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日本でもモザイクなしで… ウクライナ公開のロシア兵捕虜の動画は「国際法違反」人権団体が声明

「ヒューマン・ライツウォッチ」はウクライナ当局がSNSやYouTube上で公開してきた捕虜動画について、「ジュネーブ条約」(第3条約)で定めた捕虜の取り扱いに違反しているとして投稿を止めるよう求めている。

国際人権団体「ヒューマン・ライツウォッチ」(HRW)はウクライナ当局が公開している捕虜動画について、国際人道法「ジュネーブ条約」で定められた捕虜の取り扱いに違反しているとして、投稿を止めるよう求める声明を発表した。

捕虜の動画は、SNS上で広く拡散しているほか、NHKなどを含む国内外のメディアも報じている。

ウクライナ侵攻では、ロシアが「ウクライナで米国が関与して生物兵器をつくっている」と主張して国連安保理の開催を求め、米英政府はロシア軍の詳細な行動を次々と公表するなど、関係各国が激しい情報戦を続けている。

捕虜動画の公開は、ロシア側の戦意をくじくといった狙いのもとウクライナが行った情報戦の一環とみられ、これに対しては人権団体から国際法違反の指摘が出たかたちだ。

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HRWはアメリカに本部を置く国際人権NGO。ロシア軍によるウクライナ侵略をめぐっては、民間人への無差別攻撃やクラスター爆弾の使用などに関するレポートをこれまで発表してきた。

捕虜の動画に関する声明は3月4日付。ウクライナ当局がSNSやYouTube上で公開してきた捕虜動画について、戦争に関する国際条約「ジュネーブ条約」に違反しているとして、以下のように投稿を止めるよう求めている。

「捕虜を公衆の好奇心の対象から保護し、脅迫や屈辱から守る義務は、捕虜の人道的な扱いを確保し、その家族を危害から守るという、より広い要件の一部に当たります。ウクライナ当局は、オンラインへのこのような動画の投稿をやめるべきです」

国際人道法「ジュネーブ条約」(第3条約、1949年)では、捕虜について、その人道的待遇や暴行や脅迫、公衆の好奇心からの保護、報復措置の禁止、さらに名誉の尊重などを定めている(防衛省サイトに日本語訳)。

HRWは公開されている動画について、捕虜が尋問で自らの個人情報などを語っているもの、目隠しをされながら銃を突きつけられているもの、さらに死亡した兵士の写真などがあると指摘。「すべての写真やビデオの信憑性を検証することはできない」と指摘した。

こうした捕虜動画はSNSやメディアで広く拡散。数百万回再生されているものもある。

HRWは「ロシア軍」の戦争犯罪にも言及

日本国内でも、NHKが3月2日にモザイクをかけないまま捕虜動画を放送し、WEB上にも公開(写真上)。

そのほか複数のメディアが「情報戦」の一側面などとして動画や画像を伝えていることが、実際の報道やデータベース「G-search」、アーカイブサイト上などで確認できた。

こうした状況について、HRWは声明で、メディアは違反している捕虜の資料の放送や公表を控えるべきであるとし、さらにソーシャルメディアのプラットフォーム事業者にも措置の必要性を訴えている。

なお、同じ声明では、ロシア軍についても無差別攻撃やクラスター爆弾の使用など、「広範な戦争法違反や明白な戦争犯罪について記録している」とも強調。

「ロシア軍による違反行為は広範かつ広範囲に及び、民間人に深刻な被害をもたらしている」としながら、「同時に、ウクライナは捕虜の合法的な扱いなど、守らなければならない明確な義務を負っています」と結んでいる。

捕虜動画をめぐっては、赤十字国際委員会(ICRC)も声明も、捕虜の取り扱いに関する声明を3月4日に発表。以下のように指摘している。

「捕虜と拘束された民間人を、尊厳をもって扱わなければならない。ソーシャルメディアで流通する映像や画像を含め、彼らが公衆の好奇心にさらされることから、絶対に守らなければならない」

ウクライナ当局は動画について、ロシア兵の親族などによる特定を手助けするものとし、捕虜となったロシア兵らはジュネーブ条約に従って扱われていると主張している。ロシア兵捕虜には、衣食住と医療が提供されているという。


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