プラスチック製品に含まれる化学物質で子宮筋腫リスクが上昇か
女性の不正出血や不妊などの原因となる子宮筋腫の発症に、予想外の要因が関わっていることを示唆する新たな研究結果がこのほど明らかになった。
ファストフードの容器や飲料水のプラスチック製のボトルなど、さまざまな物に使われているフタル酸エステルと呼ばれる化学物質が、子宮筋腫の発症を促す可能性があるという。
米ノースウェスタン大学産婦人科学のSerdar Bulun氏らによるこの研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に2022年11月14日掲載された。
子宮筋腫の有病率は高く、女性の最大80%が生涯に1回以上、子宮筋腫を発症する。子宮筋腫を発症した女性の一部は出血や貧血、流産、不妊などを経験する。
米国産科婦人科学会(ACOG)の環境医学の専門家であるNathaniel DeNicola氏によると、筋腫は症状が現れた後に見つかることもあるが、帝王切開や画像検査の際に偶然見つかることもある。
なぜこうした腫瘍が発生するのかについては十分に解明されていない。ただ、DeNicola氏によると、細胞があらかじめプログラムされた細胞死(アポトーシス)に至らずに増殖すると、それが筋腫あるいはがんの要因になり得るという。
アポトーシスは正常な現象であり、ほとんどの成人で毎日約5000万個の細胞が死に至る。
Bulun氏らは今回、子宮筋腫を持つ女性の筋腫から採取した初代細胞を調べた。その結果、症状を伴う子宮筋腫がある女性では、MEHHP〔フタル酸モノ(2-エチル-5-ヒドロキシヘキシル)〕の尿中の濃度が極めて高く、MEHHPの尿中濃度が子宮筋腫の診断を受けるリスクと関連することが明らかになった。
MEHHPは、フタル酸エステル類の一種であるDEHP(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)の主要な代謝物である。さらに、筋腫の初代細胞を、尿中に検出されたのと同じ濃度のMEHHPを添加して培養したところ、細胞生存率が高くなり、アポトーシスが減ることが確認された。
先行研究でもフタル酸エステル類への曝露と筋腫の増殖に関連があることが示されていたが、今回の研究では、その機序が示されたと言える。
前述のDeNicola氏は、Bulun氏らの研究の強みとして、動物モデルではなく実際の患者から採取した尿検体を使用している点を挙げる。
その一方で、化学物質への曝露が筋腫に与える影響について明らかにするためのゴールドスタンダードとなる研究デザインはランダム化比較試験(RCT)であり、Bulun氏らの研究はRCTではないことに同氏は言及している。
DeNicola氏は、「プラスチック製品やパーソナルケア商品に含まれているフタル酸エステル類のような化学物質への曝露量をゼロにするのはかなり難しいが、減らすことは可能かもしれない」と話す。
その一つの方法として、政策立案者がパーソナルケア商品、特に化粧品の原料を規制することを提案。また、個人レベルでパーソナルケア商品に含まれるフタル酸エステル類への曝露量を減らしたい場合には、フタル酸エステル類を含有していないことが明示されている商品を探すことを助言している。
さらに、食品を温める場合には、プラスチック容器に入った状態で温めることは避けるべきであるとも指摘している。
一方、Bulun氏はプラスチック製のボトルに入った飲料やプラスチック容器に入った食品の摂取は控え、代わりにガラス製のボトルや容器に入ったものを摂取することを勧めている。また、ポリ塩化ビニル(PVC)が使われた製品も避けるべきとしている。
Bulun氏は、政策立案者がこの問題に関するさらなる研究や法律の制定を主導し、そのための資金を投じること、またプラスチック製の袋やボトルを禁止することも可能ではないかとの見解を示す。
同氏は、「この研究領域は、人々の健康に関わる最も重要な領域であるにもかかわらず、研究の実施状況はひどく不十分なレベルにとどまっている、というのが私の考えだ」と話している。(HealthDay News 2022年11月15日)
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Abstract/Full Text
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2208886119
構成/DIME編集部