さらば近鉄、だが……



近鉄ラストシーズンの2004年は19本塁打に終わった中村

 2004年のプロ野球は荒れた。ペナントレースではない。いわゆる球界再編だ。プロ野球で初めて、選手会によるストライキが決行されたシーズンでもある。

 6月にオリックスと近鉄が合併に合意したことが報じられると、一時は10球団1リーグ制へ移行する話も浮上した。紆余曲折を経て、結果的に落ち着いたのが現在の形だ。オリックスが近鉄を吸収する形で合併、近鉄のニックネームが継承されてバファローズとなって、新たに楽天が東北に誕生した。以前、この連載で05年のオリックスについては想像をふくらませたことがあったが、このときは1995年のリーグ優勝、96年の連覇と日本一へチームを引っ張ったイチローがメジャーから舞い戻ったら、という想定。

 実際の2005年は、04年オフに近鉄のナインは分配ドラフトでオリックスと楽天に分けられ、オリックス移籍に抵抗を示す近鉄ナインもいた。だが、オリックスも近鉄も関西に本拠地を置くパ・リーグのチームだ。人気ではセ・リーグの阪神が優勢かもしれないが、阪急の昔からオリックスも近鉄も応援しているというパ・リーグのファンも少なからずいただろう。巨人のオーナーからは「たかが選手が」という発言もあった球界再編だったが、多くのファンはナイン、つまり選手を応援していることは明確だった。合併や球団の“消滅”ということではなく、関西パ・リーグ2球団のナインで構成する連合チームが新たに誕生したとしたら、05年の風景も少しは違って見えたかもしれない。

 東北に楽天が誕生したことは喜ばしいが、今回は関西パ・リーグのファンに寄り添い、2チームの“連合軍”を夢想してみる。残念ながら近鉄のベストオーダーは04年で終わっているが、05年オリックスのベストオーダーに04年オリックスおよび近鉄のベストオーダーから選手を入れていくと、以下のラインアップとなった。

1(左)谷佳知(オリックス)
2(二)水口栄二(近鉄−オリックス)
3(中)大村直之(近鉄−ソフトバンクFA)
4(指)鷹野史寿(近鉄−楽天)
5(一)北川博敏(近鉄−オリックス)
6(三)中村紀洋(近鉄−オリックス)
7(右)礒部公一(近鉄−楽天)
8(遊)阿部真宏(近鉄−オリックス)
9(捕)日高剛(オリックス)
(投)岩隈久志(近鉄−楽天)

実際のベストオーダーは?


 打順の守備位置は05年オリックスのもの。そこに04年のオリックスと近鉄で、打者は打席、投手は投球回が多い選手を入れた。一方、04年を最後にプロ野球を去った、あるいは05年から加入した選手は、今回は割愛したため、指名打者は近鉄の鷹野史寿が独占する形に。実際のオリックス05年では左翼が村松有人、中堅が谷佳知だが、ここでは谷が04年の左翼のままで、近鉄の大西宏明をリード。実際にはFAでソフトバンクへ移籍した近鉄の大村直之が今回は中堅手だ。

 05年の守備位置を優先すると打席数で谷が大村に届かず控えに回り、村松と大村の左中間となる。右翼は選手会でも活躍した近鉄の礒部公一で、オリックスの早川大輔が控えだ。一塁は北川博敏の独壇場で、二塁に水口英二、三塁に中村紀洋、遊撃に阿部真宏と近鉄が独占した。二塁ではオリックスの平野恵一が試合数では水口を上回るも、打席数では届かず。三塁には塩谷和彦、遊撃には塩崎真が控える。捕手はオリックスの日高剛を近鉄の藤井彰人がバックアップ。エースは近鉄の岩隈久志に、オリックスの川越英隆が続く。結果的に古巣が近鉄の選手が優勢となったが、成績を考慮すると顔ぶれも変わるはずだ。戦略的には中村を四番に据えるなど打順の調整も必要だろう。

 これほど現実は甘くはなかった。とはいえ、寂しい歴史の1ページに、こんな小さな夢を描く余裕があってもいい。では、続きはファンの皆様の夢の中で。

(オリックス2005年のベストオーダー)
1(左)村松有人
2(二)平野恵一
3(中)谷佳知
4(指)クリフ・ブランボー
5(一)北川博敏
6(三)後藤光尊
7(右)カリーム・ガルシア
8(遊)阿部真宏
9(捕)日高剛
(投)JP(ジェレミー・パウエル)

文=犬企画マンホール 写真=BBM