消費者保護や国民の資産形成についても同じことが言える。
日本では携帯電話に関して、端末の販売と回線サービスを強制的に抱き合わせ販売することが当たり前という時代が長く続き、利用者の選択肢が著しく制限されてきた。どの国でも、企業は抱き合わせ販売によって利益を拡大したいと考えるものだが、消費者の反発が大きいため、こうした販売方法を強制することはできず、消費者に一定の選択肢を供与するのが一般的である。
ところが日本の場合、こうしたメカニズムが働かず、この件についても最終的に政府が販売方法についての指導を行い、ようやく回線と端末の分離が実現した。政府はさらに踏み込み、通信事業者に対して携帯電話料金の引き下げを強く迫り、実際に価格が引き下げられるなど、国家の介入によって消費者利益を拡大するという流れが一般化している。
困った金融機関
資産形成の分野でも同じことがいえる。日本では金融機関が個人投資家に不利な条件を課したり、手数料の獲得に主眼を置いた商品を一方的に販売することが多く、国民の長期資産形成が阻害されている面があった。諸外国では運用会社の競争が激しく、運用規模は年々大きくなり、かつ手数料も大幅に引き下げられている。
日本の運用会社の規模は小さく、最大手でも世界トップ企業の15分の1以下となっており、もはや同じ条件で戦える相手ではなくなっている。本気で資産形成を目指す個人投資家は海外の投資信託を購入するケースが多いのが現実だ。本来なら、証券業界が自ら再編を進め、運用力を強化する必要があるが、業界は目先の利益を優先し、戦略的な取り組みが出来ていない。