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「HPVワクチン、男性も無料接種を」 大学生の団体、署名1万5343筆を厚労省に提出

HPVワクチンの無料接種を男性にも広げるために署名活動をしてきた大学生の団体が、署名1万5343筆を厚労省に提出しました。厚労省は女性の接種を進めた上で、段階を踏んで男性の定期接種化を進めると答えました。

子宮頸がんなどを防ぐHPVワクチンについて、男性も無料で接種できるようにすることを求めて署名活動をしていた「Voice Up Japan ICU支部 」(共同代表:川上詩子さん)は、11月17日、厚労省に署名1万5343筆と共に要望書を提出した。

受け取った西嶋康浩・予防接種対策推進官は「女性の接種を確実に進めるのが大事で、その上で男性接種についても進めていきたい」と答え、女性を優先しつつ、男性接種も前向きに検討することを約束した。

HPVワクチンが感染を防ぐヒトパピローマウイルス(HPV)は男性もかかる肛門がんや中咽頭がん、陰茎がんの原因ともなり、性行為でうつし合うため、海外では男性も公費による接種が導入された国が増えている。

署名活動を進めてきた川上さんは、「HPVワクチンは男性の接種も恩恵が大きいものですし、女性がかかる子宮頸がんのリスクを軽減したり撲滅にも貢献することになっている。女性のキャッチアップ接種、9価の定期接種化が整ったら、男性の接種も議論していただけたら」と訴えた。

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恋人が費用の高さでうてなかった経験から、署名活動を開始

代表で国際基督教大学3年生の川上さんは、自身がHPVワクチンの定期接種の対象だった時、接種後に体調不良を訴える女子をセンセーショナルに報じたメディアの影響を受けて、一度は見送った。

しかし、大学に入ってからHPVワクチンの重要性に気づき、3回で約10万円かかる9価ワクチンを自費で接種した。

その際、当時の交際相手だった服部翼さんに、「あなたもうって」と伝え、服部さんもHPVワクチンについて調べて自分もうつことを決めたが、費用負担の高さから未だに接種できずにいる。

川上さんは服部さんと一緒に、自身が所属するジェンダー問題の啓発団体「Voice Up Japan ICU」で、男性にもHPVワクチンの無料接種を求める署名活動を昨年10月から始めた。

男性の定期接種化と、男性のキャッチアップ接種を要望

この日、署名の束を携えて厚労省を訪れたメンバーたちは、西嶋推進官に、

  1. HPVワクチンの男性定期接種化を早急かつ確実に開始すること
  2. 1997年度から2005年度生まれの男性のHPVワクチン接種への公費補助を検討すること


の2点を要望する文書と共に、署名を手渡した。

その後、メンバーと推進官で懇談。

服部さんは、「うとうと決心したのに、5万円、良いものだと10万円かかるワクチンは大学生にはハードルが高い。こういう実情があることを理解していただければ」などと、男性が接種するには金銭的負担の軽減が必要なことを訴えた。

厚労省「まず女性の接種率を上げ、ステップを踏んで男性も」

西嶋推進官は、「9年ブランクがあるので、女性がまずうち始めているが接種率はまだまだ低い。まずは女性の接種を確実に進めるのが大事で、9価ワクチンも(公費接種を)始めることになっているので、それを多くの若い女性に理解して、接種への行動を起こしてもらうのが大事」と、まず女性の接種率を上げることが優先されることを説明した。

また、「女性の接種率を上げ、(うちのがした世代の)キャッチアップの人たちに情報を届ける。その上で男性接種についても一緒にやっていけたら。接種対象者の年齢に近い大学生の皆さんが発信した方が届く。行政と学生の皆さんとお互いに補いながらやっていきたい」と学生たちに協力を求めた。

これに対し、署名提出に立ち会ったみんパピ!代表の稲葉可奈子さんは、ここ1年でHPVワクチンの政策が急速に進んだことに敬意を示しつつ、「制度が整っても、周知がされないと、理解され、活用されることで初めて意味がある。コロナ対策と同じぐらいの熱量で周知に関しても力を入れていただきたい」と注文をつけた。

さらに、「女性の接種率が進んでから男性にという話だが、女性の接種が順調に進んだ他の国と日本は状況が大きく異なる。積極的勧奨が再開しても過去の状態に戻っているわけではない。むしろ女性の接種率が低いからこそ、男性が接種することによって女性が守られる効果も期待できる」と、段階を踏む方法に疑問を呈した。

推進官はまた、厚生科学審議会 (予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会)で8月に男性の定期接種化について、世界中のエビデンスや制度の効果を検証する「ファクトシート」を作成することが決まったことを説明。

「男性接種についてはキックオフをしているので、(エビデンスを)収集するのに時間がかかる。ステップを踏んでやることも大事で、10年前と同じこと(副反応騒ぎ)が起きないように、副反応の対応やきちんと理解をしてうってもらう環境作りを合わせてやっていくことが、結果的により早く多くの人にうっていただけることになる」と慎重に手続きを進める必要があるという認識を示した。

女性は現在、3種類のHPVワクチン(2価、4価、9価)が承認されているが、男性は肛門がん予防として4価ワクチンしか承認されていない。

今後、女性の定期接種で主流になる9価ワクチンは男性で承認されていないが、男性もより効果の高い9価ワクチンをうちたがると考えられ、こうした女性との条件のズレも男性の定期接種化のハードルの一つになると考えられる。

厚労省も当事者の発信を歓迎

西嶋推進官は、BuzzFeedの取材に対し、「当事者が声を上げてくれることは大きいし、今回要望された男性接種だけでなく、HPVワクチン政策の全体像を見据えながら考えてくれていることがありがたい」と語った。

服部さんは、提出後の会見で「男性がHPVによる病気で苦しんでしまうことはどこかで止めなければいけないし、そのために僕らの活動が役立てば嬉しい」と語った。

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