米・ネットメディアのProPublica,2年連続でピュリツァー賞受賞
アメリカの活字ジャーナリズムで最も権威ある賞とされるピュリツァー賞が4月18日に発表され,インターネット上を主要な発表の場とするプロパブリカ(ProPublica)が,2010年に続いて2年連続で受賞した。
アメリカでは,既存の新聞や雑誌,商業放送とは別に,寄付を主要な財源として,ネットで報道する非営利(non-profit)メディアが増えており,ProPublicaはその代表的な存在とされる。2008年に設立され,デイリー取材は行わず,独自に発掘したネタを掘り下げる調査報道を専門としている。去年,ニューヨークタイムズ・マガジンと共同取材した記事で,ネットメディアとして初めて同賞を受賞したが,今年は単独で国内報道部門賞を受賞した。対象となったのは『ウォール街のマネーマシーン』という記事で,2008年のリーマン・ショックの際に金融界で働く強欲な人間が,個人の利益のために顧客や企業を犠牲にし,いかに不況を深刻化させていったかを告発した。丹念な取材に加え,ネットの特性を生かして多くの資料やグラフィックを使い,読者に分かり易く記事を提供した。ポール・スタイガー編集長は「この記事がきっかけで当局の摘発が行われた。“社会のモラルを保つ”というジャーナリズムの目的が果たされ,それが評価されたことは我々の励みになる」と述べた。不況で多くの新聞社や放送局が調査報道の人員や経費をカットする中,ProPublicaなどの非営利メディアが果たす役割は重要になっているが,寄付が中心の財源をいかに安定させていくかが課題となっている。