2023.05.10

じつは日本が、いよいよ「強力な統制国家」になっていることに気づいていますか…?

加谷 珪一 プロフィール

この問題も以前から指摘されていたことではあるが、事態はまったく改善せず、とうとう政府がしびれを切らし、岸田首相が資産会社の運用力強化を自ら金融庁に指示することになった。

本来、資産運用というのは個人が自ら積極的に行うものであり、結果として証券市場も強化され、消費者の利益も大きくなる。ところが日本ではこうした動きは起こらず、政府が非課税制度であるNISAを拡大して、国民に対して長期の資産形成を促す事態となっている。

一連の状況を冷静に眺めると、日本はもはや政府が経済を主導する社会主義的統制経済にシフトしつつあると解釈できるだろう。日本は昭和の時代から「世界でもっとも成功した社会主義国」などと揶揄されてきたが、あくまでそれは「右に倣え」という日本人の主体性のない行動パターンがもたらしたもので、政府が強く民間に介入していたわけではない。

昭和までの日本政府は民間への介入にはむしろ消極的であり、欧州各国の方が圧倒的に統制的だったといってよい。その意味で今回の一連の政府による介入は、まったく新しい動きと考えてよいだろう。

 

政府の方向性が正しい故の問題とは?

最大の問題(皮肉)は、現状において政府が示している方向性が全て正しいことである。

旧ソ連の崩壊に代表されるように、統制経済・計画経済というのはうまく機能しないというのが現代資本主義の常識であり、可能な限り市場メカニズムに任せるべきというのがグローバル経済の基本的な価値観となっている。ところが、日本でだけは、そうした市場メカニズムがうまく働かず、政府による介入によって事態が改善するという困った状況に陥っているのだ。

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