいぶ古いけど、俺の目指すヒーロー像は"紅"そのものなんス」
「フフ…憧れの名を背負うってからには相応の重圧がついてまわるわよ」
「覚悟の上っス!!」
重圧覚悟の上で、その名前はすごいな、と感心した。
「うあ〜名前考えてねんだよな、まだ俺」
「つけたげよっか"ジャミングウェイ"なんてどう?」
「おお!"武器よさらば"とかのヘミングウェイもじりか!インテリっぽい!カッケェ!!」
「〜〜〜〜〜いやっ。折角強いのにブフッ!すぐ…ウェイってなるじゃん…!?」
「耳郎おまえさァ、ふざけんなよ!」
耳郎は逃げるように教壇に立つと、それに続き皆がどんどんと発表していった。
「ヒアヒーロー イヤホン=ジャック」
響香ちゃんらしくてカッコいいな、と思った。
「良いわね!次!」
続いて障子が前に出た。
「触手ヒーロー テンタコル」
「触手のテンタクルとタコのもじりね!」
そういうのもありか、と知った。
続いて瀬呂が前に立った。
「テーピンヒーロー セロファン」
「分かりやすい!大切!」
やっぱり個性関連か、と思った。
続いて尾白が立った。
「武闘ヒーロー テイルマン」 
「名が体を表してる!」
次に砂藤が立った。
「甘味ヒーロー シュガーマン」
「あま~い!」
二人ともかぶっているが、ヒーローらしいな、と感心した。
続いて再考になった芦戸が立った。
「ピンキー!!」
「桃色ー!桃肌ー!」
さっきとは違い、可愛い名前になってきた。
続けて散々悩んでいた上鳴が立った。
「スタンガンヒーロー チャージとイナズマでチャージズマ」
「か〜!シビレル〜!」
障子と同じタイプだった。
続けて葉隠が立った。
「ステルスヒーロー インビジブルガール」
「いいじゃん!良いよ!さァどんどん行きまくりましょー!!」
名が体を表しているな、と思った。
今度は八百万が立った。
「この名に恥じぬ行いを。万物ヒーロー クリエティ」
百ちゃんらしいな、と思った。
「クリエイティブ!」
続いて轟が立った。
「ショート」
「名前!?いいの!?」
「ああ」
名前でもいいんだ、と知った。
続いて常闇が立った。
「漆黒ヒーロー ツクヨミ」
「夜の神様!」
和名もありなんだ、と納得した。
教卓で見えないが峰田が立った。
「モギタテヒーロー グレープジュース」
「ポップ&キッチュ!!」
下ネタばかりの峰田から意外なモノが出てきて少し驚いた。
続いて静かに口田がフリップを出した。
"ふれあいヒーロー アニマ"
「うん!!分かった…!」
口田くんらしい可愛い名前だな、と和んだ。
続いて爆豪が立った。
「爆殺王」
「そういうのはやめた方が良いわね」
「何でだよ!!」
「爆発さん太郎にしろよー!」
「黙ってろクソ髪!!」
爆豪が今までの流れをぶった斬り、ミッドナイトから真面目に指摘された。
込み上げてくる笑いを必死に抑えた。
続いて麗日が前に出た。
「じゃ私も…考えてありました。ウラビティ」
「シャレてる!」
昴もミッドナイトと同じ感想を持った。
ミッドナイトはクラス内を見回した。
「思ったよりずっとスムーズ!残っているのは再考の爆豪くんと…」
「わ、私いいですか」
最後になるのは嫌で、ミッドナイトの言葉を遮って発言する。勢いあまって立ち上がってしまったせいで、「やる気充分ね」なんて言われて恥ずかしくなる。
「Freaden(フリーデン)、です」
「フリーデン、良い響きね。意味は…」
「ドイツ語で平和です。私の理想のヒーロー像に一番近いかな、て」
「なるほどね!いいじゃない!覚えやすいし!」
ミッドナイトの言葉に昴は胸を撫で下ろした。
救けを求める人を救けられるヒーローになることを忘れない為に。
この名前に恥じぬ、ヒーローを目指そうという決意のための名前だ。
結局残っていた飯田は"天哉"で自分の名前に収まった。
何か迷っているような、そんな感じが見受けられた。
そして、最後の緑谷は意外な"デク"だった。
デクといえば、木偶の坊という意味だが、それをヒーロー名にしてしまうほどの何かがあったのだろう。
昴も似たような経験があったから、よく分かった。
誰かの一言が世界を変えてくれる。
昴はあの薄い金色に目を向けた。




