リドゥ

雅彩ラヰカ

 リドゥは村で一番の狩人だった。

 いつも山麓の川縁に下って行っては水鹿レジーターデアーを仕留め、快馬ゾイロスに引かせて戻ってくる。

 彼女は女だったが力強く、男勝りで勇ましく、私は同性の垣根を超えて想いを寄せていた。


 そんなリドゥは自分の家には誰も入れず、村では孤立していた。

 と言うのも彼女は聖五芒星教を毛嫌いしていて、星䨩神を悪魔と言って憚らなかったからだ。

 村の連中もそんなリドゥを爪弾きにしつつ、狩人がいなくなっては困るものだから、追放はせずに放っておくくらいの扱いだった。


 そんなある日、リドゥが帰ってこなくなった。

 その日は山頂で大雨が降っていて川が荒れており、何かの拍子に川に落ちて死んだのではないかと噂された。

 はじめ、村人はリドゥの不信心を笑った。けれど狩りの出来るものがいなくなり、次第に暮らしが困窮してくると老人や子供が追い出され、村はだんだん廃れていった。

 迷信深い村人は、リドゥが恨んで呪ったんだと喚くようになった。


 私は身の危険を感じた。

 私がリドゥを好いていたことは広く知られていたし、残された数少ない女だったから、どんな目に遭うか想像できてしまったからだ。


 そして私は逃げ出す算段を立てていた時に捕まり、村長の家に連れて行かれた。

 神に宴を捧げるという男たちは全裸で、陰茎を精力剤でみなぎらせ、私は凍りついた。


 男たちは私を脱がせ、歓喜した。

 私は神性——いわゆる両性具有で、聖五芒星教においては完全な肉体とされる、この国では偶に生まれる存在だったからだ。


 そのとき村長の家に乗り込んできた人影があった。

 それはリドゥで、愛用の剣を振るって全裸の男どもを切り倒し、血の雨を降らせて私の手を取った。


 やはりお前も俺と同じだったんだなと、リドゥはそういった。

 彼女は私の手を己の股間に持っていった。そこには男根の膨らみと、女陰のぷっくりした膨らみがあった。それに彼女には、胸がある。


 来い、はぐれものが暮らす集落がある。

 リドゥはそういって、ゾイロスに跨り私をタンデムシートに乗せた。


 山頂の嵐は、そこに住まう竜の気まぐれか怒りかは知らないが、激しい雷鳴を伴い豪雨をもたらし、私たちがさって間も無く、村を土砂で飲み込むのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リドゥ 雅彩ラヰカ @RaikaRRRR89

作家にギフトを贈る

カクヨムサポーターズパスポートに登録すると、作家にギフトを贈れるようになります。

ギフトを贈って最初のサポーターになりませんか?

ギフトを贈ると限定コンテンツを閲覧できます。作家の創作活動を支援しましょう。

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る