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2022年5月13日(金)の放送内容

iPS細胞で“椎間板”の機能が再生

JAPANESE SCIENTISTS USE iPS CELLS TO RESTORE SPINAL DISK FUNCTION

2022年4月21日のニュース

「らじる★らじる」で放送を聞く

Japanese scientists say they've successfully restored function to intervertebral disks in rats by implanting tissue derived from induced pluripotent stem cells, or iPS cells.再生解説
日本の科学者たちは述べています、彼らは成功のうちに回復しました、ラットの椎間板の機能を、人工多能性幹細胞、iPS細胞に由来する組織を移植することによって。
解説
京都大学などの研究グループは、傷ついたラットの椎間板にiPS cells「iPS細胞」から作製した細胞を移植することで、機能を再生させる実験に成功したと発表しました。
intervertebral diskは「椎間板」で、タイトルで使われているようにspinal diskとも呼ばれます。椎間板は脊柱を構成する骨と骨の間のクッションのような役割を果たしています。
diskは「平らで円盤状の物体」ですが、辞書には変形のスペルとしてdiscも併記されていて、その用途によって主に使われるスペルが異なります。例えば、コンピューター関連ではdisk(floppy diskなど)、音楽関連ではdisc(compact discなど)が主に使われ、ここで使われているような「円盤状の組織、椎間板」という意味では、アメリカ英語ではdisk、イギリス英語ではdiscが主に使われます。
implantは「移植(する)」です。なお、「臓器移植」ならorgan transplantなどで表せます。
(be) derived from ...は「~に由来する」で、ここではiPS細胞「から作製された」という意味で用いられています。
induced pluripotent stem cellsは「人工多能性幹細胞、iPS細胞」で、体のさまざまな組織や臓器になる細胞です。
induceは「(何かを)引き起こす、誘発する、人工的に(薬などで)ある状態を促進する」といった意味を持つ言葉で、induced labor「人工(的に起こした)陣痛、誘発分娩」のように使われます。pluripotentのpluri-は「多数」を意味し、potentは「(薬などが)効能のある、能力のある」で、pluripotentは「多能性の」となります。
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A team led by researchers from Kyoto and Osaka universities conducted the study on the inner core of the intervertebral disk, called the nucleus pulposus. 再生解説
京都と大阪の大学の研究者らに率いられたチームがその研究を行いました、椎間板の内部の核についての、(それは)髄核と呼ばれます。
解説
Kyoto and Osaka universitiesは「京都と大阪(にある)大学」です。具体的には京都大学と大阪大学です。
a team led by ...は「~を中心とした(~が率いる)チーム」です。
called以下では、(which is) calledのようにwhich isが省略されている形で、intervertebral disk「椎間板」の内部の組織がnucleus pulposus「髄核」と呼ばれている、と説明しています。ちなみに、「椎間板ヘルニア」(herniated diskもしくはslipped disk)は、この髄核が椎間板から飛び出してしまい、脊柱のまわりにある神経を圧迫する症状です。
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They say intervertebral disk degeneration occurs when the core is damaged or dissipates, and is a major cause of lower back pain.再生解説
彼らが言うには、椎間板変性は、その核が傷つけられるか失われていくときに起きこります、そして腰痛の主な原因です。
解説
degenerationは「悪化、変性、退化」などの意味です。degenerative diseaseなら「変性疾患、進行性の、徐々に悪化する病気」を指します。また、regenerative medicineと言えば「再生医療」です。研究者たちは今回の実験の結果が、人の腰痛の新たな治療法の開発につながる再生治療の候補のひとつになりうると期待しています。
dissipateは「散ってなくなる、消失する」です。ここでは、ゼリー状の髄核から水分が抜けて縮小することを指しています。そうすると骨と骨の隙間が狭くなって痛みが生じてきます。
lower back painは「腰痛」です。back「背中」のうち、下の部分の痛みです。
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The scientists say they found the jelly-like inner core contains cells resembling those in cartilage. They created similar cartilaginous tissue using iPS cells.再生解説
