マンタ

Mobula
2匹のオニイトマキエイがプランクトンを食べているところ。オニイトマキエイは世界最大のエイで、世界中の熱帯、亜熱帯、温帯海域で暮らしている。(PHOTOGRAPH BY ENRIC SALA, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
2匹のオニイトマキエイがプランクトンを食べているところ。オニイトマキエイは世界最大のエイで、世界中の熱帯、亜熱帯、温帯海域で暮らしている。(PHOTOGRAPH BY ENRIC SALA, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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早わかり

分類: 魚類
IUCNのレッドリストによる
危機の評価:
絶滅危惧種(オニイトマキエイ)、危急種(ナンヨウマンタ)
寿命: 最長50年
体長: 最大約9メートル(オニイトマキエイ)

 マンタは絶滅の危険が高い世界最大のエイだ。世界中の熱帯、亜熱帯、温帯の海に暮らし、知能がとても高いことで知られている。

「マンタ」はスペイン語で「毛布」や「コート」という意味。左右に大きな三角形の胸ビレがあり、体全体が平たいひし形に見えることからこう名付けられた。頭の先端から一対のヒレが角のように突き出ているため、「デビルフィッシュ(悪魔の魚)」というあだ名も付いている。

 長い間、マンタは1属1種と考えられてきたが、2008年になり、実は2種いることが研究によってわかった。ナンヨウマンタ(Mobula alfredi)とオニイトマキエイ(Mobula birostris)だ。ナンヨウマンタはインド太平洋の沿岸域で暮らすことが多い。一方、オニイトマキエイは世界の主だった海のすべてで見られるが、ほとんどの時間を陸から遠く離れた外洋で過ごしている。

 オニイトマキエイの横幅は最大約9メートル。オニイトマキエイに比べ小ぶりのナンヨウマンタの横幅は最大5.5メートルだ。

生息地と採餌

 オニイトマキエイもナンヨウマンタも「フィルター・フィーダー(ろ過摂食者)」。泳ぎながら大きく口をあけ、動物プランクトンやオキアミを海水ごとのみ込む。そして口の中にある「鰓板(さいばん)」と呼ばれる細長いくしの歯が並んだような板状のエラで、餌だけをこしとって食べる。餌をとる時の特殊なテクニックも持ち合わせている。例えばオキアミが豊富にいる場所では、その場に長くとどまれるよう宙返りを繰り返す。また口を開けたまま、仲間と連なって円を描くように泳ぐこともある。これは円の中に渦を発生させ、そこに餌を閉じ込める作戦だ。

 オニイトマキエイは単独で暮らすが、食事の時は小さな群れをつくることがある。

 マンタはしばしばサンゴ礁の中の「クリーニング・ステーション」を訪れて、小さな魚に体をきれいにしてもらう。そこで数分間じっとしていると、掃除魚が体について寄生虫や古い皮膚を食べてくれる。マンタにはそれぞれ「ひいき」のステーションがあり、そこを繰り返し訪れる。

知能

 脳が体全体に占める割合で見た時、マンタの脳は魚類の中で最大だ。研究によるとマンタは鏡に映った自身を認識しているようだ。これはマンタが、イルカ、霊長類、ゾウと同じような高い認知能力を持つことを示している。

 マンタはにおいや見たものから周りの環境の地図をイメージできることも研究からわかっている。高度に発達した長期記憶力があることを示す証拠だ。

繁殖

 メスのマンタは8歳から10歳で性成熟に達する。出産はおよそ2年に1度で、1回の出産で1~2匹の子供を産む。妊娠期間はおよそ12~13カ月。卵ではなく赤ちゃんを産む。赤ちゃんマンタは親をそっくり小さくしただけの姿をしていて、生まれた瞬間から独り立ちできる。

 マンタの寿命は50年ほどだ。

脅威

 国際自然保護連合(IUCN)はオニイトマキエイを絶滅危惧種に、ナンヨウマンタを危急種に指定している。マンタにとって最大の脅威は乱獲だ。寿命が長く、繁殖ペースが遅いため、乱獲された場合、数の回復が難しい。マンタは食用に捕獲されるほか、最近では鰓板を採取する目的でねらわれるケースが増えている。

 鰓板は、血流を改善するなどの効果があるとして伝統薬への需要が高いが、その効果に科学的根拠はない。また鰓板を珍味と考える人もいる。毎年、鰓板目的で殺されるマンタは数千匹に上り、推定取引額は3000万ドルになる。

 2011年からは公海で暮らすマンタは、国際条約である「移動性の野生動物種の保護に関する条約」で保護されている。さらにエクアドル、ペルー、メキシコ、フィリピン、ニュージーランドなどマンタ漁を禁止している国もある。

 2014年には、マンタの漁獲量で世界一だったインドネシアがマンタ漁と取引を禁止した。観光用にマンタを生かしておいた方が経済をずっと潤すというのが理由だ。例えばマンタと泳ぐ「マンタスイム」などの体験ツアーは地元経済に大きな収益をもたらす。ある調査によると、人気の観光地にマンタが1匹いれば、生きている間に100万ドルの利益を生むが、死んだマンタは500ドルにしかならないという。

【動画】マンタを追跡調査する
海洋生物学者のジョシュア・スチュワート氏は、ナショナル ジオグラフィック協会の支援を受け、オニイトマキエイの動きを研究することで保護につなげようとしている。
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