「"爆殺卿"!!」
「違うそうじゃない」
再考の再考に結局なった爆豪の二回目のヒーロー名案を聞いて、ついに昴は限界を向かえて笑ってしまった。
「"殺"はダメでしょ」
「んだと!?文句あんのか、糸守!!」
結局、爆豪のヒーロー名が決まらないまま、ヒーロー名考案の授業は終わった。





ヒーロー名考案の授業後。
ミッドナイトの出番が終わり、寝袋から出てきた相澤が教卓前に立つ。
ミッドナイトは自分の役割が終わったからか、体を伸ばしながら相澤の説明を聞いていた。
もちろん、クラスメイト達も前から回ってくるプリントを後ろの席へと渡しながら相澤の話に耳を傾けた。
「職場体験は一週間。肝心の職場だが、指名のあった者は個別にリストを渡すからその中から、自分で選択しろ」
昴は前から回ってきたプリントを飯田から受け取った。
相澤が皆に配っているプリントを前に突き出すようにして説明を続ける。
「指名のなかった者はあらかじめこちらからオファーした全国の受け入れ可の事務所40件、この中から選んでもらう」
一応先の説明では、指名数ナンバーツーをゲットしてしまった昴は、きっと後からリストを配られるのだろうと思った。
手元に配られたプリントに視線を落とそうとしたが、相澤の説明が続くので顔をそちらに向ける。
「それぞれ活動地域や得意なジャンルが異なる。よく考えて選べよ」
なるほど、と思い配られた資料に目を落とす。
自分はどういうところに行きたいんだろう…とぼんやりとそんなことを思った。
将来の自分の為になるところを選ぶべきだ。
ふと、声がチラホラあがっている皆の方へと耳を傾ける。
みな、配られた資料などを見ながら話しているらしかった。
「俺ァ都市部での対・凶悪犯罪!」
「私は水難に係わるところがいいわ」
切島と蛙吹が言った言葉が聞こえた。
みんなヒーローになりたいと昔から思っていたのなら、どういう風に活躍したいか…というところまで考えている人もいるのだなと思う。
そして、蛙吹が言ったように自分の個性の得意分野があるものもいるのだと、クラスを見渡してそう思った。
「んー…」
そして、授業の最後に、指名があった人達には、個別に名前を呼ばれてリストを手渡される。
ズラリと並んでいる事務所の名前に驚きながらも、その紙の束を意味もなくパラパラとめくる。
「今週末までには提出しろよ」
「あと二日しかねーの!?」
相澤の言葉に、誰かが言った。
二日って、もうすぐじゃないか。







「昴さんはどちらのヒーローのもとへ職場体験へ行かれるのですか?」
いつのまにか昴の席の近くに来ていた八百万からそう聞かれて、目線を上げる。自身のスカウトリストは五十枚以上の用紙の綴りになっていて、見るにも一苦労だったので、バラバラと目を通しているところだった。
「まだ、考えてる」
「しかたないよね。昴、アンタスカウト数ヤバいもん」
そもそもヒーローに対して知識がない昴は、今からこの四千件以上の中からどう選べば良いのかも分かっていない。
提出期限も考えると、全てを調べることは難しかった。
「二人は?」
「私はご指名頂いた中から、ウワバミさんの事務所に行こうかと」
「ウチはデステゴロさんのとこかな」
二人の他にも、何人か即決して希望を書いている。どうやって決めたの、なんて聞けなかった。
「……私、図書室行ってくる。早く決めないと」
「あ、うん。あんま無理したらダメだよ、相談あったら乗るから連絡して」
「さようなら、昴さん」
 手を振って、二人と別れる。
その後、下校時間ギリギリまでかかって下調べをして、帰宅してからも調べ、一つに絞ることができた。全てを調べることはできなかったから、ビルボードチャートランキングで絞った後、昴が学びたいことに繋がるヒーローを選んだ。本音を言えば、もう少し先生のサポートが欲しかった、と少し恨み言のような気持ちが出てしまう。











「次回予告!いよいよ始まる一週間の職場体験。指名件数が多過ぎて迷ったけど、私はあるヒーローの元へ志願した。次回!『体験先への道中』!なんでここに君がいるの?!更に向こうへ、Plus ultra!!」

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