その科学者たちが言うには、彼らは発見しました、そのゼリー状の内部の核は軟骨の中のものと似ている細胞を含むことを。彼らは同じような軟骨性の組織を作製しました、iPS細胞を使って。
解説
jelly-likeは「ゼリー状の」です。-likeは、名詞の後に付けて「~のような、~らしい」として使われます。例えば、businesslikeなら「事務的な」、childlikeなら「子供のような」です。
thoseは、cellsを指しています。
cartilageは「軟骨(組織)」で、その形容詞形がcartilaginous「軟骨(性)の」です。
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The tissue was implanted in the intervertebral disks of rats from which the nucleus pulposus had been removed.再生解説
その組織は移植されました、ラットの椎間板に、そこからは髄核が取り除かれていました。
解説
自然な日本語にするなら、「その組織はラットの椎間板に移植されました。それらのラットの椎間板からは、あらかじめ髄核が取り除かれていました」となります。
from which the nucleus pulposus had been removedは、the intervertebral disks of ratsにかかっていて、その状態を説明しています。which=the intervertebral disks of ratsということです。
had been removedと過去完了形になっているので、椎間板から髄核が取り除かれたのが、組織が椎間板に移植される以前であることが分かります。
研究グループが髄核の細胞について遺伝子の働きを調べたところ、軟骨とよく似た細胞が含まれていることを突き止めました。そこで、iPS細胞を使ってこの軟骨に似た細胞を作製し、髄核を取り除いたラットの椎間板に移植した結果、本物の髄核の代わりとして機能したということです。
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The researchers say six months later the rats had no intervertebral disk degeneration, and the shock absorbing function of the disks was maintained.再生解説
その研究者たちが言うには、6か月後、それらのラットには椎間板の変性はなく、そして円盤(椎間板)の衝撃吸収機能は維持されていました。
解説
the disks「それらの円盤」は、前のセンテンスに出てきたthe intervertebral disksを短く述べたものです。つまり、ここでのdiskは「椎間板」のことです。
shock absorbing functionは、読んでのとおりshock(衝撃)をabsorb(吸収する)function(機能)です。ゼリー状の髄核を内部に持つ椎間板が背骨と背骨の間で衝撃を和らげるクッションの機能を果たしていることを示しています。
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Rats with no inner disk core that didn't receive the iPS cells showed signs of tissue breakdown and disk degeneration.再生解説
椎間板の内部の核がないラットで、iPS細胞(の移植)を受けなかったものは示しました、組織の崩壊と椎間板の変性の兆候を。
解説
inner disk core「内部にある椎間板の核」とは、前のセンテンスで説明された「髄核」のことです。
rats with no inner disk core that didn’t receive the iPS cellsのthat以下で、rats with no inner disk coreを説明しています。「椎間板の内部の核が取り除かれてiPS細胞の移植は受けなかったラット」ということです。
show signs of ...は「~の兆候・兆しを示す、見せる」です。例えば、The economy is showing no signs of improvement.「経済は改善の兆しが見えない」などのように使えます。
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日本の科学者たちが、ラットの椎間板に人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製した組織を移植することで、機能を回復させることに成功したと発表しました。
京都と大阪の大学などの研究グループは、椎間板の中にある髄核と呼ばれる組織についての研究を行いました。この組織が傷ついたり失われたりするときに起きる椎間板変性は、腰痛の主な原因とされています。
研究グループは、その内部にあるゼリー状の核(髄核)に軟骨と似た細胞が含まれていることを突き止めました。そこで、iPS細胞を使ってこの軟骨に似た細胞を作製し、髄核を取り除いたラットの椎間板に移植しました。
研究グループによりますと、6か月後(の状態を調べたところ)、移植したラットの椎間板は変性が起こらず、椎間板のクッション機能も保たれていました。一方、髄核を取り除いたままで、iPS細胞の移植を受けなかったラットは、組織が壊れて、椎間板変性の兆候が見られたということです。
講師 伊藤サムの写真
Back-Translation Training

今回学んだ英文を使って、日本語訳からもとの英語に訳す「反訳トレーニング」です。英語の発想に基づいた語順を身につけましょう。

彼らは成功のうちに回復しました、その椎間板の機能を、iPS細胞に由来する組織を移植することによって。
They have successfully restored function to the intervertebral disk by implanting tissue derived from iPS cells.

restore A to Bは「Aを(元の持ち主である)Bへ戻す」という表現です。今回のニュースでは、正常なときに持っていたクッションの「機能を椎間板へ戻す」ことを表しています。

1. 彼らは成功のうちに回復しました
   They have successfully restored

2. その椎間板の機能を
   function to the intervertebral disk

3. iPS細胞に由来する組織を移植することによって
   by implanting tissue derived from iPS cells.

●Transformation Training
応用編: 反訳トレーニングで取り上げた英文の一部を別の表現に変えてみる「転換トレーニング」です。

反訳トレーニングで扱った文から、byより前の部分が変わっています。

多くの研究者が、病気を治そうとしています、iPS細胞に由来する組織を移植することによって。
Many researchers are trying to cure diseases by implanting tissue derived from iPS cells.

※練習用の例文です
Today’s Takeaway

現代英語を学ぶうえで役に立つ豆知識を取り上げます!

★難しい単語はパーツに分解してみよう

今回のニュースには、intervertebral disk「椎間板」やinduced pluripotent stem cell「人工多能性幹細胞」など専門用語が多く出てくるので、日本語で読んでも難しいですね。

難しい単語を理解するために、やってみるべきことのひとつは何でしょうか?
4月14日の放送でも触れましたが、こんなときは単語を語源などのパーツに分解してみましょう。漢字が偏(へん)やつくりから意味が想像できるように、英単語もパーツをみつけることで意味が想像できたり覚えやすくなったりします。

●intervertebral disk「椎間板」

inter-は「間の」という意味です。椎間板の「間」にあたります。
vertebraは、医学用語で「(脊)椎骨」という言葉です。ちなみにvertebrateなら「脊椎動物」で、「椎」とは背骨のことです。
diskは、日本語でも「ディスク」として使われますが、「円盤(の形をしたもの)」です。

この3つをつなげると、どうなるでしょうか?intervertebral diskは「vertebra(脊骨)の・にある・円盤の形をした板」、これをそのまま縮めると「椎間板」となります。

●induced pluripotent stem cells「人工多能性幹細胞、iPS細胞」

stem cell「幹細胞」は、体のさまざまな組織に育つことができる不思議な細胞です。stemは植物の「茎」や木の「幹」のことで、木の幹から枝分かれして大きく育っていくように、体のさまざまな組織に育っていく細胞というイメージが浮かびます。
pluripotentは「plural(複数の)potential(可能性)がある」と考えてみてください。「多能性の」という意味です。
ここでのinducedは「誘発されて」ですので、induced pluripotent stem cellは「人工的にinduced(誘発されて)作られた、pluripotent(多能性の)、stem cell(幹細胞)」です。

ちなみに、iPS細胞という名称を考えたのは、世界で初めてiPS細胞を作り出し、2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授です。iPSのiを小文字にしたのも山中教授で、有名なアメリカ企業の携帯端末のように世界に広く普及してほしいとの思いを込めたそうです。

なかなか読んでも難しく、骨の折れるニュースでしたね。苦痛に感じた方もいるかもしれませんが、腰痛を根本的に治してくれる再生医療の突破口になるかもしれないビッグニュースだと思います。

※番組やホームページで題材にする英語ニュースは、放送から一定期間が経過したニュースです。そのため、現在は状況や事実関係が異なっている場合があります。

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